レビュー
価格はちょっと高いが,総合点も高いGTX 1060 6GBカード
ASUS STRIX-GTX1060-DC2O6G
ASUSのGTX 1060 6GB搭載カードには,より高いスペック(と価格)で,3連ファン仕様のクーラーを搭載する「ROG STRIX
ASUSオリジナルのカード設計で,メーカーレベルのクロックアップ設定も入ったSTRIX
リファレンスよりコンパクトなカードながら,電源部はかなり豪華
ただし,マザーボードに装着したときの垂直方向へは,I/Oブラケットより実測約12mm高い。PCI Express補助電源コネクタも垂直方向を向いていたりするので,筐体内のスペースに制限のあるPCケースに差そうという場合は,相応に注意が必要だ。
なお,細かなファン回転数設定は,ASUS GPU Tweak IIの「Professional Mode」から行える。「Fan Speed」という項目には,「Auto」
Manual設定でファンの回転数を55%固定にしたところ。こうするとアイドル時も高負荷時もファン回転数は変わらなくなる |
User Defineでは,温度と回転数のグラフを用いて,ユーザーが細かく各温度における回転数を設定することが可能だ |
PCI Express補助電源コネクタは,Founders Editionと同じく6ピン |
出力インタフェースは5系統あり,最大でこのうち3+1系統を利用できる |
ちなみにこのクーラーは,NVIDIAのリファレンスカード――Founders Editionのことだと思われるが,断言はできない――と比べて冷却能力は最大30%,高負荷時の動作音は3倍静かだという。
ASUS GPU Tweak IIから3つの動作モードを選択可能
冒頭で述べたとおり,STRIX
- OC:GPUベースクロック1595MHz,GPUブーストクロック1811MHz(最大1949MHz),GPU Power Target 110%,メモリクロック8008MHz相当
- Gaming:GPUベースクロック1569MHz,GPUブーストクロック1785MHz(最大1924MHz),GPU Power Target 100%,メモリクロック8008MHz相当
- Silent:GPUベースクロック未公開:GPUブーストクロック1758MHz(最大1860MHz),GPU Power Target 90%,メモリクロック8008MHz
対して最もクロックの低い設定となるSilentだと,GPUベースクロックは未公開ながら,少なくともGPUブーストクロックはリファレンスと同じ設定となっていた。
メモリクロックは動作モード選択にかかわらずリファレンスと同じだ。
ブーストクロックは,「GPU Boost Clock」の「User Define」を選択すると,GPUコア電圧ごとのブーストクロック設定をグラフからカスタマイズすることもできる。
また,GPUコア電圧も,「選択した同モードの電圧設定に対するプラス設定」というやり方により,「GPU Voltage」の項目から0〜100%の範囲を1%刻みで設定できるようになっていた。正常動作するかどうかは別として,+100%に設定した場合,コア電圧は各動作モードの定格比で2倍になるということである。
3つの動作モードでFounders Editionと比較
テストのセットアップに入ろう。
今回,比較対象にはリファレンスとしてGTX 1060 6GBのFounders Editionを用意した。主役であるSTRIX
テストに用いたグラフィックスドライバは「GeForce 385.41 Driver」。9月30日時点ではより新しく,脆弱性の修正も入った「GeForce 385.69 Driver」がリリース済みだが,テスト開始時点では385.41ドライバが最新だったということでご容赦を。
そのほかテスト環境は表のとおりだ。
テスト方法は4Gamerのベンチマークレギュレーション20.1準拠。GTX 1060 6GBというGPU自体がミドルクラス市場向けということもあり,テスト解像度は2560
クロックアップ効果はあるものの,スコアの向上率はそれほど大きくない
以下,グラフ中に限り,STRIX
グラフ1はDirectX 11テストである「Fire Strike」の総合スコアをまとめたもの,グラフ2はそこから事実上のGPUベンチマークである「Graphics test」のスコア「Graphics score」を抜き出したものになる。
工場出荷時設定であるSTRIX
一方,GPUのPower Targetが下がっているSilent Modeは,GTX 1060 6GBに届いていない。
続いてグラフ3は同じく3DMarkから,DirectX 12ベースであるテスト「Time Spy」の総合スコアとGraphics scoreをまとめたものになる。
ここでもスコア傾向はFire Strikeを踏襲したものと言っていいだろう。STRIX
グラフ4は「Superposition Benchmark」(以下,Superposition)の総合スコアだが,出ている傾向は3DMarkとほぼ同じ。対GTX 1060 6GBだと,OCモードで1〜2%程度,Gamingモードで約1%高いスコアを示し,Silentモードでは1〜2%程度低いスコアとなっている。
そのSuperpositionにおける平均フレームレートと最小フレームレートがグラフ5〜7だが,ものの見事に総合スコアを踏襲した結果となっている。
グラフ8〜10は「Prey」の結果だ。
ここでも基本的な傾向は3DMarkから変わっていない。ただ,平均フレームレートはSTRIX
最小フレームレートだと2560
「Overwatch」の結果がグラフ11〜13だ。ここにおいてGamingモードのSTRIX
1600
グラフ14〜16は「PLAYER
ここまでと比べるとPUBGではSTRIX
「Tom Clancy’s Ghost Recon Wildlands」(以下,Wildlands)の結果がグラフ17〜19である。
Wildlandsはベンチマークレギュレーション20世代で取り上げているタイトルの中でもかなり描画負荷が高いこともあり,クロックアップによる効果はほとんどない。もちろん細かく見れば若干のスコア差は出ているものの,ここでは「ほぼ横並び」とするのが正しい評価だろう。
グラフ20は「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」(以下,FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチ)のスコアをまとめたものだが,OCモードとGTX 1060 6GBとのギャップは最大でも約2%。Gamingモードも最大で約1%なので,やはり横並びである。
それは,平均および最小フレームレートを計測したグラフ21〜23からも読み取れる。最小フレームレートにもほとんど違いは生じていないのが印象的だ。
「Forza Horizon 3」の結果がグラフ24〜26となるが,GamingモードとGTX 1060 6GBとのスコア差は平均フレームレートで約1%,最小フレームレートで1〜2%程度といったところ。クロックアップの効果は出ているものの,違いは大きくないというのは,ここまでと同じ傾向だ。
GamingモードはFounders Editionより消費電力が低い。搭載するクーラーも優秀
クロックアップモデルは消費電力の増大が懸念されるが,実際のところはどうか。まずはログの取得が可能な「Watts up? PRO」を用いて,システム全体の消費電力を測定してみよう。
テストにあたっては,ゲーム用途を想定し,無操作時にもディスプレイの電源がオフにならないよう指定したうえで,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点を,タイトルごとの実行時とした。
その結果はグラフ27のとおり。まずアイドル時は,あえて言えばSTRIX
次にアプリケーション実行時だが,ここではGamingモードの消費電力に注目したい。というのも,ごくわずかながら,すべてのテスト条件でGTX 1060 6GBのFounders Editionを下回っているからである。
一般に,GeForce GTX 10シリーズを搭載するグラフィックスカードは,動作クロックが上がるととたんに消費電力が増大する。その点においてSTRIX
OCモードにおける消費電力増大率がそれほど突出したものではない点,そしてSilentモードの消費電力がFounders Editionより3〜12W程度下がっている点も押さえておきたい。
続いては「4Gamer GPU Power Checker」(Version 1.1)を使って,カード単体の消費電力を計測してみたい。
ここでは,「全部掲載するとグラフが見づらくなる」という理由から,GamingモードとGTX 1060 6GBのスコアのみグラフ28にまとめている。
これを見てもらうと分かるが,全体的には変わらない傾向であるものの,ピークはGTX 1060 6GB Founders Editionのほうが高く,180Wを超えている。豪華な電源周りがSTRIX
グラフ29は,OCモードとSilentモードも含め,4Gamer GPU Power Checkerで計測した消費電力の中央値をまとめたものだ。Gamingモードの結果はGTX 1060 6GBのFounders Editionより3W以上低い。OCモードとSilentモードの結果も含め,メリハリが効いている印象を受ける。
GPUの温度も確認しておこう。ここでは3DMarkの30分間連続実行時点を「高負荷時」とし,アイドル時ともども「GPU-Z」(Version 2.4.0)からGPU温度を取得することにした。
テスト時の室温は約24℃。システムはPCケースに組み込まず,いわゆるバラックの状態に置いている。STRIX
その結果がグラフ32である。言うまでもないことだが,STRIX
最後にGPUクーラーの動作音もチェックしておきたい。今回は,カメラをカードと正対する形で30cm離した地点に置き,PCをアイドル状態で1分間放置した状態から,FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチを最高品質の2560×1440ドットで4分間実行した,合計約5分間をビデオとして用意した。テスト時の動作モードはデフォルトのGamingだ。
最初の1分間はアイドル状態で,クーラーのファンは停止しているため,聞こえるのは周囲の環境音だけだ。それに対し,FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチを実行すると,30秒後(=ファイル冒頭から90秒後)にファンが回転を始め,次第に回転数を増していく。FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチを実行して3分後(ファイル冒頭から4分後)には,ファンの回転数は最大に達しているはずだが,その動作音はかなり静かである。クーラーの静音性は高いと言っていいだろう。
クロックアップ効果は限定的だが,総合的にはかなり扱いやすいカードだ
まず,メーカーレベルのクロックアップだが,これはどこまでも限定的と言わざるを得ない。体感レベルではOCモードを選択したとしても違いはまず分からないと思われる。
ただ,だからと言って遅いわけではなく,しかもFounders Editionと比べてカード長は短く,消費電力は若干ながら低く,静音性は高い。実勢価格は3万2500〜3万8000円程度(※2017年9月30日現在)と,クロックアップモデルの中でも高いほうで,ここは人を選ぶものの,せっかくミドルクラスのGPUを買い換えるのだから後悔したくないという場合に,STRIX
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