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[Unite 2019]多方面で使われるUnityが就職を有利にし,ゲーム制作により自発的な学びの姿勢を引き出す。「Unityアカデミックアライアンスの紹介と導入事例」聴講レポート
「Unityアカデミックアライアンスの紹介と導入事例」登壇者・佐藤賢一氏(ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン合同会社 事業開発マネージャー(教育サービス))
・中山幸市氏(埼玉コンピュータ&医療事務専門学校 広報課長代理及び教員)
・喜家村 奨氏(帝塚山学院大学 教授,ICTセンター長)
「Unite Tokyo 2019」公式サイト
Unityの技能を資格としエンジニア不足に対応する
「Unityアカデミックアライアンス」
この技能を資格として証明することで,市場のいろいろなニーズやエンジニア不足に対応できるのだ。
Unityのエンジニアを育成する「Unity教育プロジェクト」では,すでに224のチュートリアルと50のプロジェクト,12のコースが用意されており,さらに2019年下半期には「ほぼ同数かそれ以上」(佐藤氏)のチュートリアルが新たに追加される予定だという。
こうして覚えたUnityのスキルは「Unity 認定資格」に合格することで資格として認められ,就職,求職に有利になる。受験のための「認定コースウェア」も用意されており,16時間以上の動画教材で試験に備えることができるという。
なお,ゲームだけでなく,AEC(建築,エンジニアリング,建設)や自動車業界向けや,xRの製作に対応したコースウェアも準備中とのこと。こうした「Unity 認定資格」を受験するための勉強を通じ,ゲーム制作技術だけではなく,ゲーム以外の開発者にもUnityが利用できるようになると佐藤氏は語った。
中級レベルの「Unity 認定プログラマー」「Unity 認定 3D アーティスト」の資格は「Unity認定インストラクター」になるためにも必要だ。「Unity認定インストラクター」は「Unity認定トレーニングワークショップ」を開催できたり,Unity認定コースウェアがディスカウントされるといった恩恵が受けられるという。
「Unity 認定資格」はピアソンVUEのテストセンターで受験可能だ。また,アカデミックコースが用意されており,これを利用すれば受験料を安く抑えることができる。
また,「Unity認定トレーニングワークショップ」では,プロフェッショナルから1日,トレーニングを受けられ,トレーニングとしては2D,3DゲームやVRコンテンツの開発などが提供されている。
また,UAAには,オープンキャンパスセミナーへの協力などさまざまな特典が存在する。教育関係者なら調べてみる価値はありそうだ。
UnityとUE4の二刀流でゲーム作りを教える
埼玉コンピュータ&医療事務専門学校の事例
同校では情報テクノロジー科のゲームプログラマーコースと,クリエイター科のゲームデザイナーコースでUnityがカリキュラムに組み込まれている。学生に対して,まずはコンピュータ初心者向けの教育を行わなければならず,さらに就職のための資格取得が優先されることもあって,ゲーム制作の面白さや,開発現場で即戦力となれるスキルを学べる時間が少ないことが悩みだという。
そうした中で選定されたゲームエンジンが,Unityと「Unreal Engine 4」(以下,UE4)だ。
とくにUnityは,ゲームプログラマーコースの学生にゲーム作りをプログラム学習のモチベーションとして使えること,そしてゲームデザイナーコースでは,プログラムの学習より各種デザインやアセット制作へのニーズが高いことから,この2つが選ばれたのだという。
ゲームプログラマーコースとゲームデザイナーコースの学生は,1年めの10月からUE4,そして翌年の1月からUnityの教育を受け,2年めの4月からオリジナル作品の制作に取りかかるという。
「プログラムを学ぶのならUE4より,Unityのほうが有効だろう」という指摘も多いそうだが,最初にUnityを学習すると,ゲームプログラマーコースの学生がプログラムだけに集中しがちになる。そのため,ゲーム制作のすべての段階に触れていろいろなスキルを学ばせることを目的に,UE4が最初に用いられるとのこと。
ちなみに,オリジナル作品の制作に当たっては,ゲームプログラマーコースではUnityが,ゲームデザイナーコースではUE4が使われることが多いという。
Unity教育では,Unityエバンジェリストを学校に招き,講演や学生の制作した作品のレビューをしてもらうなどの取り組みが行われている。また,「Unity認定試験」で得られた資格が就職で有利になるのはもちろん,試験勉強がそのまま制作スキルの向上につながり,講師のレベルも均一化できるという面での期待も高いという。
対外的にはUAAを導入することで他校との差別化を図ったり,ゲーム開発に興味を持つ学生に訴求しやすくなるなどのメリットがあるとのこと。
中山氏は「プログラミングができないとゲームクリエイターになれないというのは過去の考え方だと思います。分からないところがあっても自分で調べるなどしてゲームを完成させることがモチベーションの維持につながります。そのためにUAAのサービスを100%以上使っていきたいと思います」と今後の抱負を語った。
Unityとゲーム制作を通して
楽しくプログラミングを学んでもらう
最後に登壇した喜家村氏は,2020年度から小学校でプログラミング教育が必修となり,これを受けた学生が2030年代には大学へ入ってくる。こうした教育を受けられなかった世代もプログラミングができるようにするためUAAを導入したと述べた。
そこで,電子アートやビジュアルデザインのための初心者向け言語であるProcessingを用いたところ,学生が自らゲームを作るといった活性化が見られた。しかし喜家村氏は,自分達が使っているアプリケーションの多くは初学者向けのProcessingを使っていないだろう,ということに物足りなさを感じ,再度言語の変更を行った。そこで選ばれたのがUnityというわけだ。「ポケモンGO」など,学生がいつも遊んでいるゲームがUnityで作られているということで反応が良く,学習へのとっかかりが得られたそうだ。
Unityを使ううえでは,キャラクターを動かしたり,音を鳴らしたり,オブジェクトを爆発させたりなど,実際にゲームを作る楽しさを味わいつつプログラミングが学べることが大きいという。
ゲーム作りを教育で扱ううえでは,仕様書に書かれたとおりの要件を満たすだけでなく,楽しいものを作るための創造力が必要になると喜家村氏は語る。
あるとき,喜家村氏はゼミの学生達に,作ったゲームに対して学生どうしで投票を行い,最も票を集めた優勝者に図書カードをプレゼントするというコンテストをもちかけた。すると学生達は,審査員であるほかの学生を意識して,さまざまなアイデアを盛り込んだ面白いゲームを作り始めたという。創造性を求めるゲーム開発の特性にコンテストという手法がマッチし,学生達はモチベーションを高く持って学習に励めたというのだ。
UAAの導入に当たっては,Unityがゲーム以外のさまざまな用途に使えること,そして就職の際に技術をアピールするにあたって,「Unity認定試験」が有効であることが決め手になったという。
喜家村氏は,「クラウドの教育基盤が一般的になれば,学生達は自然とプログラミングに親しむようになる」という意見もある,としたうえで,それでもプログラミングの教育にUnityを使うことには十分な意味があるのではないかと語って講演を締めくくった。
喜家村氏の「Unityを使う意味」とは,一般のアプリでよく使われているUnityで自分達がゲームを作り,さらにいろいろな工夫を加えることによって,義務的な学習以上のモチベーションを引き出してくれることだろうとと感じた。多方面で使われており,技能を証明できる資格があり,そしてゲーム制作を通じて能動的に学べるというUnityの強みが再確認できた講演だった。
「Unite Tokyo 2019」公式サイト
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