プレイレポート
Blizzardの新作「Heroes of the Storm」は,MOBA初心者にオススメできる入門タイトル。集団戦までの導線が巧妙に仕込まれた本作のプレイレポートをお届け
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4Gamerの読者には釈迦に説法かもしれないが,現在盛り上がりを見せている「Dota 2」や「League of Legends」(以下,LoL)といった,MOBA(Multiplayer online battle arena)と呼ばれるジャンルの源流は,2002年にBlizzardから発売されたRTS「Warcraft III」のカスタムマップ「Defense of the Ancients」にある。ユーザーによって作られたものとはいえ,対戦ゲームの新たなフォーマットの誕生に寄与したBlizzardではあったが,その後は“DOTAの商標問題”(関連記事)といった紆余曲折もあり,MOBAジャンルではこれまで後手に回ってきた。そんなBlizzardが本腰を入れて世に送り出すMOBAということで,気になっていた読者も少なくないのではなかろうか。
……とまあ,いろいろと並べ立ててみたものの,筆者はBlizzardの作品にはあまり明るくない。なので,本稿では,本作におけるMOBAとしてのバトルデザインを中心に,クローズドβテストのプレイレポートをお届けしよう。
「Heroes of the Storm」公式サイト
HotSってどんなMOBA?
初めに,本作のMOBAとしてのつくりを解説していこう。まず,見下ろし視点の画面レイアウトや,Q/W/E/Rによるスキル発動,マウスによる操作体系といった部分は,現在主流となっているDota 2やLoLとほぼ同じだ。
試合も5人対5人のチーム戦となっており,先に相手の陣地にあるコアを破壊すれば勝ちという,MOBAとしてスタンダードなルールが採用されている。したがって,MOBAの経験者ならば,前知識がなくてもすんなりと遊べるはずだ。
プレイヤーが試合で操作するキャラクターはヒーローと呼ばれ,彼らにはそれぞれの特徴を示すロールが用意されている。ロールは,攻撃力に優れたAssassin,タフなWarrior,味方の回復や敵の弱体化を担うSupport,特殊な性質を持つSpecialistの4つに,それぞれ近接型と遠距離型を組み合わせた合計8種類。なかでもSpecialistは,攻城能力に優れるものから,倒されても5秒で復活できる特攻タイプまで,アクの強いヒーロー達が揃っている。
概要だけを聞くと,ありふれたMOBAに思えるかもしれないが,本作では1試合のプレイ時間が長くても20分程度と,ほかのMOBAと比較してかなり短めであり,バトルデザインにも大きな違いが見られる。その特徴を挙げるとすれば,以下の2つになるだろう。
1. レベルはチームで共有され,ヒーローの成長要素はレベルアップ時に選択できるTalentのみ
2. マップは複数用意され,それぞれにある固有オブジェクトの確保が戦況を大きく左右する
ここからはこれらの要素について,順を追って説明していこう。
成長要素は極めてシンプル。お金やショップの要素は一切ナシ
一般的なMOBAでは,プレイヤーキャラクターそれぞれにレベルがあるものだが,本作では経験値がチームで共有されており,その総量が一定値に到達するとチーム全体のレベルが上がっていく仕組みだ。経験値自体は,敵チームのヒーローやミニオンを倒したときや,オブジェクトを破壊したときに獲得できる。
ほとんどのMOBAには,試合中にキャラクターを強化するためのアイテムを購入するショップが存在するのだが,本作にはそれが無い。その代わり,ヒーローが特定のレベルに到達すると,スキルを強化するための「Talent」ポイントがもらえるようになっている。
例えばRanged AssassinのVallaが使うAbility「Hungering Arrow」をTalentポイントで強化する場合は,「Manaコストを30減少」か「与えたダメージの50%を吸収」のどちらかを選択することになる。また,短距離を瞬時に移動する「Bolt of the Storm」といった特殊なAbilityを獲得するのにも,Talentポイントが必要だ。
そして,アイテムショップが無いということは,もちろんお金の概念もない。一般的なMOBAならば,ミニオンにトドメを刺してお金を手に入れる「ラストヒット」という要素が存在するのだが,本作にはそれも存在しないわけだ。
ヒーローが強くなるタイミングは,チームレベルがアップしたときのみであるため,スコアの良いキャラクターが飛び抜けて強くなるようなスノーボール現象は起きない。よって,彼我の成長度合いに差が生まれにくく,逆転のチャンスがめぐってきやすい点は,本作のバトルデザインにおける大きな特徴と言えるだろう。
マップ固有のオブジェクト確保が超重要
大抵のMOBAでは,マップはモードに応じて固定されているものだが,本作には複数のマップ(本作ではバトルグラウンドと呼称される)が用意され,試合開始時にランダムで選択される仕組みだ。
バトルグラウンド内は,基本的に上中下の3レーンに分かれており,一定時間ごとに発生するクエストも用意されている。このクエストの条件を達成することで,レジェンダリーオブジェクトと呼ばれる固有ギミックを通じて,敵チームのタワーやゲート,コアといった拠点に大きな損害を与えられるというわけだ。
ここでは,各バトルグランドに用意されたユニークなオブジェクトを紹介しよう。
バトルグラウンドには,視界を確保しにくいエリアがレーンとレーンの間に存在する。MOBAプレイヤーの間でジャングルと呼ばれるこのエリアには,中立の傭兵キャンプが存在し,ここにいる傭兵ミニオンを倒せば経験値を獲得できる。また,ミニオン討伐後にそのエリアを確保することで,傭兵達が自軍に加勢してくれるのだ。
集団戦のタイミングが分かりやすため,MOBAの入門タイトルとしてもオススメ
本作ではオブジェクトの利用価値が高いため,それをめぐった集団戦が発生しやすいのが面白いところ。とはいえ,先述のとおりヒーロー達の成長具合はチームレベルに依存するので,散開して個別にレーンをプッシュし,経験値を稼ぐことも非常に重要になるわけだ。
「いつ集合して,いつ仕掛けるか」というのは,MOBAにおける駆け引きの核となる要素だが,本作では集団戦の引き金となるオブジェクトの発生スパンが短いために,チームは矢継ぎ早に選択を迫られる。
このハイテンポな駆け引きこそが,本作最大の魅力と言っても良いだろう。試合時間が短い代わりに1試合の満足度は非常に高く,だからこそ思わず連戦してしまう。
また,バトルデザインの端々から,MOBA初心者に向けた配慮がうかがえることも付け加えておきたい。オブジェクトベースであることによる戦略目標の分かりやすさ,チームレベル制によるスノーボール要素の排除,ビルド要素を集約したTalent,ヒーロー数が少ないことによる対策の覚えやすさなど,挙げていけば切りがないほどだ。
ただし,チームとして採れる戦略がバトルグラウンドごとに異なるため,それぞれに用意されたギミックを把握しておかないとチームに貢献しにくかったりもする。ほかの要素がシンプルである分,そこは致し方なしと言ったところだろうか。
とはいえ,短い試合時間のおかげでトライ&エラーがやりやすいので,筆者のようについ連戦してしまい,いつの間にか戦い方を覚えていた(ついでに朝になっていた)なんてこともあるだろう。
筆者としては,そろそろランクマッチの荒波に揉まれようかと考えている次第で,正直ちょっとやり過ぎている気がしないでもないのだが……それぐらい面白い対戦ゲームだということは間違いない。
まだクローズドβテストの段階ではあるものの,すでに恐ろしいほどの完成度を誇る「Heroes of the Storm」。MOBAの駆け引きに不可欠な要素をシンプルに凝縮したバトルデザインは掛け値無しに素晴らしいので,MOBAの経験者,未経験者問わず,オススメしたいタイトルだ。
「Heroes of the Storm」公式サイト
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