インタビュー
[E3 2016]「Dishonored 2」開発者インタビュー。アートと物語の観点から作り込みについて聞いてきた
すでに何度か紹介しているように,Dishonored 2は前作のダンウォール疫病の大流行から15年後の世界が舞台だ。コルヴォの庇護のもとで新たな女王となったばかりのエミリー・カルドウィンが,何らかの理由でその王座から引きずり降ろされたことで始まる,新しい物語を描くものとなる。
プレイヤーは,カルナカと呼ばれる明るい陽射しが注ぐ南部地域を舞台に,コルヴォもしくはエミリーをプレイヤーキャラクターとして選んでゲームを進めていく。
今回インタビューに応じてくれたのは,開発スタジオであるArkane Studiosでアートディレクターを務めるSebastian Mitton(セバスチャン・ミトン)氏と,リードナラティブデザイナーのSachka Duval(サッカ・デュヴァル)氏だ。
誰も見ないかもしれないオブジェクトが,世界観に深みを持たせる
4Gamer:
よろしくお願いします。まず,Dishonored 2のトレイラーを見て,グラフィックスが大きく進化していると感じました。
Sebastian Mitton氏(以下,Mitton氏):
本作では「Void Engine」を利用しているということを,このイベント直前の5月に公表しました。前作は「Unreal Engine 3」をライセンスして旧世代ゲーム機へのリリースを念頭に開発していましたから,やはりいろいろ制限があったんです。
Void Engineは「id Tech 5」をベースとし,Dishonored 2に必要な会話やアニメーション,インベントリー管理などのモジュールを組み込むなどしてカスタマイズしたもので,マップの大きさは4倍を実現できました。前作ではできなかった表現も可能になっています。
4Gamer:
それだけの世界を,おそらく前作のように,誰も読まないかもしれない日記やメモ,古いポスターなどで埋め尽くしているんですよね? ものすごい作業だと思いますが。
Sachka Duval氏(以下,Duval氏):
ええ。今まで,こういうタイプのゲームに携わったことはなかったので大変でしたけれども,その分,やりがいのあるプロジェクトだと実感しました。
4Gamer:
その,誰も読まないかもしれないのに?
Duval氏:
確かに,ほとんどの人が読まないものもあり得るでしょうが,「物語」(Narrative,ナラティブ)を作り込むという作業は,ゲームの世界観を作り込んで深みを与えるためには必要ですし,そうした情報を散りばめることで,Dishonoredの世界をさらに知りたいというファンに喜んでいただけます。私としては,そこで満足すべきでしょうね。
Mitton氏:
ファンの中にはすごい人がいるんですよ。彼らが作ったWikiページなどを読むと,僕の知らないストーリーが書かれていたりして,その内容が本当がどうかSachka(Duval氏)に聞きに行ったこともあるくらいです(笑)。
Duval氏:
そうした熱狂的なファンに支持されて,そこからさらにファン層が広がっていると考えれば,一見意味のない日記やメモも重要であるのが分かると思いますよ。
4Gamer:
なるほど。アート面でも,カルナカという新しい地域にしたことで随分と雰囲気が変わりました。
Mitton氏:
そうなんです。前作の舞台だったダンウォールは,産業革命期のロンドンをさらに陰鬱にしたようなイメージでした。今回は,バルセロナからリヴィエラあたりにある地中海のように,メリハリの効いた太陽光と陰影の対比が,不況による人々の不安を表しているという印象にしています。
我々はリヨンを拠点にしているので,より馴染み深い素材であると同時に,地形や建物も高低差があるので非常にチャレンジングでもありましたね。
4Gamer:
お二人の部署には,どれくらいの開発メンバーがいるのでしょう?
Duval氏:
ナラティブデザイナーという肩書を持っているのは私一人で,あとはディレクターのHarvey Smith(ハーヴィ・スミス)やデザイナーのDinga Bakaba(ディンガ・バカバ)らと共同でストーリーや脚本を仕上げています。
Mitton氏:
Arkane Studiosに所属している120人の開発メンバーのうち,アート部門には17人のアーティストがいます。ほかにもある,多くのBethesda Softworks傘下のスタジオ同様,我々はほとんどアートのアセットをアウトソーシングしていないのですが,地元のリヨンで私の旧友が率いる10人ほどのチームに,プロップやテクスチャーなどを提供してもらったりはしています。
4Gamer:
前作「Dishonored」のアートディレクションでは,工業デザイナー出身のViktor Antonov(ヴィクトル・アントノフ)氏が前面に出られていましたが,今回はどうなのでしょう?
Mitton氏:
ヴィクトルは,我々の親会社であるZeniMax Mediaのコンサルタントとして活動しており,Bethesda Softworks内外のプロジェクトを全体的に後見しています。ですが,前作ですでにアートディレクションのレールは敷かれていたことから,Dishonored 2の開発には直接関わっていません。元々「Half-Life 2」のデザインに関わったことで多くのゲーマーから注目されましたが,彼自身は人前でゲームの説明をすることは向いていないと感じていたらしく,今は我々の良き友人としてサポートしてくれています。
世界観は前作を踏襲。「3年前」がゲームの重要なキーに?
4Gamer:
Dishonored 2の世界観では,諸島帝国の名君だったジェサミン・カルドウィンがいなくなったことで,例えばイギリスのヴィクトリア王朝時代から次の文化期へ移行したような,技術的な革新はあったのでしょうか?
Mitton氏:
前作からはまだ15年しか経っていないということもあり,あくまでもDishonoredで描かれている設定上にある文化で表現するよう努力しています。おそらく,トレイラーに出てきた「クロックワーク・ソルジャー」と呼ばれるオートマトンや移動式の壁といったものから時代の進化を連想されているのだと思いますが,あれはカイリン・ジンドッシュという本作に登場する発明家が作ったものに過ぎず,王国のすべての人が,あのようなテクノロジーを共有しているわけではありません。
4Gamer:
ちなみに,あのロボットも鯨油で動いているんですか?
Mitton氏:
そうですよ! 例えばオートマトンの腕が動くのもゼンマイの回転が鯨の髭を引っ張っていますし,眼はアナログなカメラのレンズです。人型オートマトンは声を発しますが,あれも録音したカイリンの声が再生されています。
4Gamer:
おお,なるほど。Bethesda Softworksのプレスカンファレンスでは,食文化なども前作と大きく異なるという解説がありました。
Duval氏:
ええ。音楽のリズムなども異なっていますし,通りではストリートミュージシャンがこの地方独特の楽器を使って路上演奏していたりと,ダンウォールとは非常に異なる雰囲気になっています。
4Gamer:
そもそも,Dishonored 2にはネズミも出てきませんね。
Mitton氏:
ネズミはいないけど,コルヴォでプレイすればネズミを召喚することはできますよ。また,ネズミの変わりに「ブラッドフライ」と呼ばれる昆虫が飛んでいますが,当然コルヴォはブラッドフライに乗り移ることもできるんです。召喚したネズミからブラッドフライに憑依することだって可能です。
4Gamer:
アウトサイダーに与えられる「タイムピース」というものが何なのか,そもそも分からないのですが。
Duval氏:
タイムピースについてはまだ詳しくアナウンスしていませんが,3年前の過去の残像を部分的に現実世界に照らし合わせるという能力で,例えばそこで人殺しをしたり,アイテムを設置したりすることで,現在にも影響を与えてしまうというパズル的なゲームプレイ要素を加えるものですね。
4Gamer:
なぜ3年前なのでしょう。3年前に何かが?
Duval氏:
それはゲームをプレイして確かめてください(笑)。
4Gamer:
分かりました(笑)。では最後に,アーティスト,そして脚本家という2人の立場から,ゲーマーにDishonored 2をこうして楽しんでほしいという願いを教えてもらえますか。
Mitton氏:
Dishonored 2は,アートスタイルにこだわった作品ですから,私が願っているのは,ゲームのスクリーンショットを見たときに,それが本当のゲーム画像であるのか,ペイントツールで描き上げたアートワークであるのか,分からなくなって錯覚してしまう人が出てほしいというものです。それにかなり近いところまで来ていると自負しています。
Duval氏:
私としては,やはりゲームのミッションからは少し離れたところで,引き出しに入っている日記や,街角の古いポスターなどに目を止めてくれるゲーマーが増えてくれればと願っています。
「Dishonored 2」公式サイト
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(C)2015 ZeniMax Media Inc. Developed in association with Arkane Studios. Dishonored, Revenge Solves Everything, Arkane, Bethesda, Bethesda Softworks, ZeniMax and related logos are registered trademarks or trademarks of ZeniMax Media Inc. in the U.S. and/or other countries. All Rights Reserved.
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