インタビュー
「三國志12」は2つ存在する!? シリーズ初のオンライン対戦は本編とは別のクライアントで登場。どんな作品になるのか開発プロデューサーに聞いてみた
箱庭のような街を自由に発展させることが可能
都市の発展には施設と武将の組み合わせがポイントに
4Gamer:
さらにゲームシステムに関して教えてください。まず,今作のマップはどのような感じになっているのでしょうか。「三國志11」では,中華全土を1枚のマップで表現していましたが。
北見氏:
こちらがメイン画面です。都市をタッチ(クリック)すると都市画面になります。
4Gamer:
ああ,これがメイン画面だったんですね。
今回選択した,各マップを分けるシステムの良いところは,情報が整理されるということです。中華全体から見た自勢力の配置,各都市の状態,戦闘マップなどそれぞれの情報が整理されますよね。大きな1枚マップですと,切り替える必要はないのですが,マップに情報量が多く,都市の様子や戦闘などすべて並列に動いていて分かりづらい面もありました。ですので,本作では遊びやすく情報を整理した形を選びました。
「三國志」シリーズの目的は,やはり中華の統一です。そのために戦略を練って,各都市に対してこういうことをやって,という感覚を大事にしたいと考え,このシステムを突き詰めていきました。もちろん,今回はタブレットPC対応ということもあり,気軽にプレイしてもらいたいからという側面もあります。
4Gamer:
こうして画面を見せていただくと,昔の「三國志」に戻った感じもしますね。TGSのインタビューでは「IVに近い」という発言がありましたが,それはこういった画面レイアウトを含めてのものでしょうか。どちらかと言えば,都市制でターン制となると「III」や「IV」のようなイメージなのかなと思っていたのですが。
北見氏:
このシステムだけ見てると,たしかに昔に戻ったと言えるかもしれません。ただ,TGSの時にお話しした「IVに近い」というのは,どちらかという内政についてなんですよ。でも,「IV」は各コマンドに対し“担当官”がいましたが,今作では担当官はいません。例えば農園があり,そこに一度だけ武将を配属しておけば,その配属を外さない限り,そのまま継続的に収入があるようになります。
これまでのシリーズでは,毎ターン同じ武将に開発させるという作業が発生していたと思います。本作ではそこを改善し,テンポ良くゲームを進めるために,この武将を配属するというシステムにしました。
4Gamer:
農園などの施設に配属する武将が異なると,収入などに変化はあるんですか?
北見氏:
効果の高さが変わります。武将はそれぞれ“特技”を持っていて,その施設に適した特技を持っていればそれに応じて効果がアップします。もちろん,基本としては政治力に応じて収入が変化するのですが,それにプラスαがあると考えてください。ですので,どの施設に誰を配置するかを考える楽しみも味わっていただけます。
4Gamer:
逆に,武将を配置しない場合はどうなるのでしょうか。
過去作ですと,後方の都市は放っておいても収入がどんどん入ってきましたが,今作では武将をちゃんと配属しておかないと収入が大幅に減ってしまいます。なので,人員を前線に集中させてという従来の戦略より,もっとリアルな人員配置が戦略として加わった形です。
4Gamer:
タブレットPCでのプレイを考えてシステムを簡略化するのかなと,なんとなく思ったのですが,開発当初からこのシステムにする予定だったのでしょうか。
北見氏:
ええ,この部分については,最初からこうしようと考えていました。本作は戦略級SLGですので,余分なルーチンワークを排除し,その分より戦略を楽しむところにフォーカスを当てたいという考えから,このシステムを選択しました。
4Gamer:
分かりました。ではマップに話を戻しますが,街ごとに施設が建設できる規模は異なるのでしょうか。
北見氏:
街の規模はそれぞれ異なります。街情報画面にある“最大”という数値が,その街に建設できる施設の最大数になります。例えば洛陽など,中華の中心となる大都市は最大数が多く,北や南の辺境の都市は最大数が少なくなります。また,小沛は農業都市なのですが,この場合は農園による兵糧収入が多くなるというように,施設数以外にも都市ごとの特徴が存在します。こうなると,じゃあ農業都市の小沛では農園が少なく済むから,余った施設枠で金収入が増えるものを中心に建設しようといった戦略も立てられるわけです。
4Gamer:
なるほど,街ごとに特徴があるんですね。それぞれの街の特徴を活かした開発をしていけば効率も良さそうです。
北見氏:
中には,特徴がないという街もありますので,そこはうまく活用していただければと思います。
直感的にプレイできるリアルタイムバトル
戦法と秘策を使えば,不利な状況もひっくり返すことも?
4Gamer:
続いて,戦闘に関しても教えてください。パッと見た感じでは,前作とはガラッと変わっていますね。
北見氏:
やはり1枚マップではなくなっているのが大きいですよね。まず戦闘開始までの流れですが,戦略ターンで出陣してからターンを終了すると,戦闘フェイズに入ります。このとき軍議画面から,持っていく「秘策」を選ぶことができます。
4Gamer:
今作はリアルタイム戦闘とのことですが,武将は敵に向かってオートで進軍していくんですか?
北見氏:
自軍の武将に対しては,プレイヤーから指示を出して行動を決めます。武将を選択したあとマップ上をタッチ(クリック)すると旗が立ち,そこへ向かって進んでいく直感的かつシンプルな形式です。
戦闘マップ上にある陣を占拠すると,“采配ポイント”が上昇する速度が上がります。この采配ポイントは各武将に設定されている“戦法”を使うのに必要となります。先ほど出た“特技”とは別に,戦闘に関してその武将が持っている個性となります。さらに,槍兵/騎兵/弓兵といった“兵科”も存在しますので,戦闘で誰を出陣させるかは,単なる武将の能力だけでなく戦略に応じて選択することになります。
4Gamer:
中にはリアルタイム戦闘が苦手なプレイヤーもいると思うのですが,いわゆるCPUに戦闘を委任できるのでしょうか。
北見氏:
良い質問ですね。戦闘の委任も可能です。委任すると,アルゴリズムに沿って自動で戦ってくれます。戦況を見ながらここで戦法を発動させよう,秘策を使うならこのタイミングだろうといった感じで,プレイヤーが割り込んで指示を出すこともできますので,リアルタイム戦闘に慣れていない方は,最初はこの形で遊んでいただくことをお勧めします。
オンラインで全国の三國志プレイヤーと対戦が可能に!
2012年に行なわれるクローズドβにも期待大!
TGSのインタビューでは,オンライン要素についてはまだ“秘密”ということでした。そろそろお話が聞けないかな? と思っているのですが。
北見氏:
実は,本作のオンライン対戦部分だけを楽しめるクライアントを作ることにしました。これは,「三國志12」のリアルタイム戦闘をオンライン対戦で楽しめるものです。「三國志12」の企画を詰めている段階で,このシステムの戦闘は,オンライン対戦に向いているのではという話が出てきました。しかし,このシリーズは自勢力による中華統一を目指すものですので,スタンドアローンが基本。戦略や国盗り部分までオンラインに対応する訳にもいきません。そこで,思い切って切り離したものを開発した訳です。
4Gamer:
つまり,「三國志12」のオンライン要素というよりも,内政/戦略部分がなく戦闘に特化したオンライン対戦版「三國志12」が別にある,ということなんですか?
北見氏:
そうです。このオンライン対戦は「三國志12」のパッケージにも組み込まれていますが,パッケージを購入しなくてもクライアントをダウンロードしていただく形でも入手可能にします。オンライン対戦版には戦略部分はまったく入っていません。あくまでもリアルタイム戦闘の部分だけを,大体10分前後で戦闘が終わる手軽な形で楽しめるようになっています。
4Gamer:
これは驚きました。クライアントをダウンロードできるということは,オンライン対戦版は,それ単体で遊べるというものになるんですか。例えば,「三國志12」のセーブデータが必要といったこともないような。
北見氏:
ええ,本編のセーブデータは対戦版に対し何の影響も与えません。オンライン対戦だけを楽しんでいただける,「三國志12」とはまったく別のゲームがあると考えていただくと分かりやすいと思います。なお,オンライン対戦版についてプレイヤーのセーブデータはサーバーに保存される形になります。
4Gamer:
なんというか,まさにオンラインゲームですね。では,使用できる武将やマップはどうなるんでしょうか。
北見氏:
出陣できるのは自勢力から6人です。初回プレイ時には最初に何人かの武将をご用意しておきます。そのあとは,対戦後にランダムで武将を入手できるくじみたいなものがあり,それを引くことで使用できる武将が増えていくという流れになります。
戦闘マップは数パターン用意しています。基本的に点対称で配置され,対戦する双方の条件がイーブンになるように調整しています。なお,戦闘のルールは「三國志12」本編とほぼ同じです。
武将は勢力に関係なく選べるんですか?
北見氏:
はい。史実とは違って「孔融でプレイしているけど,趙雲が配下いるよ!」とか「劉備勢力に張遼がいれば……」といったifも「三國志」シリーズの楽しみだと思っています。勢力で限定させてしまうよりは,いろいろ自由にデッキを組めるようにしたいと思っています。
4Gamer:
気になるのが,武将の能力が高ければ,それだけ有利になるのかどうかです。
北見氏:
能力が高ければある程度は有利になりますが,どちらかというと能力と戦法の組み合わせが重要になると思います。
4Gamer:
ちなみにオンライン対戦版でも「秘策」は使えるんですか?
北見氏:
ええ,使えます。
4Gamer:
内政がないので,開発ができないのかと思いました。秘策は戦闘前に自由に選ぶことになるのでしょうか。それとも対戦で何かポイントを貯めて,購入するという形に?
北見氏:
戦闘前に自由に選びます。ただし,最初からすべて使えるわけではなく,対戦をこなすことで徐々に使える秘策が増えていく予定です。
4Gamer:
なるほど。では,オンライン対戦版のサービス形態はどうなるのでしょうか。クライアントのダウンロードがあるということで,パッケージのような売り切りタイプとは,また別だと思うのですが。
北見氏:
基本プレイ無料のアイテム課金制に近いものになります。もちろんクライアントは無料で配布する予定です。
4Gamer:
オンライン対戦版では,プレイヤー参加型のテストは行うんですか。と,その前にそもそも「三國志12」の発売時期は決まっているのでしょうか。
北見氏:
「三國志12」自体の発売は,2012年春を予定しています。オンライン対戦版のテストも行う予定です。
4Gamer:
なるほど。では改めてオンライン対戦版のスケジュールなどを教えてください。
北見氏:
オンライン対戦版のクローズドβテストの規模や時期などはまだ調整中です。ただ,発売予定が春なので,そんなに遅くはないと思います。
4Gamer:
分かりました。では,最後に4Gamer読者に向けてメッセージを頂ければと思います。
北見氏:
「三國志12」は,幅広い方にプレイしていただこうと,PCのスペック的にも,ゲームの中身的にも意識して開発しています。前作までたっぷり遊んできていただいた方はもちろん,随分と「三國志」シリーズに触ってないという方でもスッと入って楽しんでいただけるようになっていると思います。これから制作の追い込みをかけるところなのですが,完成した暁にはぜひプレイしてみてください。
とかく,シリーズを重ねたゲーム,とくに数値や項目といった要素がガンガン増えていきやすい戦略SLGは,複雑怪奇なシステムになりやすい。パッと見で何がなんだか分からず,それだけでパスという経験を持つプレイヤーもいるのではないだろうか。
「三國志12」は,一見すると先祖返りしたような印象を受けるが,それは遊びやすさと快適さを選んだ結果なのだろう。一方で,正統進化というべき新要素も加わり,まさにナンバリング最新作という様相だ。
また,2012年に実施される予定のオンライン対戦版のクローズドβテストでは,戦闘のみではあるが「三國志12」のシステムに一足早く触れられる機会になりそうだ。今後,公式サイトや4Gamerでテストの予定や続報が公開されていくはずなので,熱烈な三國志シリーズファンだけではなく,本作に興味を持った人は,今後の情報に注目しておこう。
「三國志12」公式サイト
- 関連タイトル:
三國志12
- この記事のURL:
(C)2012 コーエーテクモゲームス All rights reserved.