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[E3 2016]5K解像度のVR HMD「StarVR」最新試作機を体験してきた。製品化に向けた画質の向上を実感
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印刷2016/06/21 00:00

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[E3 2016]5K解像度のVR HMD「StarVR」最新試作機を体験してきた。製品化に向けた画質の向上を実感

E3 2016でStarbreezeがStarVR専用に設けていたプライベートブース
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 1年ほど前のE3 2015で,大きな話題となった仮想現実(以下,VR)対応型ヘッドマウントディスプレイ(以下,HMD)に,「5K解像度で視野角210度」というハイスペックを売りにした「StarVR」があった。筆者は2時間半行列してこれを体験し,その概要をレポートしたものだ。
 2016年の今回,StarVRの開発元であるスウェーデンのゲームスタジオStarbreezeは,E3会場に完全予約制のプライベートブースを用意して,限られた来場者にだけ2016年仕様の新しい試作機を披露していた。StarVRの最新版試作機は,いったいどんなところが新しくなったのだろうか。

 なお,StarVRとは何かについては,2015年のレポートも参照してほしい。

[E3 2015]新型HMD「StarVR」を西川善司が体験。「5K解像度で視野角210度」はVR体験をどう変える?



2016年モデルは「Ver1.4」に

光学設計や表示品質を改善して軽量化も実現


COMPUTEX TAIPEI 2016のAcerブースでは,2016年モデルのStarVRを予告していたが,実機はなし
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 おさらいを兼ねて,StarVRとは何かについて,ごく簡単に説明しておこう。StarVRはもともと,フランスのInfinitEye VRが開発を進めていたVR HMDだった。そのInfinitEye VRが,VR HMD開発プロジェクトごとStarbreezeに買収されてStarbreeze Parisとなり,StarVR製品化に向けて現在も開発を続けているという状況にある。
 2016年5月には,StarbreezeとAcerがパートナーシップ契約を結び,開発に参加することとなった。世界的な大手PCメーカーであるAcerのStarVRプロジェクト参加は,製品の品質や量産性の向上といった製造面で良い影響をもたらすと期待されている。

 StarVRの特徴は,スペックの高さだ。
 1つめの特徴は「高解像度」。解像度2560×1440ドット,アスペクト比16:9の液晶パネルを左右に2枚並べることで,解像度5120×1440ドットを実現。Oculus VRの「Rift」やHTCの「Vive」は,片目あたり解像度1080×1200ドット,左右合わせても2160×1200ドットなので,およそ2.4倍もの高解像度になるわけだ。これをもってStarbreezeは,StarVRを「世界初の5KのVR HMDである」とアピールしていた(※編注:同じ解像度を有するVR HMD「Claire 12M」という製品が2015年に製品化されていたので,厳密には世界初ではない。ただし,価格は2450ドルだった)。

StarVR試作機の2015年モデル(左)と,それを身につけた筆者(右)。表面の幾何学模様のマーカーは,VR HMDの位置トラッキング用だ
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 もう1つの特徴は「広視野角」。横長のディスプレイパネルをユーザーの顔を囲むように,「へ」の字型に角度を付けて配置することによって,水平210度,垂直130度という視野角の広さを実現しているのだ。
 これらの特徴によって,RiftやViveでは,人間の視界と比べて50%程度の視界しかカバーできないのに対して,StarVRは75%程度の視界をカバーできると謳っている。

 そんなStarVRの2016年モデルだが,スペック面は2015年モデルから大きくは変わっていない。
 2016年モデルの試作機は,Starbreezeの社内では「Ver1.4」と呼ばれているそうで,基本スペックは2015年モデルと同じであるものの,ハードウェア設計を洗練させて,性能は向上しているという。ブースにいたハードウェア設計担当者によると,Ver1.4では,ヘッドトラッキングの精度向上やシステム側での遅延削減,光学設計や映像表示品質の改良,さらに軽量化などを実現しているそうだ。
 スペックとは別の大きな相違点もあるのだが,追って説明していこう。

Ver1.4と呼ばれる2016年モデルのStarVR試作機
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 また,現在はディスプレイパネルに液晶パネルを使用しているものの,今後は同じ解像度の有機ELディスプレイパネルに置き換える計画もあると,ハードウェア設計担当者は述べていた。

接眼レンズはフレネルレンズを採用。ちなみに,試作機をこのアングルで撮影することは禁じられていた
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2016年モデルでVRゾンビゲームを体験


OVERKILLの画面イメージ
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 2016年モデルで体験したStarVR用のVRコンテンツは2種類。1つめは,2015年と同じ,「OVERKILL’s The Walking Dead」(以下,OVERKILL)だ。StarbreezeがOVERKILLブランドで開発したガンシューティングで,ゾンビとの戦闘で足を失ったプレイヤーが,車椅子に座った状態でゾンビだらけの病院からの脱出を試みるというゲームだ。

StarVRを装着中の筆者(写真中央)
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 2015年モデルのStarVRは,モーショントラッキングとして,VR HMDの表面に貼り付けた幾何学模様のマーカーを赤外線カメラで撮影,識別する光学式を採用していた。
 一方,今回試用した2016年モデルは,Sixenseの開発したワイヤレスモーショントラッキングセンサー「STEM System」(以下,STEM)を採用していた。STEMの詳細は,奥谷海人氏の記事にあるが,ベースユニットから発する電磁場を利用して,センサーユニットである「STEMパック」の位置を認識するというものだ。
 2015年モデルが採用していた光学式モーショントラッキングは,マーカーが何かで遮蔽されると,トラッキング精度が落ちる問題がある。それに対して,2016年モデルが採用したSTEMによる電磁気式は,そうした問題が起きにくいのだという。
 StarVRの2016年モデルでは,このSTEMパックをVR HMD本体の後頭部側に1つ,ゲーム中の武器を操作するのに使うショットガン型コントローラにも1つ装備していた。

後頭部にある薄い箱のようなモジュールがSTEMパックだ(左)。StaVR用のショットガン型ガンコントローラもバージョンアップ。銃の上にSTEMパックが付いているのが分かる(右)
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 筆者もOVERKILLを体験してみたが,2015年モデルで体験したときは,視界中央がややぶれ気味に見えていまい,襲い来るゾンビに照準合わせるのがやりづらい印象があった。2枚のディスプレイパネルを「へ」の字型に配置している弊害ともいえよう。
 だが2016年モデルでは,そうした問題は感じない。画面中央はもちろんのこと,外周から視界の側面に至るまでを高精細に描画している様子には感動を覚える。RiftやViveとは,解像感のレベルが違う。画素を仕切る格子が,StarVRではほとんど見えないのだ。明らかに映像の表示品質は向上していることを実感できた。

OVERKILLプレイ中の筆者。武器のショットガンは単発のポンプアクション式なので,一発撃つたびにフォアエンド部をスライドして弾を装填しなければならない。しかも,このガンコントローラ,わざと本物に近い重さにしてあるので撃っていると腕が疲れてくる
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ゲームの開始時に,画面上のキャラクターが「お前はこれを使って,自分の身は自分で守れ」といってショットガンを渡してくるのだが,その手渡しのタイミングで実際にスタッフからガンコントローラが渡されるという,ゲーム進行に合わせた演出も加えられているのが憎い
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 それと,これはハードウェア技術ではなく,コンテンツ面の工夫なのだが,2016年モデルのOVERKILLは,スタッフからプレイヤーがマップ内のどこを体験しているかが分かるようになっていた。スタッフはこのマップを見てゲームの進行にあわせてプレイヤーの座る車椅子を揺らしたり,身体に触れたりする演出も加えるようになっていた。
 プレイヤーは,ゲーム内の登場人物に車椅子を押してもらいながら銃撃戦を繰り広げるのだが,その途中で段差を乗り越えたり,角を曲がったりするときに,スタッフが車椅子を揺らしてくるのだ。さらに,ゾンビに取り囲まれたときには身体を触ってきたりするので,コンテンツそのものは2015年とあまり変わらないにもかかわらず,恐怖感はかなり増強されていた。これは楽しい。そして怖い(笑)。

左写真は,コンテンツの内容に同期して,写真右にいるスタッフが車椅子を揺らしている瞬間。別のスタッフは,ゾンビに囲まれるシーンで筆者の足をくすぐってきた!(右)
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 日本でも人気が出そうなので,「東京ゲームショウに出展する予定はないの?」と,Starbreezeスタッフに聞いてみたのだが,「アジア圏でのイベント出展はAcerが取りしきっているから」と,よく分からないそうだ。



360度VR映画「Cockatoo Spritz」を体験


COCKATOO SPRITZを体験中の筆者
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 2つめの体験コンテンツは,2016年5月に開かれた第69回カンヌ国際映画祭で公開された短編VR映画「COCKATOO SPRITZ」だ。
 この作品は,360度カメラで撮影した実写映像にCGエフェクトを加えて制作した短編映画で,VR HMDで視聴すれば,映画の中のワンシーンに入り込み,俳優たちに取り囲まれた状態で物語が楽しめるという内容だった。頭の動きに合わせて視界は動くものの,実写映像ベースなのでシーン内を歩き回ることはできない。モーショントラッキングの必要がないので,体験用のStarVRには,STEMパックが取り付けられていなかった。



 映画のおおまかなストーリーは,ホテルのロビーで開かれたパーティ会場に集まった変人たちが,同時多発的に引き起こすおかしな事件を観察していくというもの。金粉まみれになった女性ヌーディストの体にスケベオヤジが顔を押しつけているかと思えば,その横でキザなマジシャンが手品を披露して美女たちをうっとりさせている。さらに別のところでは,黒い獅子舞があらゆる人物にちょっかいを出してケンカを起こし,その反対側では,オウムを入れた鳥かごに火がついてしまい,周りの人間が大慌てで消そうとするといったドタバタコメディだ。

 体験者は,1人の登場人物に着目してもいいし,あらゆる方向をキョロキョロと見渡して,事件の全体像を把握しようとしてもいい。筆者は,最初から物語の理解をあきらめて,豪華絢爛なホテルのロビーセットや,おかしな衣装を着込んだ変人たちの振る舞いを環境映像のように楽しんだ。

 まだ黎明期ということもあり,360度ビデオは低解像度のコンテンツが多い。しかしこの作品は,さすがに映画のプロが制作したものであり,どの方向を見ても高解像の映像で,立体視にも対応しているのが感動的なほどだった。高解像度が売りのStarVRならではの体験を楽しめたといえよう。


高解像度という利点はまだ有効だが,そろそろ製品化を急ぐべきでは


 今回,StarVR試作機を体験するのに使っていたPCは,「GeForce GTX 1080」搭載カードを使用していた。グラフィックスカードとStarVRは,2本のHDMI 1.4ケーブルで接続していたのが興味深かった。

StarVRの上側面につながったケーブル群。左からHDMI,電源ケーブル,USB,HDMIの順。HDMI 2.0であれば1本で5120×1440ドットの映像を伝送できるはずだが,HDMI 1.4以前にしか対応しないGPUとの接続を考慮したのか,HDMI 1.4入力を2系統使う方式になっている
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こちらは下側面側。写真の右側に見えるのは,ヘッドフォン端子につながったケーブルだ
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 ハードウェア設計担当者によれば,GeForce GTX 1080であれば,グラフィックスカード1枚でOVERKILLのVR体験版を60fps以上のフレームレートで描画できるとのこと。4K(3840×2160ドット)の60Hzでゲームグラフィックスを表示できると豪語するGeForce GTX 1080なら,4Kよりも解像度の低い5120×1440ドットの表示が余裕なのは当然ともいえよう。
 とはいえ,この担当者氏も,「よりフレームレートを上げてスムーズなVR体験を望むなら,SLI構成を推奨する」と述べていたので,StarVRで90fps以上のフレームレートを実現しようとするなら,GeForce 10シリーズの2-way SLI構成くらいが必要になるかもしれない。

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 話題となったE3 2015での発表から1年経ったStarVRだが,5K解像度の優位性はまだ顕在である。RiftやViveの弱点と言われることもある解像感の不足は,StarVRのスペックであれば,ほぼ解消できることを再認識できた。
 とはいえ,VR HMDが使うディスプレイパネルの解像度は,今後も高解像度化していくだろう。現時点では解像度面で優位にあるStarVRとはいえ,製品化に時間をかけていると,いずれ登場するであろう第2世代のVR HMDに追いつかれてしまう可能性は否めない。スペックの優位性が生きている間に製品として出荷しないと,StarVRの価値は薄れてしまう。だが,今回も発売時期や価格に関しては,依然として未定のままだった。
 Acerとの開発協力が,StarVRの製品化を加速してくれることを期待したい。

StarVR公式Webサイト(英語)

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