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「モバノブ」開発初期に「信長の野望」という巨大IPだからこそ生まれた誤解とは。コラボ実現の経緯と今後の展望を2人のプロデューサーにインタビュー
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印刷2014/06/26 00:00

インタビュー

「モバノブ」開発初期に「信長の野望」という巨大IPだからこそ生まれた誤解とは。コラボ実現の経緯と今後の展望を2人のプロデューサーにインタビュー

画像集#014のサムネイル/「モバノブ」開発初期に「信長の野望」という巨大IPだからこそ生まれた誤解とは。コラボ実現の経緯と今後の展望を2人のプロデューサーにインタビュー
 コーエーテクモゲームスとモブキャストが共同開発したスマートフォン用アプリ「モバノブ」iPhone / Android)が,2014日5月29日に正式サービスを開始した。
 本作は,コーエーテクモゲームスの「信長の野望」シリーズの世界観を踏襲し,「1日5分で楽しめる戦国国盗りバトル」をテーマとしたシミュレーションゲームで,システム的にはモブキャストの「モバプロ」をベースとするカードバトルとなっている。

 両社の看板タイトル同士のコラボレーションということでも注目のタイトルだが,その一方,「信長の野望」シリーズという巨大IPを用いたことで,開発初期には混乱もあったようだ。いったい何が起きていたのか,そしてそれをどのように解決したのか。今回,4Gamerでは,そんな開発裏話を含め,コラボレーションが実現した経緯や今後の展望について,コーエーテクモゲームスの藤田一巳氏およびモブキャストの中山法夫氏の両プロデューサーに聞いてみた。

モブキャスト 中山法夫氏(左)とコーエーテクモゲームス 藤田一巳氏
画像集#007のサムネイル/「モバノブ」開発初期に「信長の野望」という巨大IPだからこそ生まれた誤解とは。コラボ実現の経緯と今後の展望を2人のプロデューサーにインタビュー


「信長の野望」という巨大IPだからこそ生まれた開発初期の誤解


4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。まずコーエーテクモゲームスとモブキャストが,共同で「モバノブ」に取り組むこととなった経緯から教えてください。

画像集#012のサムネイル/「モバノブ」開発初期に「信長の野望」という巨大IPだからこそ生まれた誤解とは。コラボ実現の経緯と今後の展望を2人のプロデューサーにインタビュー
藤田一巳氏(以下,藤田氏):
 コーエーテクモゲームスでは,2013年から2014年にかけて「IPの創造と展開」に取り組んでいます。たとえばIPの創造では「討鬼伝」を新たに開発しました。またIPの展開に関しては「ゼルダ無双」をはじめ,さまざまな展開を実施しています。こういった取り組みを「信長の野望」でも,もっと展開していこうと考えていたんです。
 そんな中,私自身がモブキャストさんの役員の方と懇意にさせていただいていたのが,「モバノブ」のそもそもの始まりでした。実は,当時の私は「モバプロ」の魅力が分からなくて……。

中山法夫氏(以下,中山氏):
 あれ? 発表会では「モバプロ」のヘビープレイヤーと言っていたじゃないですか(笑)。

藤田氏:
 今はヘビープレイヤーになりました,ということです(笑)。2年ほど前の私は,デッキを組んで放置するだけという「モバプロ」の遊び方に,面白さを見出せなかったんですよ。しかし,そのモブキャストさんの役員の方が折に触れてモバプロ論を熱く語ってくださったんです。そこまで言うならと,私の大好きな阪神タイガースのデッキを組んで遊んでいるうちに,「モバプロ」は戦略を練ってデッキを組み,対戦でフィードバックを得て,さらなる戦略を練る……ということを多人数でやるゲームだということが理解でき,すっかりハマってしまいました。

4Gamer:
 そこにたどり着くまでに,どのくらいの時間が掛かったんですか?

藤田氏:
 「モバプロ」を始めてから半年くらい経っていましたね。そのとき,頭の中に浮かんだのが「信長の野望 全国版」だったんです。「信長の野望 全国版」では,地図を見ながら直感的に「あそこを攻めよう」というようにゲームを進めますが,頭の中では自軍の兵力と相手の兵力を考えますよね。その過程と,「モバプロ」をプレイしているときの思考が,かなり近いんじゃないかと思い至ったんです。

4Gamer:
 つまり「モバプロ」のシステムと,「信長の野望」はうまくマッチするんじゃないかと。

藤田氏:
 ええ。そこでさっそく,社長の襟川(コーエーテクモゲームス 代表取締役社長 襟川陽一氏)に相談してみたところ,返事は「趣旨は分かった。面白くなるならいいよ」というものでした。
 その一方でモブキャストさん側でも,「信長の野望」のIPを使った戦国シミュレーションゲームを展開できないかと考えていらしたんです。そして藪社長(モブキャスト 代表取締役社長 藪 考樹氏)ご自身が,直々に弊社の襟川のところにお話に来てくださった結果,「それでは,やりましょう」ということになったんですが……そこからが大変でした。

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4Gamer:
 何が起きたんでしょう。

藤田氏:
 最初に,モブキャストさんとコーエーテクモゲームスの間で,いかにして「信長の野望」を「モバプロ」で使っているMSGE(Mobcast Social Game Engine)に落とし込むかという打ち合わせをしました。そのときは,私や襟川をはじめ弊社側では,まず既存のMSGEに「信長の野望」を落とし込んでから,戦略シミュレーションとしてのブラッシュアップに時間を掛けていこうと考えていたんです。
 ところが私達の伝え方が悪かったのか,モブキャストさん側で「信長の野望」という部分を必要以上に強く受け止めてしまったみたいで。「『信長の野望』だから『モバプロ』のままじゃダメだ」といった感じで,ゲームエンジンを新しく作り直そうという話になっていたんです。

4Gamer:
 「信長の野望」ほどのIPだからと,必要以上に気を遣ってしまった,という感じでしょうか。

藤田氏:
 そういうことだったんでしょうね。そんな状況ですから,両社のディレクターとプランナーが打ち合わせを重ねていく中で,国盗りゲームのアイデアが次々に出てきて,当初コーエーテクモゲームスが考えていたものから,かけ離れていきました。

4Gamer:
 目指すものがすれ違っていったわけですね。

藤田氏:
 ええ。私達としては「これは既存のMSGEの仕様で実現できますか?」というつもりで聞いていたんですけれども,モブキャストさんは「きちんと信長の野望というIPに相応しい新しいゲームにできるのか」と受け取っていたんです。そんな状況が1か月近く続きました。

4Gamer:
 すれ違いは,どうやって解決できたのでしょうか。

藤田氏:
 そのままの状況では,開発現場をいたずらに混乱させるだけなので,モブキャストさん側にもプロデューサーを立てていただくことになりました。そこでちょうど他社からモブキャストさんに移籍してきたばかりの中山さんに白羽の矢が立ちました。

4Gamer:
 初めから両社にプロデューサーがいたわけではないんですね。

藤田氏:
 ええ。ですから,そこからは話が早かったです。中山さんが単刀直入に「MSGEで『信長の野望』を作るわけにはいきませんか」とおっしゃったんです。私どもとしては最初からそのつもりでしたから,「え,そうじゃなかったんですか?」と。そこで初めて,両社の間に齟齬が生じていたことが分かったんです。

画像集#008のサムネイル/「モバノブ」開発初期に「信長の野望」という巨大IPだからこそ生まれた誤解とは。コラボ実現の経緯と今後の展望を2人のプロデューサーにインタビュー
中山氏:
 当初,モブキャスト側としてはコーエーテクモゲームスのメインIPである「信長の野望」を扱うということで,気負いがすごかったんですよ。それこそ「新しい戦国シミュレーションを作るんだ!」くらいの勢いで。しかし,それを新しいシミュレーションゲームとして完成させて,ゲームバランスを含めて最終合意に至るまでには相当な時間を要すると感じました。

藤田氏:
 確かに開発前の打ち合わせで,「『信長の野望』ですから,しっかりお願いします」と言いましたので,そこもズレの原因になっていたかも知れません……。

中山氏:
 私としては,今回の取り組みの正しいと思える姿と実際に現場で作っているものの間に違和感があったんです。またモブキャストが日頃から事業ドメインとして目指すところや,我々がターゲットとすべきお客様といった点を考えても,もう少し正しい道はないのかと考えました。そこで「このままではプロジェクトが不幸になる」と意を決して,一度プロジェクトを整理したのです。

藤田氏:
 そして両社間の全体会議を開き,あらためて既存のMSGEをベースに開発を進める旨の話をしたんです。それが2013年11月頃のことでした。両社の思い描いているものがピタッと一致したので,「このコンテンツはよくなる」と実感できるようになりましたね。


クローズドβテストの実施で,あらためて確認できたゲームの方向性とターゲット層


4Gamer:
 そんな状況を乗り越え,「モバノブ」はクローズドβテスト(以下,CBT)を経てサービスインしましたが,今のところの手応えはいかがですか。

画像集#004のサムネイル/「モバノブ」開発初期に「信長の野望」という巨大IPだからこそ生まれた誤解とは。コラボ実現の経緯と今後の展望を2人のプロデューサーにインタビュー
中山氏:
 非常に好調です。CBTの話からしますと,一般的にソーシャルゲームでは,初日継続率35〜40%以上だと好感触という話があります。「モバノブ」の場合は,1万人限定のテストを行った2週間,毎日半分以上のお客様が遊んでくださいました。
 また他のゲームサービスに比べて,「モバノブ」へのお客様の問合せやご意見の数が数十倍届くなど,非常に反響が高かったです。

藤田氏:
 リクエストには,「天候の要素を入れてほしい」だとか,かなり細かいものがありましたね。

中山氏:
 加えて,CBTでは無料で遊べる部分だけでなく,一部数量限定で有料商品のテストもしたのですが,一気に上限までお客様が求められるなど,非常にいい感触でした。

4Gamer:
 なるほど。ところで,スマートフォン向けのタイトルで,CBTを実施するのは割と珍しいように思うのですが。

藤田氏:
 実は,襟川の“シブサワコウ”としての思いが強く反映されて,このCBTは実施されていたんですよ。

4Gamer:
 と言いますと?

藤田氏:
 CBTを実施するとなると,その費用やメンバーの疲弊も考慮に入れなければなりません。しかし,襟川の「『信長の野望』だからこそ,しっかり遊んでいただけて,長期的に愛されるものにしなければいけない。お客様の言葉を聞く場を,きちんと設けよう」「現場で作り込みたいこと,チェックしたいことがあるなら,きちんと試したほうがいい」と話したんです。それらは,経営者としての襟川ではなく,ずっと「信長の野望」に取り組んできたシブサワコウとしての思いだったんだと思います。

中山氏:
 結果的に「モバノブ」のCBTでは,CBT前にチーム内で話し合っていた「もう少しブラッシュアップしたいと考えていた二つのポイント」が,多くのお客様から受けた指摘の上位二つと一致しましたから,やって良かったです。

4Gamer:
 具体的に,どんな指摘があったんですか?

中山氏:
 一つは,陣形編成の操作を,もっと直感的で分かりやすくしてほしいというものでした。もちろんCBT開始時点のバージョンも試行錯誤したバージョンだったのですが,もうひと工夫とチーム内でも考えていたところだったんですよ。

画像集#015のサムネイル/「モバノブ」開発初期に「信長の野望」という巨大IPだからこそ生まれた誤解とは。コラボ実現の経緯と今後の展望を2人のプロデューサーにインタビュー
藤田氏:
 それを受けて,CBTの2日めまでとそれ以降で,編成のUIを大きく変えました。

4Gamer:
 早い段階で対応されたわけですね。では,もう一つはどうでしょう。

中山氏:
 モブキャストのコンテンツの良い特徴でもあるのですが,とくに積極的に操作をしないと勝てないというゲーム性ではないので,逆に最初に何をすればいいのか悩みやすいという意見ですね。すでに「モバプロ」などをプレイしていれば感覚は掴めると思うのですが。

4Gamer:
 それは,どのように対応したのでしょうか。

中山氏:
 ゲームに入り込むまで,軍師があれこれ世話を焼いてくれるナビゲーション機能。そして1日に5回,編成した武将で自動的に「戦乱」が行われるのですが,ゲームを始めたばかりのお客様に合った対戦相手とマッチングする仕組みなどを徹底的にCBT中に作りこみました。また「遠征」を整備して,実行する意味を強くもたせました。

4Gamer:
 どのように変わったんですか?

中山氏:
 遠征をすると士気が高まり,武将が実力をしっかりと発揮できるという仕組みにしました。そして,それが戦乱にも活きるようにしたんです。

4Gamer:
 とりあえず最初に遠征をやっておけば間違いないと。

藤田氏:
 ええ,ですから私は朝起きたらまず遠征してます(笑)。

中山氏:
 遠征は,もともと戦乱の練習戦的な意味合いのモードだったんです。ですが今回,「モバノブ」のためにモブキャストの開発陣からエースを集めて──それこそ「モバプロ」や「モバサカ」の立ち上げに関わったスタッフを集めて,遠征の仕組みを徹底的にMSGEにマッチする形で組みました。これは編成のUIも同じで,「『モバプロ』や『モバサカ』にも編成はあるけれど,スマホに特化させるために,もっとやりようがある」と,仕様を練り直しました。

藤田氏:
 ともあれ,プロジェクトチームの意見,コーエーテクモゲームスの社内評価システムの意見,CBTのフィードバックが見事に一致しましたから,狙いは間違っていないという確信が得られました。

4Gamer:
 制作側とプレイヤー側の意識の差を確認するという点で,βテストの実施には大きな意味があるかもしれませんね。そして「モバノブ」は5月29日にサービスインし,6月3日には,GooglePlayの新着無料アプリランキングでトップ10入り,登録会員数が10万人を突破したという発表がありました(※編注:6月19日付けで,登録会員数20万人を突破と発表

中山氏:
 おかげさまで。とてもありがたいです。

藤田氏:
 私としても,「モバノブ」を,「モバプロ」「モバサカ」に続くモブキャストさんの代表作にしたいという思いがありますので,うれしいですね。

中山氏:
 今後は10万人という結果に満足することなく,どんどん会員数を増やしていきたいです。

4Gamer:
 ちなみに,プレイヤー層やプレイスタイルの傾向は,どのような感じなんですか?

藤田氏:
 「モバノブ」の場合は,長い時間遊ばれている印象があります。「モバノブ」では「1日5分」を謳っているのですが,皆さん,ちょこちょことログインしては,デッキの編成を考えていらっしゃいますね。
 そういう意味では,「信長の野望」というIPを使ってソーシャルゲームを作るということの狙い──つまり,プレイヤー自身がじっくり考えて,渾身の陣形を作り出すという部分は達成できたのかなと思います。

画像集#002のサムネイル/「モバノブ」開発初期に「信長の野望」という巨大IPだからこそ生まれた誤解とは。コラボ実現の経緯と今後の展望を2人のプロデューサーにインタビュー

4Gamer:
 プレイヤー層は,もともと「信長の野望」シリーズのファンが多いのでしょうか。

中山氏:
 本格的なプロモーションはこれから展開していくので,今はまだ「モバプロ」プレイヤーのほうが多いと思います。ですが,「信長の野望」ファンの方も,これからどんどん増えていくでしょう。

藤田氏:
 実際,掲示板の書き込みなどを見ると,イラストや戦術に関して「信長の野望 全国版」を引き合いに出した話題もあるんですよ。ですから,昔はPCやコンシューマ機で「信長の野望」シリーズを遊んでいたけれど,しばらくやっていないという「モバノブ」プレイヤーの方が多くいらっしゃるんじゃないでしょうか。また「信長の野望・創造」のように,「モバノブ」もシンプルさを追求しているので,全国版のころからのプレイヤーに帰ってきてほしいと思っています。


モブキャストのSVSを生かした集団戦コンテンツが2014年夏に登場


4Gamer:
 モブキャストの各タイトルでは,対戦コンテンツに「30代を中心とした負けず嫌いな男性」をメインターゲットにしたSVS(Social Victory Space)という概念を打ち出していますよね。「モバノブ」におけるSVSを使った展開はどうなるのでしょう。

中山氏:
 実は,これから作り込みたいものとして,SVSを使った集団戦があるんです。現在,桶狭間や長篠の戦いを作っているところですが,徐々に規模を大きくして,ゆくゆくは数万人がぶつかり合う天下分け目の関ヶ原もやりたいと思っています。

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4Gamer:
 そんな大人数での集団戦は実現可能なんですか。

中山氏:
 すでに「モバサカ」では,日本,韓国,欧州をまたいだ「mobcastグローバルカップ」を実現していますから,「モバノブ」でも技術的には可能なはずです。

藤田氏:
 ただ野球やサッカーでは,多くの人がルールや戦略/戦術を共有していますよね。しかし,戦国武将による合戦となると,そうした共通ルールがありません。ですから「モバノブ」には「信長の野望」シリーズに共通する面白さを持ち込もうと考えています。

4Gamer:
 具体的には,どんな要素でしょう。

藤田氏:
 たとえば石高を増やしたり,城を取ったり,戦ったりといったエッセンスですね。モブキャストさんにはかなり無茶を言ったのですが,ありがたかったのは,スタッフの皆さんが「信長の野望」について詳しかったことです。そのおかげで,私の要望にかなりしっかりと応えていただけました。

4Gamer:
 分かっているスタッフが開発しているとお聞きすると,やはり期待が高まりますね。ちなみに集団戦はいつごろ実装されますか。

中山氏:
 2014年夏を目標にしていますが,その前に歴史のストーリーに厚みを付けるため,史実をモチーフにしたイベントを展開したいと考えています。第1弾として桶狭間の戦いに関連したイベントを実施します(※編注:6月18日より実施中。関連記事

画像集#021のサムネイル/「モバノブ」開発初期に「信長の野望」という巨大IPだからこそ生まれた誤解とは。コラボ実現の経緯と今後の展望を2人のプロデューサーにインタビュー 画像集#022のサムネイル/「モバノブ」開発初期に「信長の野望」という巨大IPだからこそ生まれた誤解とは。コラボ実現の経緯と今後の展望を2人のプロデューサーにインタビュー

4Gamer:
 開発に関するところだと,「モバノブ」の制作にあたって,苦労した点はありますか。

藤田氏:
 やはり操作感ですね。「信長の野望」ということで,どうしても情報量が多くなってしまうのですが,それをUIの観点から考えると,情報を詰め込みすぎてそれぞれのボタンが小さくなるという結果になります。

4Gamer:
 内政だけでもいろいろなコマンドがありますから,それをそのままスマートフォンの画面にというのは大変ですね。

藤田氏:
 そこで,モブキャストさんにはトップ画面とUIを変更していただいたりしました。

4Gamer:
 「遠征」もそうですが,「モバノブ」に合わせていろいろな仕組みがMSGEに追加されているんですね。

中山氏:
 ええ。最初にお話ししたように,MSGEから離れてしまうのは違うのですが,「モバノブ」として必要なものは追加していきます。

画像集#006のサムネイル/「モバノブ」開発初期に「信長の野望」という巨大IPだからこそ生まれた誤解とは。コラボ実現の経緯と今後の展望を2人のプロデューサーにインタビュー
藤田氏:
 それで言えば,全国地図(※石高を使った全国統一を目指す要素)もそうですね。これは発表会でも言いましたが,「これがなければ絶対ダメ」くらいの勢いでお願いしたので,開発チーム内が「やっぱり『信長の野望』だから特別仕様に?」という雰囲気になりました(笑)。
 ただ「信長の野望」という作品の根底には,志半ばでこの世を去った信長に代わり,天下を取るという目的があるんです。そう考えたとき,やはり攻めて城を取っていき,全国統一できないとダメでしょうと考えたんです。コーエーテクモとして強くこだわったこの部分は,モブキャストさん側にしっかり実現していただけました。

4Gamer:
 たしかに「信長の野望」のイメージと言えば,天下統一を目指す国盗り合戦ですね。

画像集#018のサムネイル/「モバノブ」開発初期に「信長の野望」という巨大IPだからこそ生まれた誤解とは。コラボ実現の経緯と今後の展望を2人のプロデューサーにインタビュー
中山氏:
 もっとも,いま実装されているものは,まだ発展途上なんですよ。現在は,リーグの結果を可視化する形で城や領土が取れたか否かを示しています。ですが,せっかく全国地図があるのですから,領土を広げるほどプレイヤーの考えるべきことが増えていく,「信長の野望」ならではの感じも出したいですよね。

藤田氏:
 そうして領土が増えると必要な資金も増える。かといって,自分の領地を締めあげて年貢を増やすと大変なことになるし,領地を放っておくと襲われる。ソーシャルゲームだと,マイナスになる要素を入れるのはどうかという議論もあるのですが,それがないと「信長の野望」としてどうだろう,という意見がチーム内で出ていまして。

4Gamer:
 ああ,分かります。状況が複雑化していくなかで,いろいろと考えて悩むのも「信長の野望」シリーズの楽しみの一つなんですよね。

中山氏:
 もう一つ個人的にやりたいのが,自分が使う武将の初期パラメータルーレットなんです。「信長の野望全国版」で,ゲームを始める時に選んだ武将のパラメータをルーレットで一桁ずつ決めていくじゃないですか。あれを1日掛けて,初期パラメータを決めていた覚えがあるんです。ですから,「モバノブ」でも何か特別な武将登用などで表現したいんですよ(笑)。

藤田氏:
 こんな感じで,開発チーム内は「信長の野望」好きばかりなので,やりたいことがたくさん出てきます(笑)。

4Gamer:
 思いを語っていると止まらない感じですね。

中山氏:
 はい(笑)。

藤田氏:
 プレイヤーの皆さんも,そういうところを感じ取って「今後,こうなっていくんじゃないか」を見越した上でリクエストをくださっているんじゃないかと思うんですよ。

4Gamer:
 ファンのリクエストが後押しになるケースもありそうですか。

藤田氏:
 そうですね。モブキャストさんに寄せられるリクエストやご意見は,私も全部目を通しています。中には厳しいご指摘もありますが,それは「モバノブ」や「信長の野望」に対する愛が感じられるものなんです。
 コーエーテクモゲームスの社内評価でも同様で,ただ厳しいだけでなく,「ここは,こうしたほうがいいのでは」みたいな意見がビッシリ書かれていて,「信長の野望」シリーズは,本当に周囲から愛されているなと実感できます。

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当面の目標は関ヶ原の戦いの実現。PCブラウザ版 vs スマホ版の集団戦イベントも可能に


4Gamer:
 それでは「モバノブ」の今後の具体的な展開も教えてください。6月26日には,PCブラウザ版のサービスが始まりますよね。

画像集#011のサムネイル/「モバノブ」開発初期に「信長の野望」という巨大IPだからこそ生まれた誤解とは。コラボ実現の経緯と今後の展望を2人のプロデューサーにインタビュー
藤田氏:
 PCブラウザ版については,「信長の野望」のプレイヤー層を考えたときに,やはり必要だろうということでコーエーテクモゲームスから提案しました。「モバノブ」はじっくり考えるタイプのゲームですから,ゆっくり机の前で考えていただきたいとも考えたんです。
 最終的には,PCブラウザ版とスマートフォン版のプレイヤーが交流を持てることを理想としていますが,まずは同じルールの下,それぞれのプラットフォームで遊べるようにしています。

4Gamer:
 交流が持てるということは,データとしては同じものが用いられているんですか?

藤田氏:
 ええ,内部的にはPCブラウザ版とスマートフォン版の区別はなく,すべてのプレイヤーに「モバノブID」が割り振られています。

中山氏:
 ですから,いつかPCブラウザ版プレイヤー vs スマートフォン版プレイヤーの集団戦イベントのようなことも可能になると思っています。

4Gamer:
 PCブラウザ版とスマートフォン版のアカウントは共有できますか?

中山氏:
 それは残念ながらできません。PCブラウザ版はmy GAMECITYのアカウントが,スマートフォン版はモブキャストのアカウントが必要となりますので,ここはそれぞれ別扱いになります。

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4Gamer:
 分かりました。ちなみにPCブラウザ版も,モブキャストで開発しているんですか。

藤田氏:
 ボトルネックになりそうな部分や,データベースなどの共通部分をモブキャストさんにお願いして,スマートフォン版からの移植作業やUIのデザインなどは,コーエーテクモゲームス側が中心となって作業をしています。

4Gamer:
 なるほど。PCブラウザ版もスマートフォン版も,どちらが担当というわけではなく,両社が一丸となって開発しているわけですね。そのほか,PCブラウザ版に関して,お話していただけることはありますか。

藤田氏:
 この6月に,my GAMECITYのほかのタイトルを含めた大規模なキャンペーンを実施します。my GAMECITYはタイトル間のプレイヤーの回遊性が非常に高いので,「信長の野望」やほかの歴史タイトルのファンが「モバノブ」に関心を抱いてくださることに期待しています。

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4Gamer:
 それでは,「モバノブ」の長期的な展望についても教えてください。

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中山氏:
 繰り返しになりますがが,まずは集団戦による関ヶ原の戦いの実現です。その頃には,ゲーム内でさまざまな集まりができていると思いますが,その上で東軍に付くのか西軍に付くのか……「今回は石田が優勢だから」みたいな駆け引きができると面白いですね。

藤田氏:
 私としては先ほども述べたように,プレイヤーが成長しきったあと,城や領地の取り合いをするところまで展開したいですね。長期的に見て,それがソーシャルゲームになじむかどうか。これは,「モバノブ」の一つの挑戦だと捉えています。
 ただ,いたずらに急いでもゲームを壊してしまう可能性がありますから,そこに到達する前にきちんと皆さんの信頼を得ておかないといけません。
 お話してきたように,このゲームは半年でピークを迎えるような内容ではありませんから,ぜひじっくり遊んでいただきたいです。そのための仕掛けもどんどん用意していきます。

4Gamer:
 たとえば,どのような仕掛けでしょう?

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中山氏:
 すでにある仕掛けですが,実はこのゲームは,有料で武将を登用できるのは,1週間に5人だけなんです。お金を掛けて一気に武将を集めると,それで満足してしまうかもしれません。長く遊んでいただきたいという思いからこのような仕様にしているんです。

4Gamer:
 なるほど。ちなみに,武将の有料登用は,今後もずっと5人のままになるのでしょうか。

中山氏:
 いえ,そこはゲーム内の動向によって,調整していく予定ですよ。

藤田氏:
 また「モバノブ」では,週を経るごとに武将の能力がピークに達し,そのあと減衰していくのですが,武将には早熟型や晩成型もいます。その点に着目して考えられるようになると,さらに面白くなりますよ。

4Gamer:
 ところで「モバノブ」が好調だと,「三國志」など,ほかのタイトルの展開が気になるコーエーテクモゲームスファンも出てくると思いますが,そこはどうでしょう。

藤田氏:
 「モバノブ」によって,思考型,長考型のソーシャルゲームがうまく根付くようであれば,ぜひコーエーテクモゲームスのほかのタイトルも,モブキャストさんで展開したいですね。

4Gamer:
 とのことですが,モブキャストさんはいかがでしょう?

中山氏:
 私としても,コーエーテクモゲームスさんの「歴史シミュレーションゲームシリーズ三部作」は全てやりたいです(笑)。

藤田氏:
 ありがとうございます。ところでモブキャストさんは,もともとスポーツゲームを事業の柱としていますけれど,歴史タイトルをそれだけ展開していくのは大丈夫なんですか?

中山氏:
 今回の取り組みで分かったのですが野球やサッカーを好きな人と,歴史が好きな人というのは,ジャンルこそ違えど傾向が似ているんですよ。それに,実は今年から事業方針を「スポーツゲーム」という括りから,「負けず嫌いのお客様が競い合えるSVS」という形に変更しています。ですから,スポーツ以外のゲームも大丈夫です。

4Gamer:
 なるほど,今後の展開が楽しみになりますね。それでは最後に,「モバノブ」に興味を持った人や,今後に期待する人に向けてメッセージをお願いします。

藤田氏:
 「モバノブ」は毎日遊んでいると,やらなければならないことがたくさんあることに気が付くと思います。一般的なソーシャルゲームのような瞬間的にストレスを解消するものではなく,じっくり時間と労力を費やして遊ぶタイプのゲームになっているんです。
 時間と労力に見合ったリターンは確実にありますので,ぜひそこを楽しんでください。いま楽しんでおくと,あとから「やっておいてよかった」と思えるようなイベントもありますよ。

中山氏:
 武将のマネージメントがメインとなる「モバノブ」は,サラリーマンや30代の方に非常にマッチしたゲームだと思います。というのも,このゲームで勝つためには,リアル社会の組織運用と同じく,武将それぞれの個性を把握して,その組み合わせを考えなければなりません。しかも,自分の資金だけがすべてではないのです。
 「モバノブ」を遊んでいる人は,そうした戦略をずっと考えていることになると思うので,きっと頭がよくなります。ひいてはリアル社会の組織運用にも役立つと思いますので,ぜひ遊んでみてください。

4Gamer:
 本日は,ありがとうございました。

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