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「プロゲーマー専門学科」入学希望者に,ウメハラ氏が語った心構えとは。1時間半にわたった特別講義のレポートをミニインタビューと共に掲載
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印刷2015/04/21 16:05

イベント

「プロゲーマー専門学科」入学希望者に,ウメハラ氏が語った心構えとは。1時間半にわたった特別講義のレポートをミニインタビューと共に掲載

画像集 No.011のサムネイル画像 / 「プロゲーマー専門学科」入学希望者に,ウメハラ氏が語った心構えとは。1時間半にわたった特別講義のレポートをミニインタビューと共に掲載
 2015年4月19日,東京・西葛西の東京アニメ・声優専門学校にて,プロ格闘ゲーマー・梅原大吾氏(以下,ウメハラ氏)による特別講義と題された講演会が開催された。

 このイベントは,日本初の“プロゲーマーになるための専門学校”として話題となった(関連記事),同校の専門課程「e-sports プロフェッショナルゲーマーワールド」入学希望者に向けて行われたもので,当日は学科説明が行われた後にウメハラ氏が登壇。かつての闘劇の総合司会として格闘ゲームファンにはお馴染みの郡 正夫氏を聞き役に,プロゲーマーとしての心構えが語られるものとなった。本稿でその模様をレポートしていこう。

■関連記事

東京アニメ・声優専門学校 公式サイト

「ウルトラストリートファイターIV」公式サイト



唯一無二の個性は,基礎の積み重ねの中から


 本講義は,同校の北葛西校舎にあるメディアセンターにて行われた。会場には約80名ほどの受講者が詰めかけ,その大半は10代,男女比は6:4といったところ。女性比率の高さに少し驚いたのだが,どうやら在校生も受講していたようで,本校がもとは声優の専門学校であることを考えれば,納得の割合かもしれない。

メディアセンターの書架には,合計で1万冊以上のマンガ・ライトノベル・アニメ制作資料が納められていた。夢の国である
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 最初に行われた学科説明では,本学科開講の理由について,「近年世界的な盛り上がりを見せるe-Sportsの,国内での将来性を見据えたもの」との説明が行われ,「声優とも関連性の深いゲーム実況・MCの育成にも力を入れていく」と述べられた。
 カリキュラムの具体的な内容にはあまり触れられなかったが,予定されているものの中には英会話もあるとのこと。これは,活躍の場がまだまだ海外に限られがちなプロゲームシーンにおいて,交流はもちろん,情報収集の面でも何より重要になるスキルであるからとのこと。筆者自身,Evolutionの取材の度に痛感していることでもあるので,こうした道に進みたい人にとっては,何より実戦的な授業になる気もする。

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学科説明の最後には,日本人初の女性プロゲーマーであるチョコブランカさんや,イベントMCとして活躍するスタンスミス氏の特別講義が予定されていることも明かされた
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 ウメハラ氏,郡氏による1時間半にわたる特別講義は,ウメハラ氏がプロゲーマーとして活動するうえで意識している「勝ち続けることの重要性とその方法論」についてを語るといったもので,著書「勝ち続ける意志力」を題材に,本人による解題とも言える内容となった。熱心にメモを取る受講者の姿も多数見られ,受講者達はかなり神妙な面持ちでウメハラ氏の言葉を受け止めていたようだった。
 ここでは,講義中に触れられた話題の中から,いくつか印象深かったものをピックアップしてお伝えしていこう。

ウメハラ氏(写真右)と郡 正夫氏(写真左)。「闘劇の壇上でウメハラさんにインタビューしたときは,ものすごく淡泊な返答ばかりでしたよね」という郡氏からの質問に対し,ウメハラ氏は「あの頃は若かったので。本当に興味がなくて,「あ」で済むんだったら「あ」と言って終わりたいぐらいでしたね(笑)」と,当時の心境を語っていた
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 まず,「個性的になるにはどうすれば良いですか?」という受講者からの質問について。唯一無二とさえ言われるプレイスタイルで,世界中の格闘ゲーマーを魅了し続けてきたウメハラ氏にこそ,誰もが聞きたかった問いといえるだろう。

 これに対するウメハラ氏の回答は,「丁寧に基礎をやるのが一番」というものだった。ウメハラ氏自身,昔は基礎を学ぶと個性が消えると考えていたそうだが,それではあまりにも勝てず,しぶしぶ基礎を大事にしたプレイに切り替えた経緯があったとのこと。
 その結果,自分ではつまらないプレイをしているつもりだったのに,いつの間にか個性的なプレイと評されるようになったといい,「やるべきことを長く続けてきた結果,僕にもともとあった個性が,人に受け入れてもらえる形で滲み出てくるようになったと気付いた。それからは,地道な努力にも耐えられるようになった」と語った。
 格闘ゲーマーなら知らぬものはいないだろう乾坤一擲の“ウメ昇龍”や“背水の逆転劇”でさえ,本人にとっては基礎の積み重ねの上に導き出した選択だったのかもしれない。言葉にしてしまえば当たり前のことかもしれないが,神プレイの道も一里から,というわけだ。

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 もう一つは,「“プロゲーマーになるなら専門学校なんて行かず,ゲームをし続けるのが一番の近道だ”という意見について,どう思いますか」という,本学科の存在意義にも関わる,なかなかに鋭い質問への回答だ。
 これに対してウメハラ氏は,本学科がどうなっていくかは,部外者である自分にも分からないと前置きしつつも,「プロゲーマーになりたいからと言って,ゲームだけを続ければ良いというのは,絶対に違う」と一刀両断。どんなにゲームがうまくても,人格的に問題があれば仕事の幅は狭まるし,勝つための攻略情報を収集するうえで不利になる――プロとしてやっていくなら,何よりも人間性が大事なのだと答えていた。

 また,幼少の頃からゲームセンターで人間関係やコミュニケーションを学んできたウメハラ氏は,これまで「格闘ゲームがうまい人=面白い人」という認識だったという。しかしオンライン対戦環境の向上に伴い,ゲームセンター離れが進む昨今,腕前の平均レベル自体は上がってきているものの,「ゲームがうまくても,話してみたらつまらなかった,ということも増えた」と感じているそうだ。「(プロゲーマー専門学校が)共通の目的や夢を持った人同士が集まり,コミュニケーションを取れる場になるんだったら,そのことにも価値があるんじゃないですか」と述べ,回答を結んだ。
 ゲームセンターにおいて,コミュニティに残り続けるために,ゲームの腕前以外のものが求められるという側面は,今でもままあることだろう。ただ,今より猥雑だったかつてのあの場所は,まったく異なる背景を持った人々が集い,その傾向はより顕著だったかもしれない。そうした時代の申し子とも言える,ウメハラ氏ならではの言葉だと思えた。

仏像研究を趣味とする郡氏曰く,「勝ち続ける意志力の中で,ウメハラさんは“自分を痛めつける努力は努力ではない”と語っていますよね。これ,仏陀も全く同じことを言っています。だから僕の中では,梅原大吾は格ゲー界の仏陀なんです」とのことだったが,ウメハラ氏は,「いや,今年はどんどん賞金を取りに行くつもりですし,悟りを開いたりはしていないですね(笑)」と笑顔で返していた
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もし講師をやるなら,ゲームの遊び方を教えたい――ウメハラ氏ミニインタビュー


 イベント終了後,新設されたばかりという同校のゲームルームにて,短いながらウメハラ氏に話を聞く時間が得られたので,その模様をミニインタビューとしてお届けしよう。プロゲーマー専門学校についてや,今後の活動のことも聞いているので,ウメハラ氏のファンはぜひチェックしてほしい。

4Gamer:
 本日はお疲れさまでした。今回の特別講義は若い人ばかりで,女性も多かったですね。

Team Mad Catz ウメハラ氏
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ウメハラ氏:
 そうですね。女性はたぶん在校生の方で,さすがにプロゲーマー志望ではないんじゃないかとは思いますが。こうしたイベントの受講者は,これまでビジネスマンのオジサンばかりだったので,新鮮でした。

4Gamer:
 ただ,講義内容のノートを取っている女性も多かったですよ,こう……,「勝ち続けること〜」みたいな。

ウメハラ氏:
 ほんとに?(笑)。いや,真面目に聞いてくれたのであれば,それはありがたいですね。ゲームの世界には楽しいこともあれば苦しいこともあるというのが,なんとなくでも伝わってくれれば良いかなと。

4Gamer:
 今回特別講義を受け持った「e-sports プロフェッショナルゲーマーワールド」――プロゲーマー専門学科ですけれど,開校の報を聞いたとき,どういった感想を持ちましたか。

ウメハラ氏:
 いやあ,子供の頃の自分に未来からメッセージを送るとしたら,これが一番びっくりする情報だと思いますよ。「2015年になったらお前……学校できてるぞ?」って(笑)。携帯電話なんかよりも,よっぽど驚きますね。

4Gamer:
 今回は特別講師という形でしたが,もし「この学校で講師として教鞭を振るってくれ」と依頼されたらどうします? ……たぶん,ウメハラさんが講師をするなら,受講したいと考える人も多いんじゃないかと思うのですが。

ウメハラ氏:
 うーん,やっぱり本業がね。やるからにはキチンとやりたいっていう性格なんですけど,とくに今年なんてCapcom Pro Tour周りの賞金が凄いから(関連記事),一瞬も気を緩められないわけで。その中で人にものを教えることが務まるかと言われると,難しそうだなと。

4Gamer:
 なるほど。

ウメハラ氏:
 ただ,もし僕が講師になるのなら,もっとゲーム本来の楽しさを見出す方法を伝えたいですね。格闘ゲームって,今はただ勝てば良いみたいな状況になっているところもあるじゃないですか。でも,自分が子供の頃,外で遊んでいたときは「公園があってボールが1つあって友達が5人います。この条件で楽しいことをしてください」って,クイズを出されてるみたいな感覚があって。格闘ゲームも,みんな色々と工夫して遊んでいましたから。

4Gamer:
 そこは時代性かもしれませんね。今はワンクリックで正解が手に入ってしまうので,自分で工夫する必然性が薄れてきているというか。

ウメハラ氏:
 僕は自分で工夫して遊ぶ時代を経験しているからか,「こう遊んだら面白くね?」っていう想いが,自然とプレイに反映されていると思うんですよ。そういう“遊び”の部分を持っている人が増えていかないと,周りの人には面白そうな世界に映らないんじゃないかって。だから,講師をやるなら遊びの幅を広げるための訓練をさせるでしょうね。勝つ方法は,……ネットで調べてくれと(笑)。

(一同笑)

「e-sports プロフェッショナルゲーマーワールド」の教室となる,10台のゲームPC,家庭用ゲーム機やアーケードスティックが用意されたゲームルーム。果たしてどんな授業が行われるのだろうか
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4Gamer:
 先ほど軽く話題に上りましたが,Capcom Pro Tourについても聞かせてください。今年はプレミア大会の賞金額が15000ドル(約180万円)ずつ上乗せされるとのこと。以前TOPANGA TVに出演されたときも,「今年は大会成績のアベレージで勝負する」といった旨の発言をされていました。となると,苦手な飛行機にもたくさん乗ることになりそうですが……。

ウメハラ氏:
 乗るでしょうね。乗り換えも合わせたら,それこそ40回ぐらい乗るんじゃないかなあ。

4Gamer:
 ウメハラさんは「NorCal Regionals 2015」(2015年4月にアメリカ・北カリフォルニアで行われたプレミア大会)で優勝し,Capcom Cup 2015決勝大会の出場権を既に獲得していますよね。それでも,どんどん海外大会に出場する?

ウメハラ氏:
 ええ,邪魔しに行きます(笑)。いや,邪魔にはなってないと思うんだけど,今までにないぐらい,賞金を取りに行くつもりです。

4Gamer:
 なるほど(笑)。今年は獲得賞金額ランキングをやったら面白いかもしれないですね。

ウメハラ氏:
 そうだね。最後のCapcom Cup 2015の賞金額が大きすぎるから,そこは分けた方がいいかもしれないけど。それにしても,ようやくこういう時代が来たなって思いますよ。話を遡ると,2010年の「GODSGARDEN online」で10試合先取の長期戦ルールを提案したのって,「単発のトーナメントで強い人を決めるなんて不可能だ」という思いからだったわけで。でも,これだけ価値のある大会が増えてくれれば,それぞれの結果を総合するだけで,なんとなく誰が強いのか分かりそうでしょ。

4Gamer:
 確かに。ちなみに,ウメハラさんは「ストリートファイターV」PC / PS4)についてはどう考えているんでしょうか。もしかしたら,今年が「IV」の最後の年になるかもしれないわけですが。

ウメハラ氏:
 微妙なところですね。これだけ盛り上がるんなら,「IV」でいいって考え方もあるし。でも,ストリートファイターだったら,何が来ても自分は大丈夫だと思います。あとは楽しめるゲームになって盛り上がってさえくれれば,新しいタイトルに移行するのは全然苦にはならないですね。

4Gamer:
 見る側としては,極まった対戦ももちろん見応えがありますが,攻略の中から生まれてくる名勝負にも期待したいところです。本日はありがとうございました。

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