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「A10-7800」レビュー。「A10-7850Kと同じプロセッサ規模でTDP 65W」のAPUが持つ価値とは
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印刷2014/07/03 16:48

レビュー

「A10-7850Kと同じプロセッサ規模でTDP 65W」のAPUが持つ価値とは

A10-7800 with Radeon R7 Graphics

Text by 宮崎真一


A10-7800。OPNは「AD7800YBI44JA」だった
画像集#002のサムネイル/「A10-7800」レビュー。「A10-7850Kと同じプロセッサ規模でTDP 65W」のAPUが持つ価値とは
 2014年7月3日,AMDから,デスクトップPC向けAPUの新製品「A10-7800 with Radeon R7 Graphics」(以下,A10-7800)が発売になった。日本AMDによると,全世界に先駆けての日本市場先行投入だそうだ。
 このA10-7800は,その型番から想像できるとおり,「A10-7850K with Radeon R7 Graphics」(以下,A10-7850K)と同じKaveri世代のAPUで,A10-7850Kと「A10-7700K with Radeon R7 Graphics」との間を埋める製品となる。

 A10-7850Kは,手っ取り早く3Dゲームが動くPCを手に入れたいときの選択肢として魅力的な製品に仕上がっていたが,A10-7800はどうなのだろうか。テストにより,A10-7800のポテンシャルを確かめておこう。


A10-7850Kから動作クロックを引き下げて

65W TDPを実現したモデルとなるA10-7800


パッケージは当然のことながらFM2+
画像集#003のサムネイル/「A10-7800」レビュー。「A10-7850Kと同じプロセッサ規模でTDP 65W」のAPUが持つ価値とは
 いきなり結論めいたことを述べておくと,A10-7800は,A10-7850Kの倍率ロックフリー部分を削り,動作クロックも引き下げて,TDP(Thermal Design Power,熱設計消費電力)をA10-7850Kの95Wより30W低い65Wに下げてきたモデルとなる。「Steamroller Module」を2基搭載して4コア4スレッド仕様となるCPUコアや,「Graphics Core Next」アーキテクチャに基づいて8基の演算ユニット(=512基のシェーダプロセッサ)を集積するというGPUコアなど,基本仕様は両者で完全に同じ。CPUクロックがA10-7850Kの定格3.7GHz,最大4.0GHzから定格3.5GHz,最大3.9GHzへ引き下げられ,メモリコントローラもDDR3-2400対応からDDR3-2133対応へ引き下げられているが,それ以外の違いはない。
 表1,2は,A10-7800とA10-7850K,そしてHaswell世代の4コア4スレッドCPUである「Core i5-4670K」(以下,i5-4670K)との間でスペックを比較したものだが,A10-7800とA10-7850Kとの間でスペックが近しくなっているのがよく分かるだろう。

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 最近のAMD製デスクトップPC向けAPUは,あらかじめマザーボードのUEFI(≒BIOS)から設定しておくと,定格よりも低いTDPで動作できるよう,CPUコアクロックとコア電圧を調整する「Configurable TDP」(以下,cTDP)に対応しているが(関連記事),A10-7800でも,45W設定を行うことで,TDP 45W版APUとして使うことができるようになっている。
 面白いのは,AMDが「A10-7800を45WのcTDPに最適化した」と謳っていること。具体的にどのような最適化が行われているのかは明らかになっていないが,AMDの位置づけによれば,A10-7800は,45W cTDP設定時に,同じ設定を行ったA10-7850Kよりも高い性能を期待できるAPUということになるようだ。

 そのほか,「HSA」(Heterogeneous System Architecture)に対応する点や,プログラマブルDSP「TrueAudio」を統合している点などは,A10-7850Kとまったく同じ。A10-7800は,A10-7850K比でCPU性能とメモリ性能を若干犠牲にして,消費電力的な扱いやすさを向上させたモデルという解釈でおおむね正しいと思われる。


cTDPを利用するにはマザーボードの対応が必須

TDP 65Wに揃えたA10-7850Kとも比較


 では,テスト環境に話を移そう。今回,比較対象には前述のA10-7850Kとi5-4670Kを用意。さらに,A10-7850KをcTDPにより65Wに設定した状態(以下,A10-7850K 65W)とも比較したいと思う。
 「45WのcTDPはどうした?」と思うかもしれないが,その設定を行っていないのは,4GamerでAPUレビュー用に所持しているASRock製の「AMD A88X」搭載マザーボード「FM2A88X Extreme6+」だと,テスト開始時の最新バージョンとなる2.90版UEFIでも,A10-7800でcTDPの設定を行えなかったためだ。要は,世界市場での正式リリースを迎えていないので,マザーボード側の対応が追いついていないということなのだろう。

 余談気味に続けると,AMDはA10-7850Kのリリース時に,全世界のレビュワーに対してFM2A88X Extreme6+(もしくはASRock製「FM2A88X-ITX+」)の利用を推奨した(関連記事)。にもかかわらず,そのマザーボードで,A10-7800の国内発売時にcTDPを利用できないというのは,正直,お粗末に過ぎると言わざるを得まい。
 せっかくA10-7800の国内先行発売を実現したのであれば,せめて主要なマザーボードベンダーには対応UEFIの準備を要請すべきだったろうし,日本AMDの調整力には苦言を呈したいと思う。

 話を戻すと,今回,テストには,4Gamerで独自に用意したPC3-19200対応のRadeon Memory「Radeon R9 GAMER SERIES R938G2401U1K」を用いる。A10-7850KはデュアルチャネルDDR3-2400に対応するのでそのまま,A10-7800とi5-4670KではDDR3-2133,DDR3-1600にそれぞれ設定を引き下げて用いることとした。
 そのほかテスト環境は表3のとおり。用いたグラフィックスドライバ「Catalyst 14.6 RC」(※ドライバインストーラ上の表記は「RC2」)「15.33.22.64.3621」は,いずれもテスト時の最新版だ。

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 テスト内容は4Gamerのベンチマークレギュレーション15.2準拠。ただし,APUに統合されたGPUコアのスペックは“デスクトップPC向け単体GPU換算”でエントリー市場向けかそれ以下となるため,「高負荷設定」およびそれに準じる設定のテストは行わず,また,「エントリー設定」が用意されたものは積極的にエントリー設定を用いることとなる。「3DMark」(Version 1.3.708)では,同じ理由から「Fire Strike」のExtremeプリセットを省き,代わりに「Sky Diver」を利用する。
 解像度は1280×720ドットと1600×900ドットにしたかったのだが,AMDが1920×1080ドット環境での利用を訴求していることから,今回は3パターンでテストを行う。

 ゲームのテストについて補足しておくと,A10-7800とA10-7850KはAMD独自のグラフィックスAPI「Mantle」に対応しているため,Mantleに対応した「Battlefield 4」(以下,BF4)では,DirectX 11版だけでなく,Mantle版でのテストも実施する。
 テストにあたっては,ゲームのコンソールから利用できる標準機能「PerfOverlay.FrameFileLogEnable 1」を用いて1分間のフレームレートからスコアを算出することにした。詳しくはMantle版BF4のテストレポートを参照してもらえれば幸いだ。

 最後に1つお断りしておくと,TDPの低下が,本当に動作クロックの引き下げ「のみ」によってもたらされたのかを調べるべく,今回は基礎テストツールを使ったテストも行いたかった。しかし,「CPU性能を見るベンチマークでは,APUの性能を適切に測定できないため,AMDから入手したサンプルでは『Cinebench』『Sandra』『Super Pi』などのテストを行わないように」というお達しが出ているため,Sandraを実行することはできない。この点はご了承のほどを。


A10-7850K比で90〜95%程度の性能を見込めるA10-7800。65W動作時ならA10-7850Kより速い


 というわけで,テスト結果を順に見ていきたい。グラフ1は3DMarkの結果だが,A10-7800はA10-7850K比で93〜95%程度のスコアを示し,A10-7850K 65Wに対しては8〜11%程度のスコア差を付けている。要するに,TDP 65Wでの利用が前提であれば,A10-7850KよりもA10-7800を選んだほうがいいというわけだ。cTDPのテストを行えていないのが本当に残念だが,A10-7850Kよりも低いTDP値での動作に最適化されている可能性は確かにありそうである。
 i5-4670Kに対しては,Sky Diverで50%以上のスコア差を付け,完勝となった。

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 そんな3DMarkのSky Diverにおけるスコアの詳細を見たものが表4となる。
 ここで注目したいのは,CPUテストとなる「Physics test」の結果だ。Sky DiverのPhysics testは,フレームレートが30fpsを下回らない限り,より負荷の高いテストへと移行していくのだが(関連記事),ここでは「96 threads」へ到達できたのがi5-4670Kのみとなった。要するに,CPU性能では文字どおり,i5-4670KがKaveriより一段上というわけである。

 ちなみに,A10-7800とA10-7850Kで,Physics Score,そして「48 threads」のスコアにそれほど大きな違いはない。

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 実際のゲームアプリケーションから,まずはMantleに対応したBF4のスコアを見てみる(グラフ2)。
 ここでA10-7800のスコアはA10-7850K比で約89%。3DMarkと比べてスコア差が広がっているが,ここでスコア差が生じた理由は,CPUコア性能の違いか,メモリコントローラ性能の違いか,そのどちらかだろう。この点は後段であらためて考察するが,A10-7800とA10-7850K 65Wのスコア差が3〜4%程度に縮まっているのも,同じ理由によると思われる。
 なお,Mantle有効時と無効時でA10-7800のスコアを見ると,前者と後者の差は1〜5%程度。効果は間違いなくあるが,劇的かというと微妙な感じだ。

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 BF4よりもさらに描画負荷の高い「Crysis 3」。そのスコアをまとめたものがグラフ3だが,ここでは高解像度になるほどA10-7800とA10-7850Kのスコア差が開いている。なので,BF4とは異なり,ここでは明確にメモリコントローラのスペックがスコア差を生んだと言えるだろう。
 A10-7850K 65Wに対するA10-7800のスコアは104〜106%程度,対i5-4670Kでは146〜153%程度。ただ,全体としてプレイアブルなフレームレートが出ていないことも指摘しておく必要はあると感じた。

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 描画負荷の低いFPS代表として用いている「BioShock Infinite」の結果がグラフ4となるが,A10-7800は,解像度を問わず,A10-7850Kの約91%というスコアに落ち着いている。このスコア傾向はBF4と同じなので,BF4とBioShock Infiniteでは,CPUコアクロックの違いがスコアを左右していると見ていいのではなかろうか。
 A10-7800とA10-7850Kでは,前者が3〜10%程度高いスコアを示した。

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 グラフ5の「The Elder Scrolls V: Skyrim」(以下,Skyrim)だと,A10-7800は,1280×720ドットでA10-7850K比で約90%のスコアとなるところが,高解像度になるとスコア差を詰め,1920×1080ドットでは約95%となった。
 ただこれは,高解像度環境でA10-7800が良好なスコアを示しているというわけではなく,描画負荷の高まりとともに,3DMarkにおけるギャップと同じレベルに落ち着いてきているという理解のほうが正しいだろう。

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 「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編」の結果がグラフ6で,解像度によらず,A10-7800のスコアがA10-7850K比で90〜91%程度というのは,BF4やBioShock Infiniteと同じ。A10-7850K 65Wより高いスコアを示している点は,ここまでに取り上げたタイトルと同じ傾向だ。
 A10-7800のスコアが,1280×720ドット解像度で,スクウェア・エニックスが「非常に快適」とする指標7000を超え,1600×900ドットでも上から2番めの指標である「とても快適」の枠内(5000〜6999)に留まっている点も押さえておきたい。

※グラフ画像をクリックすると,平均フレームレートベースのグラフを表示します
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 「GRID 2」のテスト結果がグラフ7で,ご覧のとおり,APUの2製品3条件ではスコアに大きな違いがない。GPU性能勝負になるテスト設定だと,A10-7800とA10-7850Kのスコア差はほぼ無視できるレベルになる可能性があるわけだ。

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アイドル時の消費電力はi5-4670Kといい勝負

A10-7850K比では21〜35W低い


 動作クロックを抑えることでTDPを下げてきたA10-7800だが,実際の消費電力はA10-7850K比でどれだけ下がったのか。ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いて,システム全体の消費電力で比較してみよう。
 テストにあたっては,ゲーム用途を想定し,無操作時にもディスプレイ出力が無効化されないよう指定したうえで,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点を,タイトルごとの実行時とした。

 その結果がグラフ8で,アイドル時の消費電力はA10-7800がA10-7850Kを下回り,i5-4670Kとの差を詰めた。一方,アプリケーション実行時だと,A10-7800はA10-7850K比で21〜35W低いスコアを示した。少し乱暴に言ってしまうと,TDP分の違いがそのまま消費電力の違いに表れたイメージだ。
 ただし,A10-7850K 65Wと比べると,消費電力は若干高め。マザーボードが異なるので直接の横並び比較は行えないが,i5-4670Kと比べてかなり高いことも見て取れる。

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より安価なゲームPCの選択肢としてはアリ

A10-7850Kとの価格差が取捨選択のカギか


 A10-7800の性能はA10-7850Kのおおむね9割であり,A10-7850Kの下位モデルとして順当なところに収まったといえる。最大のウリでもあるcTDPを利用できないマザーボードが存在するという大きな問題はあるが,世界市場で発表されるころには対応も進むと思われるので,これ自体がA10-7800の価値を落とすことはないだろう(※AMDへの評価はまた別の話)。

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 気になる価格は1万7980円(税別)と発表されている(関連記事)。単純計算だと税込価格は1万9418円だが,A10-7850Kの実勢価格が1万8700〜2万1000円程度(※2014年7月3日現在)なので,1万7000〜1万9000円くらいの価格で当初は出回るのではなかろうか。
 あとは,消費電力と価格差が取捨選択のカギとなりそうだ。1000円2000円しかコストが変わらないのであれば上位モデルを選ぶという人は当然いると思われる一方,性能が大して変わらないなら,少しでも安価に,あるいは少しでも低い消費電力のAPUを選びたいという人もいるはずだからだ。

 いずれにせよ,A10-7800であれば,A10-7850Kには一歩譲るものの,ローエンドモデルの単体GPUを大きく上回る,エントリークラスの3D性能は確実に手に入る。その点だけは間違いない。

■どういうわけか舞妓さんがAPUの販促にやってきた

 発売日である7月3日には,A10-7800の販売開始を記念して,秋葉原のPCパーツショップ4店舗で「APUおいでやすキャンペーン」が開かれた。京都の祇園から招かれた舞妓さんと一緒に撮った写真をTwitterやFacebookに投稿すると,A10-7800を含むAPU製品が抽選で当たるという,なんだかよく分からないイベントである。
 「秋葉原に舞妓さんが!」という話題がTwitterなどで飛び交ったうえ,特設スペースで「投扇興」(とうせんきょう,扇子を投げる遊び)を行って的に当てるミニゲームが開かれたこともあって,平日にもかかわらず,会場となった店舗の前には多くの人が詰めかけていた。


京都祇園から舞妓さんがA10-7800の発売記念イベントにやってきた。一緒に写真を撮ってTwitterに投稿するとAMD製品が抽選で当たるというものだ。ちなみに右の写真で舞妓さんと一緒に写っているのは日本AMDの森本竜英氏
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 もっとも,A10-7800自体の説明はほとんどなく,これが新製品のアピールイベントだということが来場者に伝わったかどうかは,疑問がなくもない。

AMD A-Series APU公式情報ページ

日本AMDのキャンペーンページ

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