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[GDC 2016]「PlayStation VRの価格に自信あり」。数十という対応タイトルの存在も明らかになった,SCEプレスカンファレンス
PSVRの最終仕様版の詳細が発表
PSVRは,2014年にプロトタイプ「Project Morpheus」として発表されて以降,多くのゲーム開発者が興味を示し,さまざまなVRコンテンツやVRデモを発表するに至った。ハウス氏によれば,その数たるや,いまや230社を超えたという。
「その規模は,インディーズクラスから大手パブリッシャに至るまでさまざまだが,その230社以上のメーカーそれぞれが,独創的なアイディアを駆使してVRならではの新しい表現手段に取り組んでいる」とハウス氏。ここで,現在PSVR向けに開発が進められているVRコンテンツの映像が流された。
この映像が終わると,再びハウス氏が登場。「業界各所からのフィードバックを経て,数回のプロトタイプ制作を通し,ついにPSVRの最終版をお届けできることになった」として,製品版PSVRのパッケージ内容の写真を公開した。
パッケージ内容は,「VRヘッドセット」と呼ばれるHMD本体に加え,プロセッサユニットと呼ばれるインタフェースボックスが付属し,さらに各種接続ケーブルが含まれる。接続ケーブルは,PS4とプロセッサユニットを接続するUSBケーブルとHDMIケーブル,プロセッサユニットとHMDを接続する独自仕様のケーブルの総計3本だ。
なお,HMDの位置検出に使われる「PlayStation Camera」(以下,PS Camera)およびコントローラ的な扱いとなる「PlayStation Move」(以下,PS Move)は付属せず,別売り扱いとなる。
ハウス氏は「製品仕様については,昨年のプロトタイプから大きな変更はない」と述べ,その製品仕様を箇条書きにしたスライドを画面に出した。
映像パネルは高速応答性に優れた有機ELを採用。パネルサイズは5.7インチ。解像度は1920×1080ドットのフルHDで,画素配列はG画素のみフル解像度の千鳥足模様のペンタイル配列方式ではなく,テレビなどに使われる映像パネルと同等のRGB全画素がフル解像度のRGBストライプ配列を採用することが強調された。
映像リフレッシュレート(対応フレームレート)は90Hzと120Hz。ちなみに,PS4のHDMI端子(HDMI Ver.1.4)は,テレビとの接続時は60Hzまでのリフレッシュレートとなるが,PSVRと接続した時に限って,90fps,120fps出力に対応することが明らかとなっている。
公称遅延時間は18ms未満とあるが,これについては少し解説が必要だろう。PSVRでは標準SDKにて直前までの頭部の動きから次のフレーム時の頭部の方向位置を予測する仕組みが搭載されている。また,GPUが映像の描画を開始した時刻と描画を完了した時刻との差異を吸収すべく,HMD内の画面に映像を表示するときに,表示位置や映像形状補正(パノラマ歪み付与)を行う「Temporal Reprojection」処理も施されている。
そして公称遅延値の「18ms未満」とは,前者の「頭部位置/向きの予測なし」で「Temporal Reprojectionあり」にしたときの遅延時間を意味している。なお,「頭部位置/向きの予測あり」と「Temporal Reprojectionあり」を組み合わせた場合は,理論上の遅延はゼロとなる。要するに,PS4から出力された映像がPSVRのHMDに表示されるまでのシステム遅延が18msある……という理解でいいだろう。
このほか,ハウス氏はPSVRについて,頭部の向き/位置に呼応した立体音響システムに対応していること,付けやすくて脱ぎやすいゴーグル型デザインを採用していることなどを改めて紹介した。
価格に自信あり。日本価格は税別4万4980円。本年10月に世界同時リリースを予定
ハウス氏は,「新しい技術を普及させるためには,適正な価格で提供することが重要だと考えている。とくに,これから新しい一般消費者向けの商品となる“VR”という製品ジャンルの価格付けについては,ことのほか重大な決断となった」と前置きをし,北米,ヨーロッパ,イギリス,日本での価格と発売時期を発表した。
発表された価格は,北米で399ドル,ヨーロッパで399ユーロ,イギリスで349ポンド,日本で4万4980円(いずれも税抜)で,発売時期は2016年10月となる。
この価格については,受け止める立場によって評価が分かれるようだが,ハウス氏としては,「非常に意欲的な価格を実現した」と自負しているようで「この価格で提供することが実現出来るのは,Sony Computer Entertainmentが20年にわたってゲーム関連機器を開発・製造してきた実績があるだけでなく,我々が70年にわたって家電製品を開発・製造してきたソニーグループのDNAを受け継いでいるからに他ならない」と述べていた。
シネマティックモード/メディアプレイモードでPSVRをHMZシリーズ的に活用可能
具体的には,PSVRを,VRHMDとして活用するのではなく,ソニーのHMD製品であるHMZシリーズのような,映像ビューアとして活用できるということである。
ハウス氏によると「PSVRの表示面に,16:9アスペクトのコンテンツを遠・中・近の三段階ズームレベルで表示出来る機能を提供する」と述べていた。実質的には,PSVR内の仮想世界に大画面テレビを設置して映像が楽しめる…と言うことである。
また,このモードは映像だけでなく,VRに対応していない普通のゲームをプレイすることにも利用可能だという。
さらにハウス氏は「PS4のシステムソフトウェア側の標準機能としてPSVR向けの新機能を今後も追加していきたいと考えている」と述べており,その一例として360度カメラで撮影した動画や静止画を楽しむための機能を紹介した。これらは実際に開発途上版が,GDC 2016の会場で体験できるようになっていたので,その体験レポートについては後日お届けすることにしたい。
なお,PSVRの製品パッケージにはPS Cameraが含まれていないわけだが,シネマティックモード/メディアプレイモードでPSVRを使う限り,PS Cameraは不要とのことだった。
PSVRに提供されるVRコンテンツは?
続いてハウス氏は,PSVR用のVR体験ソフトのラインナップに話題を移し,PSVRの商品パッケージには,バンドルソフトとして「The PlayRoom VR」(ダウンロード版)が提供されることを明らかにした。
The PlayRoom VRは,PS4に標準インストールされていたPS Cameraを使って遊ぶ「The PlayRoom」のVR版に相当するものである。The PlayRoomはインタラクティブデモのようなコンテンツが中心だったが,The PlayRoom VRではもっとゲーム的な体験になっている。
現在,The PlayRoom VRは4つのゲームと,ARボット達を観察するロビーシーンで構成されているが,10月のPSVRリリース時までにはさらにゲームの個数が増えるかもしれないと,SCE関係者が述べていた。これは楽しみである。
また,PSVRの発売が予定されている10月から2016年末にかけて,ローンチタイトルも含めて全50作品のPSVR対応タイトルがリリースされること,そしてEA,DICE,ルーカスフィルムとの3社共同で,PSVR専用の「スターウォーズ・バトルフロント」の開発プロジェクトがスタートしたことも報告された。
ハウス氏は,すでに出荷済みの3600万台分のPS4ユーザーがいて,そのすべてがPS4で同品質のVR体験が楽しめることを強調。PSVRが「VR体験」という新しいゲームイノベーションを普及させるプラットフォームとして大きく貢献することを確信しているとして,プレゼンテーションを締めくくった。
「PlayStation VR」公式サイト
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