プレイレポート
6年ぶりのシリーズ最新作「三國志12」のプレイレポートを掲載。曹操で天下統一を目指してみた
魏国崩壊へのカウントダウン
劉璋との戦争を最後は降伏勧告で締めた曹操軍だったが,このとき,すでに袁紹との同盟が切れていた。そこで,こちらから最高の外交官を次々に送り込んで最高の条件を提示するも,答えはすべて「否」の一言。
文官の質では間違いなく天下一品の魏にして,この対応とあれば,たぶんこれ,何をやっても無駄ということだろう。
とはいえ即座に戦争,ということにはなっていない。袁紹の軍勢はトータルでだいたい曹操軍の2倍弱というところだが,三國志12では「攻めこまれた側は,攻めこまれた領地に隣接する領地から援軍が出せる」というルールがあるため,見た目ほど数の有利は効いてこない。攻撃側も援軍を随伴させられるのだが,本軍に比べると持久力に劣るため,いささか扱いが難しいのだ。
というわけで,機動防御をちらつかせて大軍を押しとどめるという,なんだか別のゲームでもよくやったなあと思うシチュエーションに入ったのだが,我が曹操軍には2つの問題があった。
1つは,劉璋を滅ぼしたとはいえ,江南をほぼ統一し終えた孫策が健在であること。孫策もまた袁紹のプレッシャーに対し軍主力を北方に配置することを強いられているが,かといって呉の荊州側は「柔らかな横腹」と言えるほど緩い防御体制ではない。負けないだろうし,いつかは勝つとも思うが,それなりに時間がかかる。
しかるに2つめの問題は,今の曹操軍には時間がないということだ。
三國志12では,秘策のなかに「絶道の策」というものがある。これは簡単に言えば「敵は隣接エリアから援軍が呼べなくなる」というもので,これを使われると機動防御が成立しなくなる。そして実際,袁紹は絶道の策を使ってこちらの領地をひとつ奪っている。
絶道の策を作るのには時間がかかるので,作りおきでもない限り(最大3つまで貯めておける)連打される危険性はないが,袁紹はこの策を連続的に作成しはじめており,このままでは単純計算で(今の支配エリア)×(絶道の策を作るのに必要なターン数)で魏の命脈は途絶えてしまう。
1つの可能性として,一度大きく戦略的に撤退,防御しやすいように国境線をデザインしなおすという方針はあり得る。だが魏の領土は魏兵の血によってあがなわれた聖なる大地,一寸たりとも譲るわけにはいかぬ――というのは冗談としても,後退しなければならないエリアに事実上の首都が含まれるため,首都機能を再建することまで含めると確実に負けの一手でしかない。
本拠地を捨ててゲリラ戦というのは,どこかで味方の正規軍が勝つことを前提とした戦術であって,正規軍がゲリラ化してもその先に未来はないのだ。
もう1つあり得るとすれば,呉と同盟して袁紹にあたるという方針だ。しかし,いわゆる弱者同盟で強者に対抗するというのは,歴史的に見てうまく行ったためしがないので,これも却下。
では,何か良策はあるのだろうか?
「絶道の策」がすべての鍵
数で劣る曹操軍が袁紹軍に勝つためには,部隊の質を向上させるか,より多くの兵士を揃えるかの,だいたい2つに絞られる。
質を向上させるというのは魅力的な考え方で,軍隊の攻撃力や防御力を向上させる研究を重ね,配下のきら星のような有力武将を結集させて決戦を挑めば,パワーバランスを大きく傾けることができるはずだ。そう,あたかも7800騎が2万8000騎を防ぎきったように。
しかしこの案には2つの問題がある。
1つは,軍隊の攻撃力や防御力を向上させる技術を開発する建物が,魏の暫定首都にあるということ。暫定首都は袁紹領の国境線にあり,黄河の向こうでは20万騎がこちらの様子をうかがっている。たとえ暫定首都が陥落しても劉璋が使っていた技術開発施設を使うという手があるので,完全には詰んではいないのだが,国家の計略としてはあまりにグレーな未来図だ。
もう1つは,袁紹軍にもそれなりに優秀な武官が揃っているということ。顔良/文醜は普通に脅威だし,なにより呂布が袁紹の下にいる。もうゲームも中盤戦過ぎであり,滅んだ国家の優秀な人材の中には,袁紹の配下になった者も少なくない。「うちのほうが武将の質は高い」というのは,願望成分が強すぎる。
ついでにスペイン宗教裁判書方式でもう1つ問題を追加しておくと,この手の「一大決戦で敵軍を撃滅することによって戦争に勝利する」という決戦主義は,個人的にはミッドウェイ海戦を思い出してしまっていかん。
となると「袁紹より多くの数を揃える」という話になるが,ほぼダブルスコアで負けている兵力に,どうやったら追いつけて,追い越せるというのか?
いや,方法はある。三國志12では,あえて悪い言葉を使えば,「兵隊は畑で採れる」。より正確に言えば,ターンごとの兵隊の生産数は都市に建てた兵舎の数とレベルに比例する傾向にある(正確にはもっといろんな係数があるが)。
つまり,より多くの都市を制圧し,より多くの施設スロットを得て,より多くの兵舎を建てれば,どこかで袁紹の大軍を超える大軍が養成できる。極論すれば,土地の広さこそが,兵士の数なのだ。
幸い(かつ不幸)なことに,袁紹はその軍隊の矛先をこちらに向けている。だからこちらがあくまで機動防御に徹し,その背後で別働隊を動かして江南を完全に支配していけば,やがて魏は支配する土地のエリア数で袁紹を圧倒的に上回り,従って曹操軍は袁紹軍を数で上回るだろう。
ということで,問題は振り出しに戻るのである。機動防御が可能な限り,数学的に見て曹操軍はいつか袁紹軍を打倒する。だが機動防御を否定する秘策が量産体制に入っており,これによって削られる魏のリソースは,その間に魏が新たに得るリソースよりも大きい。
つまりは,機動防御が否定される「絶道の策」,これが否定できれば,中華の大地は曹操のものとなるのだ。
秘策には秘策をもって制せよ
ということで,目を皿のようにして秘策リストを漁ることにした。
策を返すには策と決まっている,というだけではない。秘策がカードの形をしている以上,ゲームデザイナーは「カウンターとなるカード」を考案するはずだ。カードを使ったゲームとはそういうものなのだ。
そして案の定,「封印の策」なる秘策が見つかった。その効果は激烈で,「隣接する国が秘策を発動できなくなる」という,現在の曹操軍にとっての理想をそのまま文字にしたような秘策である。「封印の策」を作り続ければ,永遠に「絶道の策」は発動しないのだ。
が,さすがに世の中そんなに上手くいくはずもなく,「封印の策」の効果時間は,「封印の策」を作る時間よりも短い。どこかで必ず,「絶道の策」が発動されるタイミングがやってくるというわけだ。
ところが,秘策には「献策」を受け入れるというオプションが用意されている。これは,軍師達がさまざまな追加効果を(ご予算の提示込みで)提供してくれるというシステムである。
そして「封印の策」の献策の中には,「封印の策」の効果時間を延長するという,これまた要求仕様ど真ん中の献策があったのだ。普通の軍師では成功率が怪しいが,そこは天下の曹操幕僚,郭嘉に荀彧に賈クと,うちで無理ならどこに行っても無理というスタッフである。
かくして危なげなく「封印の策」は生産され,実行され,袁紹は歯ぎしりし,すかさず再生産に入り,一方で実行中の「封印の策」は献策によって延長される。そして献策による延長タイムの経過を待たずに次なる「封印の策」が実行され,そのたびに袁紹は歯ぎしりをし続けるというループが完成する(ちなみに,袁紹が歯ぎしりをするというのは筆者の脳内設定ではなく,そういう演出が入るのだ)。
しかしまあ,空間と時間の管理というストラテジーゲームの基本中の基本を,違う角度から揺るがす能力である「秘策」が,まさにその強力さゆえに同じ「秘策」で潰されるというのは,実にいたたまれない気持ちになってしまう。でも,それをやれば勝てるんだからやりますよ。やりますとも。ええやります。
そして始まる泥仕合
秘策という「ジョーカー」がゲームから排除された今,メジャープレイヤーである袁紹/曹操/孫策は,純粋にその「支配領域の広さ」で格付けされることになった。
もともと最大面積を有していた曹操としては,一番面積の狭い(=一番弱い)孫策を食い,自分の面積に彼の面積を加えていくのが順当な策となる。そしてその順当さに従った結果,孫策/孫権はまたたく間に血祭りとなる。孫静とかまで出てきたけど,捕まえたら全員斬りましたから。
この段階において,人材はもう不要。むしろ有能な人材が袁紹陣営に行くほうが,デメリットとなる。なので,斬れる人物は斬っておく。孫家に恨みはないが,「孫家は無人化されるべき」という判断は,最適化の結果なのですよ。
江東を完全に平定した段階で,曹操軍の総数は袁紹軍とほぼイコール。袁紹軍の武官は呂布/顔良/文醜までは超一線級だが,そこから先が微妙に追いつかず,曹操軍と袁紹軍との間にある戦線が広がれば広がるほど,戦線全体における「ヤバイ武将の密度」は落ちていく。「戦線のどこで攻勢をかけるか」という,戦争の主導権は,曹操軍が完全に掌握することになった。
曹操軍の精鋭は,気がついたらいつのまにか配下にいた天下無双の関羽を筆頭に,特技が暴力的に強く能力のバランスが良い徐晃,中華最強の弓兵隊を率いる夏侯淵,許チョと典韋の脳筋二枚看板までがスタメン。主軍は6人構成なので,あと1人はユーティリティ・スロットにしていたが,袁紹の軍に初めてこちらから突っかけるときはベストを目指すということで,司馬懿を入れることにした。曹操本人のほうがもっと良かったのだけど,事故とかあったら嫌だし。
暴力的なまでの数の集中と,人間の形をした暴力×6が,「絶道の策」の後押しを受けて押し寄せた(こちらが優位にたったので「封印の策」ループは終了)ことで,袁紹軍の前線が崩れる。
各エリアにつき10万〜20万の規模で均衡していた戦線の一部に大穴があけば,後は作業に近い。「ランチェスター,ランチェスター」と魔法の呪文を唱える(詳しくは「ランチェスターの法則」を参照)と,河北で栄華を誇った袁家はあっという間に滅びていったのである……。
関羽vs張遼の名シーンがいまここに再現。史実通り,関羽の勝ち |
はいはい,ランチェスターランチェスター |
天下統一を果たしてひとりごちる
戦闘AIは対応を待ちたいところ
さて,こうして曹操軍を勝利に導いたわけだが,「三國志12」をプレイしてみると,古典的な陣取りシミュレーションゲームとして,キッチリと遊べると感じられた。ただ,気になる部分が多いというのも正直なところだ。
その1つが戦闘部分になる。記事中でも指摘した戦闘AI(委任)だが,十分な戦力差があったはずなのに,理不尽な動きで敗北する我が部隊を見るのはなんとも切ない。これであれば,「AIに委任」ではなく,「戦闘をスキップ(結果は抽象判定)」でも良かったのではなかろうかと思えてしまう。
また,武将の人数やゲームバランスについても,大なり小なり意見したいことはある。もっともシミュレーションゲームにおけるゲームバランスは,「適度にバランスが悪い」状態のほうが面白かったりするし,個人の趣味を入れ込ませやすい領域だ。武将人数などの各種データの仕様については,本作はオンラインでのパッチサポートが行われているため,時間が解決してくれる問題だろう。願わくば「シヴィライゼーション5」のAIがのちにパッチでブラッシュアップされたように,「三國志12」の戦闘AIも改善されることに期待したいところだ。
「三國志12」公式サイト
さて,ここで編集部からのお知らせだ。
武将人数の改善のため,といったわけではないのだが,今回4Gamer編集部からの刺客として,ある三国時代の武将4人を「三國志12」の本編(オンライン版にも登場)に送り込むことが決定した。その4人のデータを掲載するのでじっくりと確認してほしい。どれも曲者揃いの列伝を持つ武将。どのように戦うのか,もしくは使っていくのか今から想像しながら,配信開始(2012年6月20日の予定)を楽しみに待っていてほしい。
■范彊(はんきょう)
■張達(ちょうたつ)
■キ覧(きらん。キは女偏に爲)
■戴員(たいうん)
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