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チェコの各地を巡る「キングダムカム・デリバランス」のプレスツアーをレポート。政府観光局オススメの街やスポットを紹介
その一環として,チェコ政府観光局(チェコツーリズム)の案内によるゲームメディア向けのプレスツアーが行われた。4Gamerもツアーに参加し,オロモウツ,ブルノ,クトナー・ホラという3都市を周ってきた(※)。さらにチェコの首都であるプラハにて「ゴーレムVR」を体験し,リブシーンという街で西洋甲冑祭り「バトル・オブ・リブシーンフェスティバル」に参加してきたので,それらを合わせて写真をメインに紹介しよう。
※同ツアーでは,「キングダムカム・デリバランス」のデベロッパであるWarhorse Studiosやゲームの舞台となったサザーヴァ(ササウ)とラッタイという街も見学している。その模様は[こちら]の記事にて,開発チームや日本語版プロデューサーの松本卓也氏のインタビューとともにお届けしているので目をとおしてほしい
「キングダムカム・デリバランス」公式サイト
チェコ政府観光局(チェコツーリズム)公式サイト
「キングダムカム・デリバランス」開発会社Warhorse Studios見学レポート。開発チームと日本語版プロデューサーのインタビューを合わせてお届け
日本語版「キングダムカム・デリバランス」が,2019年7月18日にDMM GAMESから発売される。本作の舞台であるチェコを巡るプレスツアーに参加してWarhorse Studiosを訪問し,同スタジオの主要メンバーに話を聞いてきたので,日本語版プロデューサーの松本卓也氏のインタビューと共にお届けしよう。
オロモウツ(Olomouc)
最初に訪れた街は,9世紀に栄えたモラヴィア王国の首都だったオロモウツ(Olomouc)だ。モラヴィア地方中部の交易路にあったため,商業的な面はもちろん,文化的にも重要な土地として栄え,チェコ国内ではプラハに次ぐ文化財を保有する街となっている。
プラハから鉄道で2時間〜2時間半ほどかかり,「キングダムカム・デリバランス」の舞台であるボヘミア地方からも離れるが,多くの鉄道で国内外を問わず複数の主要都市とつながっているので,この地を経由してボヘミアとは違った雰囲気を持つモラヴィア地方を巡ってみるのもいいだろう。
聖ヴァーツラフ大聖堂
オロモウツで最も古い建築物で,城があったといわれる場所に12世紀に建築された。13世紀以降にロマネスク様式からゴシック様式への建て替えが行われ,19世紀に現在のネオ・ゴシック様式の外装になったという。その特徴となっているのが3つの塔だ。後方に建てられた1つは全長100.6mあり,チェコ国内では2番目に高い塔とのこと。隣接する司教宮殿はその一部が大司教区管区博物館として使用され,モラヴィア地方の宗教美術の展示のほか,かつて城だった跡や城壁も見られる場所となっていた。
ホルニー広場の聖三位一体柱
18世紀にペストの収束を記念して建てられたというバロック様式の彫刻だ。2000年にはユネスコ世界文化遺産に登録されている。こういった柱はヨーロッパの各地にあるが,全長32mというのはなかなかない大きさだ。同じくホルニー広場にあるオロモウツ市庁舎は,600年ものあいだモラヴィア王国の中心にあったオロモウツの政治と経済の象徴となる建築物だ。残念なことに改装中だったため見られなかったのだが,内部にはゴシック様式の礼拝堂やルネサンス様式のサンルーム,外部には共産主義時代にデザインされた天文時計があり,時代を超えた文化や様式美を感じられる。
独特な香りが特徴の名産チーズ「トヴァルーシュキ」
少し横道に逸れるが,現地ガイドに「食べなければもったいない」と勧められた「オロモウツケー・トヴァルーシュキ」を紹介しよう。トヴァルーシュキとは,16世紀から作られているという伝統的なチーズで,スイーツショップや専門店,博物館まである,オロモウツを代表する名産品だ。特徴はその独特な香りで,チェコ人の中でも大きく好き嫌いが分かれるという。
では,どれだけクセがあるのかと思って食べてみると,“塩気の利いた珍味”といった感じで,ビールはもちろんほかの酒のお供にもなりそうな味だった。匂いもそこまで気になるものではなく,納豆や漬物といった日本の食べ物と比べても強くない。なかなかほかの場所では食べられないようなので,現地を訪れた際にはぜひ試してほしい逸品だ。
ブルノ(Brno)
次に向かったのが,チェコ第2の都市であるブルノ(Brno)。「キングダムカム・デリバランス」の時代ののちに起きたフス戦争や,17世紀の三十年戦争といった大きな戦乱においても堅固な守りで敵対勢力を退け,モラヴィア辺境伯領だった12世紀から現在まで,モラヴィア地方南部の中心地として栄えている。
オロモウツからブルノへは鉄道で約2時間,プラハからだと2時間30分ほど。歴史的な建築物と近代的な施設が並ぶ魅力的な街で,カフェや飲食店,フリーWi-Fiといった便利なお店やサービスも充実している。モラヴィア地方を巡る際はここを起点にして動くのもいいだろう。
硬貨鋳造の地下室(Mint Master's Cellar)
中世の時代から,主に食品保存のために家々が地下室を作り,それが道となってつながり巨大な地下通路として発展したというブルノ。この地下空間は観光ツアーが組まれるほどの名物となっている。そのうちの1つが貨幣鋳造の地下室(Mint Master's Cellar)だ。新市庁舎近くに入口がある硬貨鋳造博物館から降りていく地下室は,90年代後半という比較的最近“見つかった”場所で,現在は硬貨鋳造の実演をとおしてその歴史が学べる場所となっていた。
シュピルベルク城
ブルノの町を見下ろせる高い丘の上にあるのがシュピルベルク城だ。元は13世紀にボヘミア王オタカル2世によって建てられたゴシック式の城塞であり,のちにバロック式の巨大で堅固な要塞に改築された。17世紀以降は牢獄として使用され,窃盗や放火,殺人といった犯罪者だけではなく,政治犯や国家反逆者も収容されたという。第二次世界大戦時にはドイツ軍の拠点として使用され,現在は街や城の歴史を伝える博物館となっている。また,展覧会や音楽フェスティバル,演劇といったイベントの会場としても使われており,緑が広がる丘全体が地元の人気スポットとなっている。
聖ペテロパウロ大聖堂と広場,旧市庁舎からの眺め
ブルノ中心部のペトロフ丘にある聖ペテロパウロ大聖堂は,現在の通貨であるコルナの10コルナ硬貨に描かれている,モラヴィア地方の重要な建築物の1つだ。12世紀にロマネスク様式の聖堂として建築され,のちにゴシック様式に改装。さらに20世紀には,現在のシンボルとなっているネオ・ゴシック式の双塔が建てられた。今回は中に入れなかったが,塔に登り眺めを楽しんだり,地下室や宝物堂を見学したりできるそうだ。
大聖堂の塔ほどは高くないが,近くにある旧市庁舎の塔からもブルノ市街地を眺めることができる。ここでは街の伝説となっているブルノのドラゴンが飾られているので,その姿も一見の価値ありだ。
聖トーマス教会にあるヨブスト像と自由広場にある天文時計はどちらも2010年代に作られたもの | |
写真左のPEGASは,ブルノに古くからある醸造所のビール。写真右はイースターの期間限定で販売されるグリーンビール。色付けにも使用されているハーブが効いた独特の風味だった |
クトナー・ホラ(Kutná Hora)
筆者が今回の旅で一番のお気に入りだったのがこのクトナー・ホラ(Kutná Hora)。現在は人口2万人ほどの小さな街だが,13世紀には中央ヨーロッパの3分の1を占める銀産出量を誇り,鋳造された銀貨(プラハ・グロシュ)は中央ヨーロッパ共通の貨幣となって中世ボヘミア王国に大きな富を築いたという。
中心部が「クトナー・ホラの聖バルボラ教会のある歴史地区とセドレツの聖母マリア大聖堂」としてユネスコ世界文化遺産に登録されている。日本人観光客も多く,駅にある観光案内所には日本語のパンフレットがあり,ここで紹介する観光地にもそれぞれ日本語ガイドが設置されていた。
歴史地区の街並みはまさに西洋ファンタジーゲームそのもの。プラハからは鉄道で1時間ほどの距離なので日帰り旅行も可能。中世ヨーロッパを舞台にした作品やRPGファンにはオススメの観光地だ。
セドレツ納骨堂
人骨でできたシャンデリアや塔,十字架といった装飾品が本堂中いっぱいに飾られた納骨堂。説話によると元は墓地だった場所で,13世紀にゴルゴダの丘の土が撒かれたことで神聖な土地となり,中央ヨーロッパ中からこの地に埋葬されることを希望する有力者たちが集まったという。14世紀のペスト流行や15世紀のフス戦争などで膨大な犠牲者が出たことにより,およそ4万人がこの地に埋葬されたそうだ。死者を弔うための装飾が作られはじめたのが19世紀で,現在あるものは約1万人分の骨を用いて製作されたものだという。
聖バルボラ教会
ユネスコの世界文化遺産に登録されている旧市街の中心部と言えるのが,聖バルボラ教会だ。その名にあるとおり,鉱山や火を扱うような危険な場所で働く人たちの守護聖人である聖バルボラ(バルバラ)が祀られている。建築期間はなんとおよそ500年。中断時期を挟んで1388年から1906年まで,さまざまな時代をまたぐように建築されたため,堂内ではゴシックやルネサンスといったあらゆる様式によって生まれた装飾が観賞できる。
鉱山が重要な街だっただけあり,壁のフレスコ画には銀の採掘や硬貨の鋳造の様子が描かれていた | |
ステンドグラス(正確にいうとガラスに絵が描かれたもののようだ)は,近代になって飾られたものも多い(写真左)。約500年かけて建築された本堂や1996年から2012年まで行われた修復箇所などの資料が,各時代別に時系列を追うように展示されていた(写真右) |
フラーデク(Hrádek)鉱山博物館と地下坑道探索
クトナー・ホラの繁栄につながる,銀鉱山の歴史や当時の人々の暮らしを学べる鉱山博物館では,実際に人の手によって掘られた坑道を探索できる。その規模は膨大で,さらに現在は降りられないほどに深いところまで掘り起こされており,当時の作業の過酷さやそれを担っていた労働者たちの底知れなさを感じられた。
当時の作業着を模した白い服に,ライトの付いたヘルメットを装着して探索する | |
ところどころに2人並べるくらいの場所はあったが,基本的には一方通行だ |
まるでファンタジーゲームの世界のような飲食店
クトナー・ホラがお気に入りとなった最大の理由が,その街並みと,街のあちこちにある居酒屋やレストランだ。歴史を感じられる石畳の街並みや,まさに西洋ファンタジーのゲームや映画に出てくるような外観や内装のレストランはあまりに魅力的で,街を離れるときは「もう1日だけ,街歩きをする時間を……」と思ったほど。再度クトナー・ホラに訪れることがあれば,1日を街歩きとレストラン巡りの日にして,ファンタジー世界の住人気分でのんびり地ビールや料理を楽しみたい。
プラハ「ゴーレムVR(Golem VR)」
今回の旅では,Warhorse Studiosの見学や「キングダムカム・デリバランス」の舞台巡り(詳しくは[こちら])の拠点として滞在したため,ゆっくりと街を巡ることはなかったプラハだが,“チェコがオススメしたい新たなスポット”という「ゴーレムVR」(Golem VR)を体験してみた。
「ゴーレムVR」公式サイト(英語)
魔術都市としてさまざまな神秘的な多くの物語を持つプラハでも有名な話の1つが,ラビ(ユダヤ教の神父)のレーヴが作ったとされるゴーレムの伝説だろう。ユダヤ人街の人たちを守るため土から作られた巨人で,制御が効かなくなって暴れまわるようになったところをレーヴによってただの土人形に戻され,今も旧新シナゴークの屋根裏に眠っているという説話だ。
SF好きには,チェコ出身の作家カレル・チャペックの作品で,“ロボット”という言葉を生んだ戯曲「R.U.R.」の人造人間(ロボット)の設定に影響を与えたことでも知られているだろう。
「ゴーレムVR」は,そんなレーヴのゴーレム伝説を元にした物語を最大4名で体験できる施設型VRだ。
施設はいくつかの部屋に分かれており,16世紀のプラハの街やシナゴーグの中といった風景が部屋ごとに広がる。各地(部屋)にはそれぞれミッションが用意されており,それをクリアすることで次の部屋への扉が開かれ,物語が進行していく。
Oculus RiftとOptiTrackで構築されているというVR世界のグラフィックスと動きはなめらかで,Leap Motionを使用したハンドトラッキングの精度も高く,大きなズレを感じることはなく快適だった。また,ミッションは,「街の中にある暗号を探し,魔法で閉じられた扉を開く」といった神秘的な謎解きもあれば,「逃げ出したニワトリたちを追いかけて柵の中に戻す」といったユーモアあるものもあった。魔術都市プラハの雰囲気を味わいつつ仲間とワイワイ楽しめるだろう。
言語は英語とチェコ語で日本語はないが,英語自体は難しくなく話の展開も絵的なところで伝わってくるので,プレイに苦労することはないはずだ。
「ゴーレムVR」を制作したのは,プラハにある開発スタジオDIVR Labs(公式サイト)。家庭用VRゲーム「Blue Effect VR」(Steamタイトルページ)を制作し,その後に「ゴーレムVR」やSFホラー「Arachnoid VR」といった施設用VRゲームに進出したという。
「ゴーレムVR」の制作期間は施設の準備を含めて約1年で,同じ部屋を使ってプレイする「Arachnoid VR」は単体で3か月ほどの期間で作られたとのこと。アメリカでの展開を予定しているが,現在はこのプラハのハムリーズでしか体験できない。DIVR Labsは,自分たちが制作したVRゲームを世界中の人に遊んでもらいたいと考えているとのことで,日本を含む世界展開に前向きなようだ。
28年の歴史を持つ西洋甲冑祭り
バトル・オブ・リブシーンフェスティバル
今回のプレスツアーのメインともいえるイベントが,28年という長い歴史を持つ「バトル・オブ・リブシーンフェスティバル」(Bitva Libušín)という西洋甲冑祭りだ。これは総勢1000人という参加チーム(兵団)が2つの軍勢に分かれ,中世の戦いを再現した大規模戦闘を行うというもので,スポンサーとしてWarhorse Studiosもその名を連ねている。
1対1のチーム戦,武器屋や道具屋といったグッズ販売なども行われていた祭りのメインとなる大規模戦闘は,“蛮族に襲われ占拠された集落を取り戻すため,各地の兵団が連合軍として蛮族の軍勢に挑む”というストーリー仕立てで行われた。
“中世の戦いを再現”ということだが,実際にあった戦いを再現したり,時代を限定したりといったものではなく,参加している兵団は十字軍風やバイキング風,ドイツ騎士団風と時代も地域もバラバラ。戦闘の終盤にはライフルやカノン砲が出てきてド派手に撃ち合うなど,かなり“エンタメ”寄りなものだった。
さて,通常なら「興味を持った人にはぜひ来年参加してみてほしい」と締めたいところなのだが,なんとBitva Libušínは,本年(2019年)をもっていったん終了となるという。会場となっている場所や周囲の再開発といったさまざまな理由によってリブシーンの開催が難しくなり,新たな場所を探しているとのこと。復活を祈りつつ,大量の写真で迫力ある大規模戦闘を中心にこの祭りの魅力をお伝えしよう。
井戸端会議(?)をしている村の女性たちや旅の疲れを癒す兵たちなど,“日常パート”もしっかり描かれていた | |
楽団の演奏やタカ狩りの体験も行われていた | |
ちびっ子軍団に単騎で挑み,返り討ちに合う若者も | |
大人がついていてルールも守っているようだったが,微笑ましさを感じつつも「ほんとにケガ大丈夫?」と,小さな子を持つ父でもある筆者はいらぬ心配をしてしまう |
「キングダムカム・デリバランス」公式サイト
チェコ共和国 政府観光局(チェコツーリズム)公式サイト
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Published by EXNOA LLC,(C)2019 and developed by Warhorse Studios s.r.o., Kingdom Come: Deliverance(R)is a trademark of Warhorse Studios s.r.o. Co-published by Koch Media GmbH, Austria. Deep Silver is a division of Koch Media GmbH, Austria. Deep Silver and its respective logos are trademarks of Koch Media GmbH. Co-published in Japan by ZOO Corporation. All other trademarks, logos and copyrights are property of their respective owners. All rights reserved.
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