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「GeForce GTX 1050 Ti」「GeForce GTX 1050」レビュー。上位モデルは「補助電源不要版GTX 960」だ
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印刷2016/10/25 22:00

レビュー

TDP 75W版Pascal,上位モデルは「補助電源不要版GTX 960」だった

GeForce GTX 1050 Ti,GeForce GTX 1050
(MSI GeForce GTX 1050 Ti 4G OC,GeForce GTX 1050 2G OC)


GeForce GTX 1050 Ti 4G OC(左),GeForce GTX 1050 2G OC
問い合わせ先:アスク(販売代理店)サポートセンター 03-5215-5652(平日10:00〜12:00および平日13:00〜16:00)
価格:未定(※2016年10月25日現在)
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 2016年10月17日の記事でお伝えしたとおり,NVIDIAの新しいGPU「GeForce GTX 1050 Ti」(以下,GTX 1050 Ti)および「GeForce GTX 1050」(以下,GTX 1050)搭載グラフィックスカードが,日本時間25日22:00に販売解禁となった。4Gamerではそれに合わせて,MSI製の搭載カード「GeForce GTX 1050 Ti 4G OC」「GeForce GTX 1050 2G OC」を入手できたので,Pascalアーキテクチャを採用する初のエントリーミドルクラス市場向けGPUの性能を明らかにしてみたいと思う。

※本稿では,GPUおよびカード解説パートを米田 聡氏,ベンチマークおよびまとめパートを宮崎真一氏が担当する。


GTX 950とほぼ同じ構成のGPUコア「GP107」を採用


GTX 1050 Ti(上)とGTX 1050(下)のそれぞれGPUパッケージ。ダイ上の刻印は順に「GP107-400-A1」「GP107-300-A1」だった
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 製品概要はGPU発表時のニュース記事でひととおりお伝え済みだが,あらためて確認しておくと,GeForce GTX 1050シリーズは,Pascalアーキテクチャに基づき,Samsung Electronics(以下,Samsung)の14nm FinFETプロセス技術を用いて製造されるプロセッサコア「GP107」を採用するGPUだ。
 デスクトップ&ノートPC向けGeForce GTX 10ではこれまで,「GeForce GTX 1080」と「GeForce GTX 1070」で採用する「GP104」,「GeForce GTX 1060 6GB」と「GeForce GTX 1060 3GB」(以下,GTX 1060 3GB)の「GP106」が出ているが,それらに続く,3つめのコア――「TITAN X」の「GP102」も入れれば4つめのコア――はすべて,TSMCの16nm FinFETプロセス技術を用いて製造されてきた。その点でGeForce GTX 1050シリーズは,上位モデルと異なるGPUコアということになる。

※2016年10月28日追記:追加取材により,GP107が14nm FinFETプロセス技術を用いて製造されるGPUコアであることが明らかになったため,本文をアップデートしました。

 トランジスタ数は約33億個で,ダイサイズは約132mm2。Pascal世代の上位モデルと,置き換え対象の「GeForce GTX 950」(以下,GTX 950)が採用する第2世代Maxwellベースの「GM206」と,これらの数字を並べてみたものが下の一覧である。

  • GP104:トランジスタ数約72億個,ダイサイズ約314mm2
  • GP106:トランジスタ数約44億個,ダイサイズ約200mm2
  • GP107:トランジスタ数約33億個,ダイサイズ約132mm2
  • GM206:トランジスタ数約29.4億個,ダイサイズ約227mm2

 LSIの規模で言えば,GP107はGP106の約75%,ダイサイズ比では約66%という計算だ。また,置き換え対象となる前世代モデルと比べると,LSIの規模は約112%になっている一方,ダイサイズは約58%となったことが分かる。
 GTX 950が採用するGM206コアは「GeForce GTX 960」(以下,GTX 960)でも採用されているもので,エントリーミドルクラス市場向けとしてはかなり大きなダイだったわけだが,それよりトランジスタの数は多いにも関わらずダイサイズは一気に縮んでいるあたりは,16nm FinFETプロセス技術の面目躍如といったところだろう。

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GP107フルスペック(=GTX 1050 Ti)のブロック図。GTX 1050ではこのうちSM(※正確には「PolyMorph Engine 4.0」も含んだTPC(Texture Processor Cluster)もセット)が1基,無効になる
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こちらはGTX 950のブロック図。GM206のフルスペック比でSM(=SMM)が2基無効となっている
 ちなみにGM206のフルスペックだと,統合するシェーダプロセッサ「CUDA Core」の総数は1024基だった。128基のCUDA Coreとスケジューラやロード/ストアユニット,超越関数ユニット(以下,SFU),L1キャッシュ,テクスチャユニット,そしてジオメトリエンジン「PolyMoprh Engine 3.0」を内包する演算ユニット「Streaming Multiprocessor」(以下,SM)の数で言えば8基となる。ただし,GTX 950では,SMが8基のフルスペック版GM206から2基分を削って,SM数は6基,CUDA Core数では768基となっていた。
 ではGP107のSMはどうかというと,PolyMorph Engineのバージョンが4.0になったことを除けば仕様はGM206と変わっていない。

 しかしGP107では,これまでのPascal世代(GP104やGP106)とは「ミニGPUコア」的に機能する「Graphics Processing Cluster」(以下,GPC)の構成が異なってい。GP104とGP106では,1基のGPCを5基のSMで構成しているのに対し,GP107では,1基のGPCを3基のSMで構成するように変更したのだ。
 計算してみると,GP107のフルスペック版となるGTX 1050 Tiでは,GPCが2基で,SM数は6基だから,CUDA Coreの総数は128基×6=768基。一方のGTX 1050は,GPCは2基で変わらないものの,SM数が1基削られて5基となるので,CUDA Core総数は128基×5=640基となる。

 第2世代Maxwellだと,ミドルクラス市場向けGPUのカットダウンモデルを「5」系に採用していたのに対し,Pascalの世代ではエントリーミドルクラス市場向けにGPCの構成が異なるGPUコアを設計して,それをGTX 1050 TiとGTX 1050という2モデルに展開していると考えたほうが適切だろう。

 PascalアーキテクチャのGeForceとして,GPCあたりのSM数が3基というGP107の構成は初採用となるが,GPCあたり2基のROPパーティション(=16基のROPユニット)という構成はGP104やGP106よりも潤沢なので,グラフィックスメモリへのアクセス効率は高くなっていると推測できる。
 TSMCではなくSamsungの製造プロセスを採用するからこそのカスタマイズと言えるかもしれない。

 そんなGTX 1050 TiおよびGTX 1050のスペックを,上位モデルであるGTX 1060 3GBや前世代のミドルクラス市場向けモデルであるGTX 960,置き換え対象となるGTX 950,そして「5」系の過去製品である「GeForce GTX 750 Ti」(以下,GTX 750 Ti)ともどもまとめたのが表1だ。

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 CUDA Core数にテクスチャユニット数,ROP数,L2キャッシュ容量,メモリインタフェースといった「目に見える数字」でGTX 1050 TiとGTX 950がまったく同じというのはなかなか面白いが,動作クロック設定はGTX 1050 TiとGTX 1050がGTX 950と比べてかなり高くなっている。
 NVIDIAによると,上位モデルと同じく,GP107でも,16nm FinFETプロセス技術と,それに最適化した設計により,高クロック動作が可能になっているとのこと。NVIDIAの社内検証では,コア電圧を特段“盛る”こともなしに,1.9GHzのオーバークロック動作に成功しているという。

 また,TDP(Thermal Design Power,熱設計消費電力)が75Wという仕様で,リファレンスではPCI Express補助電源が不要になった。同90Wで,6ピンの補助電源ケーブル接続が必須だったGTX 950と比べると,扱いやすくなっているわけだ。もちろん,上で紹介した1.9GHzへのオーバークロックは,補助電源を必要としないカードで実現しているとのことである。

CUDA SDKに用意されている「DeviceQueryDrv.exe」を実行した結果。GTX 1050 Ti,GTX 1050ともにL2キャッシュ容量は1MBだと確認できる
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GeForce GTX 1050 Ti 4G OCとGeForce GTX 1050 2G OCのカードデザインは完全に同じ


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 ここからは入手したGeForce GTX 1050 Ti 4G OCとGeForce GTX 1050 2G OCを見ていきたいと思うが,実のところ,2枚の間に外観上の違いはない。搭載するGPUクーラー,基板長,外部出力インタフェースといった,外から見える部分は完全に同じである。

いずれの写真でも左がGeForce GTX 1050 Ti 4G OC,右がGeForce GTX 1050 2G OC。90mm角相当のファンを1基採用した,シンプルなデザインのクーラーを採用する点も含め,極めてよく似ている
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こちら2枚のカットは2製品を並べたものだ。ここでも左がGeForce GTX 1050 Ti 4G OC,右がGeForce GTX 1050 2G OCとなるが,DisplayPort 1.4×1,HDMI 2.0(Type A)×1,Dual-Link DVI-D×1という外部出力インタフェース構成は完全に同じ。側面から見ると,クーラーはファンカバーの下も同じ形状であることが分かる
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カード長はもちろん同じ
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ファンブレードは,MSIのグラフィックスカードでは古くから見られる,途中から傾斜に変化を付けたもの。アイドル時にファンの回転を停止させる,流行りの機能は用意されていなかった
 実測のカード長は174mm(突起部除く)で,基板長は同150mm。基板の後方へ24mmほどクーラーが突き出ており,Mini-ITXサイズはわずかに超えてしまっているものの,十分にコンパクトと言っていいだろう。
 補助電源コネクタもないので,外観はとてもすっきりしている。

 GPUクーラーの取り外しはメーカー保証外の行為であり,取り外した時点で保証は受けられなくなる。その点はくれぐれも注意してほしいが,下の写真が両製品のGPUクーラーを取り外した様子だ。
 ご覧のとおり,基板デザインだけでなく,電源部の部品なども同じだった。「GTX 1050 Tiのほうだけ,GPUクーラーの設置面に銅板がある」なんてこともなく,やはり同じなので,違いはGPUとグラフィックスメモリチップだけということになるだろう。

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クーラーを取り外しても,遠目だと両製品の区別はできない。ちなみに左がGeForce GTX 1050 Ti 4G OC,右がGeForce GTX 1050 2G OCである
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GPUクーラーのパッシブヒートシンク側。これといった細工のない,シンプルなアルミ製で,両製品とも共通している

 6ピンの補助電源コネクタ用空きパターンはあるので,今後,そういうモデルがMSIのゲーマー向け製品ブランド「G Series」から出てくる可能性はあるだろう。

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 基板デザインが同じで,電源部の搭載部品もまったく同じだったため,GeForce GTX 1050 Ti 4G OCのほうを代表して取り上げるが,電源部は3+1フェーズのようだ。
 フェーズコントローラとしてuPI Semiconductorの「uP9509P」を使用し,1フェーズはMagna ChipのパワーMOSFET「MDU1511」×2+「MDU1513」×1という構成になっている。
 インダクタにはSTCと印刷があることから,MSIがグラフィックスカード製品に広く採用しているSFC(Super Ferrite Choke)とは異なるもののようである。

電源部は見る限り3+1フェーズ。どのメーカー製かまでは分からないが,有機半導体コンデンサを使っているようであることも見てとれる
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基板裏にuPI SemiconductorのPWMフェーズコントローラ「uP9509P」を搭載していた。MOSFETドライバ「uP1909P」の搭載も確認できる
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 搭載するグラフィックスメモリは,GeForce GTX 1050 Ti 4G OCがSamsungの「K4G80325FB-HC28」だった。8Gbit品のGDDR5で,7000MHz相当(実クロック1750MHz)というスペックだ。4枚で総容量4GBを実現している。
 対するGeForce GTX 1050 2G OCだと,グラフィックスメモリはSK Hynix製の「H5GC4H24AJR R0C」だ。4Gbit品のGDDR5で,動作クロックはやはり7000MHz相当まで対応している。こちらは4枚で総容量が2GBとなる。

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 さて,GeForce GTX 1050 Ti 4G OCとGeForce GTX 1050 2G OCは,製品名に「OC」と入っているとおり,メーカーレベルで動作クロックが引き上げられたクロックアップモデルである。
 「GPU-Z」(Version 1.12.0)から確認したところ,動作クロックは前者がベース1342MHz,ブースト1455MHzで,後者がベース1405MHz,ブースト1519MHzとなので,前者のブーストクロックのみリファレンス比で約5%高く,残りは約4%高い計算だ。後述するテスト環境を使い,テスト中のGPUコアクロックをMSI製オーバークロックユーティリティ「Afterburner」(Version 4.3.0 Beta 14)で追ってみたところ,GeForce GTX 1050 Ti 4G OCは1708MHz,GeForce GTX 1050 2G OCは1746MHzまで上昇しているのを確認できている。

 なお,メモリクロックは両製品ともリファレンスどおりの7008MHz相当だった。

GeForce GTX 1050 Ti 4G OC(左)とGeForce GTX 1050 2G OC(右)で,それぞれブースト最大クロックを確認した結果
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カードの定格とリファレンス相当のクロックで主役はテスト。Vulkan版DOOMも実施対象に


 テスト環境に話を移そう。今回,比較対象には,GTX 1060 3GBとGTX 960,GTX 950,GTX 750 Ti,そして「Radeon RX 470」(以下,RX 470)を用意した。
 正直に述べると,筆者の手元にはこのほかにも「GeForce GTX 750」「GeForce GTX 650 Ti BOOST」「GeForce GTX 650 Ti」「GeForce GTX 650」「Radeon RX 460」もある。しかし,今回入手した主役の2枚,GeForce GTX 1050 Ti 4G OCとGeForce GTX 1050 2G OCはいずれも前述のとおりメーカーレベルのクロックアップ品だったため,テストにあたってはカードの定格クロック(以下順に,GTX 1050 Ti OC,GTX 1050 OC)だけでなく,Afterburnerから動作クロックをリファレンス相当にまで落とした状態(以下順に,GTX 1050 Ti,GTX 1050)でもテストをする必要があり,これだけで合計4パターンだ。
 限られたテストスケジュールでは,この4パターンを含む9パターンのテストが物理的な限界だったので,この点はご了承を。

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 なお,入手した比較対象のグラフィックスカードは,GTX 750 Ti以外,すべてがカードメーカーのオリジナルモデルで,さらにGTX 960カード「GV-N960WF2OC-2GD」とRX 470カード「PowerColor Red Devil Radeon RX 470 4GB GDDR5」(型番:AXRX 470 4GBD5-3DH/OC)はクロックアップモデルとなる。
 テストにあたって,クロックアップモデルの動作クロックはいずれもAfterburnerからリファレンス相当にまで落としているが,クロックを落とした製品もそうでない製品も,搭載するGPUクーラーの能力上,ブーストクロックは純然たるリファレンスカードより高く出る可能性がある(というか,可能性は高い)ので,その点もあらかじめお断りしておきたい。
 すべてをリファレンスカードで揃えるのが理想だが,そもそもリファレンスデザイン版のカードが下位クラスだと流通しないのが常なので,やむを得ない。

 GeForce勢のテストに用いたグラフィックスドライバは,GeForce勢が「GeForce 375.50 Driver」だ。NVIDIAによると,これは公式最新版である「GeForce 375.57 Driver」とほぼ同じものだが,一点,カスタムインストール時にGeForce Experienceをインストール対象から外せないというバグを抱えている点で,公式最新版とは異なるリリースとのことだ。
 RX 470のテストに用いるのは「Radeon Software Crimson Editon 16.10.2 Hotfix」で,こちらはテスト開始時の最新版。そのほかテスト環境は表2のとおりとなる。

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 テスト方法は基本的に4Gamerのベンチマークレギュレーション18.0準拠。ただし,レギュレーション19世代を先取りする形で,「3DMark」(Version 2.1.2973)における「Time Spy」の総合テストを追加し,「Tom Clancy’s The Division」に代えて「DOOM」のテストを採用している。

 具体的なテスト内容だが,Time Spyでは,テストを2回実行し,総合スコアの高かったものをスコアとして採用する。これは,従来のFire Strikeのテストと同じだ。

 一方のDOOMは,グラフィックスAPIとして「OpenGL 4.5」と「Vulkan」をサポートすることから,ここではVulkanを採用。グラフィックス設定プリセットは「中」と「ウルトラ」の2つを選択した。
 テストにあたっては,アーケードモードの「UAC」ステージにおいて,1分間一定のルートを移動し,その間の平均フレームレートを計測する。実際に操作してみると,敵の動きなどがAIにより毎回異なるのだが,スコアに大きなバラつきは見られなかった。しかし,「実際に操作する」という不確定要素があるため,2回テストを行い,その平均をスコアとして採用する。
 なお,平均フレームレートの計測には「PresentMonLauncher」(Version 1.0A)を用いた。

 テスト解像度は,主役となるGTX 1050 TiとGTX 1050がともにエントリーミドルクラス市場向けということから,1600×900ドットと1920×1080ドットの2パターンを選択。あとこれはいつもどおりだが,CPUの自動クロックアップ機能「Intel Turbo Boost Technology」は,テスト状況によって挙動が変わる可能性を排除すべく,マザーボードのUEFI(≒BIOS)から無効化している。

GTX 1050 TiとGTX 1050はいずれも「VR Ready」ではないが,いちおうの検証として,「SteamVR Performance Test」も実行してみた。これはValveの「Apertureロボット修理 VRデモ」を使って,視覚忠実度がどのくらいかを見るものだが,GTX 1050 TiとGTX 1050は,ともに「VR可能」という評価で,「レディ」から遠い評価となっている。GeForce GTX 1050シリーズはVR対応GPUではないという,NVIDIAの言い分どおりといったところだ
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GTX 1050 TiはGTX 960といい勝負。GTX 1050はGTX 1050 Tiのざっくり9割


 グラフはいずれも,主役の2製品4本をトップに,それ以外ではGeForceのモデルナンバー順で,最後にRadeonという並びだが,グラフ画像をクリックすると,より描画負荷の高い解像度条件におけるスコアを基準に並び替えたグラフを表示するようにもしてあるとお断りしつつ,テスト結果を順に見ていこう。

 グラフ1は3DMarkにおけるFire Strikeのスコアを順にまとめたものだ。ミドルクラス市場向けGPUであるGTX 1060 3GBとRX 470のスコアが突出するが,GTX 1050 TiはGTX 1050 3GB比で63〜65%程度,RX 470比で69〜79%程度というスコアを示し,GTX 960とおおむね同じところに並んでいる。GTX 1050はGTX 960とGTX 950の間といったところで,GTX 1050 Tiと比べると91〜92%といった位置に付けている。

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 続いてグラフ2は同じく3DMarkからTime Spyの結果となる。
 GTX 1050 Tiは,GTX 1060 3GBの6割強,かつGTX 960とほぼ横並びという点で,Fire Strikeと変わらないスコア傾向を示す。ただ,DirectX 12(Direct3D 12)アプリケーションに対して強みを持つRX 470に対しては約65%と,スコア差がやや開いた。
 気になるのはGTX 1050のスコアで,GTX 1050 Tiに対して約81%の成績しか残せず,GTX 950に追い付かれてしまった。SM数が1基少ないのが理由ではないかと思われる。

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 グラフ3,4は「Far Cry Primal」のテスト結果だが,ここでもGTX 1060 3GBとRX 470がツートップで,GeForce GTX 1050シリーズを含む第2グループがそれに続くというグラフ傾向になっている。
 ここで注目したいのはGTX 1050 Tiのスコアで,「標準」プリセットで横並びのGTX 960に対して,「最高」プリセットでは8〜11%程度ものスコア差を付けているのだ。最高プリセットではグラフィックス品質が向上し,いきおい,メモリ負荷が大幅に増大するので,Pascal世代におけるメモリの利用効率改善効果が大きいという理解でいいと思われる。もちろん,GPUコアクロックの引き上げもプラスに働いているはずだ。
 GTX 1050が最高プリセットでGTX 960に並ぶスコアを示すところからは,「Far Cry Primalの場合,少なくとも解像度1920×1080ドットなら,グラフィックスメモリ容量が2GBというのはペナルティにならない」可能性も見てとれる。

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 続いて「ARK: Survival Evolved」(以下,ARK)のテスト結果がグラフ5,6となる。
 「Low」プリセットの1600×900ドット条件では相対的なCPUボトルネックが生じ,スコアが丸まりつつあるため,ここではそれ以外のテスト条件を見ていくが,GTX 1050 Tiは,Lowプリセットの1920×1080ドットこそGTX 960の後塵を拝しているものの,High設定で逆転を果たしている。これはFar Cry Primalと同じ理由によるものだろう。

 一方のGTX 1050はGTX 1050 Tiの84〜91%程度,GTX 960の87〜91%というスコアになった。3DMarkと似た傾向,とも言い換えられる。

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 今回が初掲載となるDOOMのテスト結果がグラフ7,8だ。
 ここでは,GTX 1050 TiがGTX 960に若干届かず,GTX 1050 Ti OCで逆転を果たした。Vulkan APIベースのアプリケーションでは,ある程度順当にGPUの規模が性能を決めるが,高い動作クロックも有効,ということなのだろう。

 一方のGTX 1050はスコアがあまり芳しくなく,「中」プリセットでこそGTX 950を4〜6%程度上回るものの,「ウルトラ」プリセットでは92〜95%程度に沈んでしまった。このあたりも,ゲーム側の最適化による影響という仮説を裏付けている。
 なお,GTX 750 Tiのスコアが「N/A」なのは,同GPUではVulkan版DOOMを実行できなかったためである。

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 グラフ9,10は「Fallout 4」の結果となる。
 Fallout 4でも,GTX 1050 TiはGTX 960に一歩及ばず。GTX 1050 Tiでもほぼ横並びにはなっているものの,上回るまでには至らなかった。こちらも基本的にはGPUの規模感が物を言ったといったところである。ただ,グラフを見れば分かるとおり,一歩及ばずと言っても,体感できるような違いが生じているわけではない。
 GTX 1050のスコアはGTX 1050 Ti比で88〜90%程度なので,両者の力関係は3DMarkなどと変わっていないことになる。

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 「ファイナルファンタジーXIV:蒼天のイシュガルド ベンチマーク」(以下,FFXIV蒼天のイシュガルド ベンチ)の結果がグラフ11,12だ。
 「標準品質(デスクトップPC)」ではCPUの相対的なボトルネックが近いことによりスコアが詰まりつつものの,「最高品質」でGTX 1050 Ti,そしてGTX 1050のスコアは優秀である。GTX 1050 TiはGTX 960に対して約105%という結果で,「GameWorks」タイトルを前にスコアを伸ばせないRX 470に対しても84〜86%程度まで迫っている。
 GTX 1050は,GTX 1050 Tiの約91%で続き,GTX 960の95〜96%程度,GTX 950の約115%で,対RX 470でも79〜82%程度のスコアを示した。GTX 1050が,最高品質の1920×1080ドットで,スクウェア・エニックスの示すベンチマーク指標の最上位「非常に快適」のラインとなるスコア7000を超えてきた点にも注目したい。

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 なお,FFXIV蒼天のイシュガルド ベンチでは,平均フレームレートベースのスコアを別途グラフ11,12にまとめてあるので,参考にしてもらえればと思う。

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 グラフ13,14は「Project CARS」のテスト結果だが,ここでもGTX 1050 TiはGTX 960を安定的に上回り,Radeon Software側の最適化不足でスコアを伸ばせないRX 470に迫っている。
 GTX 1050はそんなGTX 1050 Tiの89〜90%程度という,これまでも見られた傾向だ。「初期設定」でGTX 960の約95%というスコアのところが,「高負荷設定」に落ち込むのは,グラフィックスメモリ容量がネックとなるためではなかろうか。

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消費電力の低さは一見の価値あり! GTX 950比で21〜42W低い


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 ここまでのテストから,GeForce GTX 1050シリーズには前世代ミドルクラスGPU並みの性能を期待できることが分かったわけだが,75WとされるTDPからは,消費電力の低さも期待できる。実際のところはどの程度か,ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いて,システム全体の消費電力を測定,比較してみよう。
 テストにあたっては,ゲームでの利用を想定し,ディスプレイ出力自体が無効化されないよう指定したうえで,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点を,タイトルごとの実行時とした。

 その結果はグラフ15にまとめたとおり。
 まず,アイドル時はGeForce GTX 1050シリーズの4条件がすべて40W台半ばで揃った。GTX 1060 3GBやRX 470と比べると10W以上低い数字だ。
 各アプリケーション実行時も,GTX 1050 TiはGTX 950と比べて21〜38W,GTX 1050は33〜42W低く,むしろスコアはGTX 750 Tiに近い。Vulkan版DOOMではRX 470より軽く100W以上低いというのもインパクト大だ。また,GTX 1050 Tiが,GTX 960とほぼ同じ性能を41〜61W低い消費電力で実現できている点にも注目しておきたい。

※そのまま掲載すると縦に長くなりすぎるので,簡略版を掲載しました。グラフ画像をクリックすると,完全版を掲載します
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 搭載されるGPUクーラーの冷却能力を見るべく,3DMarkの30分間連続実行時を「高負荷時」として,アイドル時ともども,GPU-Zから温度を取得した結果がグラフ16だ。テストにあたってシステムはPCケースに入れず,いわゆるバラックの状態で,室温を24℃に保った室内の机上へ置いている。

 もちろん,カードによりファンの制御方法や温度センサーの位置が異なっているため,横並びの比較に大した意味はない。また,そもそも主役の2枚はリファレンスカードではなく,GPUの発熱傾向を見るのにも適さないため,あくまでざっくりと傾向を見るに留めてほしいが,GTX 1050 TiとGTX 1050のGPU温度は,エントリーミドルクラスらしい温度に保たれていると言っていいのではなかろうか。

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 なお,気になる動作音だが,GeForce GTX 1050 Ti 4G OCとGeForce GTX 1050 2G OCのいずれも,特別に静音性が高いというわけではなく,このクラスではいたって普通という印象を受けた。
 もちろん,うるさいわけではないのだが,このクラスの製品なら,もっと静音性を突き詰めたチューニングを施してもよかったのではないかと思う。ひょっとすると,G Seriesブランドのゲーマー向けモデルで,そういう設定のものが出てくるのかもしれない。


あくまでも国内価格次第ながら,「鉄板」になり得る可能性がある


GeForce GTX 1050 Ti 4G OC(左)とGeForce GTX 1050 2G OC(右)の製品ボックス。ボックスデザインも同じだった
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 以上のテスト結果から,GTX 1050 TiはおおむねGTX 960程度の性能を,GTX 960どころかGTX 950よりも低い,GTX 750 Ti+α程度の消費電力で実現できるGPUとまとめることができるだろう。補助電源不要のGTX 960と考えると,かなりインパクトのある製品だ。
 Radeon Softwareの最適化不足で競合のミドルクラスGPUがそのポテンシャルを発揮しきれない場合にはスコア差を一気に詰めにかかる攻撃性もあるが,一方でDirectX 12やVulkanといった最新世代のAPIを用いたタイトルを前にすると,エントリーモデルらしいスコアの沈み方をする。

 GTX 1050は,そんなGTX 1050 Tiと比べてざっくり9割の性能で,その性能はざっくりとGTX 950以上,GTX 960未満。今回,時間の都合でテストできなかったRadeon RX 460のベンチマークスコアはGTX 950に及ばないレベルだったので(関連記事),そこも踏まえると,こちらにも価値は見出せそうだ。
 「ほとんどの3Dゲームを,フルHD解像度なら最も高いグラフィックス設定でプレイできる」と言い切るには絶対性能があと一歩足りないものの,上位モデル比で9割の性能が,上位モデル比8割弱の価格設定になっているのだから,価格を重視するなら十分にアリだろう。

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 いまぽろっと価格の価格が出たが,冒頭でも触れたように,NVIDIAが示す北米市場におけるメーカー想定売価はGTX 1050 Tiが139ドル,GTX 1050が109ドル(いずれも税別)となっている。
 日本では例によって,発売当初はいわゆるご祝儀価格になるものと思われるが,“出足”でGTX 1050 Ti搭載カードが税込2万円を下回り,その後,店頭価格がじわじわ下がっていくようなことがあれば,年末商戦に向けて,エントリーミドルクラス市場の鉄板的な存在に育つ可能性があるだろう。

 あくまでも搭載カードの価格次第ながら,GTX 1050 TiとGTX 1050は,フルHD解像度をターゲットに,低コストで3D性能をイマドキのレベルへ引き上げたいという人にとって,魅力的な選択肢となり得るGPUである。

NVIDIAのGeForce GTX 1050シリーズ製品情報ページ

  • 関連タイトル:

    GeForce GTX 10

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