インタビュー
無難にやっていきたいのであれば,ゲームクリエイターは辞めるべき――Mighty No.9で勢い付く稲船敬二氏に聞く“ゲームを作る”ということ
今まで勝ったことのないジャンルで勝ちたい――「今一番実績を残したい」のはスマホ市場
4Gamer:
しかし稲船さんは,独立してからは,たぶん「全方位外交」ですよね。
稲船氏:
はい,そのとおり。
4Gamer:
それを承知の上で,今の話を踏まえて聞くんですけど,今後一番力を入れていくプラットフォームは,やはりスマホですか?
稲船氏:
んー,そうですねえ……。
4Gamer:
?
稲船氏:
そう聞かれるとなかなか厳しいところもあるんですけど,言葉をちょっと変えると,「一番実績を残したい」のはスマホ市場,ということになります。
4Gamer:
実績を残したい,とは?
稲船氏:
そこでは勝ったことないから,ですね。
4Gamer:
なるほど,明快な返答が。
稲船氏:
コンシューマでは勝った経験がありますし,そこにおいてはさらにその上に行きたいと今でも思ってます。でも,まずやはり「勝ったことのない試合」で勝ってみたいって思ってるんですよ。
4Gamer:
スマホにも稲船あり,と。
稲船氏:
そう。「これ稲船が作ったやつなんだよね。結構面白いよねえ」って言わせたい。
4Gamer:
数値的な目標は何かありますか?
稲船氏:
ありますよ。クリエイターはみんなそうでしょうけど,やっぱり自分の中で「ヒットと呼べる数字」を決めてるところがあるし。
コンシューマであれば,やっぱり「100万本」っていうのが分かりやすいですよね。最近はワールドワイドでもなかなか100万本っていかないから,オリジナルのタイトルを作ってワールドワイドで100万本いけば,これは間違いなく「ヒット作」でしょう。
4Gamer:
スマホ系では,どのあたりを「ヒット」の本数として据えてるんでしょうか。
稲船氏:
ワールドワイドで1000万ダウンロードかな。これが,自分の中で「まずまずの成功」という感じだと思います。そこを目指さないといけない。
もちろん,300万ダウンロードだって100万ダウンロードだって十分すごいんですけど,やはり目指すとなれば1000万かな,って。
4Gamer:
いつもながら大きく出ましたね。
稲船氏:
そうですね(笑)。まぁ経営者としては,かけたお金を回収して利益を出すというのも一つの成功ですけど,それだけだとやっぱりモノ足りない。やはり分かりやすい数字を貪欲に目指したいな,と。
4Gamer:
なるほど,「一番力を入れたい」というのとはちょっと違いましたね,確かに。
この先どんなに困っても誰も助けてくれない――僕達は,「新しいもの」がお金になるということを証明していかなきゃいけません
稲船氏:
一番力を入れたいという話でいうと,僕は「自分のコンテンツ」を作りたいんです。
4Gamer:
それは以前からおっしゃってますよね。
スマホですが「おっさん☆たまご」がその一つです。あれは“稲船コンセプト”の,稲船の作品です。
4Gamer:
ん……。おったま(おっさん☆たまご)の名前が先に出るということは……。
稲船氏:
そう,例えばデッドライジングは違いますよね。もちろん僕が一人ですべてを作ったわけじゃないですけど,コンセプト・企画を自分で考えて,細かい設定までこだわって作って,そのあと育てて……という形でデッドライジングを作ってきました。でもあれはカプコンのコンテンツです。
4Gamer:
確かに稲船さんが勝手に新作を作れるものじゃないですね。
稲船氏:
そうなんです。そう考えると――これは自分が独立した時から変わってないですけど――僕が一番やりたかったのは,自分の作品……本当の意味での「自分の作品」を作れるゲームクリエイターになることです。
4Gamer:
あえてビジネスライクな言葉にすると「自分のIP」ということですか?
そうです。自分のIPを持つということですね。今までのゲーム業界では,自分のIPを持つためには自分でお金出すしかなかったわけです。開発費を出しているのは,自分が属している会社だったりパブリッシャだったり,そういうところなわけですから。でも自分のお金で作ったものであれば,誰からも文句の言われない自分のIPですよね。「おっさん☆たまご」は,自分のお金で作ったので自分のIPです。
正直なところ,今はまだ,おっさん☆たまごレベルの制作費でしか,自分達のものが作れません。でも将来においては,もっと大きなものを自分達のものにしたいと思ってますし,それがクリエイターの未来じゃないかと思うんです。
4Gamer:
昔言ってた問題ですよね。マルシー(=コピーライト)がない。
稲船氏:
ゲームクリエイターの未来を考えなきゃいけないときだと思うんですよ。ゲーム作ってて楽しいなー,って思わされて作らされてるようでは,ゲームクリエイターに未来はないです。
4Gamer:
かつて盛大にお金を出してくれたプラットフォーマーも,いまや台所事情は結構厳しいですからねえ。昔のような大型の企画はほとんど通らないですし。
稲船氏:
ええ。つまりお金を出してくれないんです。出してくれない,というか出せないというか。
そういう事情がバックにあって,じゃあソーシャルゲームに注力しますと切り替えたパブリッシャも多いんですが,それってどっちかというと消極策ですよね。その消極策の中で,クリエイターがあっちへこっちへと引っ張られていくわけです。
4Gamer:
よく耳にする話です。
稲船氏:
ご存じのとおり,優秀なクリエイターは日本にまだまだいます。でもクリエイターが力を発揮できることがないという状況なんです。僕も優秀なクリエイターをたくさん知ってますけど,僕を含めてそういう人たちが,この日本で活躍できる機会がどんどん減っているというのが実情です。
4Gamer:
以前からそういう傾向は見られましたが,最近はますます加速している気がしますね。
稲船氏:
カプコンを辞めてからの3年間で,より加速している部分がやはり現実としてあると思うんですよね。これを打破しなきゃいけないんだけど,そのためには「お金出してよ」だけではダメだと思うんです。なので自分でやろうと思ったわけで。
4Gamer:
普通はそう思わないと思いますけどね……。
稲船氏:
いや(笑)。誰も出してくれなかったら,誰も助けてくれなかったら……,おそらくお分かりいただけると思うんですけど,これって社長の考え方なんですよね。最後に頼れるのは自分だけで,結局最後は誰も助けてくれないんです。
4Gamer:
助けてくれないっていうか,最後は自分でなんとかするしかないんですよね。
稲船氏:
ええ,それまでは助けてくれますけどね。……それってつまり,今のゲームクリエイターの状況と同じじゃないかと思うんですよ。ゲームクリエイターだって,ヒット作を作ってるうちはいいですが,最後は誰も助けてくれないんです。
4Gamer:
そういうもの……ですかね。あまりそうは思いたくないんですが。
そういうものだと思いますよ。そうなったら,ゲームクリエイターが自分の力でお金を稼ぐしかないんですが,そんなスキルは持ってないんです。僕らは,新しいものを生み出す能力を持ってるだけです。
なので,その「新しいもの」がお金になるんだということをしっかり証明していかなきゃいけません。人のお金や人の力で,とかではなく,自分の力でやれれば広がっていきますし。
4Gamer:
おっしゃることは理解できるんですが,それは誰か「仲間」はいないんでしょうか。稲船さんほどのリスクテイカーが,世の中にそうそういるとは思えないんですが。
稲船氏:
でも簡単ですよ。僕が成功すればいいんです。
4Gamer:
3年前の話に戻りましたね。
稲船氏:
そう。前例があれば付いてくる人はいっぱいいますよ。
今までもそうでした。僕はカプコンで常に前を走って,常にやれないことをやってました。「それ無理ですよ,稲船さん」と言われても,常に前を走り続けて。例えば,キャラクターデザイナーは開発の上にはあがれません,と言われてましたが,僕はキャラクターデザイナーのまま上にあがりましたしね。
4Gamer:
あぁ,なるほど。そういう部分に関しても,ですか。
稲船氏:
作品もそうです。常に先頭走ってたわけですよ,みんながどれだけ意識してくれてるか分かりませんけど,先頭を走るときはなにせめちゃくちゃ叩かれますからね(笑)。
ゾンビゲームなんか売れるかこんな気持ち悪いもん,ってあのときどんだけ叩かれたか。でも今やゾンビだらけですよね世界は。「こんなにいっぱいあるのに,それでもゾンビゲーム作るんですか?」ってたまに言われるんですが,元祖俺やがなって(笑)。
4Gamer:
あぁ……(笑)。
稲船氏:
ともあれ,自分達がリスクを負ってでも,自分達のクリエイティブをIPにして,それで稼いでいけるということを僕が示せば,俺もやりたいって思うクリエイターは絶対出てきます。
4Gamer:
そのためにいま最前線を突っ走る,と。
稲船氏:
自分が成功して前例を作らなきゃいけないですからね。口だけじゃ「稲船さんええこと言うねえ。じゃまず自分でやってみて」って言われるだけだし,たぶん今はそう思われてる状態でしょう。
ゲームクリエイターは「BtoC」の仕事をしているだけではないのか――ユーザーの意見をどうやって取り入れていくかという部分にはもっとやれることがあるのでは
4Gamer:
しかし話がちょっと戻っちゃいますが,今は正直なところ,みんなそんなにほいほいお金を出してくれないわけじゃないですか。ほかの人の話を聞いていても,やはり企画が通ってお金が出ることはとても難しい状況なんだ,と思い知らされます。
とはいえ今のお話のように「俺が自分でやるんだ」と思ったところで,コンシューマ系の作品を手弁当で作るのは事実上難しいわけですし,スマホはスマホで,いまとなっては出遅れた感もややあるし,そもそも作り方やお金の稼ぎ方が違うので,みんながみんな,簡単に移行できるわけじゃないと思うんです。
クリエイターは今後何をしていけばいいんでしょうか。
稲船氏:
状況はまったくそのとおりですね。僕が今やってるように,「とにかく打席に立つ」という考え方ができないとダメだと思います。
4Gamer:
言い方を変えると,失敗を恐れるな,ということですか?
稲船氏:
それもありますね。一回成功すると,失敗が怖くなるんですよ。だから確実に成功しようと思って,ソーシャルゲームもそういう作り方をします。お金をかけて,時間をかけて,確実にこけます。だから,「確実に失敗しないものを作ろう」と思えば思うほど,確実にこけるんじゃないかと僕は思ってるんですよね。
4Gamer:
あぁ,なるほど。なんとなく言わんとしていることは理解できます。
稲船氏:
それを切り換えないといけないから,みんな相当苦しくなるはずです。パブリッシャも苦しくなって,デベロッパもクリエイターも苦しくなる状況のなかで,そこで初めて「どうすればいいんだろう」って考え始めるじゃないですか。その時に,先に考えてる僕らがしっかりと道を示せればいいんじゃないかと思ってます。
4Gamer:
かつてもそうおっしゃってましたしね。
稲船氏:
まあ道を示す側には得るものが少ないですけどね(笑)。
4Gamer:
まぁ得てしてそういうものです……。
大リーグの話に例えるならば,野茂英雄には得がないと思うんですよね。
例えば今,野茂がポスティングシステムでドジャーズに入っていたら,相当な契約金で入れるはずです。でも野茂は,それまで億単位のお金をもらってたのに,タダみたいな値段でドジャースに行って,自ら道を切り開いて,日本人の選手が入っていける道を作ったわけじゃないですか。
そんな中で引退して,そのあとに来た人達はいろいろ恵まれてますよね。契約周りにしてもそうだし。でも,野茂のことを尊敬しているとは思うんですけど,野茂に契約金の10%を払いますとは言わないわけですよね。自分達のいるポジションが野茂のおかげだったとしても。
4Gamer:
なるほど。例えがまたいつもどおりカッ飛んでますが,おっしゃることは分かります。
稲船氏:
僕らも一緒なんです。たぶんそうやって道を切り開いたとしても,稲船さんのおかげです,稲船さんに儲かったお金の10%払いますって言ってくれるわけがないんです。いや別にいらないですけど(笑)。
僕が言いたいのは,それでも誰かが先頭を行かなきゃいけないということであり,それこそがリーダーなんだ,ということです。リーダーは損するものなんです。得したいと思ったら,リーダーなんかやらない方が良いです。
4Gamer:
確かにそうですねえ……。
稲船氏:
ね(笑)。だから,本当に社長になった人はみんな思ってるとおもうんです。相当の覚悟がない人が社長なんかやったってダメだ,と。社長だから得するとおもったら大間違いだと。
4Gamer:
でも世の中には,社長になりたい人っていっぱいいますよ。
稲船氏:
それはほら,キャバクラで「社長」って書いた名刺配りたいだけですよ絶対。業界にもそんな人いっぱいいますし(笑)。
4Gamer:
またそんな変な例を……(笑)。
稲船氏:
まぁでも,初めて走ろうとしてるわけじゃなくて,ずっと走ってきたつもりなので。そんなに苦しいことでもないし,ここ最近の新しい考え方というわけでもないですよ。
4Gamer:
カプコンの頃やっていたようなことを外でもやっている?
稲船氏:
そうですね。でも,苦し紛れでキレイゴトを言ってるわけじゃなくて,本当に変えられると思ってるんですよ。
4Gamer:
僕は何度もお話してるのでそれをよく知ってますが,読者に伝えるのが難しいですね,正直。
今ってなんでも消費者が決める時代になってるじゃないですか。Amazonとか価格.comとか,YouTubeとかニコニコ動画とかもそうですが。企業が出したものを企業が宣伝して,ユーザーにただ送り付けるだけという時代がずっと続いてましたけど,それってインタラクティブじゃないわけですよ。ダイレクトメールと同じで,送り付けるだけ。
でも今って,見てもらってどう感じたかをフィードバックしてもらう時代ですよね。まぁわざわざここで言うようなことでもないですが。
4Gamer:
はい,異論ありません。
稲船氏:
ちなみに僕が今一番情報を得ているところって,Facebookなんです。FBに「こんな記事が載ってたよ」って友達が教えてくれるわけですが,例えばゲームなら,その情報のソースは4Gamerなんですよね。4Gamerの記事で面白いものがあったら,みんながフィードするわけですよ。そうすると,自分が今日4Gamerを見てなくても,FBに行けば4Gamerの記事が出てくるわけじゃないですか。
いまさらの話ですが,これって僕が4Gamerというメディアから直接得た情報ではなくて,友達から得た情報なわけです。ソースが4Gamerです,というだけ。今ってこういうのがやたらに多いですよね。メディアというものすら「素人の時代」になったわけです。
4Gamer:
そうですね。だからこそ僕らの立ち位置も,よく考えていかないといけないわけですが。
ソーシャルメディアに限ったことでもなく,例えば僕が道を歩いてて,盛大にずっこけたとしますよね。そしたら誰かが勝手に写真撮ってTwitterに上げたりして「稲船さん,みごとに転んでたでー」って。
4Gamer:
Twitterはまた壮絶に拡散速度も速いですし。
稲船氏:
そう。「なんか額から血流してたでー」とか。
言うならば「素人の記者さん」にすっぱ抜かれるわけですよ,自分の失態を。僕みたいな人は芸能人と違って身近だから,何してもええやろ,と思われてますし(笑)。
4Gamer:
ジャニーズだったらオオゴトですし(笑)。
稲船氏:
そう(笑)。まぁそんなこんなのことを考えていると,やっぱりゲームクリエイターとかいっても,今までは「企業の仕事」をしてたんじゃないかなぁ,って。BtoCと言い換えてもいい。
もっとなんかこう,ユーザーと自分達クリエイターが直接つながって,ユーザーの意見をどうやって取り入れていくかっていう部分にはもっとやれることがあるのかな,とか。
4Gamer:
クリエイターがBtoCとは,また思い切った表現ですね。
稲船氏:
でも,そうじゃないですかね?
ユーザーが,こういうゲームが欲しいとか,こういうものが見たいとか,そういうことを思っても,大企業はなかなか作ってくれないわけですよね。
4Gamer:
とくにここ最近はずっと,何かの続編だったり何かのリメイクだったりというのが顕著ですしね。それが悪いとは言いませんが,そればっかりってどうなんだろう,と。
稲船氏:
そう。当然ユーザーだって不満を抱くわけですよね。不満を言うのはいいけど,言ってるだけじゃな何も前に進まないわけで,その状況を打破するものが必要になってくると思うんです。
「俺が作りたいもの」と「ユーザーがそれにお金を出してもいいと望んでいるもの」がイコールで結ばれる――Kickstarterはゲーム業界を救う未来を提示している
4Gamer:
どういう風に「打破」できると考えてます?
稲船氏:
ちょっと違うかもしれないけど,例えばデジカメやPCなんかではよく色を選べたりスペックを選べたりしますよね。
4Gamer:
つい真剣に選んじゃうんですよね,あれ。
稲船氏:
そう。あなたのものだし,あなたが決めるんですよ,っていうそのカスタマイズ的/ゲーム的な部分が結構無視できないんですよね,一般消費財では。それが完全に僕の思ってる方向とイコールというわけではないんですけど,そういうことから始まるのかな,と思ってます。企業の押しつけから,ユーザーのチョイスへ。
「あなたのものですよ」という打ち出し方のほうが,買った側としてはすごく満足度が上がるわけですよね。モノがなかった時代は,別に何色でもええから,とにかく車が欲しいって,っていうそういう時代もあったかもしれませんが,今はモノがあふれた時代ですから。
4Gamer:
つまりゲームのカスタマイゼーション……?
稲船氏:
いや,例えばですよ。4Gamerで,どのクリエイターにどんなゲーム作ってほしいか,なんのハードで作ってほしいか,というアンケートを取ったとして,じゃあそこで「稲船敬二にアクションゲームを作ってほしい。PS3で」というのが多くの意見であったとしたら,それが実行できるようなシステムがあれば,ユーザーが望んだものを作ったというわけになるわけですよね。
まぁもちろん,そこまでのものは今はまだないですけど。
4Gamer:
ゲームでは聞きませんね。
これは社会全体の話だけではなくて,企業という単位でもそうですよね。お前が作りたいもの作れや,なんていう企業はないです。「新規のアクションゲームをPS4で作りたいんです。20億円かかります」とかいっても「いいからソーシャルゲーム作っとけや」と言われがちです。
もちろんその人がソーシャルゲームを作りたい人なのであれば話は簡単なんですが,PS4でアクションゲームを作りたいような人がソーシャルゲームを作れと言われても,それって周りで誰も望んでいないものを作らなきゃいけないわけです。
4Gamer:
“会社”は望んでるかもしれませんよ。
稲船氏:
まぁそうでしょうね(笑)。でもそのクリエイターは望んでないし,そもそもそれをユーザーが望んでるかどうかすら調査をしていない。PS4のタイトル作るのに20億円かかるリスクがあるけど,ソーシャルゲームだったら5000万円で作れるんだから,それやっとけ,と。
でも例えば,アンケート調査の結果で一番になったら,少なくともその母集団の中では「一番望まれたもの」になるわけですよね。
4Gamer:
そこでKickstarterになるわけですか。
稲船氏:
ええ。日本でもクラウドファンディングはボチボチ知名度が高くなってきてますし,ここいらが一つのきっかけになると思ってるんですよ。なにせこれは「俺が作りたいもの」と「ユーザーがそれにお金を出してもいいと望んでいるもの」がイコールで結ばれる,いままで業界には存在しなかったアプローチですから。
4Gamer:
確かに,稲船さんが常々言ってることの一つ――といっても結構大きな部分ですが――は解消されますね。
稲船氏:
これは,稲船敬二が作りたいといってお金を集めたもので,出来上がっても稲船敬二のモノです。例えばこの(と言って近くのコップを手に取る)画期的なコップを,どこかの大きな企業が商品化させたいと言ってきたときには,権利が僕にあるんです。
4Gamer:
今までのゲーム業界のありように変化を及ぼすには十分ですね。
稲船氏:
今は,カスタマイズが世の中で求められている時代だし,クラウドファンディングというものは,その時流に乗っかって,今まさに芽生えたところだと思うんですよ。欲しいものを,欲しい人に作ってもらう。欲しいものを,作ってほしい企業に作ってもらう。
4Gamer:
そうはいっても試練は山積みですよねきっと。
稲船氏:
そうですね。
とてもじゃないけど簡単な話ではないです。簡単ではないですけど,可能性は十分にあります。可能性さえあれば道は開けます。可能性がゼロであれば無理ですが。
クラウドファンディングは新しいゲームの未来で,ゲームクリエイターばかりかゲーム業界を救う未来を提示してくれていると思ってるんです。その中で今最も大きなものが,Kickstarterなんです。
4Gamer:
そこでも先頭を走る,と。
稲船氏:
確かに大失敗をするかもしれませんし,大成功するかもしれません。恥をかくかもしれないけど,今自分でやらなきゃダメなんです。
4Gamer:
自分がクリエイターとして先頭を走って,新しいゲーム業界の未来を切り開くぞ,と。
稲船氏:
ええ。可能性の一つとしては,十分に大きいんじゃないでしょうか。
4Gamer:
まったくブレてない稲船さんを見られてよかったです。Kickstarterを始めとした新作,がんばってください。
……ちょっと長く話しすぎてしまったようです。ありがとうございました。インディーズで考えてる「何か」もそのうち聞かせてください。
稲船氏:
じゃあ,次は短めに2時間くらい(笑)。
ーー2013年9月27日収録
- 関連タイトル:
Mighty No. 9
- 関連タイトル:
ソウル・サクリファイス デルタ
- 関連タイトル:
YAIBA: NINJA GAIDEN Z
- 関連タイトル:
YAIBA: NINJA GAIDEN Z
- 関連タイトル:
YAIBA: NINJA GAIDEN Z
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