レビュー
いよいよ新たな英雄の伝説が始まる
Gears of War 4
今回,Xbox One版(パッケージ)の北米輸入品を購入したので,5年ぶりとなるシリーズ最新作の魅力をお伝えしたい。
「Gears of War 4」公式サイト
「Gears of War 4」の舞台は,前作から25年が経過した惑星セラ。ローカストとの戦いはすでに終息したものの,「ウィンドフレア」と呼ばれる風や雷といった自然現象が激しく,人々の生活を脅かしている。
ストーリーモードをスタートすると,プロローグの章が始まる。ローカスト終息25周年記念式典が行われている場面で,ジン首相の演説に合わせて,前3部作を簡単におさらいする流れになっている。
かつて人類の脅威だったローカストがどのように現れ,それをいかにして殲滅したのか。プレイヤーは一兵士を操作しながら,その凄絶な戦場を見ていくことになる。前作までの主人公マーカス・フェニックスの活躍ではなく,別の視点から描かれることで,より客観的に“あの戦争”を振り返るという趣向だろう。
記念式典は粛々と進むが,そこに勝利の立役者であるマーカスの姿はない。なぜ彼がいないのか,プレイヤーは疑問に思うはずだ。
本編に突入すると,マーカスの息子であるJD フェニックスが新たな主人公として登場する。どうやら彼は「COG」(Coalition of Ordered Governments / 統合連邦政府)が管理している第5居住地を襲撃するべく,丘の上から様子を見ている。その居住地にあるファブリケーター(製造加工マシン)を盗み出す手順を相談する相手は,女性戦士ケイト,JDの同僚とおぼしきデル,そして豊かなヒゲを蓄えた中高年オスカーの3人だ。
ストーリーモードでは,主人公JDを含むキャラクターについて,具体的な説明が行われることはない。ナレーションやテキストによる状況説明はゼロで,すべてキャラクターの台詞や状況から読み取っていくことになる。
たとえば,チャプター1の序盤にこのような台詞がある。
デル「(第5居住地を双眼鏡で偵察しながら)俺たちは昔,COGの居住地を守っていたのに,今はそこを襲撃しようとしている。皮肉なもんだな?」
オスカー「襲撃ってのはアウトサイダーの十八番さ」
オスカー「(JDとデルに対して)脱走兵の坊主ども,COGの巨壁を見て家に帰りたくなっちまったか?」
デル「まだ脱走兵呼ばわりかい?」
JD「レイナはデルと俺に頼んだんだ。あんたじゃじゃなくな」
オスカー「悪いな坊主。ケイトの面倒を見る必要がある」
ケイト「子守は必要ないわ,叔父さん」
デル「COGの居住地は内側から外側に向かって作られている。つまり,ファブリケーターは街の中心にある建設施設に置いてある。そいつをいただいて,ずらかるんだ」
オスカー「(警備用の)ロボットを出し抜くのは難しいぞ?」
JD「ディービーの扱いには慣れている」
オスカー「第2居住地のときみたいにか?」
ケイト「あれは2人のせいじゃないわ」
つまりこういうことだ。
かつてJDとデルはCOGに所属していたが,第2居住地で何らかの事件が発生。正義感の強い2人はCOGを脱走し,今はオスカーやケイトらがいるアウトサイダーの村で世話になっている。そして,村の生活維持に必要なファブリケーターを奪取するため,居住地を襲撃しようしている……そんな背景がそれとなく見えるだろうか。
いわゆる説明台詞のようなものは一切なく,さりげない会話や状況から物語の全貌を読み取っていく流れである。とくにイベントシーンで語られる内容は,物語の謎を紐解く鍵になるものが多いので,一つ残らず確認していく必要がある。
その意味では分かりにくいと言えるが,すべてを噛み締めていくと「あのときの発言は,こういう意味だったのか!」「あの伏線がここにつながった!」という瞬間が訪れる。
さらにストーリーモードを進めていくと,JDらはジン首相から「市民を誘拐した」容疑をかけられ,アウトサイダーともどもCOGの標的として攻撃を受けてしまう。ここで相手となるのは,COGのロボット兵だ。
従来のシリーズ作品を知っていると,おそらく「何か違う」と感じてしまうところだが,そんな心配は無用。どうにか村からCOGを追い払うと,今度は謎のモンスター集団の襲撃に遭い,村人が全員いなくなってしまう。このモンスターがローカストに似た雰囲気を漂わせており,いよいよ“Gearsらしさ”が強くなってくる。
謎のモンスター(彼らは「スウォーム」と名付ける)について情報を得るべく,JD一行が頼ったのがマーカス・フェニックスだ。JDが運んだモンスターの肉片から,ローカストとのつながりを見出すと事態は急展開。謎を解明するべく廃坑に向かう道中,新たなスウォームが現れ,さらにマーカスがさらわれるという事態に陥る。
マーカスと村人を助けなくては! 廃坑に行けば,謎はすべて解けるはず……。
と,ここまでが物語の導入部分と言えるだろう。
ストーリーモードは全5章で,各章が4〜6つのチャプターに分かれている。イベント,フィールドを移動,戦闘,イベント……とテンポ良くつながり,それほど長くもないので,難度がノーマル以下なら途中で詰まる人は少ないはず。丸1日あれば,エンディングに到達できる。
物語をじっくり楽しみたいなら,まずはカジュアルかノーマルでプレイし,戦闘に歯応えを求めるならハードコアやインセインに挑んでみるといいだろう。
徐々に明かされていくスウォームの正体はサスペンス風でもあり,物語の鍵を握る要素だ。繰り返しになるが,ほとんど台詞が重要な意味を持っているので,さまざまな難度で周回プレイをお勧めする。
なお,ストーリーモードは2人協力プレイに対応している。オンラインはもちろん,オフライン時には上下画面分割で遊べるので,高難度に臨むのであれば,ぜひフレンドと共闘したいところだ。
シリーズの特徴でもある「カバーシステム」「ローディーラン」「アクティブリロード」といったシステムは,本作でもすべて健在だ。
「カバーシステム」は[A]ボタンで障害物に身を隠す。この間は敵の銃弾を受けることはなく,[Lトリガー]で身を乗り出して銃を構えてから,[Rトリガー]で銃撃するというのが基本的な戦い方となる。
「ローディーラン」は移動しながら[A]ボタンを押して,体勢を低くしながら走る動作。敵との距離を一気に縮めることができる。
そして,「アクティブリロード」は銃のリロード中,タイミングよく[RB]ボタンを押すことで,リロード時間を短縮しつつ,銃の威力が上昇するというものだ。
これらの操作感覚は従来どおりなので,シリーズ作品をプレイしたことがあればスムーズに戦えるだろう。障害物越しの敵を引き寄せるといった新要素もあるが,プレイフィールが大幅に変わるほどではない。
「Gears of War」シリーズと言えば,ガチムチなキャラクターが多いため,重厚なイメージを持っているかもしれない。だが,実際の戦闘は極めてスピーディだ。カバーして撃ち,近づいて切り刻み,ダウンしたら踏みつぶす。テンポ良く,敵を叩き潰していく爽快感は独特だ。
シリーズ再始動という位置づけではあるが,あえて従来の路線から逸脱していないように思える。主人公の変更に伴い,イメージが大きく変わったので,ゲームの核となる部分をブラッシュアップして,まずは「Gearsとは何か」を見極めたのではないだろうか。
ランサーアサルトライフルのチェーンソーで敵を切り刻む痛快さも,これまでと変わらない。もっといろいろな“処刑”のバリエーションが見たかったというのも本音だが,それについては次回作以降に期待したい。
グラフィックスの面でも,シリーズ初のXbox Oneタイトルらしく進化を遂げている。なかでも「Unreal Engine 4」の性能を最大限に生かした,風や雷などの自然災害の表現には圧倒された。暴風が吹き荒れるシーンではモニターから本当に圧力を感じるほど(ありきたりな表現で恐縮だが)で,Xbox 360時代ではありえなかった体験だ。
さて,「Gears of War」シリーズといえば,やはりマルチプレイ対戦だ。第1作こそシンプルなルールが3つしかなかったが,作品を重ねるごとにさまざまなルールの追加や改善が行われてきた。
「Gears of War 4」では,いずれのルールでも最大10人(5人対5人)のチーム戦となっている。
●Team Deathmatch
相手チームのプレイヤーを一定数倒せば勝利となる。
●Dodgeball(新ルール)
相手チームのプレイヤーを1人倒すごとに,自チームのプレイヤーが1人復活できる。一方的な展開になりにくく,適度なシーソーゲームが楽しめる。
●King of the Hill
マップ上の拠点(リング)を確保し,保持することでスコアを獲得できる。一定値に到達したチームが勝利となる。
●Arms Race(新ルール)
最初は強い武器を持っているが,相手チームのプレイヤーを3人倒すごとに弱い武器になっていく。13種類の武器で敵を3人ずつ倒したチームが勝利となる。
●Guardian
それぞれのチームのリーダーが倒されると,ほかのプレイヤーが復活できなくなる。より早くリーダーを倒したチームが優位に立てるルールだ。
●Warzone
第1作から登場している定番のルール。全プレイヤーが復活できず,相手チームを全滅させれば勝利となる。
そして,以下の2つは「大会」モードとして,ランキングに反映されるルールである。
●Escalation
3か所の拠点(リング)を確保し,保持することでスコアを獲得できる。一定値に到達するか,3か所の拠点を同時に確保すると勝利となる。
●Execution
相手チームのプレイヤーを倒すときは,必ずダウンした相手を「処刑」フィニッシュで倒さなくてはならない(それ以外は倒したことにならない)。一切復活できないので,1回倒されたらそれっきり。
初めにルールを選択したうえでプレイする場合は,「コアモード」か「大会モード」を選ぶことになるのだが,実際にマッチングするケースは少ない。ほとんどのプレイヤーは,現在進行中のマッチにクイック参戦できる「ソーシャルクイックプレイ」を利用しているからだ。
これはルールやマップにかかわらずマッチングが行われ,BOT枠(CPU)があればそこに入れるというもの。対戦が終了すると,次回のルールとマップを3つの候補から投票する仕組みになっており,非常に手軽かつ気楽にさまざまなシチュエーションで対戦できる。
また,人間チーム対BOTチームとなる「対AI協力プレイ」が可能になった。腕試しのような感覚で気兼ねなく遊べるためか,なかなかプレイヤー数が多い。気心の知れた仲間と遊びたければ,「プライベートマッチ」を作成して対戦相手をBOTにすればいい。
対戦相手だけでなく,自分以外のチームメイトをすべてBOTにすることもできる。
「Gears of War」シリーズのマルチプレイは,とにかく接近戦になりやすいのが特徴だ。中〜長距離では牽制し合っている場面がほとんどで,いかに相手の裏をかいて接近し,至近距離で仕留めるかにすべてがかかっている。
遠距離からの銃撃では,スナイパーライフルによるヘッドショットといった即死攻撃でない限り,しばらくダウン状態になるだけ。この状態だとまだ絶命したことにならず,仲間が近づいて救助できる。確実にキルするなら,近づいてトドメを刺すするのが確実なのだ。
こうした既存のシューターには見られないゲームデザインが,Gearsらしいマルチプレイの対戦の魅力と言える。最初は,右も左も分からないうちに背後から攻撃されて倒される,なんてことが多いだろう。
そのうち,徐々に背後を注意するようになり,相手の背後を取るための策を考えるはずだ。マップをしっかりと把握し,敵陣の背後に回れるルートを進んでいるつもりが,そこで待ち伏せを食らう。ならば仲間と連動して,陽動しつつ総攻撃を仕掛けよう。
作戦を練り出すようになると,本当に楽しい。あまり活躍できなかったとしても,相手を1人倒しただけでも充実感を得られる。筆者のようになかなか上達しないヘッポコでも,つねに「楽しい!」「面白い!」と実感している。こんなシューターは珍しい。
相手を吹き飛ばしたり,切り刻んだりするというグロテスクな表現が苦手でなければ,高い爽快感が得られることは間違いない。
さてもうひとつの重要なモード,「HORDE」も忘れてはいけない。「Gears of War 2」から搭載されたHORDEは,仲間のプレイヤーと力を合わせて,「ウェーブ」と呼ばれる敵の波状攻撃に立ち向かう協力プレイモードだ。
「Gears of War 4」では“HORDE 3.0”となり,倒した敵が落とすパワーを集めて,「ファブリケーター」で防衛施設や武器を作りつつ,自分達の拠点を守れるようになった。ファブリケーターはストーリーモードにも登場するが,バリヤやタレットなどの防衛設備を,いつどこに設置するか。それがHORDE攻略の鍵となると言ってもいい。
何回も戦いを繰り返し,自分なりの“ファブリケーター活用法”を見つけていくことになるので,非常に遊び応えがある。
また,ファブリケーター自体も好きな場所に置けるため,立てこもりやすい場所に設置するのが基本だ。設置場所の付近に敵が出現することはないので,それぞれのマップにセオリーとなる設置場所がある。マップの端,または部屋のような場所がそれだ。攻撃が激しくなる後半戦では,1か所に立てこもり,防御を固めながら反撃の機会をうかがう展開は避けられず,それなら敵の侵入ルートは限定したほうがいい。
難度はストーリーモードと同じく,カジュアルからインセインまで4段階用意されているが,ノーマルでもかなり手強い。ちょっとでも油断すると,すぐに窮地に追いやられてしまうだろう。
では,どうすればいいのか。そこで,新要素「クラス」の出番だ。
クラスには,何でもそつなくこなす「ソルジャー」,ヘッドショットの威力が高く,敵をマークできる「スナイパー」,防衛設備の作成や修理が得意な「エンジニア」,重火器ならお任せの「ヘビー」,ファブリケーターに必要なパワーを集めやすい「スカウト」の5種類が用意されている。これらの特徴を把握し,役割分担を意識すると戦いを優位に運べるはずだ。
5つのクラスは任意に選べるが,なるべくなら特定のクラスをプレイし続けてほしい。そのクラスに応じた戦い方をマスターしたときこそ,自分の腕が上達したと実感できるからだ,ここからHORDEがさらに楽しくなる。プレイヤー同士の役割分担がハマると,何とかしてハイタッチしたくなるほどの一体感を味わえるだろう。
実際,ひたすらガムシャラに戦うだけのプレイヤーがパーティにいると,ウェーブ20前後で詰まってしまうことが多い。中盤以降は「要は敵を倒せばいいんでしょう」という単純なものではない。難度ノーマル以上では,力押しだけではどうにもならない壁にぶつかることだろう。プレイヤー同士の連携が不可欠なのだ。
ちなみにクリア(ウェーブ50)まで遊ぶと,プレイ時間にして2〜3時間かかる。セーブやコンティニューといった機能はないので,ぶっ続けで臨むしかない。
相変わらず楽しいHORDEであり,何回も遊べるデザインになっているのも理解しているが,短時間でカジュアルに遊べるモードも欲しかったというのは贅沢な注文だろうか。
マルチプレイ対戦やHORDEには,カスタマイズや性能強化を行えるカードが用意されている。「Halo 5」における「徴発カード」のようなもので,メインメニューの「ストア」でカード5枚がセットになった「Gears Pack」を購入可能だ。
「Gears Pack」はゲーム内クレジットだけでなく,Xbox ストアでも購入可能だが,残念ながら日本のストアでは販売していない。購入できないことはないのだが,少々ハードルが高いので,コツコツとクレジットを貯めたほうがいいだろう。
カスタマイズ系のカードには,対戦やHORDEで使用可能なキャラクター,武器のスキン,エンブレムなどが用意されている。もちろん,キャラクターの能力や武器の性能を左右する要素ではない。
一方,スキルカードはHORDEのみ使用可能で,ソルジャーならアサルトライフルの弾数上昇やアクティブリロードのブーストアップ,スナイパーなら爆発するヘッドショットや敵の位置が分かるレーダーソナーなど,攻略に役立つ能力が,1クラスにつき8〜12種類用意されている。
「バウンティー」と呼ばれるカードは,経験値またはゲーム内クレジットを獲得できる効果を持つ。対戦用とHORDE用にそれぞれ数十種類あり,1回装備して条件を達成したら消費されるものだ。スキルと比べると,ちょっとした「オマケ」のような意味合いが強い。
以上,新たな英雄伝説の幕開けとなる「Gears of War 4」の魅力を紹介してきた。まとめてみると,大きな驚きがあるわけではないが,パワフルなシューターとしての基本的な手触りはそのままに,あらゆる面が着実に進化している。
とくに,マルチプレイ対戦の進化は目を引く。
ソーシャルクイックプレイであれば,即座に対戦中のグループに入れるため,マッチングに付き物の待ち時間がほとんどない。e-Sportsを強く意識した仕様になっているので,今後さまざまな大会で「Gears of War 4」の名を見ることになりそうだ。
ただし,シリーズを初めてプレイするには,少々とっつきにくいことは否めない。長期シリーズものの宿命であるが,新しい主人公を迎えたタイミングなのだから,「分かりやすさ」を意識してもよかったのではないか。
シリーズファンの筆者であっても,初回プレイ時にはストーリーがあまり理解できなかった。HORDEのチュートリアルも,もっと充実できたはずだ。ゲームの楽しさを知る前に,脱落してしまった人もいるだろう。
最後にローカライズについて言及しておく。
日本マイクロソフトが「Gears of War 4」の国内発売を見合わせると知ったとき,本当にガッカリした。今回プレイしたのは北米版だが,ゲーム内のメニューはもちろん,ストーリーモードの字幕もすべて日本語化されている。ヘタな日本語版より,しっかりしている印象だ。
これまでは日本語音声を含む仕様だったので,それがないのは確かに残念ではあるが,ゴア表現はオリジナルのまま。ゲーマーにとっては,複雑な心境を言わざるを得ない。
それでもあえて,頑固で面倒なファンのわがままとして言わせてほしい。次回作では,日本語音声を収録した国内発売を願っている。
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