インタビュー
「文豪とアルケミスト 音樂大全集」発売記念,坂本英城さんとまらしぃさんにインタビュー。縁から紡がれたアレンジ曲の聴きどころは?
DMM GAMEから配信中の「文豪とアルケミスト」(BROWSER/iOS/Android)。PCブラウザ版は,2021年11月1日に配信5周年を迎えた。アプリやアニメ,舞台などの展開をしてきた本作の音楽をたっぷりと収録したCD「文豪とアルケミスト 音樂大全集」が,5周年を記念して完全受注生産で発売されることになり,現在予約受付中だ(受注期限:2022年9月2日〜10月31日まで/税込価格:2万円)。
本CDには,特典として作曲家/ピアニストのまらしぃさんがアレンジ&演奏を担当した「文豪とアルケミスト 紡」「救世念フ文士タレ」「虚ロナル齒車」が収録される。
今回は,収録後に「文豪とアルケミスト」の楽曲を手掛ける作曲家・坂本英城さんと,まらしぃさんにインタビューを行い,アレンジ曲の魅力をたっぷりとうかがった。
坂本さんとまらしぃさんはお互いのファン!
4Gamer:
楽曲の収録,お疲れ様でした。まずは,本日の感想を教えてください。
まらしぃさん:
無事に収録が終わって,ほっとしております(笑)。とてもステキな収録スタジオで,ステキな曲を演奏させていただけるということで……。準備をしっかりして,気持ちよく演奏させてもらいました。
坂本英城さん(以下,坂本さん):
作曲家の仕事は楽譜を書くところまでで,実際に皆さんの耳に届くのは誰かに演奏してもらう必要があります。そのため音楽は誰に演奏してもらうかがとても大事なのですが,今回まらしぃさんに依頼をして本当によかったなと思いました。
最初の音を聴いた瞬間にそう思うほど,考えていたものの何倍も素晴らしいものになっています。途中「自分が作った曲だったかな」と客観視して,意識が遠くに飛ばされるほど演奏に感動しました。
4Gamer:
今回まらしぃさんにアレンジをお願いした経緯を教えてください。
坂本さん:
すっかりファンになりまして,その後もまらしぃさんのYouTubeチャンネルで演奏を見て,なんでこんなに指が動くんだろう,どういう仕組みなんだろうと思ってしまうほど感動したのがお願いするきっかけです。
4Gamer:
演奏を見ると,本当に指そのものが意志を持っているようになめらかな動きですよね。技術の素晴らしさはもちろんですが,坂本さんの考えるまらしぃさんの演奏の魅力はどこでしょうか?
坂本さん:
楽譜を渡して譜面の通りに弾けるピアノが上手い方は,たくさんいます。でもまらしぃさんはご自身のなかにしっかりとした音楽があって,その指を通して奏でられた音がとにかく好きだなと思いました。
何で好きなのかなと考えたときに,アイデアにあふれて,普通では考えられないアレンジをしてくださるところだと思い至りました。アレンジの仕事が来たときに,納期やリテイクのことを考えて無難なものを出してしまう方もいらっしゃると思います。でも,まらしぃさんはチャレンジングなアレンジをしてくれて,なおかつ考えていたものの何倍も先を行っていて……。予想がつかないアレンジされていて,しかもどれも僕が好きなテイストなんです。
4Gamer:
本作にはたくさんの楽曲があるだけに,アレンジを依頼する曲は悩んだのではないでしょうか?
坂本さん:
はい,社内でケンカのような状態になりました(笑)。
最終的にファンの方に人気の高い海外文豪の「救世念フ文士タレ」と「虚ロナル齒車」は,絶対に入れたいということになりました。また5周年を記念して新しいメインテーマ「文豪とアルケミスト 紡」を作ったので,これはぜひまらしぃさんに弾いていただきたいと,厳選してこの3曲になった形です。
4Gamer:
まらしぃさんはアレンジのお話を聞いて,どう思いましたか。
まらしぃさん:
大前提として,僕は昔から坂本さんが音楽を担当している作品の大ファンだったんです。
坂本さん:
そうだったんですね。
まらしぃさん:
そのため最初はびっくりして。お話をいただいた段階で依頼の経緯も少し教えてもらったので,とても嬉しかったです。僕としても,ぜひ演奏させていただきたいですと話しました。
「文豪とアルケミスト」の素晴らしさは,知り合いやSNSでつながっている方にファンがいるので,その様子からもともと知ってはいましたが,今回の依頼を機に自分でもプレイするようになりました。
とても魅力にあふれていて,さらに坂本さんとの縁をつないでくれた大切な作品なので,「文豪とアルケミスト」ファンの皆さんにも楽しんでもらえる演奏にしたいと思いました。
原曲の魅力を大事にしたアレンジに注目
4Gamer:
今回3曲のアレンジを担当されていますが,初めてゲームのオリジナル音源を聴いたときの感想を聞かせてください。
まらしぃさん:
最高でした(笑)。僕は先にいただいた音源を聴いたのですが,1人のプレイヤーとして,作品内で出会えていたらどれほどよかっただろうと思うほど素晴らしかったです。
坂本さん:
ありがとうございます。
まらしぃさん:
それと同時に,自分がピアノで演奏させていただけるのが嬉しかったです。しかし,もとがオーケストラやアンサンブルの音の重なりがしっかりある原曲なだけに,アレンジは複雑になりそうな香りもしたので頑張らないといけないと感じました(笑)。
4Gamer:
特にアレンジで苦労したところはどこでしょうか。
まらしぃさん:
原曲はいろいろな楽器の演奏が折り重なっていますが,僕が演奏するのはピアノのみです。そのためメロディが複数あるときに,どの音を選ぶか考えて,アレンジとして提案させていただきました。それに対して,作曲をした坂本さんから「こっちの方がいいかも」と教えていただいて……。
音と音との重なりを,ピアノ1台でどう表現するかは永遠のテーマでもあるので,苦労や勉強したところでもあり,おもしろいところだなとも感じました。
4Gamer:
今回演奏された曲のなかで意識されたところや,気に入っているパートはありますか?
まらしぃさん:
「救世念フ文士タレ」と「虚ロナル齒車」は,ゲーム内で短い曲がループする形式で使用されています。アレンジでも2ループ演奏させていただくことになり,最初は原曲の雰囲気を残しつつ,2回目で個性を出してほしいというオーダーを受けました。
そのため1回目は原曲を好きな皆様に楽しんでいただけるように弾き,2回目では期待に応えられるようにリズムを変えたり,メロディの弾き方を変えたりしています。収録現場でカッコいいと言っていただいて,僕としてもよかったです。ファンのみなさんにも原曲とアレンジで,2ループ分楽しんでもらえたら嬉しいなと思います。
4Gamer:
アレンジで聴くからこその楽しみ方ですね。坂本さんは完成した曲を聴いて,どう思いましたか。
坂本さん:
収録前にいだいていた感想と,実際にまらしぃさんの演奏を聴いた今ではまったく感覚が違いますね(笑)。「これをゲームに実装した方がいいんじゃないか」と思うほど,想像を絶する良い作品にしていただきました。
本当に表現力が素晴らしくて,激しい感情を表すこともあれば,繊細で静謐な演奏もあって,すごく聴きごたえがあります。僕もピアノを弾きますが,こんなに表現力がある楽器なんだと気づかされるくらいの演奏を堪能させていただきました。
4Gamer:
どの曲も魅力的なだけに悩ましいと思いますが,特にお気に入りの曲はありますか?
坂本さん:
どの曲もですが……1曲あげるなら「救世念フ文士タレ」。この曲にはタタッターという印象的なリズムがあり,ピアノではバリエーションが出しづらいだろうなと思っていました。実際にまらしぃさんもそう話していて,その制約のなかで素晴らしいアレンジと音楽性を入れてくる技術力の高さに感服しました。そういう視点で,原曲からいい意味で大きく変わったなと思えましたね。
まらしぃさん:
どの曲も「ここが好き」というポイントにあふれていて悩むんですけど,しいて1曲選ぶとしたらメインテーマの「文豪とアルケミスト 紡」を演奏させていただけたことが嬉しいです。原曲は坂本さんが生み出すメロディの素晴らしさと,作品の魅力も全部つまっている曲だと思います。
曲のファーストインプレッションと,自分のピアノ演奏を合わせたらこうなるだろうなというイメージが一致して,それをブラッシュアップしてアレンジしました。弾いていて気持ちよかったです。
4Gamer:
「文豪とアルケミスト」には,たくさんの文豪が登場します。お2人は,好きな作家や思い出に残っている作品はありますか?
まらしぃさん:
好きな作家さんはいるんですが,現代の方が多いですね。「文豪とアルケミスト」に登場する方だと海外文豪のコナン・ドイルさんや,川端康成さん,夏目漱石さんが好きです。
坂本さん:
僕も近代作家さんや,漫画家さんに好きな人が多いです(笑)。それでも太宰 治さんの「人間失格」は何度も読みましたし,夏目漱石さんの「こころ」も大好きですね。1冊でこんなにドラマチックになるのかと,音楽と似たものを感じたのが夏目漱石さんです。
まらしぃさん:
いま,太宰さんって言っていましたけど,教科書で「走れメロス」を読みました。
坂本さん:
必ず通るところです。
まらしぃさん:
ぱっと作品や作者名が出てこなくても,本作に登場する文豪たちの作品は誰もが知っているものが多いですね。
坂本さん:
「文豪とアルケミスト」を通じて読んでみようと思ったり,この作品の作者はこの人だったのかと知ったり,出会いがありますよね。
4Gamer:
最後にファンの皆さんにメッセージをお願いします。
まらしぃさん:
このたびはステキな作品の音楽がつまったCD「文豪とアルケミスト 音樂大全集」に参加できて,本当に光栄で嬉しく思っています。作品ファンの皆さんのなかには,ピアノが好きな方もたくさんいると思います。原曲の魅力は皆さんご存じだと思いますが,ピアノアレンジになるとこんな表情になるんだと思ったり,メロディのよさを改めて感じたりする機会になったら僕も嬉しいです。ぜひ,楽しんで聴いていただけたらと思います。
坂本さん:
5周年記念作品の「文豪とアルケミスト 音樂大全集」は,作品の音楽ほぼ全部入りです。音源もリマスタリングしていますし,要望が高かった「文豪とアルケミスト 金澤演奏會」や,一部収録されていないものもありますが「舞台『文豪とアルケミスト』シリーズ」の楽曲も入っています。ほかにも楽譜の再録など,ファンの方に喜んでもらえる内容にしました。
まらしぃさんに依頼させていただいた3曲は,このCDだけのためにアレンジされたものになっています。5周年を音楽で祝う大事なエッセンスになっておりますので,ぜひ購入して,まらしぃさんの演奏を聴いていただきたいなと思います。
4Gamer:
ありがとうございました。
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