プレイレポート
ついに発売された「アサシン クリード シンジケート」のプレイインプレッション。シングルプレイに特化したことで,没入感や自由度が大幅アップ
陰謀と暴力渦巻くロンドンで繰り広げられる
テンプル騎士団とアサシン教団の戦い
「アサシン クリード」シリーズの最新作,「アサシン クリード シンジケート」(PlayStation 4/Xbox One)が2015年11月12日,ユービーアイソフトから発売された(PC版は11月19日発売予定)。
「アサシン クリード シンジケート」公式サイト(要年齢認証)
産業革命に突入した1868年のロンドンでは,工業が急速に発展し,数々の発明品が人々の生活に大きな変化をもたらす一方,貧富の格差が広がり,下層階級に属する多くの労働者達が奴隷同然の生活を強いられるという状況だった。
労働者達は支配者層の抑圧を打ち破るために「ギャング」と呼ばれる徒党を組んで戦いを挑んでいるが,その影にはテンプル騎士団とアサシン教団の長きにわたる戦いがあった。
アサシンとして育ったジェイコブ・フライは,双子の姉エヴィーとともに,アサシンの信条に従って,陰謀と暴力が渦巻くロンドンの闇を打ち破るために活躍する。
……というわけで,シリーズ最新作となる「アサシン クリード シンジケート」の舞台には,今から147年前のロンドンが選ばれた。数々の観光スポットや,社会科の教科書で見た有名人物などが登場する大都市だ。
前作「アサシン クリード ユニティ」がマルチプレイ重視だったのに対して,本作はシングルプレイのみになっている。これは,「物語に焦点を当てることが最も重要」だと判断した結果とのことだが,そのため,操作性やゲーム性はシングルプレイのみを考えたものになっている印象だ。
本稿では,筆者がPlayStation 4版をプレイしたインプレッションをお届けしたいと思う。結論から書いてしまうと,シングルプレイを1人で黙々とプレイするのが好きな筆者は,本作にすっかり引き込まれてしまった。まさに開発者の思惑どおりといったところだが,ともあれ,さっそくゲームの内容を見ていこう。
現代パートも用意されており,エデンのかけらを追って,記憶をたどっていく |
これまた定番である,暗殺後のターゲットとのやり取りも用意されている |
空気さえ感じられるほどに再現された19世紀のロンドンで歴史上の偉人達と会える
繰り返すが,ゲームの背景になるのはヴィクトリア朝時代のロンドンで,産業革命により工業が発達した結果,街中には馬車が走り,線路を蒸気機関車が走り,テムズ川を蒸気船が行き来している。12世紀の中東地域からスタートしたこのシリーズだが,スピンオフタイトルを除くシリーズ9作めにして,いよいよ近代に突入したわけだ。
もちろん,それらの交通機関は移動手段にできるし,街中でカーチェイスならぬ馬車チェイスを繰り広げたり,蒸気船や蒸気機関車の上で戦闘したりする場面も登場する。
ロンドンには行ったことがないし,当時のロンドンは知らないので,あくまで筆者のイメージなのだが,ゲーム画面に広がるロンドンの再現度は圧倒的だ。数え切れないほどの煙突から吐き出される,身体に悪そうな煙で霧がかかり,テムズ川は工場や民家の排水で汚れ,路地に入れば死んだように道ばたに座り込んだ人や酔っ払って踊っている人,道ばたで事故を起こした馬車を修理している人々がいる。キレイなばかりではない,こうした生々しいロンドンの姿は,現実と錯覚してしまいそうだ。
セント・ポール大聖堂やトラファルガー広場,ビッグベンなど著名な建造物はひととおりフォローされており,近寄れば,彫刻や造形などが細部に至るまで再現されていることが分かる。
しかも,彼らはただ出てくるだけでなく,新たな武器を提供してくれる協力者だったり,サイドミッションの依頼主だったりで,違和感なくストーリーに溶け込んでいるのだ。とくにグラハム・ベルは,ゲームに大きく関わってくるので,ぜひ会ってみよう。こんな人だったとは,思ってもいなかった。
2人の,それも男女のアサシンが主人公であるというのも,シリーズ中では本作が初めてだ。ストーリーに関わるミッションでは使用キャラは固定されるものの,散策やサイドミッションなどでは,どちらのキャラでプレイしてもいい。
一方のエヴィーは,常に冷静に物事を判断する。女性ということもあり,真っ向勝負の肉弾戦よりは,アサシンらしく気づかれずに敵を倒す隠密行動を得意としている。二人のキャラを使い分けられることで,これまで以上にいろいろな暗殺方法を試せるのも嬉しいところだ。まさに,一粒で二度おいしい,というところだろう。
ジェイコブもエヴィーもゲームを進めていくと経験値を獲得し,それによってレベルアップできる。経験値が1000溜まるごとにスキルポイントが1つ手に入り,それを使ってスキルアップできるという仕組みだ。
スキルは「戦闘」「ステルス」,そして「フィールド」にカテゴリ分けされており,ライフゲージを増やす,敵に発見されにくくなる,銃撃しようとしている敵を撃って攻撃を阻止できるなど,ゲームの進行に役に立つ能力ばかりだ。どれからアンロックしていくかは自由だが,レベルの高いスキルほど多くのポイントが必要になるので,じっくり考えながら育てていく必要がある。この育成要素も,また楽しい。
広いロンドンには,お楽しみがいっぱい
本作は,基本的に1つのメインストーリーを軸にゲームが展開していく。従来作と同様,ミッションは,開始地点まで移動して請け負うというスタイルで,ミッションをクリアしていくことで,物語が進んでいくというスタイル。シングルプレイ専用ということもあって,ストーリーについて詳しいことは書けないが,ロンドンを裏で牛耳るテンプル騎士団の陰謀を阻止することが最大の目的だ。敵は,世界の首都ロンドンを支配することが,世界の征服につながると考えている。エデンのかけらがらみの話も出てくるので,シリーズのファンは楽しみにしてほしい。
ここでは,メインストーリーをちょっとはずれた,サイドミッションについて紹介しよう。
ロンドンは,テムズ,サザーク,ランベスなど,7つの地区に分かれており,それぞれの地区ごとにギャングのリーダーがいて,そこを縄張りとしている。ギャングリーダーでもあるジェイコブには,ミッションをこなすかたわら,各地区を牛耳るギャングリーダーを倒して縄張りを手に入れ,ロンドンを一つの組織(シンジケート)にしていくという目的が用意されている。
具体的にはこんな感じだ。ゲーム開始直後,ロンドンのマップは未制圧地区ばかりで真っ赤だが,サイドミッションをこなすことで,そのエリアが可視化されていき,すべて完了すると,ギャングリーダーの率いる一団と入り乱れての大乱闘が発生する。これに勝てば,そのエリアが自分のものになるという寸法だ。
サイドミッションには,エリアにいるギャングの一味全員を抹殺する「ギャングの拠点」,ターゲットを誘拐して依頼人に引き渡す「賞金稼ぎ」,ターゲットを見つけて暗殺する「テンプル騎士狩り」,強制労働させられている子供を逃がす「児童解放」などがある。筆者的には,これにすっかりハマッてしまった感あり。
街をウロウロしていると,敵対するギャング達とのいざこざがしばしば発生する。しかし,仲間のギャングもあちこちにいるので,移動時に彼らを同行させておけば,戦いになったときに加勢してくれたりする。
ジェイコブは,自分の組織を強化するために「ギャングアップデート」が行える。仲間に馬車を買い与えたり,警察に賄賂を贈ったりなど,アップデートの方法はさまざまだが,資金のほかに「化学薬品」「金属」「革」,そして「シルク」といったアイテムが必要になる。これらは,敵を倒したりサイドミッションをクリアしたり,宝箱を開けたりなど,さまざまなところで入手できるので,見つけたら集めておこう。
これ以外にも,馬車で抜きつ抜かれつの市街地レースを行う「ストリートレース」,馬車を奪って目的地まで運ぶ「積荷の奪取」,馬車をギャングから守る「馬車の護衛」,アクション映画さながらに走行中の蒸気機関車の上で戦う「列車強盗」など,サイドミッションは非常に数多くあり,ロンドンの街にはお楽しみがいっぱいなのだ。もうね,テンプル騎士団とか,どうでも良くなってきそう。
アサシンの特殊能力“タカの眼”で敵(赤),標的(黄),中立(青),市民(光らない)を判断できる |
お金と材料を使って仲間であるギャングを強化できる。どこを強化していくかはプレイヤー次第だ |
筆者一押しのサイドミッションは「ファイトクラブ」で,これは数人の男達と素手で殴り合って勝利するというもの。高額の賞金と多くの材料が手に入るので,ギャングアップデートに最適なのだ。さあ,また男達をぶん殴りに行くか。
意外とムキになって集めてしまう収集アイテムについては,宝箱,押し花,ビンテージのビール瓶などが用意されており,メインストーリー以外のやり込み要素もボリューム満点なのだ。
ロープランチャーでの綱渡り,複数の敵からの攻撃
アクション性が高まったゲームシステム
オープンワールドをパルクールアクションで自由自在に駆けめぐれるところも,「アサシン クリード」シリーズならではの要素だ。本作ではこのあたりの自由度も高められており,今までは無理だったような場所までスイスイと移動できる。そのため,走り回るのが以前にも増して楽しくなった。
ロンドンの街は馬車であふれており,馬車は移動手段として非常に便利だ。そのへんに停めてある馬車は自由に使っても怒られないし,それが物足りないなら,御者を強引に引きずり下ろして奪っちゃっても構わない。
どういうことかというと,こういうことだ。実はアサシンが左腕に装着するガントレットには,ブレードが飛び出す機能のほかに,屋根などにロープを射出して一気に高所に登れるロープランチャーが内蔵されているのだ。これまでもロープにつかまって高い場所へ移動するといったギミックは用意されていたが,それがいつでも使えるようになった感じだ。ビューポイントになる高い建物でも一気に登れてしまうから,ぜひ試してビックリしてほしい。
ロープランチャーを横方向へ向け,水平移動することも可能で,屋根から対岸の建物など,かなり離れた場所へも移動できる。離れた屋根へ移動するのに,一度,地面に降りて別の建物に登る必要がなくなったので,移動はよりスピーディかつ,楽になった。
移動に続いて,戦闘についてだ。やはり「アサシン クリード」の醍醐味は,暗殺や戦闘アクションにあるだろう。だって,アサシンだもの。もっとも,シリーズ従来作で筆者が腑に落ちなかったのが,複数の敵と戦うシーンでも,実際に攻撃を仕掛けてくるのは常に一人だけで,周りにいる連中は武器を構えたままジッとしていたことだ。ま,お約束といえば,お約束ですかね。
しかし,本作は違う。1人の敵を斬り付けていたら近くの敵が殴りかかってきて,さらに遠方からピストルで狙われるなど,複数の敵から同時に攻撃を受けるようになり,喜んでばかりもいられない気がするが,思わず「おお!」とニンマリしてしまった。このような場合は,敵の頭上にボタンのマークが表示され,それに応じたボタンを押すことで攻撃を避けられるのだが,戦闘中にそれをやるのはなかなか大変だ。
連続で攻撃を当てるコンボ攻撃も可能で,流れるような動きで敵の群れを一掃できる。コンボが決まると,自動的に視点がズームアップされ,敵の胸ぐらをつかんで頭突きをかますなどの動きを至近距離で見せてくれるのだが,これがたまらなくカッコ良くて,なんだか偉くなったような気がしてくるほどだ。
武器についても変化している。これまでは,剣をぶら下げていても不自然ではなかったが,時代は変わり,武器をむき出しで持ち歩くと,あちこちにいる警官に捕まってしまうようになった。
そのため,おなじみの長剣などは登場せず,くの字型に湾曲した刀身が特徴的なククリナイフや,拳にはめて使用するブレスナックル,一見,杖のようだが刀が内蔵されているソードスティック,そしてアサシンの必需品,アサシンブレードなど,隠蔽性の高い武器ばかりが登場する。
もちろん,殺傷能力の高いピストルも使えるが,筆者個人は,たまに撃つ程度で,銃をメインにした攻撃はほとんどせずにゲームを進めた。鉄砲撃ちまくりとか,アサシンっぽくないし。
武器のほかにも,さまざまな装備品や衣装などが使用可能だが,最初から使えるのはごく一部で,ストーリーを進めたり,サブミッションをクリアしたり,ジェイコブとエヴィーのレベルが上がったりすることでアンロックされるスタイルになっている。また,武器はアップグレードすることで攻撃力を高められる。
上記のロープランチャーも戦いをサポートしてくれる強い味方で,下にいる敵を飛び降り攻撃(エアアサシン)で倒し,ロープランチャーですぐに元いた屋根に舞い戻るといった使い方ができるのだ。
複数の敵にどう対処するか,自分よりもレベルの高い敵をいかに効率よく倒すかを考え,そして行動&実行するのもアサシン クリードの面白さ。本作では,数々のガジェットによってその幅が広がり,どれでターゲットをアレしようかな,といくらでも頭を悩ますことができるのが嬉しい。
シングルプレイに特化したことで得られた
シリーズ最高の面白さ
冒頭でも触れたように,本作はシングルプレイのみということで,最近のシリーズ作品と比較して,物語への没入感が格段に上がっている印象だ。
複数の敵が攻撃してくるため従来作より難度は上がっているが,カッコ良さや操作性も格段に高まっており,これぞアサシンといえる完成度になっている。
シリーズを重ねるごとに自由度が少なくなってきたと感じていた筆者だが,本作では,初代「アサシン クリード」を初めてプレイしたときのようなワクワク感が蘇ってきた。じっくり腰を据えて遊び倒したいアクションゲームとして,シリーズ作品をプレイしたことがないという人にもオススメしたい1本だ。
「アサシン クリード シンジケート」公式サイト(要年齢認証)
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(C)2007‐2014 Ubisoft Entertainment. All Rights Reserved.
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