イベント
[GDC 2017]新作「ゼルダの伝説」のアートチームが目指した“嘘のつきやすい絵作り”とは
風のタクトHDをベースに練られた新作のアートワーク
滝澤氏はゼルダの伝説という長い歴史を持つシリーズのアートワークついて「(歴代ゼルダで)これだけアグレッシブにゲームシステムを変えたことは珍しい。そこで我々(アートチーム)は“嘘のつきやすい絵作り”を探求することになった」とアートワークの特徴を説明した。ちなみに,嘘をつきやすい絵作りとは「プレイアビリティとリアリティを失わないゲームにとって都合のいい絵作り」のことだという。
アート面のリアリティを犠牲にするとゲームのテンポやプレイアビリティは向上するが,ゼルダの世界を表現するリアリティが失われてしまう。逆にリアリティを追求しすぎるとテンポやプレイアビリティが低下してしまう。
そして滝澤氏は,HD時代の“嘘のつきやすい画作りはどうあるべきなのか”という問いかけをもとに新作ゼルダのアートを練っていった。そこには,さまざまな試行錯誤があったそうだ。
下のスライドは,「2011年のE3に最初に発表したコンセプトアート」(滝澤氏)で,HD解像度に合わせてリアリティ寄りに振ってみたものだという。
また,物理ベースレンダリングの利用を想定してリアルな街並みを作ってみたこともあるそうだ。
さらに過去作を最新の技術を使って“なんちゃってHD化”する試みも行ったという。その中でチームの高い評価を得たのが「ゼルダの伝説 風のタクト」のアートだったと滝澤氏は振り返る。結果.HD化した風のタクトは,WiiU向けの「ゼルダの伝説 風のタクトHD」(以下,風のタクトHD)として製品化されることになった。
風のタクトを擬似HD化したサンプル画像。これがアートチームの中で非常に高い評価を得たそうだ |
HD化したアートワークが高い評価を受け,WiiU対応の風のタクトHDとして製品化された |
そんな流れの中でBotWのプロジェクトを進めていた藤林氏に呼ばれ,アートワークの方向性はBotWも風のタクトHDのそれで良いのではないかとあっさり決まったという。これは「風のタクトHDを製作していくなかで,それが形になっていく様を(チームの)皆が見ていたからだろう」と滝澤氏は語る。
ただ,風のタクトHDのスタイルにはBotWにとって,藤林氏らが目指していた「広大な世界の物理や化学で壮大に遊ぶ」というコンセプトが実現しにくいという弱点があった。というのは「風のタクトHDのスタイルは,物体のフォルムが激しくスタイライズ(様式化)されているから」(滝澤氏)だ。ゲーム内で起こる物理や化学の現象をプレイヤーが本物の世界から直感的に連想できないとBotWのコンセプトは実現できないが,風のタクトHDのスタイルは「絵的に激しく嘘をつきすぎている」のだという。
また,画面で起きていることが一瞬で分かってしまう風のタクトHDのスタイルは,子供向きと受け取られてしまい,年齢層の高いプレイヤーに受け入れられないという危惧もあったと語っている。ここは30年の歴史を持ち幅広い年齢層にファンを抱えるゼルダの伝説シリーズならではの悩みというところだろうか。
そこで,風のタクトHDの味わいを残しながらも,ある程度のリアリティを感じさせ,現実世界とリンクしている印象を与える絵作りを目指したのが,BotWだったという。この方針は,ゲーム内のアートワークのみならず,ユーザーインタフェースを含めすべてのデザインにおいて徹底された。
スタイライズとリアルを絶妙にバランスさせたBotWの世界
このような試行錯誤の結果,どんな効果が生まれたのか,滝澤氏が紹介したので,いくつか掲載しておこう。
これらのシーンが実装できたとき,楽しさを感じると同時に「このゲームが求める画作りに答えが出せた瞬間だった」と滝澤氏は満足気に振り返った。氏が語っていたように,これらのシーンは,リアリティとプレイアビリティを融合させた結果として生まれたアートスタイルだというわけだ。
とはいえ,リアリティとプレイアビリティの融合は「過去のどの(ゼルダ)タイトルでも行ってきたことだ。BotWのアートスタイルは過去のどのタイトルとも異なるが,我々のゲーム作りからたどり着いた当たり前の結果だった」と氏はまとめていた。
氏がいうリアリティとプレイアビリティの融合がどう実現されているのか,プレイして確かめたいと思う。
「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」公式サイト
GDC 2017記事一覧
- 関連タイトル:
ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド
- 関連タイトル:
ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド
- この記事のURL:
キーワード
(C)2017 Nintendo
(C)Nintendo