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Tegra K1の実動デモが国内初公開。Kepler世代GPUを搭載する次世代SoCの威力をムービーでチェック
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印刷2014/01/31 00:00

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Tegra K1の実動デモが国内初公開。Kepler世代GPUを搭載する次世代SoCの威力をムービーでチェック

CES 2014で概要が明らかにされたTegra K1
画像集#002のサムネイル/Tegra K1の実動デモが国内初公開。Kepler世代GPUを搭載する次世代SoCの威力をムービーでチェック
 2014年1月上旬に米国ラスベガスで開かれた「2014 International CES」(以下,CES 2014)に合わせて,NVIDIAは次世代モバイルSoC(System-on-a-Chip)「Tegra K1」の概要を明らかにした。同社がかねてから予告していたとおり,KeplerアーキテクチャのGPUを統合した注目すべきSoCである。

[CES 2014 2014]NVIDIAの次世代SoC「Tegra K1」登場で,Keplerはモバイル端末からスパコンまでをカバーするGPUとなる


 そんなTegra K1に関する報道関係者向け説明会が,1月30日に都内のNVIDIA Japanで開催された。説明自体はCES 2014にて公表されたことが中心で,目新しい話は少なかったのだが,Tegra K1を搭載したタブレット端末の試作機が披露されたのは,筆者の記憶する限り国内では今回が初めてだ。

おそらく国内初披露となる,Tegra K1搭載のタブレット端末型試作機
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 Tegra K1の説明を担当したのは,NVIDIAのマーケティング本部テクニカルエンジニアの矢戸知得氏である。氏による実機のデモと合わせて,説明会の概要をレポートしよう。


スマートフォンやタブレットにAAAタイトルを移植可能とするTegra K1


PC向けのGeForceとモバイル向けのTegraでは,アーキテクチャの異なるGPUが使われてきたが,そのギャップがTegra K1で一気に縮まるとされている
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 あらためて振り返っておくと,現行世代の「Tegra 4」まではGPUコアとして,PC用GPUでいうDirectX 9世代のGPUアーキテクチャを採用していた。「頂点シェーダとピクセルシェーダが分離した,前世代のGPU」(矢戸氏)を使い続けてきたわけだ。
 それに対してTegra K1では,現在PC向けGPUで利用されているのとほぼ同じ,Kepler世代のGPUコアを採用するのが大きな違いである。PC用GPUでいうなら,DirectX 11世代の統合型シェーダが,タブレットやスマートフォンでも利用可能となるのだ。

矢戸知得氏(NVIDIA マーケティング本部テクニカルエンジニア)
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 現在では,リッチなグラフィックスを多用したゲームの開発には極めて多額の投資が必要になっている。とくに多くの投資を行って開発されたゲームが,「AAAタイトル」と呼ばれたりすることは,読者もよくご存じだろう。そして莫大な投資を回収するために,AAAタイトルは複数のプラットフォームに向けてリリースされるのが当たり前になっている。
 海外では昨年から販売されているPlayStation 4やXbox Oneといった新世代の据え置き型ゲーム機には,DirectX 11世代のGPUが搭載されている。今後登場するAAAタイトルのグラフィックスは,当然ながらこれらに合わせて,より高いレベルに引き上げられるだろう。

開発に多額の投資を必要とするAAAタイトルは,利益を出すためにマルチプラットフォームに展開するのが一般的だが,プラットフォームのバリエーションが拡大していることが,壁になりつつあるというスライド
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 そうなったときに「プラットフォーム間で異なるGPUアーキテクチャが採用されていることが(ゲームデベロッパにとっての)壁になる」と矢戸氏は主張する。
 ゲームデベロッパがマルチプラットフォームでゲームを展開しようとしたときに,モバイル端末もターゲットに含めたいと考えたとしよう。ところが,SoCが搭載するGPUコアのアーキテクチャが,他のプラットフォームと大きく異なっていると,移植の手間は増えるわ,クオリティも大きく引き下げなくてはならないわと,問題が続出することになるのだ。

 Tegra K1は,プラットフォームごとに異なるGPU性能のギャップを埋めるという意味で,非常にインパクトがあるというのが矢戸氏の主張だ。具体例として氏が引き合いに出したのは,Epic Gamesのゲームエンジン「Unreal Engine 4」(以下,UE4)である。CES 2014でも明らかにされたように,UE4はTegra K1に対応する予定だ。

[CES 2014 2014]Tegra K1ならDX11.1世代のゲームがここまで動く。「Unreal Engine 4」のデモや実ゲームタイトルをムービーでチェック


Tegra K1に対して,Epic Games創始者のTim Sweeney(ティム・スィーニー)氏が寄せたコメント。モバイル端末の性能向上に対する予想を,Tegra K1が覆したという
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 Tegra K1とUE4については,Epic Gamesの日本法人であるエピック・ゲームズ・ジャパンにてサポートマネージャを務める下田純也氏が登壇し,もう少し詳しい説明を披露した。
 下田氏によると,「Unreal Engine 3(以下,UE3)世代のモバイル対応は,家庭用ゲーム機に比べて機能を落とす必要があった。いくつかのゲームタイトルでは,UE3のシェーダがそのまま使えず,少し(機能を)落として使うといった工夫が必要になっていた」そうだ。
 それに対してTegra K1とUE4では,「まったく機能を落とさず動作させることができた。これは本社の人間も驚いている」という。

 ちなみに下田氏によると,自前のエンジンを持っているような大手ゲームデベロッパもUE4には興味を示しているそうで,「近いうちに具体的な発表ができると思う」とのことだった。


PCでしか動作しなかったデモがTegra K1で動く


 さて冒頭でも触れたように,今回の説明会ではTegra K1を搭載したタブレット端末の試作機が披露された。試作機の筐体は,7インチサイズでTegra 4を搭載するAndroidタブレット「Tegra Note 7」と変わらないが,中にはTegra K1が搭載されているそうだ。液晶パネルの解像度が1920×1080ドットになっているのが,パッと見て分かるTegra Note 7との違いになる。

 試作機を使って披露されたデモは4種類。いずれもCES 2014で披露されたものだが,実際にタブレット端末で動作する様子は,改めて見ると驚かされる。
 まずは,UE4を使って室内の風景をリアルタイムで描画する「Living Room」というデモを見てほしい。


 下田氏による解説の音声も収録しているが,少し聞き取りづらいので,要点をまとめて書き出しておく。このデモはUE4を用いてPC上で作成されたものを,Tegra K1上で動作させているものだ。PCと同じシェーダプログラムがTegra K1でも動作しているという。そのため,複数の光源や大局照明(Global Illumination,大域照明ともいう)を用いたライティングや,床や椅子やじゅうたんの質感が非常にリアルだ。
 床に表現されている映り込みは,素材の設定を変えることでリアルタイムに調節できるそうだが,これもPCと同じ設定で動作しているとのこと。レンダリング解像度も1920×1080ドットであり,要はPCと同じクオリティのグラフィックスを実現できているわけだ。
 とはいっても,動画を見れば分かるようにフレームレートはあまり高くなさそうだ。せいぜい15fps前後ではないか。PC並みの表現をさせると,Tegra K1には荷が重いこともあるのは致し方ないだろう。

 ちなみに,UE4のTegra K1への移植は,NVIDIA社内で行われたそうだ。そのためTegra K1専用の拡張APIなどが用いられている可能性もある。モバイル端末向けのUE4が,当面の間,Tegra K1専用になることもあり得るだろう。採用されているAPIが何かは下田氏も矢戸氏も情報を持っていないとのことだったので,後日,情報が明らかになったらお伝えしたいと思う。

 2つめのデモは,NVIDIAが「GeForce GTX TITAN」発表時に披露した「Face Works」である。GeForce GTX TITAN用に作成されたグラフィックスデモが,タブレットでも動作するというのには驚かされる。
 こちらもデモのムービーを掲載しておこう。OpenGL ES 3.0とOpenGL 4.4を切り替えるシーンや,ワイヤーフレーム表示によってはっきりと確認できるテッセレーション効果,光の透過処理切り替えといったデモが披露されているので,そういった点に注目してほしい。


Tegra K1はGeForce GTX TITANと同じAPIと,同じ機能をサポートする。OpenGLはOpenGL ES 3.0に加えて,OpenGL 4.4もサポートされている
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 ムービーを見てのとおり,動作は非常にスムーズで,こちらはフレームレートもそこそこ高いように見える。矢戸氏はこのデモを披露しながら,Tegra K1がGeForce GTX TITANと同じAPIをフルサポートしていることを強調していた。

 3つめのデモはTegra K1のために作られたらしいデモで,NVIDIAの「PhysX」を用いた物理シミュレーションにより,オブジェクトの破壊を表現している点に注目してほしい。
 Tegra K1は,演算ユニットたる「SMX」(Streaming Multiprocessor eXtreme)を1基しか搭載しないので,理屈のうえではPhysXとグラフィックスのタスクを同時には実行できないはずだ。しかし,このデモでは,両者が同時に動いていることが確認できる。


 最後のデモは,横スクロールアクション「TRINE 2」を動作させるというデモだ。このゲームは,PCやMac,PlayStation 3やXbox 360のほか,Wii U版も発売されているという典型的なマルチプラットフォーム対応ゲームである。
 矢戸氏によれば,Tegra K1上のTRINE 2は,PC版とほぼ同じクオリティで動作しているそうだ。見たところ,ややフレームレートが低めのシーンもあるようだったが,実際の動きはムービーで確認してほしい。



CPUコアのCortex-A15には,最新の「r3p3」を採用して低消費電力化


 説明会の後半では,矢戸氏によりTegra K1のアーキテクチャ解説が行われた。

 まずCPUに関して注目すべき点として,Tegra 4や「Tegra 3」と同じく,「4-PLUS-1」構成を採用していることが挙げられるだろう。Tegra K1がCPUコアに「Cortex-A15」を採用することは,以前から明らかにされていたものの,記事冒頭に掲載したCES 2014で披露されたダイのイメージイラストでは,省電力コアと思われる部分に他のCPUコアが小さく描かれていた。
 そのため,省電力コアに「Cortex-A7」を用いているのではないかと考えていた人も多いと思うが,矢戸氏はそれを明確に否定。Tegra K1は通常仕様のCortex-A15を4基と,省電力仕様のCortex-A15 1基を組み合わせるという,従来どおりの4-PLUS-1構成を採用しているとのことだ。製品イメージはあくまでイメージで,省電力コアを小さく見せているだけなのだった。

Terga K1のアーキテクチャの概要を示したスライド。右側に「TSMCの28nm HMPプロセス」とあるが,正しくは28nm HPM(High Performance for Mobile)プロセス技術である
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 ちなみに,Tegra K1が搭載するCortex-A15には,「r3p3」(revision 3 patch 3)という最新のIPを採用しているとのことで,これが省電力化や高性能化に大きく貢献しているそうだ。

Tegra 4とTegra K1のCPU性能を示すグラフ。縦軸が動作クロックで,横軸が消費電力である。Cortex-A15 r3p3を採用したことで,同じ性能なら45%の電力削減,同じ消費電力なら1.4倍の性能向上が可能になったという
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 前段で簡単に触れたが,Tegra K1のGPUは,1基のSMXで構成されている。Keplerアーキテクチャを採用する以上,192基のCUDA CoreやL1キャッシュ,テクスチャユニット,ジオメトリエンジン「PolyMorph Engine 2.0」などからSMXが構成されるというのは変わらずだ。
 ただし,GeForce GTX TITANなどで採用される第2世代Keplerコア「GK110」と比べると,倍精度浮動小数点数演算プロセッサ(以下,DP)がない,テクスチャユニットが半分の8基といった違いがある。NVIDIAによれば「シリコン的にはもちろん異なるが,イメージとしては(「GeForce GTX 680」の「GK104」コアに近い」とのことだった。

Tegra K1には1基のSMXが集積されている。矢戸氏はGK110ベースと説明していたが,厳密にはGK104に近いとのこと
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 Tegra K1にKepler世代のGPUコアを搭載するに当たっては,さまざまな消費電力削減の工夫が盛り込まれたという。矢戸氏は,「とくに消費電力が大きい外部ビデオバッファへのアクセスを減らす工夫が施されている」と述べている。
 たとえば,Zテストで奥行きを判定してデータを減らす「Z-Culling」や,テクスチャ圧縮,L2キャッシュを用いてフレームバッファへのアクセスを減らすという一般的な削減手法に加えて,「LightSpeed Technology」と呼ばれるビデオバッファの圧縮伸張技術を使って,メモリアクセスを抑えているとのことだ。
 ちなみに,ARMが提供しているGPUコアの「Mali」でも,LightSpeed Technologyと似たような手法が使われている。しかし矢戸氏は,LightSpeed TechnologyとARMの技術は,直接の関係はないと述べていた。

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ビデオバッファへのアクセスは消費電力が大きいので,オンチップメモリで処理が完結するように,さまざまな手法を用いてアクセスを削減している
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ビデオバッファを圧縮,伸長するハードウェアを搭載して,メモリアクセス時のデータ量を削減する「LightSpeed Technology」なる技術も導入する


NVIDIA製64bit CPUコア「Denver」の詳細は

明らかにされず


 アーキテクチャ解説の最後には,ARMv8アーキテクチャに基いてNVIDIAが開発した64bit CPUコア「Denver」に関する言及もあった。

Tegra K1には,64bit CPUコアのDenverを2基搭載する製品も用意されている
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 Tegra K1はCortex-A15の4-PLUS-1構成を搭載する製品に加えて,CPUコアとしてDenverを2基搭載する製品も用意されることが公表されている。Denverは7-wayのスーパースカラ(Superscalar,スーパースケーラともいう)型CPUで,128KB+64KBのL1キャッシュを備えており,Tegra K1では最大動作クロック2.5GHzで動作するという。
 また,CES 2014でTegra K1に関するグループインタビューを行った担当編集者によると,テクニカルマーケティング統括担当のNick Stam(ニック・スタム)氏は,Denver版のTegra K1ではモバイルだけでなく,スーパーコンピュータ分野も視野に入れていることや,Cortex-A15版のような省電力コアは搭載しないことを語ってくれたそうだ。

 とはいっても,実のところCES 2014で公開された以上の情報は,今回は公開されなかったし,CES 2014でもDenverに関する詳細情報は公開されていない。現状では分からないことだらけだ。消費電力や,ターゲットになるプラットフォームといった基本的な話も,今のところはできないとのことで,「今後の情報公開に期待してほしい」(矢戸氏)とのことだった。少々残念ではあるが,2014年後半とされるリリースに向けて,情報は小出しにされていくのではなかろうか。

 Tegra K1説明会の概要は以上のとおりだ。矢戸氏はTegra K1によって,ゲームのマルチプラットフォーム展開が促進されるという話をしていたが,新世代ゲーム機では,性能面でモバイル端末との差別化を図りたいゲーム機メーカーにとっては,むしろ歓迎されざる話かもしれない。もちろん,ゲーム機メーカー側の事情をNVIDIAが斟酌(しんしゃく)する理由はないわけだが。

 もっとも,今回のデモで見たところ,据え置き型ゲーム機並みのグラフィックス品質をTegra K1で実現しようとしても,さすがに同等のフレームレートは実現できなさそうではある。実際にマルチプラットフォームのゲームを作るとなれば,フレームレートを稼ぐために,品質やレンダリング解像度を少し落とすといった最適化が必要になると思われる。

 Tegra K1を搭載するモバイル端末が,ゲームプラットフォームとして見たときにどういう位置付けがなされ,どのようにユーザーに受け入れられるのか,現時点で予測するのは困難だ。それでも,実機の登場が待ち遠しいSoCであることは間違いなく,今後の情報公開がますます楽しみになってきたといえるだろう。

NVIDIAのTegra K1製品情報ページ


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