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[GDC 2015]日本の職人芸を見た。スクウェア・エニックスのスタッフが語るJRPGのオーディオ技術
スクウェア・エニックス サウンドディレクター 矢島友宏氏 |
スクウェア・エニックス オーディオプログラマー 西松優一氏 |
最初に登壇した矢島氏は,ファミコンからPS3/Xbox 360世代までの,JPRGにおけるオーディオの歴史を紹介した。
ファミコン時代のJRPGは,ハードウェアの制約から,グラフィックスが貧弱だったため,音楽がプレイヤーをストーリーに引き込むための重要な役割を担っていたという。曲調としては感情を刺激するメロディアスなものが多くを占めていたほか,収録される曲数も,当時のゲームとしてはかなり多かったそうだ。
PlayStation世代になると,録音したサウンドを使えるようになり,JRPGの音楽は様変わりした。ムービーが採用されたことで,ミキシングが開発の作業に加わったほか,効果音も質と量の両面で重要視されはじめる。バトルボイスが加えられたのもこの世代で,矢島氏は「PlayStation世代では,見た目から何から,すべてが変わってしまった」と振り返った。
続くPlayStation 2/Xbox世代では,フルボイス化されたゲームが登場したほか,複雑になったユーザーインタフェースに対応するため,効果音の数もさらに多くなり,JRPGではほかのジャンルのタイトルの約3倍ものサウンドを収録していたという。デベロッパはそれらを効率的に扱うため,社内ツールの開発を積極的に行うようになった。
映画会社の手法も使用されるようになったほか,初のサラウンド対応タイトルもリリースされるなど,矢島氏は「みんながより高音質のサウンドを求め始めたのは,このあたりだったと思う」と振り返った
PlayStation 3/Xbox 360世代では,ムービーの代わりにリアルタイムレンダリングのカットシーンが用いられるようになったものの,JRPGに必要なサウンドの数は増え続け,作業の手間を減らすため,効果音などに自動生成技術が用いられるようになった。また,前世代で初対応したサラウンド対応がこの世代では一般的になったが,日本では設置スペースの問題からか対応する再生機器があまり普及しておらず,それほど反響はなかったとのことだ。
1つは,膨大な数のサウンドトラックが用意されており,それらが絶え間なく流れること。2つ目は,テクノ,ロックなど,さまざまなジャンルの音楽が使用されるものの,好まれるのはオーケストラによる演奏で,たいていの作品で使われること。3つめは,収録曲の大半が,感情に直接訴えてくるような音楽で構成されていることだ。
確かに,3つともプレイヤーをストーリーに没入させるためには有効だと感じられる。
今回のセッションでは,その特徴の1つである「絶え間なく流れる音楽」を実現しているシステムの仕組みも紹介された。それが下のスライドだ。
これだけ見てもちょっとイメージが湧かないかもしれないが,「Layer」にはさまざまなシーンのBGMが割り当てられ,上位レイヤーのBGMが流れている間は,下位のBGMが一時停止する,という仕組みだ。「Layer2」が通常のフィールド曲,「Layer3」がバトル曲としてみるとわかりやすいだろう。もちろん実際のJRPGの音楽は,敵に発見された時の曲,バトルの勝利曲などが加わって,このレイヤーはさらに多くなる。
続いて西松氏が紹介したのは,JRPGにおける効果音だ。こちらは「複雑なユーザーインタフェースへの対応」「環境音の作り込み」「作業量低減を目的とした自動化」が特徴となっている。
西松氏が最後に紹介したJRPGの特徴は「会話」だ。ここでは,モーグリの「○○クポ」というセリフに代表される,会話のキャラクター化や,豊富なバトルボイス,声優の果たす役割の大きさなどが挙げられた。
これはバトルボイスの仕組みを図式化したもの。通常,有利,不利という3つのボイスセットが用意されており,状況に合わせた声が流れる |
セッションの最後で矢島氏は,「今までJRPGは,プレイヤーを少々強引にストーリーへ引き込むような演出をしてきたが,今後は欧米のRPGに少し近づいて,プレイヤーの行動に合わせるような演出が増えてくるのではないか」と予測した。
膨大な数のサウンドを細かく管理したり,効果音の自動生成を実現させてしまったりといったところに,JRPGを開発するスタッフの「職人魂」を感じたセッションだった。矢島氏によれば今後は欧米のRPGに近づくかもしれないということだったが,豪華で至れり尽くせりのJRPGサウンド文化も残ってほしいと思う次第だ。
- 関連タイトル:
LIGHTNING RETURNS: FINAL FANTASY XIII
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(c) 2013 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved. CHARACTER DESIGN: TETSUYA NOMURA
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