インタビュー
「Winning Post 8」は,血統に加えて人と馬の“縁”を描く。シリーズ20周年の集大成となるナンバリングタイトルが掲げる「血統のロマン」について,プロデューサーに聞いてみた
牧場は生産や育成などに特化したカスタマイズが可能。こだわった馬達の挙動も必見
男色ディーノ:
シリーズを重ねていくと,どんどんできることが多くなり,ゲームのボリュームが増えていきますよね。なかなか大変だと思うのですが。
とにかく大変なのは,データの量が多くなっていくことですね。ゲームの性格上,前作よりデータを減らすという選択肢はありませんから。今作は実在馬だけで1万頭近く,前作比で2500頭前後のデータが増えています。開発チームには,ずっとシリーズのデータを管理してきたスタッフがいるのですが「そろそろ勘弁してください」と言われています(笑)。
男色ディーノ:
まあ,こういうタイプのゲームで前作よりデータが減ると言ったら,ファンは怒りますよね……。
山口氏:
そうですね。あと,今作ではレースシーンや牧場を3Dグラフィックス化しているのですが,馬の動きと質感,牧場シーンのクオリティアップには相当力を入れました。とくに牧場は,最初から最後まで一人のプログラマーと一人のCGスタッフが付きっきりで,ああでもない,こうでもないとやっていましたね。
実は最初の牧場は,製品版とはまったく違うものだったんですよ。それを私が「これじゃ全然ダメだ」と変えさせたんです。
男色ディーノ:
具体的に,どこがダメだったんでしょう。
山口氏:
何かパッとしなかったんですよね。ワクワクしないというか。私としては,馬好きが一目で見惚れるようなシーンにしたかったんですよ。馬が動いているのをずっと見ていたくなるようなものですね。そこで,開けた場所で馬が生き生きとしている姿が見られるようなものに変更しました。
そうやってこだわっているうちに,プログラマーもCGスタッフも楽しくなったんでしょうね。本当に開発終盤までずっと牧場をいじっていただけでなく,私の知らないうちに馬のモーションがどんどん増えていったんですよ。いつの間にか,馬がゴロゴロ転がっていたり(笑)。
男色ディーノ:
おお,それはいい!(笑)。遊ぶ側としては歓迎すべき傾向ですよ。
山口氏:
ええ。伏せたり,転がったり,じゃれあったりと,最終的にいいものに仕上がったと思います。スタッフがいい仕事をしてくれました。
男色ディーノ:
牧場は,ゲームの進行に合わせて変化していくんですよね。
山口氏:
はい。最初は施設も最小限で,本当に何もありません。そこに,レースで貯めたお金でさまざまな施設を配置していきます。従来シリーズの牧場は,最初から施設がそろっており,いつかは全部レベルをMAXにできる仕様でしたが,今作では敷地の面積が限られているので,プレイヤーは取捨選択を迫られます。たとえば繁殖馬繋養数を増やす施設や種付け効果のある施設を配置・強化すれば,いい馬を生む牧場に特化できますし,ほかの施設を増やせば育成能力の高い牧場に特化できます。
男色ディーノ:
牧場作り自体も楽しめると。
山口氏:
ええ。さらに,騎手や調教師との友好関係も重要ですから,そうした人脈を深めるためのサロンのような施設を設置することもできます。また最初は資金繰りが大変ですから,最初に観光施設を作ってお金を稼ぎ,あとから生産なり育成なりに特化した牧場に作り替えることも可能です。そういった意味で,今作ではプレイヤーごとに違った牧場を作ることになるでしょうね。
男色ディーノ:
プレイの幅が広く,遊びがいがありそうですね。
山口氏:
実際,テストプレイをしたスタッフ3人に,どんな牧場を作ったか尋ねたのですが,それぞれ違うタイプでした。似たような作りに見えても,それぞれに重視するところが異なるので,まったく同じになるというケースは少ないかなと思います。
男色ディーノ:
それでは,「Winning Post 8」をプレイする上での目標を教えてください。もちろん,こういうゲームですから,プレイヤーそれぞれに最終目標は違うと思いますが,これを達成するとひとまずクリアというような目標はありますか?
山口氏:
基本的には大きなレースで勝つことが目標となり,いくつかエンディングが用意してあります。今作のストーリーは,第1回ジャパンカップで大惨敗し「まだまだ世界は遠い」と感じたプレイヤーが,その翌年となる1982年から世界を目指して頑張るという展開ですから,一番身近なエンディングは,世界の主要なGIを全部制覇することです。まあ,身近と言っても,結構大変ですけれども。
男色ディーノ:
と言うと,海外レースが増えているわけですか。
山口氏:
そのとおりです。
男色ディーノ:
なるほど。差し支えなければ,一番難しいエンディングについても教えてもらえますか?
山口氏:
最優秀騎手と最優秀調教師,そして最優秀馬主賞と最優秀生産者を,家族で独占することです。もちろん簡単に達成できることではありませんから,最大のやり込み要素として用意しました。
そのほか,牝系をつないで「名牝」と呼ばれる牝系を育てるというエンディングも難しいですね。どちらも達成するまでに100年は掛かると思います。
PC版は「netkeiba.com」と連動。PS3版/PS Vita版はオンライン対戦を追加予定
男色ディーノ:
「Winning Post 8」では,さまざまな新しい要素が加わりましたけれども,その中で,プレイヤー一族の繁栄や,人と馬の絆を軸にするというように,“人”をフィーチャーしたことについて,「Winning Post」シリーズのファンからの反応はどうでしたか。
「競馬ゲームなのに,人?」という感じで,最初は芳しくなかったですね。競馬ゲームなのに,恋愛ゲームやキャラクターゲームのようになってしまうのではないかという懸念を抱かれたんじゃないでしょうか。とくに結婚というところで,そう思われた方が多かったようです。
しかし情報を順次公開していく中で,「結婚と言っても,そんなにキャラを押し出しているわけじゃないんだ」と,何となくご理解いただけたんじゃないかという感触が得られましたので,そんなに心配はしていないです。また実際にプレイしてみれば,皆さん自分の子どもが可愛くなると思います。
男色ディーノ:
確かにお話を聞いていると,今作の結婚は,恋愛云々ではなく,人の血をつなぐための要素というイメージですからね。そうなると馬の血統と変わらないですから,ファンも納得できると思います。
山口氏:
ええ。子孫を騎手や調教師に育てて,より有利にゲームを進めましょうということなんですよ。
男色ディーノ:
そう言えば,今作では,何頭まで馬を所有できるのですか?
山口氏:
各年齢10頭まで所有枠を拡大しました。また引退年齢も1歳引き上げましたから,最大70頭まで所有できます。国内でこの数ですから,米国,欧州の牧場も開設すれば,その3倍ですね。
男色ディーノ:
これは朗報ですね。今までは,実在馬だけで所有枠がいっぱいになってしまいましたから。
山口氏:
ええ。ファンの皆さんからも,たくさんのリクエストが寄せられていた部分です。実は,お話ししてきた新要素よりも,この所有枠拡張の話のほうが,皆さんの反応がよかったりするんですよ(笑)。ともあれ,これで育てた馬を泣く泣く手放すようなケースがかなり減るんじゃないでしょうか。
男色ディーノ:
ええ,とても助かります(笑)。
ところで今作は,PC,PS3,PS Vitaと3つのプラットフォームでリリースされますが,それぞれに違いはありますか?
山口氏:
ベースは全部同じですが,オンライン要素に少々違いがあります。まずPC版では,ゲームの馬情報画面が「netkeiba.com」さんのサイトと連携しており,ブラウザが起動してより詳細な情報を確認できます。またnetkeiba.comさんに会員登録していれば,限定キャラクターがゲームに登場します。このキャラがなかなか尖っているので,ぜひ確認していただきたいですね。
PS3版とPS Vita版は,全プレイヤーのプレイ状況を示す「みんなの記録」を,PlayStation Networkで見ることができます。こちらでは,どれだけレースで稼いでいるかといったランキングをはじめ,家族の状況やプレイ傾向などの統計情報を確認できます。
男色ディーノ:
なるほど。ほかのプレイヤーが,どんなプレイをしているか,傾向を確認できるわけですね。
山口氏:
ええ。「Winning Post」シリーズは,シングルプレイ専用のゲームですから,自分以外のプレイヤーがどうやって遊んでいるのか,なかなか分かりませんから。たとえばトウカイテイオーで三冠を勝つなど,史実にはないけれども,ゲームでは実現できるような,少し難度の高い要素を何人くらいが達成しているのかといったことも確認できます。
男色ディーノ:
とすると,リセットを繰り返していると,ばれてしまう?
山口氏:
データをアップしないと記録に反映されないので大丈夫ですよ(笑)。あとはPS3版とPS Vita版は,発売後にオンライン対戦モードを実装する予定です。これは全国各地のプレイヤーが育成した馬を対戦で競わせるという内容で,実装時期を含めた詳細は追ってお知らせします。
男色ディーノ:
対戦ができるとなると,やはり強い馬が欲しくなります。そこでぜひ教えてほしいのですが,いろいろ交配を重ねていった馬と,実在馬同士の掛け合わせで生まれた馬では,どちらが強くなるのでしょう。
山口氏:
交配を重ねたほうが強くなりやすいと思います。「Winning Post」のプロとも言えるコアなファンによると,本当に強い馬は代を重ねないと生まれないそうです。特定の代に特定の因子を持たせるため,敢えて意味がないように見える代をワンクッション挟むようなこともやっているとも聞きました。
男色ディーノ:
やり込み方がハンパないですね。でも,普通にプレイするぶんには,そうやって突き詰めなくとも楽しめるのが「Winning Post」シリーズのいいところだと思うんですよ。
山口氏:
そのとおりです。そもそも私自身,今お話したような突き詰めたプレイをしていませんから。本当にそれがベストの方法なのか,頭がショートしてよくわかりません(笑)。
男色ディーノ:
だから伝聞なんですね(笑)。
山口氏:
ええ,私どもの想定の上をいってますよ。基本的には父親と母親を選んだときの評価と,可能性を表す「爆発力」の高さの二つを見て決めるだけでも十分なんです。あとは,名前を知っている馬を選んでみるくらいで,ゲームを進めるにはまったく問題ありません。そのほかの進行も,ただ週を送っていくだけで,ゲーム内の秘書がいい感じに進めてくれますし。
男色ディーノ:
それだけ奥が深いということなんでしょうね。そんな奥深さも持つ「Winning Post」シリーズですが,あまり競馬を知らないし,これまでシリーズに触れたこともないという人もいます。これから,「Winning Post 8」を遊んでみようという人に向けて,アドバイスなどはありますか?
山口氏:
今作では,最初の1年間がチュートリアルとなっており,基本的な流れは秘書がアドバイスしてくれます。また,家族のつながりという部分を加えたことで,馬ばかりという雰囲気にならず,イベントなどもあるので初心者の皆さんにはとっつきやすいのではないでしょうか。
あとはやっぱり牧場ですね。とにかく見ているだけで楽しいです。私も開発中は牧場ばかり見ていたので,スタッフからよく「何やってるんですか」と怒られていました。
男色ディーノ:
いいですね,眺めていたいです(笑)。では,序盤の攻略に関する初心者向けのアドバイスがあれば,ぜひお願いします。
山口氏:
難度はイージーからエキスパートまで用意しているので,まずはイージーモードをオススメします。
また個人的なオススメですが,今作はゲームをスタートするときに,独身か既婚かを選べます。独身だと,最初にもらえる繁殖牝馬の中に高確率で「チヨダマサコ」という馬がいますから,これを選んでみてください。配合評価欄に☆マークのついた種牡馬リィフォーと掛け合わせると史実に沿って,ニッポーテイオーという,ものすごく強い馬が生まれます。そうなると賞金をバンバン稼げますから,ゲームの序盤が相当楽になります。
さらにこの馬が引退したあたりで,あの「パシフィカス」を手に入れるチャンスがきます。この牝馬を購入できれば,こちらも史実のようにビワハヤヒデとナリタブライアンを生産できますから,資金的にはかなり余裕ができると思います。あとはもうご自由に。
男色ディーノ:
思ったより具体的な情報ですね。でも,このシリーズはお金持ちになってそこで終わりという作品ではないですから,とりあえずお金を持っていろいろ遊んでみるのは,「Winning Post 8」を知るのにちょうど良さそうです。
それでは最後に,「Winning Post 8」に期待する人達に向けて,あらためてメッセージをお願いします。
山口氏:
「Winning Post」シリーズを20年以上も愛してくださる方が,たくさんいらっしゃることに大変感謝しています。シリーズの軸となる血統の継承とロマンに関しては,「Winning Post 8」でもきちんと踏襲し,そのうえで遊びを追加していますので,新しい感覚で遊んでいただけるのではないでしょうか。JRAの大幅な番組改編への対応はもちろんのこと,海外馬や地方馬といったコアな部分も盛り込んでいますので,これまでのシリーズファンの皆さんはぜひご期待ください。
また競馬は好きだけれど「Winning Post」は初めてという方もいらっしゃると思います。実はこのゲーム,ただボタンを押しているだけでも,それなりに進行してしまう簡単なゲームです。その中で,「ここだけは自分でやろう」という部分を少しずつ増やしていくと,より楽しめる作りとなっていますので,難しく考えずにぜひ一度,手にとっていただけると競馬がもっと身近に感じられるのではないでしょうか。このゲームを通して,さらに競馬を好きになってください。
男色ディーノ:
ありがとうございました。
「Winning Post 8」公式サイト
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