インタビュー
Hey,ピーター。「WoTB」で世紀末すぎる戦車を作ったってのは君かい?
そしてなんでも,期間中に入手できる車輛が“かなりブッとんだ戦車”になると聞きつけたため,今回はすぐさまデザイン担当へのメールインタビューを試みた。その者の名はどうも,ピーター・パウンド氏(Peter Pound)と言うらしい。
みなさんは存じているだろうか? 彼が名実ともに世界的アーティストと称される人物であることを。いいや,知らなくても問題はない。もしも聞き覚えがないとしても,彼の手がけた制作物をすでに目にしている人はごまんといるはずだから。
彼の昨今の大仕事を挙げると,映画好きなら誰もがご存じであろう,世界中の平均IQを前年比で言って10くらい下げたのではないのかと疑われている,ジョージ・ミラー監督による渾身の大作映画「マッドマックス 怒りのデス・ロード」(原題,Mad Max: Fury)に登場した,車両デザインがそのひとつだ(※約150台のうちのいくつか)。
そして,そんな彼がなぜ,戦車を“こんな風”にすることになったのか。
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事の真相を探るのは,一筋縄ではいかなそうである。制作者の人格と制作物の内容を結びつけるのはナンセンスとしても,ソードオフしたほにゃららのひとつでも懐に隠していて不思議はない。それくらいの猜疑心を抱いてしまう。人間とは弱い生き物なのだ。ゆえに先手を取られぬよう,こちらも“マッドな雰囲気”で臨まねばならなかった。
というわけで本稿は,ピーター氏にメールインタビューをしたのち,「顔合わせをしてたらきっとこんな雰囲気になってただろう」というフィルタをかませたものとなる。ご高覧の際はぜひとも,知能指数を下げて読んでほしい。V8を讃えるときみたいにね。
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改善の余地を残さぬ,世紀末の戦車
4Gamer:
遠い日本からHallo。君がマッドマッ……ゴホン! 「WoTB」の今年のハロウィン戦車を作ったってのかい?
ピーター・パウンド氏(以下,ピーター氏):
ええ,そうです。私はピーター・パウンド。これまで28年ほど,あなたの言うところの海外映画などで,グラフィックスを中心とするアーティストとして活動してきました。
4Gamer:
なに? 28年だって? Oh,Shit。かの作品が衝撃的すぎて,口を開けば右も左もマッドマックスと言っちまう,ニュージャックみたいな言動をどうか許してほしい。
ピーター氏:
お気になさらず。私にとってもマッドマックスは最高の映画ですから。
4Gamer:
そう言われちゃあ,聞かないわけにはいかないな。仲間うちから“筋金入りのカー・マニア”と呼ばれていたらしい君は,あの作品でどんな体験をしたんだい。
ピーター氏:
はじまりは作品のイメージを固めるため,数枚のスケッチを描くことになった1997年のことでした。しかし,この作品はその後,生命維持のためのプラグを抜かれ,長い年月を経てから息を吹き返します。再開後もさまざまな課題に直面しながら,目の前の壁を乗り越えるべく,6年の歳月を費やしました。今でも鮮明に思い出せます。あれは,私の人生の中にずっと色濃く残り続ける,素晴らしい体験でした。
4Gamer:
一生のうちに“そう言える仕事”に出会えるなんて,羨ましいかぎりだぜ。
ピーター氏:
もちろん,今回のWorld of Tanks Blitzもそのひとつですよ?
4Gamer:
カマすじゃないかピーター! それじゃあ,そいつがリップサービスじゃないってことを教えてもらおうか。まずは,君とWargamingの馴れ初めから聞かせておくれよ。
ピーター氏:
最初は,World of Tanks Blitzの開発チームからのアプローチでした。彼らはどうも私のスタイルが,今期のハロウィン向けのイベントモードだと言う「Mad Games」にピッタリと考えたようなのです。
4Gamer:
Mad Gamesねぇ。おっと,Stay。説明はいらないよ。聞いてのとおり“マッドなゲームモード”なんだろうさ。それで君はどう思ったんだい?
ピーター氏:
絶好の機会。逃すことはできないなと。
4Gamer:
驕ることなかれ。そういう謙虚さをもってキャリアを積み重ねていくクリエイターは,それだけで尊敬に値するよ。
ピーター氏:
いえいえ,勘違いしないでください。これは謙虚さではなく,「私の創造力を源に,世紀末の荒廃した世界に相応しい戦車を生み出したい」という純粋な願望です。私が制作した架空の戦車がバーチャルな戦場に現れるんですよ? まったく,素晴らしいことじゃないですか。
4Gamer:
Haha! ただ魂に火を点けられただけだってのか! まぁ,いくらゲーム業界と言えども“世紀末な戦車の創作”なんて案件は,そうあるもんでもないだろうしな。
ピーター氏:
私にとっても初の試みでしたが,全力で応じさせていただきましたよ。
4Gamer:
謙遜しなくていい。今となっちゃあ,君以上のライトスタッフは世界中のどこにもいないよ。しかし,戦車への興味は元からあったのかい?
ピーター氏:
ええっと,まず,私の生まれ故郷であるオーストラリアでは,戦車を見られる機会がほとんどありません。そのため,私自身も映画で目にした戦車がほぼすべてです。
4Gamer:
「センチネル戦車がオーストラリアに帰ってきたぜ! やったぜ!」なんて言えるのは生粋の奴らだけだろうから,仕方ないさ。ときに映画と言うと,どの作品だろう。
ピーター氏:
スティーヴン・スピルバーグ監督の「プライベート・ライアン」です。作中に登場した戦車と,その役割が大好きで――。
4Gamer:
おいおい,それ以上はよしてくれ。俺が悪かった。今日は「ピーターと語る名作映画」じゃないんだぜ? あんまり心をくすぐってくれるな。
ピーター氏:
好きなんですよ,映画が(笑)。
4Gamer:
金曜ロードショーの解説枠に推薦しとくよ。それじゃあ,話を進めよう。君はWoTBで“世紀末な戦車”を描くことになり,どんなコンセプトを立てたんだ。
ピーター氏:
ハロウィンイベントということもあり,デザイン以上の特別感を与えられるようにと想いを込めました。具体的には「現代の文明は滅びた」という想像を元に,その後の荒廃した世界と環境,つまり“サブカルチャー的な世界観”をモチーフとし,インスピレーションのディティールを固めていきました。
4Gamer:
おっと,それなら話は簡単そうだ。君はハロウィンをどう過ごす?
ピーター氏:
私ですか? 私なら,友人たちとよくパーティーをしていますね。
4Gamer:
なら,騒いだあとの荒れ果てた自宅を再現すればいいのさ。ワイフの表情を見れば,一発で終末気分ってなもんだ。
ピーター氏:
それもひとつのインスピレーションかもしれませんね(笑)。あと,今回は純粋に奇抜なデザインだけを追い求めるだけではなく,「戦車として動作すること」を守る必要がありました。無理のないアクションを保証する,ゲーム的な設計というわけです。
4Gamer:
カボチャの口からAP弾,なんてやったらWargamingも“おこ”だしな!
ピーター氏:
地形を走行させられるなどの基準を満たし,ゲーム上の役割を完遂しつつ,そのうえでオリジナリティ溢れる戦車をデザインする,そういった制作プロセスを踏むことにしました。
4Gamer:
むむむ,難題だな。「M3 LeeでKV-1を倒す方法」くらいタイトなアンサーが求められそうだ。
ピーター氏:
私もスラスラと描けたわけではありません。正確な数は憶えていませんが,準備段階からかなりの量のスケッチを作っていました。ですが――。
4Gamer:
ああ,とんでもないモンを完成させてくれたな。あと10年,この界隈で飯を食えるクリエイターがいなくなっちまうってくらいにデスペラードな逸品だ。
ピーター氏:
私としましても,ほぼ想像どおりに創作できました。今回は紙のスケッチからはじめて,PCのスクリーン上に表現するまで,ありとあらゆる段階で確認作業をさせてもらっていて……自分で言うのもなんですが,今回の戦車にはなんら改善の余地はありません。
4Gamer:
Phew! 大した自信じゃないか! でも,それも分かるよ。君の戦車の出来栄えは「男の子はG.I.ジョーが好き」ってくらい説得力のある代物になっている。
ピーター氏:
ありがとう,嬉しいです。でも,G.I.ジョーと並べられると少し照れますね(笑)。
4Gamer:
スプスやキャップのほうがお好みかい? この欲張りさんめ! それじゃ,あらためて聞いておきたい。君が今回描いた戦車は,WoTBのプレイヤーにどのようなものとして受け取ってほしいと考えているのかを。
ピーター氏:
ハロウィンらしくスペシャリティのあるものとして,今の私ができる最大限を費やした世界観のあるものとして……などと格好の良いことも言いたいのですが,なによりも「世紀末な戦車の外見」を面白がってもらえたのなら,それだけで十分です。
4Gamer:
なあに,カッコいい戦車をカッコ悪いと思う奴なんていないさ。
私が独特であることは願いです
4Gamer:
そういえばさっき,君はオーストラリア育ちと言っていたな。今さらなんだが,略歴なんかを教えてくれてるだろうか?
ピーター氏:
ええ,分かりました。私はオーストラリアのニューサウスウェールズ州で育ち,シドニーの美術学校に通っていました。それから28年間,グラフィックアートを中心に活動し,映画やTV番組などの仕事を請け負っています。最初に話したマッドマックスでは,ストーリーボード・アーティストを担当しつつ,車両デザイナーとして約150台の車両のうち,いくつかを考案させてもらっています。
4Gamer:
もちろん知ってるさ。君の手がけたマックスの背中の刺繍も,イモータンの燃える頭蓋骨のロゴも,Bubby'sのチェリーパイよりも分厚いメイキング集でよく見たもんさ。
ピーター氏:
ちなみに日本では,Toyotaのハイラックス,HONDAのアコード,あとSUBARUなど,自動車のコンセプトアートをやらせてもらっています。
4Gamer:
イピカイエ! 世界的におっきな活動すぎて,ついてけないぜ! もうちょっとフランケンシュタインとマシンガン・ジョーのような距離感で話してくれ!
ピーター氏:
申し訳ありません(笑)。それと近い将来にですが,「私の画集」を出版したいと考えています。なので,もしかしたらその中に,今回制作した戦車のイラストを収録するかもしれませんね。
4Gamer:
それだ。その先も聞きたい。君は自身のクリエイティブの根源,あるいはその作風をどのように捉えているんだ。巷では「個人や社会の良心の可能性に光を当てるアーティスト」と謳われているそうだが。
ピーター氏:
クリエイティブの根源,それは私にとって“必要性”です。私は集中すべきことに集中し,想像すべきときにイマジネーションを発揮し,自身の頭の中で“画”を制作します。そのうえで,私は「自身の作風」というものを考えていません。
4Gamer:
What? それっていうのはつまり,己の枠にとらわれず,己の幅を狭めないため……ってことかい? まいったな。そういう理念を掲げている人は多いだろうが,実践できているのは歴代ジェームス・ボンドの人数よりも少ないだろうよ。
ピーター氏:
ありがとう。この歳でジェームス・ボンドになれていたなんて,夢のようです。
4Gamer:
A-ha,言うじゃないかこいつめ!
ピーター氏:
あなたの仰るように,私と同じ姿勢を保っているクリエイターはほかにもいるかもしれません。そんな中でも「私が独特である」と誰かに思われているようなら,それは喜ばしいことです。私は独特でありたい。これはアーティストとしてのスタンスである以上に,きっと,私自身の願いですから。
4Gamer:
特別になるのも,特別であり続けるのも,1人の人間には難しい。誰にでもできることじゃない。敬意を表するよ,ピーター。君のように敬虔な信仰を欠かさずに生きてきた人には。
ピーター氏:
あなたにも信仰することはありますか?
4Gamer:
ああ,ある。「ピザは熱いうちに食え」って肝に銘じているよ。
ピーター氏:
たしかに。冷めたピザは映画にしか使えませんからね。
4Gamer:
もっともだ。それとな,そろそろ弱みのひとつでも握ってみたいんだが,君は自分のことをどのような人柄であると見ているのさ。
ピーター氏:
うーん,そうですね。周囲からは「問題解決に長けた人」とよく言われます。
4Gamer:
じゃあ,その問題解決に長けた人が行き詰まったら,どうするんだい。
ピーター氏:
行き詰まりを感じたときは,友達と会ってストレスの解消に努めます。
4Gamer:
生きるコツも一流ってか。なら,もう1枚レイズだ。今回Wargamingと仕事してみて,戦車というお門違いな題材に,厳しさを感じたりはしなかったのか。
ピーター氏:
いいえ,Wargamingとの仕事は私にとって,非常に有意義な経験となりました。私は仕事柄,締切などの条件にはもはや慣れたものですし,元から自分自身を追い込むことが大好きなので,厳しさというものはいっさい感じていません。機会を与えてくれた彼らには,純粋に感謝しています。
4Gamer:
Holy Shit! 締め切りのある世界に身を投じた世界中の人たちが君の資質にSittoするよ!
ピーター氏:
しかし,残念なことに,私はずっと座ってゲームをするための忍耐力が欠けているんですよね。
4Gamer:
そいつは特大の弱点だな。つまるところ,ゲームはあまりプレイしないと。
ピーター氏:
しません。だから,World of Tanks Blitzはおろか,コンピューターゲームを遊んだことがまったくないんです。
4Gamer:
Don't worry,問題ないさ。その秘密は俺が墓まで持っていってやる。
ピーター氏:
助かります。
4Gamer:
さて,次で最後の質問にしよう。そろそろパーティーに行かなくちゃならないんでね。
ピーター氏:
いいですね! 時期的にちょっと早いですが,近年は日本でもハロウィンが盛り上がっていると聞きます。
4Gamer:
当然,今日もテンヤでカボチャNightさ。
ピーター氏:
おー,ジャック・オ・ランタンですね!
4Gamer:
連れの顔がそっくりだから,いつだってハロウィンだぜ? それで最後ってのはな,「乗り物」のことなんだ。君は車や戦車,それ以外の乗り物も多く描いてきただろうが,ぶっちゃけ一番好きなのはどれなんだい? もちろん,電車も艦船も飛行機も含めて構わない。
ピーター氏:
移動手段としてはどれも好きですが,一番興味があるのはやはり車です。
4Gamer:
Jesus! 戦車のゲームを前にして,お世辞のひとつも言えないのか君は!?
ピーター氏:
いいえ,そうじゃありません。Wargamingは戦車,艦船,飛行機のゲームをすでにリリースしていますよね?
4Gamer:
ああ,そうだが……まさかとは思うが,次が車のゲームだったときのアピールだってのか? なんてこった。WoTBの上でポールキャッツしちまうのなんて,君くらいなもんだぜ!
ピーター氏:
ええ,これが私なりの“Mad Games”です(笑)。
※注記:本文は最大限,マッチョなイメージでアメリカナイズしたものです。実際のピーター氏は口調は分かりませんし,筆者も今まで生きてきてこんな会話したことありません。しかし,ピーター氏も少なからず“マッドな雰囲気”であるには違いないので,事の真相は「WoTB」のハロウィン2018戦車で遊んで確かめてみてください。
ピーター・パウンド氏のオフィシャルサイト
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