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アイトラッキングに対応した次世代VRHMD「FOVE 0」体験レポート。「フォヴィエイテッドレンダリング」の技術デモも
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印刷2016/11/05 16:04

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アイトラッキングに対応した次世代VRHMD「FOVE 0」体験レポート。「フォヴィエイテッドレンダリング」の技術デモも

 独自のアイトラッキング(視線追跡)テクノロジーを搭載したVRヘッドマウントディスプレイ「FOVE」が,2016年7月2日から3日にかけてサンフランシスコで開催された開発者会議「Virtual Reality Developers Conference」(以下,VRDC)のイベントフロアで公開されていた。すでに公式サイトでは,開発者向けキットである「FOVE 0」の予約販売が7月3日に開始されており(関連記事),スペックなども詳細が公開されているが,ここではそれをおさらいしつつ,展示されていたデモのプレイフィールをお伝えしてみたい。

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「FOVE」公式サイト


  「元々私は,PS Vita向けにインタラクティブなムービーを作りたいと考えていたのです」と語ったのは,FOVEの創業者でCEOの小島由香氏。 彼女はプロデューサーとして在籍していたソニー・コンピュータエンタテインメント(現ソニー・インタラクティブエンタテインメント)時代,携帯ゲーム機のカメラを使い,顔の表情を捉えることで実現されるインタラクティブなコンテンツを考えていたそうだが,残念ながらプロジェクトとして企画が通ることはなかったという。そこで,「実現するなら,自分で起業するしかない」と考え,独立を決意したのだそうだ。

2560 x 1440のWQHD OLEDパネルを採用し,70Hzのリフレッシュレートを実現するFOVE 0。視野角は最大100°ながら,ピクセル密度はほかのPC用VRヘッドマウントディスプレイと比較して142%ほどに強化されている。ぞれぞれのレンズの周囲には,120fpsで動作する6つのIR(赤外線)センサーによって構成されたアイトラッキングシステムとカメラセンサーが搭載され,1°以下の精度でトラッキングが可能となっている
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 SCE時代に培った人脈を活用して独立を進める中で,彼女は東京大学の産学連携プロジェクトとして研究が進められていた「FOVE」の開発者達と出会う。そして2015年7月,Kickstarterでの開発資金調達に成功し,目標額の192%に相当する48万ドル余りを獲得。その後もコロプラ,Samsung,Foxconnなどから,合計1100万ドルに及ぶ投資を受け,驚くほどのスピードで,産声を上げたばかりのVR市場に名乗りを上げることになったという。

FOVEのCEO,小島由香氏。同社チーム25人のうち,20人ほどは日本で開発しているが,小島氏はアメリカのオフィスとの間を行ったり来たりする日々だそうだ
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 さてアイトラッキングと言えば,「VRディスプレイが進化していく上での次の停車駅」と言われるほど,VRにとってはなくてはならない機能とされている。OculusのチーフサイエンティストであるMichael Abrash(マイケル・アブラッシュ)氏も,10月に開催されたOculus Connect 3で,“今後5年のVRにとって欠かせない7つの側面”として,「アイトラッキング」と,それに付随して実現される「フォヴィエイテッドレンダリング(Foveated Rendering)」を挙げていたほどで,この実現はVR業界にとって大きな一歩となりえる。Abrash氏の見解については,「奥谷海人のAccess Accepted第514回:Oculusの語る5年後のVR技術」に詳しいので,そちらを参照してほしいが,ここで驚くべきは,5年後と考えられていたこの1歩を,FOVE 0が年内には実現してしまいそうな勢いだ,ということである。

むき出しの状態のアイトラッキングシステム。6つのIRセンサーと,超小型カメラが付いているのが分かる
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 もちろん,FOVE 0は今のところ開発者向けキットでしかないし,Oculusなどの先行企業も独自のアイトラッキング技術を開発中であることは想像に難くない。だが現時点で一歩先を行っているのは事実で,小島氏は「1〜2年はヘッドスタートを切れます」と自信を見せていた。このまま製品化となるのか,あるいはテクノロジーをほかの企業にライセンス提供する形になるのかは定かではないが,今後は同社を主役にしてVR業界が大きく動いていく可能性は十分にあるだろう。

 なお対応タイトルについては,「SteamVR」「OSVR」といった先行するプラットフォームのものと完全な互換性を実現しているとのこと。例えばSteamVRには,すでに300近いタイトルが登録されているが,これらについてはゲームパッドを使うことで,そのすべてを問題なくプレイできるという。またHTC Viveで用いられているようなワンド型のコントローラにも,そう遠くない時期に対応するとのことだった。


 もっとも,アイトラッキング機能に対応したタイトルを今後増やしていくためには,多くのデベロッパにその価値を理解してもらわなくてはならず,そのためのSDKの配布など,開発者とのリレーション構築が課題となる。もちろん,FOVE自身も対応タイトルをリリースしており,そのデモのいくつかが出展されていた。東京ゲームショウに出展されていたものと同じものだそうだが,試遊させてもらったので紹介していこう。


Project Falcon


 初めに挑戦した「Project Falcon」は,ロボットを操作して路地裏のような場所から現れるカニのような多脚戦車を倒していくというもの。ちなみに開発はREWINDというデベロッパによるもので,現在アナウンスされているものでは,数少ないFOVE専用ゲームとなる。

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 ゲームパッドを使用するもののエイムは視線で行い,左トリガーでマシンガン,右トリガーでミサイルランチャーという操作系になっていた。ロボットは勝手に前に進んでいくので,いわゆるレールシューター方式であり,プレイヤーは視線でしっかり狙いを付けることに集中すれば良い。いや,“しっかり”というのがやや語弊があって,ちょっと何が動いているものがあるなと思って視線を動かすと,もう次の瞬間には適当に乱発していたマシンガンが相手を仕留めている,というような印象である。
 なおアイトラッキングモードをオフにしてもらったところ,それまで視線だけで照準を合わせていたものが,頭を動かさなくてはならない状態になり,アイトラッキングの恩恵が実感できるようになっていた。



Judgement


 「Judgement」は,CEOの小島氏が「SCE時代に作りたかったインタラクティブムービー」と呼んでいたもので,ゲームパッドのような入力装置をまったく使用しないのが特徴のタイトルだ。デモがスタートすると,そこは薄暗い倉庫のような建物の中で,目の前には“アフガンストール”などと呼ばれるスカーフを目出し帽のように顔に巻き付けた,いかにもなテロリストが現れる。状況から察するに,どうやらプレイヤーは潜入がバレたスパイのようで,敵に捕まって激しい尋問を受けているようだ。

 入力装置を使わないので,操作は視線をめぐらせるのみ。一つの場所をじっと見ていると,それを察知したテロリストが,なんらかのアクションを起こしてくる。例えばテロリストの目をじっと見ていると殴られるし,ナイフに目をやると突きつけてくる。テーブルの灰皿を見ていると,「こんなものを見ている場合か!」とでも言いたげにテーブルから払い落とされてしまった。

 テロリストは異なる人物が写った3枚の写真を見せながら,プレイヤーに迫ってくるのだが,アテンドしてくれた小島氏によれば,「真ん中の写真の人物のことを悟られてはいけません」とのことだったので見ないように努める。そうこうするうちに首にヌンチャクのようなものを吊るした別のテロリストがやってきて,尋問を交代することに。
 このヌンチャクはどうやらフラッシュバンらしく,それを見つめているとカットシーンになって,軍で訓練を受けていたときに上官から言われた,「閃光弾がさく裂するときは直視するな」という言葉が回想される。現実に戻ってしばらくすると,倉庫の2階の窓部分にチラチラと人影(どうやら助けに来た仲間のようだ)が見え始め,フラッシュバンが投げ込まれる音とともに画面全体が真っ白になる……というところでデモは終了となった。



「フォヴィエイテッドレンダリング」テクノロジーデモ


 最後のデモは名称不明だが,プレイヤーの視線に合わせた部分以外をぼやかすことで被写界深度(Depth of Field)を表現する,「フォヴィエイテッドレンダリング」のテクノロジーデモだ。
 場所はどこかUnreal系のゲームを思わせるような,宇宙船か何かの狭い金属質な通路で,そこに装甲兵が立っているという状況でデモは始まる。プレイヤーが視線を合わせると,そこに緑色のサークルが現れ,サークルの外側に行くにつれてぼやけた映像になるという,ただそれだけの内容である。

緑にカラーリングされた部分が,フォヴィエイテッドレンダリングの焦点部分だ。中心部から離れるにつれて映像がぼやけていく
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 フォヴィエイテッドレンダリングについては,上でも紹介したAbrash氏の講演記事に詳しいのだが,これはただ単に被写界深度を表現するだけでなく,プレイヤーが見ていない部分の解像度を下げることでレンダリングの負担を大きく低減し,同時に焦点を合わせている部分のグラフィックスを向上させようという技術だ。この記事を読んでいるあなたも,この文章から視線を動かさずにディスプレイの端を見ようとすれば,どうにも不鮮明にしか捉えられないことに気付くはず。これをシミュレートするのが,フォヴィエイテッドレンダリングである。

 当然ながら,この実現にはアイトラッキングとの併用が必要不可欠であり,これが可能なのはFOVEの大きな優位性といえる。小島氏も「最大で50〜75%もの描画リソースが軽減される」と力説していたので,対応タイトルが増えることに期待したいところだ。

非常に小型なFOVEのポジショナルトラッキングカメラ。まだ開発中なのか,既存のミニ三脚にウェブカメラを装着しただけのようにも見えるが,狭い日本の住宅には嬉しい。これもFOVEの優位点の一つかも
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 FOVE 0は,Kickstarterで投資を行った1500人ほどのバッカ―に先行して配布された後,公式サイトでの予約者向けに販売される予定となっている。11月9日までは50ドル引きの549ドルで予約が可能なので,アーリーアダプターになりたいという人は,公式サイトからオーダーしてみるといいだろう。
 またテクノブラッドとの提携により,日本と韓国のネットカフェに7000台のFOVE 0が設置される計画も動いているとのこと。日本産のVRヘッドマウントディスプレイが,どんな旋風を巻き起こすことになるのか,今後が楽しみだ。

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「FOVE」公式サイト

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