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[E3 2017]PS VRでプレイする「グランツーリスモSPORT」は酔いにくく,現実の車のように運転できる。「T-GT」で操作できた試遊台での体験をレポート
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印刷2017/06/17 17:33

プレイレポート

[E3 2017]PS VRでプレイする「グランツーリスモSPORT」は酔いにくく,現実の車のように運転できる。「T-GT」で操作できた試遊台での体験をレポート

 E3のSony Interactive Entertainmentブースには,特設の「グランツーリスモSPORT」コーナーがあり,8台のコクピットタイプ試遊台と,4台のPS VR対応試遊台が稼動していた。

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 コクピットタイプの試遊台はネットワーク接続されており,8人のプレイヤーが同時に参加してのレース体験ができた。そのレースの様子は巨大ディスプレイに表示され,これに対してプロのアナウンサーが本物のレースさながらの実況を加え,テレビのレース中継を見ているかのような演出が楽しめた。

 一方,4台のPSVR体験対応試遊台は隣り合う筐体同士で1対1のレースが楽しめるもの。一回あたりの体験が濃密で,体験時間も比較的長めとなっていたこともあり,これらを体験を楽しむにあたっては,待機列の混乱を避けるためにSIEブース専用のアプリから予約を行う仕組みを採用していた。

 予約システムが稼動し始めると,ほぼその瞬間に満席に。ざっと計算しただけでもPSVR版は一日あたり100人強しか体験できない超プレミアム体験となっていたようである。
 本稿では,実際にE3展示バージョンをPSVR版で体験したプレイレポートをお届けしよう。

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ソニーブース内に特設されたグランツーリスモスポーツの体験コーナー
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HDR対応,広色域対応の4Kテレビでプレイできる体験コーナーも


足回り系の振動までも再現するThrustmasterブランドのステアリングコントローラ「T-GT」はPSVRと相性抜群!


 本作は,「グランツーリスモ」シリーズとして,初のVR対応作品となる。ブースでは,PS4 ProとPS VRに,6月12日に正式発表されたばかりのThrustmasterブランド製ステアリングコントローラ「T-GT」を組み合わせたシステムでプレイできた。

Thrustmasterブランドのステアリングコントローラ「T-GT」はグランツーリスモSPORT開発チームと共同開発された
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 体験したのは,イタリア半島の西方,地中海に位置するサルデーニャ島を舞台にした悪路(グラベル)コースでの,ラリーカーを使ったレース。コース名は「Sardegna Windmills」だ。サルデーニャ島は風力発電が盛んで,本作のコースでも,風力発電の風車(Windmills)の立ち並ぶ景観を走り抜けていく。
 ゲームを開始しようとした刹那,本作のプロデューサーであるポリフォニー・デジタルの山内一典氏が駆け寄ってきて「特別に,フォースフィードバックを強くしましょう(笑)」と設定を変えてくれた。ただ,設定の都合上なのか,ドライブアシストはオフにされてしまった。
 車はフォード・フォーカスRSの4WD仕様ラリーカーで,レースがスタートするやいなや,ドドドという振動が手に伝わる。

山内氏自らPS VRモードの特別設定を施してくれている様子。フォースフィートバック増強,ドライブアシストオフ
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 ステアリングを回してからやってくる,前輪が直進方向に戻ろうとする反力(俗に言うセルフアライニングトルク)とは別に,路面からの突き上げ感というか,サスペンションや車軸側からの振動がこちらに伝わってきているような感覚が味わえるのが面白かった。

 このT-GTは実際に,セルフアライニングトルクを作り出すモーター以外に,足回り系の振動を再現するトランスデューサー(振動デバイス)も内蔵しているのである。グランツーリスモSPORTは,足回り系の振動データの出力機能があり,対応ステアリングコントローラだけがそれを表現できるとのことだ。

 この足回りの振動が面白いと感じたのは,悪路走行中に自車が大小のバンプに乗り上げて,そこから小刻みなジャンプをする瞬間。空中浮遊している間は,ステアリングの力が抜けて,振動も止まるのだつまり,その瞬間に路面に接地しているか否かが,手応えで分かるのだ。グラベルコースはジャンプポイントが多いので,この振動表現のいいデモンストレーションになっていたと思う。ターマックのようなオンロードコースで,この足回り系振動表現がどの程度リアルなのかは,また別の機会に検証してみたいものだ。

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体験中の筆者
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見守ってくれている山内氏

 セルフアライニングトルクもそうだが,この足回り系の振動が加わると,リアリティは相当に増強される。PS VRでグランツーリスモSPORTを楽しむなら,この振動は必須と言ってもいいかもしれない。まぁ,T-GTはお高いのだが。

とても格好いい筐体だが,とくに動いたりはしない
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グランツーリスモSPORTのPSVRモードは酔いにくい!?


 ラリーコースは,コーナリング中もアップダウンが伴う。筆者は本作のPSVRモードをコクピット視点でプレイしたので,それこそボンネットも揺れるし,コーナリングでドリフト状態になると,フロントガラスの向こうにある景色が横に流れていくこともある。なのでプレイ中,「酔い」がどの程度来るのか心配だったのだが,意外にもまったく酔わなかった

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 これについて,山内氏に訊いてみたところ,「要因は何点かあると思う」と切り出し,1つ1つを解説してくれた。

 「車内から外界を見るようなコクピット視点だと,VRでも酔いにくい特性がある。これは車内の内装などが,比較的安定した位置関係で見えることで頭の基準点が定まり,酔いにくさにつながっている」とのこと。

 さらに「運転中,人間は,進行方向に首を向けたり,そちらを見ながら運転する特性があり,結果,遠近法表現で言うところの消失点に目を向けて走行することになる。これは,自分がどこに向かって進みたいのか,という目線を定めていくことにつながる。これを行っている間は酔いにくい傾向がある」とも補足してくれた。

 一般的なテレビでのプレイでも消失点のほうを見て運転はするが,その場合は,内装側に多少の揺れがあっても,カメラ位置が固定だ。そのため,左コーナーを曲がっている際,画面の左側のほうを見ることになり,視界の左半分近くが画面外になってしまう。VRの場合は同条件時でも,首を左に向けるので,消失点をほぼ常に視界中央に捉え続けられる。ここが大きく違うというわけだ。

 山内氏はさらに続ける。

 「まだ考えられる要因がある。VR酔い,乗り物酔いは,人間が無意識に行っている未来予測とのズレが大きいと起こりやすい。例えば,コーナーが迫ってきたときにステアリングを切る。そこでその操作に遅延して曲がっていったり,リアルな車両物理シミュレーションが再現できずに,おかしなコーナリング挙動を示したりすると酔いやすくなる。本作の場合は,車両物理の正確性をさらに上げているし,PSVRモード時においても安定したフレームレートも実現しているので,この問題が起きにくいのだと思う」

 ただ,車両物理が正確だからこそ,オーバースピードで突っ込んで,アンダーステア現象が起きて,なかなか車が曲がってくれない状況も起こりうるはずだ。

 「もちろん,曲がれない状況というのはある。その場合は,どうして今,曲がれないのか……をステアリングコントローラ側の振動やフォースフィードバックからの力学提示などで伝えることで,酔いを起きにくくすることはできる」

 つまり,プレイヤー(VR体験者)の直感的操作に対して,できるだけ多くの情報と,正確な反応を返していくことが重要というわけだ。

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 筆者は最初の一周は,ペダル操作とステアリング操作の加減の面で探り探りの運転だったが,二周目は,ドライブアシストオフながらも,極めて安定した運転操作ができるようになってしまった。それどころか,運転中に内装を確認する余裕まで生まれるほど,運転に慣れていた。これは「筆者がうまい」ということを言っているのではなく「普段の車のように運転できるから」というだけなのである。これはコンピュータゲームとしてはすごいことだ。

 「現実の車は運転できるのに,レーシングゲームではうまく走れない」という人が一定割合でいる。そんな人は「だからレーシングゲームは嫌い」となってしまっていると思うが,ぜひ,そういう人にこそ,本作のVRモードを試してもらいたい。現実世界の運転感覚にかなり近いので,高確率で普通に運転できると思う。


むしろ褒め言葉? PS VRモードをプレイして感じた“課題”


 同時に,いくつかの“課題”も感じた。運転感覚がリアル過ぎて,現実世界で運転しているときに感じる前後Gと左右Gがないことに違和感を覚えるのだ。しかし,この課題が出てくること自体が,すでにグランツーリスモSPORTが,一段上のレーシングゲームに到達してしまっていることの証とも言えるかもしれない。

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 傾き感覚や加速感覚の刺激表現は,筐体を油圧や電動などのアクチュエーターで動かす方法がもっともシンプルだが,コストが高く付く。ただ,低コストに人工的な傾き感覚や加速感覚を与える研究も進められており,有望視されているのは,前庭電気刺激(GVS: Galvanic Vestibular Stimulation)を利用する方法である(関連記事)。
 これは微弱な直流電流を内耳の奥の前庭に流すことで,加速度感覚や角速度を知覚させる技術だ。すでにヘッドフォンやHMDに内蔵させる研究が進められているので,そのうち実用化されて,この課題を解決してくれるかもしれない。ちなみに,筆者も何度かGVSデバイスを装着したことはあるが,たしかに傾き感覚や加速感覚が得られるものの,やや耳の周りにチリチリとする感覚があった。

 もう1つの課題は,直視型のHDR対応/広色域対応の4Kテレビでプレイしたあとだと,PSVRの映像表現に物足りなさを感じてしまうことだ。
 すでにレポートしたが,本作のゲームグラフィックスとしての美しさは,現行の4Kテレビ製品のスペックを超えてしまっているレベルなので,「あの美しいポルシェの曲面」「フェラーリの赤」「眩しいアスファルトの照り返し」が楽しめないPS VRがなんとも惜しいと感じてしまうのだ。これもある種の褒め言葉である。
 山内氏も,この点については完全同意だそうで「我々が到達したグランツーリスモSPORTの映像美を完全に再現できるVR HMDが登場するのは,まだまだ先のことだと思う。ハードウェアの性能の進化はこの後も続くし,僕らはその時が待ち遠しくてたまらない」と嬉しそうに語っていた。

 筆者としては,最高のドライビング体験は「PS4 Pro+PSVR+T-GT」の組み合わせだと確信している。一方で,ハードウェアスペックを追い抜いてしまった本作の映像美をあますことなく堪能したいのならば「PS4 Pro+HDR対応/広色域対応の4Kテレビ」の導入をお勧めしたい。

ソニー「BRAVIA」シリーズの最上位モデル「Z9D」の100インチモデルでグランツーリスモSPORTを表示。これはテレビの表示映像なのだが,広色域+HDRの映像のため,デジカメで撮影すると,普通の実写のような写真になって面白い
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「グランツーリスモSPORT」公式サイト


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