インタビュー
坂口博信氏がスマホ向けRPG「TERRA BATTLE」に取り組む理由とは。開発の経緯からゲームの内容,プロモーション,今後の展望までズバリ聞いてみた
そんな本作の開発を統括しているのは,これまで「ファイナルファンタジー」(以下,FF)シリーズをはじめ,数々のコンシューマ向けRPGのヒット作を手がけてきた坂口博信氏だ。そんな坂口氏が,今,スマートフォン向けRPGに取り組む理由とは何だろうか。今回4Gamerでは,TERRA BATTLEの開発に至った経緯やゲームの内容,そして「ダウンロードスターター」なる新しいプロモーション手法や今後の展望など,さまざまな疑問を坂口氏に投げかけてみたので,本作に興味がある人はぜひ目を通してほしい。
なお今回,坂口氏による「TERRA BATTLEの概要説明」と「読者へのメッセージ」を動画で収録しているので,そちらもお見逃しなく。
「TERRA BATTLE」公式サイト
スマート向けファンタジーRPGを作ったきっかけは「パズドラ」
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。今回は,ミストウォーカーの新作「TERRA BATTLE」についていろいろとお聞きしたいのですが,そもそも坂口さんが,スマートフォン向けRPGを作ろうと思ったきっかけは何だったのでしょうか。
結構長い話になってしまうんですが,Wii用ソフト「THE LAST STORY」の開発が終わってハワイでゆっくりしているときに,「ファイナルファンタジーVII」でCGを手がけた橋本カズ(橋本和幸氏)と,彼の部下2人と飲む機会があったんですよ。彼らは,直前まで関わっていたプロジェクトがポシャったとのことで,半年間くらい暇な時期だったんですね。そこで僕が,「半年で一緒に何かやりましょう」と誘ったのがキッカケです。
その後,スマートフォン向けサーフィンゲーム「パーティウェーブ」を開発し始めたんですが,次第にこだわりが強くなっていって,結局,半年で完成させる予定が10か月ほどかかってしまいました。ちなみに,橋本カズの部下2人は,その後ミストウォーカーに再就職したんです。僕としては「あれ,来ちゃったの?」と(笑)。
4Gamer:
居心地が良かったんですかね(笑)。ともあれそこで,TERRA BATTLEの中心メンバーが揃ったわけですね。
坂口氏:
はい。そして,まずはスマートフォン向けゲームの「デジドロップ」を作りました。これは未発表のタイトルなんですが,小さな数字を大きな数字で挟んで消していくというパズルゲームで,TERRA BATTLEのあとにリリースしようかと思っています。
4Gamer:
ということはつまり,TERRA BATTLEは,ミストウォーカーとしては実質3作目のスマートフォンアプリとなるわけですね。
坂口氏:
そうなります。2本作ってみて進行もうまく回るようになり,絵描きもいい人材が入ってきたので,真剣にスマートフォン向けのゲームに取り組もうと考えたんです。真剣と言っても,1作目と同様に“肩に力を入れすぎない”という部分は変わりませんけどね。
でも実は,TERRA BATTLEの前にバレエのゲームを開発していたりもするんですよ。こちらは未完成なんですけど。
4Gamer:
バレエというと,踊るほうのバレエですか。なぜ,バレエをチョイスされたんですか?
坂口氏:
うちの娘が,小さい頃からジャズダンスをやっていて,一時期「バレエの学校に行きたい」と言っていたんですよ。娘に付き合って発表会を観に行ったりしているうちに,ダンスの大変さや舞台裏なんかも見えてきて,自然と理解が深まっていきました。一見分かりにくいのですが,ジャンプ力やバランスの取り方などは,人によって全然違うんですよね。それをゲームとして表現してみたらどうだろうと考えたんです。
もう1つの理由は,クラシックの有名楽曲の大半が,著作権フリーだったという点です。演奏自体は新たに収録しなければなりませんが,皆が知っているチャイコフスキーの「白鳥の湖」も自由に使えるわけです。もちろん,せっかくだから誰もやっていないことをやりたい,という気持ちもありましたね。
4Gamer:
なるほど。世の中にダンスゲームはたくさんありますが,確かにバレエを題材にしているものはあまりないですね。
坂口氏:
そうなんです。それで「本物を観なければダメだ」と,皆でパリのオペラ座まで行って取材しました。登場キャラクターの女の子も,「パーティウェーブ」のようなデフォルメバージョンと,藤坂(ミストウォーカー 藤坂公彦氏)の描くリアルなバージョンを用意するなど,結構頑張って開発していました。
4Gamer:
しかし,デジドロップとは違って,こちらは開発を断念されているわけですよね。
ええ。開発を進めて,画面をタップするとキャラクターがジャンプしたり,回転したりするところまでは作ったんですが,完成には至りませんでした。
そして「バレエはちょっと違うんじゃないか」と思い始めた頃に,「パズル&ドラゴンズ」(以下,パズドラ)の山本さん(ガンホー 山本大介氏)とお話しする機会があったんです。正直なところ,当時の僕はパズドラについてほとんど知らなかったんですが,奥さんからのアドバイスがパズドラに大きな影響を与えたなど,山本さん本人からいろいろな逸話を聞き,興味を持ちました。そして実際に遊んでみたら,本当によくできていて,素直に面白いと感じたんです。
4Gamer:
確かに,コアなゲーマーほど敬遠しがちなゲームかもしれませんが,実際に遊ばないと理解できない魅力があるゲームですね。
坂口氏:
おっしゃるとおりです。RPGとして,データが緻密に作り込まれていて,属性や状態異常の要素も組み込まれているし,とにかくバランスが素晴らしいんですよね。「ドラゴンクエスト」が登場したときに「ファミコンでもRPGを作れるんだ」と気付かされたときと,似たような驚きがありました。
正直に言うと,当時の僕には「タップするだけでしょ」と,スマートフォン向けゲームをどこかバカにしていた部分があったんです。でも「パズドラ」で認識が変わりました。これが,スマートフォン向けにRPGを作ってみようと考えたキッカケです。
4Gamer:
なるほど。
坂口氏:
そしてTERRA BATTLEの企画に取りかかるわけですが,当時はデジドロップの仕上げに差しかかっていたこともあり,最初は僕1人で4か月間くらい企画を練っていました。当初は画面を横に使ったFFっぽい戦闘を考えていたんですが,山本さんの「スマートフォンのゲームは縦持ちでしょ」という言葉が引っかかっていて,試しに縦画面で作り直してみたら,僕自身が面白くなっちゃったんです。
4Gamer:
縦持ち,横持ちのいずれにも長所がありますが,片手で気軽にプレイしやすいのは縦持ちというところでしょうか。例えば,日本では電車での移動中やちょっとした空き時間にスマホアプリで遊ぶ人が多いと思いますが,その場合,やはり縦持ちのほうがしっくりくるような気がします。
坂口氏:
僕個人としては,そういうことになりますね。いずれにせよ,僕にとっては多くの発見があった,楽しいアイデア出しの期間となりました。
挟撃バトルのヒントになったのは「挟み将棋」とApple IIの「Archon」
4Gamer:
それではTERRA BATTLEについて教えてください。ざっくりとしたジャンルでいうと,坂口さんの得意なファンタジーRPGということになりますよね。
ストーリーはファンタジー色が濃いんですが,操作はパズルっぽいですし,地形効果なども存在するのでタクティカルな要素もあります。そこに成長要素を加えたスマートフォン向けのRPGという感じです。
4Gamer:
縦画面で遊ぶ片手操作が可能なゲームですが,とくに配慮した部分はありますか?
坂口氏:
ルールを短く,分かりやすいものにするというところでしょうか。できれば1行で,長くても3行以内に収まるルールじゃないとダメだろうと。その一方では奥深いものにしたいと考えていましたから,それこそ山本さんに倣って,女房に相談したこともありましたよ(笑)。そうやっていくうちに「挟み将棋」のアイデアにたどり着きました。
4Gamer:
なぜ挟み将棋だったんでしょう。
坂口氏:
僕が子供の頃に好きだったんですよ。普通の将棋は,親父が加減してくれず全然勝てなくて……。でも挟み将棋なら,五分で渡り合えたので(笑)。
もう一つの理由は,Apple IIの「Archon」が好きだったことですね。これは1vs.1の対戦ゲームで,チェスのように盤面上でさまざまなタイプのコマを動かし,コマが重なり合うとアクションゲームに切り替わって直接対決するという,ちょっと変わった内容の作品です。それでいつか,碁盤の上で戦うようなゲームを作りたいと考えていました。
またArchonでは,各コマが持っている能力に相性があるので,「相手のこのコマに,自分のこのコマをぶつけると有利」といったような戦略/戦術も考えられるんですよ。
4Gamer:
確かにTERRA BATTLEにも,武器の種類や魔法の属性に相性がありますし,それを生かしたコマの動かし方はかなり重要になりそうですね。そのほか,操作方法についてはどうでしょうか。
坂口氏:
パズドラの「タッチして動かしながら,場所を入れ替えて形を作っていく」という操作が,(スマホでゲームを遊ぶ)ほとんどの人に認知されたものであると割り切りました。ただTERRA BATTLEは,パズドラのように盤面が全部埋まっていたり,3つそろえたりするわけではなく,「直線上に味方を揃えるとスキルが連鎖発動する」というルールですから,遊んでいるときの考え方はまったく異なります。
4Gamer:
パズドラの操作は,現在多くの人が慣れ親しんでいることは確かだと思いますが,初めて触れる人にとっては結構難しいような気もします。そう考えるとTERRA BATTLEは,ある程度ゲームに慣れている人向けなのでしょうか。
序盤は,あまり深く考えずに敵を挟むだけで進んでいけるので,誰でも遊べる内容になっています。最初が簡単というところは,僕が作ってきた初期のFFシリーズなどと同じですね。
しかし中盤以降は,しっかり考えないと進めないバランスになっています。ここはチーム内でも「もっとライトユーザー向けにしたほうがいいのでは?」といった議論があったのですが,どうしてもRPGを作ってきたときの想いがうずいてしまうんですよね。「ボスは一度負けて,攻略法をきちんと練り直してから勝つものでしょ」とか。
なので,後半は本当にキツいです。でも無茶なバランスにはしていないのでご安心ください(笑)。これも今まで僕が作ってきたコンシューマ向けRPGと同じ感覚です。
4Gamer:
ということは,昔かたぎのゲーマー向けという感じでしょうか。
坂口氏:
そうなりますね。正直なところ,そういったゲーマーがスマートフォンでRPGを遊ぶのかどうか分からないんですが,今はそういうタイトルがあまり多くないですから,あえて狙うのも面白いかなと考えています。うまくいかなかった場合は「そういうゲーマーは少ない」という業界の指標にもなるので,ポジティブに考えればそれもアリかなと。
ただその一方では,1ステージにかかる時間を短くすることでテンポをよくしよう,というスマホ向けタイトルに必要な部分も取り入れています。
4Gamer:
売れるゲームというよりも,坂口さんが作りたいゲームを作ったと。
坂口氏:
そのとおりです。僕とチームスタッフの作りたいゲームを作りました。
4Gamer:
ストーリーは,どういった形で表現しているのでしょう。
坂口氏:
「ロストオデッセイ」のように,テキストのアニメーションでシンプルに表現しており,リリース時は全30章で一区切り付く構成になる予定です。スマートフォンゲームのいいところは,あとからアップデートできる部分ですので,できればその先,31章,32章……と新しい展開をしていきたいですね。
「ダウンロードスターター」の参加クリエイターにはそれぞれ直接打診をした
4Gamer:
TERRA BATTLEでは,ダウンロード数の累計に応じて,コンテンツが追加されたり,イベントが開催されたりするという,面白いマーケティングを試みていますよね。
「ダウンロードスターター」ですね。これはスマートフォン界隈の面白さにヒントを得たものです。「SDKを組み込んで広告バナーの絵を変えたら,ダウンロード数が伸びた」という話を聞いたことがキッカケでした。僕なんかだと「それは,ちょっとやりすぎじゃないの?」と思うんですけど,今はそれが当たり前なんですよね。
そしてもう1つヒントになったのが,クラウドファンディングのKickstarterです。知り合いの松野(ゲームクリエイターの松野泰己氏)がKickstaterを使ったプロジェクトに関わっており,実際,僕のところにも「クラウドファンディングで開発資金を集めたらどうか」という話があったんです。
4Gamer:
なんと,そんなことがあったんですか。
坂口氏:
しかしその時点で,TERRA BATTLEは70%ほどの開発が終了していたので,開発費を集めるとなると,いろいろと面倒な話になりそうでした。そこで最初は,植松さん(作曲家の植松伸夫氏)のコンサート費用とか,新キャラクター追加に必要な費用などを集めるためにKickstaterを使ってみようという話になったんです。でも,いざとなったら「実際のお金が絡む話は,ちょっとエグいんじゃないか」と。
そこで,ダウンロード数が一定値に達したらある程度の利益が生まれると仮定し,プレイヤーに利益を還元する方法を考えた結果,ダウンロードスターターが生まれました。そのため,ダウンロード数が多くても,思ったように利益が出なかった場合は,植松さんのコンサートの規模が小さくなってしまうかもしれません(笑)。
4Gamer:
植松さんもそうですが,かなり豪華なメンバーが参加を表明していますよね。
ある意味,映画の友情出演みたいなものですよ。もちろんある程度のギャラは発生しますが,基本的には僕がFacebookを使って知り合いにメッセージを送って,それぞれに声を掛けました。「ねえねえ,今,ヒマ?」とか(笑)。そうしたら松野とかが,快諾してくれて。皆葉(キャラクターデザイナーの皆葉英夫氏)はもともとTERRA BATTLEで描いていますが,「いいじゃん,あと3体なら大丈夫でしょ」とか言いくるめて(笑)。
あと,まだ声を掛けていないんですが,僕としては過去にキャラクターデザインをしてくださった鳥山 明さんと井上雄彦さん,「フロントミッション」でフィギュアを作ってくださった横山 宏さんにもご協力をお願いしようかなと……。あとイトケン(作曲家の伊藤賢治氏)とか下村(作曲家の下村陽子氏)とかにも,「ここで恩を返せ」と声を掛けてみようかと考えています(笑)。
4Gamer:
さすが坂口さん,すさまじい交友関係ですね……。個人的には,天野喜孝さんの名前が挙がっていることにもビックリしました。
坂口氏:
天野さんは忙しい人ですから,締め切りが一番重要になるんですけど,「150万ダウンロード達成のときでいいです」と言ったら,「そんな先なら全然やれるよ」って。そんな感じで次々に話がまとまったので,せっかくだからとダウンロードスターターを紹介するPVを作ってみたわけなんです。
ただ,気楽に作り始めた作品ですし,「坂口,植松,皆葉,そして天野の4巨匠が手がける大作RPG!」みたいな,大上段に構えた感じにはしたくなかったんですよね。もちろん丁寧に作ってはいますが,気軽に遊んでほしいという思いが強いですから,ダウンロードスターターを紹介する中で,「植松さんと皆葉さんが参加してるんだ」「天野さんが参加するかもしれない」ということが伝わるようなプロモーションができればいいなと思います。
4Gamer:
ゲーム的にもプロモーション的にも,気軽さが重要なキーワードになっていると。
坂口氏:
そうですね。あとはスマートフォンのゲームって,コラボとかでお祭り的な盛り上がりが演出できるじゃないですか。そういう意味でもいろんな人が参加する企画は楽しいんじゃないかと。また,TERRA BATTLEは2Dグラフィックスのゲームなので,キャラクターの追加などにあまり時間がかからないのも強みだと思っています。これが3Dだと,皆葉が描いたイラストをモデリングしてライティングを決めて……と,時間が掛かり過ぎてしまうので。
また3Dワールドだと,デザインのテイストが少しでも違うと,違和感が顕著に出てしまいますが,2Dであればある程度味が違っても成立するんですよね。そこが2Dの強みかなと。
4Gamer:
ダウンロードスターターの項目に,マルチプレイモードの追加も挙がっていましたが。
坂口氏:
対戦モードと協力モードの両方を考えています。すでに仕様を切ったりといった下準備は始めているんですが,ダウンロード数が一定値に達したら本格的に開発を開始します。
4Gamer:
対戦のマッチングはどういった形式になるんでしょう。
坂口氏:
マッチングについてはレベルなどを基準にしたり,とくに制限を設けなかったりと,いくつかの方法を予定しています。
4Gamer:
対戦モードとなると,プレイヤー自身のテクニックだけでなく,運の要素が重要になるタイトルが受けているように感じているのですが,TERRA BATTLEではどうでしょうか。
TERRA BATTLEには,ランダムに出現する「パワーポイント」というアイテムがありまして,これを間に挟んで味方を直線上に並べたとき,キャラクターごとに備わったスキルが必ず発動したり,攻撃力が2倍近くまで上昇したりします。さらに,属性ごとの防御力が上がるカプセルも登場します。
4Gamer:
なるほど。運要素に加えて,「お金をかけた人が強い」という仕様の対戦モードも,なかなか盛り上がらない印象を受けますが,その点についてはいかがでしょうか。
坂口氏:
そこは非常に難しい点ですね。お金を使ってくれた人にはメリットを与えたいので,ゲーム内通貨を使うガチャでは強力なキャラクターが出やすくなっています。ただ,ゲームを進めていくと,かなり使えるヒーラーキャラが3体ほど手に入りますし,イベントなどでプレゼント企画も予定していますから,いわゆる無課金でも最強クラスのキャラクターをある程度揃えられるはずです。
4Gamer:
お金をどれだけ使ったかで,絶対的な強さが決まるわけではないと。
坂口氏:
そうですね。またTERRA BATTLEの場合,同じ属性のメンバーでチームを組むことで攻略しやすいステージがあるなど,たくさんのキャラクターを集めた方が面白くなるので,ガチャの設定も甘めにしています。また,課金アイテムを定期的に配布することで,大勢の人に楽しんでもらえればいいなと考えています。
4Gamer:
パズドラでいうところの「ポカポカ運営」ですね。
坂口氏:
「艦隊これくしょん -艦これ-」もそうですよね。謙介(角川ゲームス 田中謙介氏)は,スクウェア時代から僕と一緒に仕事をしていて,ミストウォーカーに在籍したこともあるので,非常にアイツらしいなと。
艦これの場合は,むしろプレイヤー側が,“お布施”という形でお金を払っていますが,それは素晴らしいゲームですよ。できることならTERRA BATTLEも,そういう方向に持っていきたいです。実際に狙ってできるかというと,かなり難しいのですが……。
コンシューマ版「TERRA BATTLE」はMMORPG? 目標は「TERRA BATTLE」ワールドの拡大
4Gamer:
ダウンロードスターターでは,200万ダウンロードの達成で,コンシューマ版の開発をスタートするということになっていましたが,コンシューマ版はどんな内容になるのでしょう。
まだ構想段階ですが,3DグラフィックスのMMORPGをやってみたいんですよね。お話ししたとおり,TERRA BATTLEでは,キャラクターを直線に並べるとスキルが連鎖発動します。それを,各プレイヤーがそれぞれ1キャラを操作することで実現するんです。寝落ちしたりして,誰かが列を乱すと連鎖が途切れてパワーが拡散するから,ボス戦の前では「列を乱すな!」と仕切るヤツが現れるわけです(笑)。
4Gamer:
それは……すごい光景になりそうですね。
坂口氏:
まだ頭の中で考えているだけの話ですが(笑)。ともあれ200万ダウンロードを達成したあとも,250万,300万とスマートフォン版のダウンロードスターターは続けていくつもりですし,コンシューマ版は別途展開していきます。そうやって,TERRA BATTLEワールドをどんどん広げていくことが,今の目標です。
4Gamer:
それでは今回,スマートフォンでRPGを作ってみて感じたことなどを教えてもらえますか。
坂口氏:
開発規模的には,ファミコンのFFIからIIIを作ったときに似ていました。当時よりもシステムが練られているので,データ的にはむしろファミコンのFFよりも増えているのですが,プログラマーの大野(大野浩司氏)が非常に腕の立つ人材で,通常3〜4人がかりになるところを1人でやっちゃったんですよ。人数が少ない分,コミュニケーションが密になるので,昔の開発現場のような懐かしさを感じました。
またシナリオの演出は,3Dモデルを作ってモーションを付けるというものではないので,比較的軽くなりましたが,文章を作るのに苦労しましたね。
4Gamer:
坂口さんは,今後もスマートフォン向けのゲームをどんどん作っていくのでしょうか。
どうでしょう。TERRA BATTLEの運営がありますし,イベントダンジョンや,ダウンロードスターターの追加コンテンツ開発がありますから,結構掛かりっきりになってしまいそうです。そのうえ,200万ダウンロードを達成した暁には,コンシューマ版の開発がスタートしますからねえ……。僕自身,「ラインを増やしてミストウォーカーを大きくするぞ!」という野望はなく,むしろ小規模なままにしておきたいと考えていますから。
4Gamer:
というと,今後も興味があるものを題材にゲームを作っていくという感じでしょうか。
坂口氏:
そうなんです。ちょっと時間ができたら,バレエゲームをきちんと完成させたいですし,デジドロップもタイミングを見てリリースしたいですね。
4Gamer:
ちなみに現在,坂口さん自身が注目しているスマートフォン向けのゲームはありますか?
坂口氏:
あまりやり込んだりはしないんですが,有名なタイトルはチェックしています。その中でもパズドラと「ドラゴンクエストモンスターズ スーパーライト」は,かなりのお金を注ぎ込んでプレイしました。実際にお金を使ってみないと分からないことも多いので。「ガチャで狙ったキャラがなかなか出ないな」とか,「強いわりに絵がしょぼいな」とか(笑)。
4Gamer:
ああ,確かにキャラクターの絵柄はプレイのモチベーションを左右するかもしれません。
坂口氏:
TERRA BATTLEだと,僕は「アマゾン」というキャラクターが好きなんですが,Bランクにされちゃったんですよ。ランクを決めたスタッフに「アマゾンがBランクって,どういうこと!」って迫ったんですけど,変わりませんでした……アマゾンがかわいそう(笑)。
4Gamer:
そのエピソードを聞いて,「あの坂口さんでも,そんなことを考えるのか」と思うゲームファンの姿が目に浮かびます。それでは最後に,TERRA BATTLEに期待している人に向けてメッセージをお願いします。
坂口氏:
TERRA BATTLEは現在,日本向けのチューニングを重ねているところです。今回は,ダウンロード数に応じて,植松さんや皆葉といったクリエイターが参加したり,新しいコンテンツを追加したりする新しい企画「ダウンロードスターター」にも取り組んでいます。TERRA BATTLEを遊んでくださる方と一緒に盛り上がれるような展開をしていきますので,よろしくお願いします。
4Gamer:
TERRA BATTLEの今後の発展に期待しています。本日はありがとうございました。
「TERRA BATTLE」公式サイト
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