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PS4版発売記念「ファイヤープロレスリング ワールド」松本総監督×男色ディーノ対談。“究極”を目指す本作の,気になる点や今後の展開に迫る
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印刷2018/08/15 00:00

インタビュー

PS4版発売記念「ファイヤープロレスリング ワールド」松本総監督×男色ディーノ対談。“究極”を目指す本作の,気になる点や今後の展開に迫る


8.9,PS4版「ファイヤープロレスリング ワールド」開幕――

 2017年3月に制作中であることが発表され,同年12月にPC版の正式サービスが始まった,ファイプロシリーズ最新作「ファイヤープロレスリング ワールド」(以下,「ファイプロ ワールド」)。2018年8月9日にPS4版が発売されたことで,ついに“テレビゲームとしてのファイプロ”が完全復活を果たした。


 これをお祝いしないわけにはいかない。ということで4Gamerは,PS4版「ファイプロ ワールド」発売記念対談を行った。場所はDDTプロレスリングがプロデュースするプロレス&スポーツBar「ドロップキック」。この地で対戦……ではなく対談するのは,“ともぞう監督”こと「ファイプロ ワールド」総監督の松本朋幸氏と,4Gamer読者にはおなじみ,現役プロレスラーである男色ディーノ選手だ。
 ファイプロの未来を担う「ファイプロ ワールド」の気になる点や今後についてたっぷり話してもらったので,その模様をお届けしよう。

写真左から,松本朋幸氏男色ディーノ選手,そしてドロップキックの店長で,ファイプロの熱心なプレイヤーである,DDTプロレスリングの彰人選手

「ファイヤープロレスリング ワールド」公式サイト



「ファイプロ ワールド」のこれまでの歩みを振り返る


4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。お2人には「ファイプロ ワールド」について,たっぷり話してもらいたいなと考えています。

松本朋幸氏(以下,松本氏):
 今回はいろいろぶっちゃけちゃってもいいんですよね?

男色ディーノ選手(以下,DD):
 ええ,いきましょういきましょう。これはヤバいって話もあるでしょうが,そのあたりは我々を信用してもらって。

4Gamer:
 お2人がお会いするのって,昨年(2017年)5月のトークイベント(※)以来ですか?

※2017年5月31日に4Gamerが開催したトークイベント「飛び込め!『FIRE PRO WRESTLING WORLD』」(関連記事)。2人のほかに彰人選手も登壇した

DD:
 そうなるわね。じゃあその辺りから話を始めましょうか。
 「ファイプロが復活するぞ!」というあのトークイベントから1年とちょっと経って,ついにPS4版の発売を迎えたと。この1年の間にPC版のアーリーアクセスと正式サービスがあったわけですけど,まずこの手応えみたいなのってどうなんでしょう。

松本氏:
 対戦とかエディットレスラー製作とかで盛り上がっていますね。楽しんでくれている人がたくさんいて,PC版を購入してくれた皆さんには本当に感謝しているんですが,しかし一方で「思ったよりは伸びなかったな」というのもあるんです。

DD:
 それは売り上げが,という話なの?

松本氏:
 国内のプレイヤー数が,という面もです。ファイプロはやはり日本のゲームなので,日本のプロレスファンやゲームファンにたくさん遊んでもらえると嬉しいのですが,PC版の7割〜8割は海外のプレイヤーで。

DD:
 復活するぞって発表したときは,もちろん国内での反応も大きかったわけよね。

松本氏:
 はい。「待ってました」「めちゃくちゃ欲しい!」っていう声は大きかったんですけど,実際アーリーアクセスが始まってみると,正直「あれ?」って。
 でもこれって,PCだったからだと思うんです。ファイプロのコアなファンってやはり「ファイプロはテレビで遊ぶもの」って感覚があると思うし,PCでゲームを遊ぶこと自体をハードルと感じる人が多い世代でもあるかのなと。

DD:
 それはあるわよね。そもそもPCでゲイムを遊ぶ習慣がないと「Steamって何?」だし,それより何より“ファイプロはテレビゲイム”っていう思いが強いでしょう。

松本氏:
 制作側も“ファイプロはテレビゲーム”という意識は強かったんですが,だからこそちゃんとPCでも遊べるということはアピールすべきだったわけです。それがうまくできなかったことは反省点ですね。

DD:
 そういう意味でいうと,PS4版発売って勝負のタイミングよね。あらためてだけど,PC版のアーリーアクセスからPS4版発売までの1年って期間には,いったいどんな意味があったんでしょう。

松本氏:
 まずゲーム制作を始めた段階からPS4版を発売する時期はおおよそ決まっていて,そこから逆算してアーリーアクセス開始のタイミングを決めています。

DD:
 そのあたりもやはり,“テレビゲイムありき”で制作されていたと。

松本氏:
 はい。1年という期間も「これくらいはやらないと」って決めていました。
 というのも,“新規タイトルをSteamで出す”ということ自体が,スパイク・チュンソフトにとって初めてのことだったんです。

4Gamer:
 「ダンガンロンパ」極限脱出シリーズなどの移植タイトルはありましたが,たしかにSteamの新作というのはなかったですね。

松本氏:
 はい。なので「どのような段階をもってゲームを出していき,どのようにプレイヤーの意見を汲み取っていけばいいのか」「どのような流れで完成させたらファンが喜んでくれるのか」ということを,ファイプロがどうこうという以前に会社としても一から挑んでいたわけです。

DD:
 軸はテレビゲイムとしてのファイプロがありつつ,会社としてもいろいろなチャレンジがあったと。そんな1年……というか,開発期間を含めるともっと長いと思いますけど。

松本氏:
 はい。2年くらいですね。

DD:
 ではその期間で,何か大きく変わったってことはあるんですか? 例えば開発環境とか状況とかって,企画立ち上げ当初に思い浮かべたものからけっこう変わったんじゃないかって思うのよ。

松本氏:
 そうですね。まず,開発会社が変わりました。

DD:
 ……いきなりヘビーな話題になった気がするんですけど,聞いちゃいましょうか。それにはどんな理由が?

松本氏:
 なかなか説明が難しいんですが,“ゲームとして表面上は動いて見えるけど,ソースを確認すると作り込まれてない”みたいなことが続いたんです。
 分かりやすい例を挙げると……“リーグ戦で最高得点者が同点だったときはどうやって決勝進出者が選ばれるのか”が作り込まれていないということがありました。


4Gamer:
 けっこう重要な部分ですね。

松本氏:
 当然もう一度作り直すよう指示を出すんですが,戻ってきたものを確認してもその修正が反映されていないと。そういったことの繰り返しで作業が進まなくなり,この流れを早く断ち切らないとPS4版の発売に間に合わないという状況に追い込まれたんです。

DD:
 なかなかシビれるわね,それは。

松本氏:
 はい。もう二十数年この業界にいますが,こんな状況は初めてで。僕のツイートだったか,何かの記事に出たのか忘れましたが,この話がちょっと愚痴っぽい感じで広がってしまい「お前が悪いんだろ」というお叱りを受けることにもなって。もちろん監督である僕の責任なんですが……そういった面でもかなりキツかったです。

DD:
 私も立場的にすごくよく分かるんですよ。何かを作り上げることって,何でもすべて1人でやるわけにはいかないから,どこかで人を信用しなきゃいけない。そういう信頼関係で成り立っていた部分が崩れちゃうと,精神的にもかなりくるわよね。

松本氏:
 本当にそのとおりで,僕は人間不信になってしまって。残ったメンバーからも,心労が重なって作業を進めるのが困難になった人やチームから抜けた人も出てしまい,さらにスケジュールが苦しくなりました。

DD:
 過去作品でもそんなことがあったって話をどこかで聞いたんだけど……何なのかしらね,これ?

松本氏:
 うーん……ファイプロ制作現場で脈々と受け継がれている“病”みたいなものですかね。

DD:
 そこを乗り越えられたのって,やはりファイプロに懸ける情熱とか愛情とかになるのかしら。

松本氏:
 それは本当に大きいですね。「ファイプロはこうじゃない。こんなものじゃない」って考えながら,2年近くずっと取り組んできたものですから。
 そんな出来事があって,いろいろお待たせしてしまい申しわけない気持ちもあるんですが,少しでもファンに喜んでもらえる形にはできたかなと思います。



“ファイプロネーム”の撤廃と“新日コラボ”の真意


DD:
 では,ゲイム自体で「ここは大きく変わった」という部分を挙げるとしたら何かしら。

松本氏:
 いわゆる“ファイプロネーム”のレスラーを収録しなかったことだと思います。

DD:
 やはりそこよね。これってファイプロの歴史上でかなり大きいことだと思うのよ。なぜ踏み切ったのかっていうのは気になるわ。

松本氏:
 やはり権利関係は大きいんです。12,13年前はギリギリ許されていたことが,今はもう許されない。手を出すことでファイプロ自体が潰れてしまうようなことになるなら,それは外すべきだと。ただ,こういう事情って,プレイヤーにとってはあまり関係ないですよね。

4Gamer:
 “ファイプロネーム”はファイプロの文化の一つみたいにもなっているので,「何で収録されてないんだ」っていう人も多いと思います。

松本氏:
 はい。それでアンチになったじゃないですけど,ファイプロから離れたっていう人も実際にいるんです。でもそれを補う意味も含めて,Steam Workshopでプレイヤー同士がオンラインでエディットレスラーを共有できるようにしたんです。

4Gamer:
 実名レスラーもファイプロネームのレスラーも,自由に作って共有できる場所を用意したんですね。

DD:
 そんな思いも込めつつ,アーリーアクセスからSteam Workshopをオープンして,実際どんな反響だったの?

松本氏:
 理想のとおりにいくのかまったく見えない状況でリリースしましたが,すぐに実在する選手を再現したレスラーはもちろん,プレイヤーオリジナルのレスラーもたくさんUPされていって。数日で数千体のレスラーがUPされ,それが1か月,2か月で数万体になりました。
 「Steam Workshop,ファイプロ愛が溢れまくっているな」と。嬉しいのはもちろんですし,エディットに関しては完成形に近いかなという,かなりの手応えがありましたね。

こちらはPS4版の「FPW NET」。PC版のSteam Workshopと同じく,続々とエディットレスラーが登録されている
ファイヤープロレスリング ワールド ファイヤープロレスリング ワールド

DD:
 ファイプロネームをなくしたこともですけど,新日本プロレスリングとのコラボっていうのも,かなり大きなチャレンジだったと思うのよ。このコラボを発表したときの反応ってどうだった?

松本氏:
 本当にすごい反響でした。もちろんファイプロネームを外したのと同じく賛否はあって,7対3くらいかな? 好意的な意見をたくさんいただいた一方,「これじゃ新日本プロレスのゲームだろ」という人もやはり多かったです。

DD:
 答えにくい話ではあるんでしょうけど,「何でコラボなんかやるんだ」っていう意見の人へのアンサーって持ってる?

松本氏:
 僕はとにかくファイプロを愛しているんです。そんなファイプロをこれから何十年,何百年残していくため,いったい何をすべきかというのは常に考えていて。ファイプロネームを外したことも,コラボに踏み込んだことも,ファイプロを知ってもらい,そして継続させるためなんです。

DD:
 一時的にそしりを受けることになろうとも,すべてはファイプロのためだと。

松本氏:
 はい。あと,プロレス業界全体が少しでも盛り上がるために何かできればという思いもあります。
 例えば“子供のころファイプロが好きでプロレスも観ていたけど,ファイプロの新作が出ないうちに最近のプロレスも観なくなってしまった”という人が,「ファイプロ ワールド」がきっかけでまたプロレスを観るようになったら嬉しいし,逆に,ファイプロが出ていない10年の間にプロレスファンになった人が,このコラボでゲームを知って遊ぶようになったら嬉しいじゃないですか。

4Gamer:
 限定版「PREMIUM EDITION」でロスインゴ(※)とがっちりコラボしているところは,若いプロレスファンに刺さりますよね。

※内藤哲也選手を中心とするユニット「Los Ingobernables de Japón」(ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン)。2015年に結成されて以来,“制御不能”なその振る舞いや言動で新日本プロレスのマットを席巻し,瞬く間に人気ユニットとなった

DD:
 これってまさに,プロレスファン=ファイプロを知っている前提ではない,新規ファン層の獲得のためのものだと思うの。そういった,ファイプロを知らなかった人達からのリアクションってどうなのかしら。

松本氏:
 僕のTwitterアカウントのフォロワーに,若い女性が増えたんですよ。今まではひとりもいなかったんですけど。
 いや,ひとりもいないというのは冗談ですが(笑),ともかく急激にフォロワー数が伸びたのには本当に驚きました。今後のファイプロの未来を考えて,若いプロレスファンに楽しんでもらいたいし,ファイプロで遊んだ世代で,子供がいるという人には,ぜひ親子で遊んでほしいですね。
 現役のレスラーの中にも,ファイプロがきっかけでプロレスが好きになって,レスラーになったっていう人もいるじゃないですか。「ファイプロ ワールド」も,そういう人達を生み出すきっかけとなるゲームになれたら最高ですよ。

目を見開くパフォーマンスや,拳を突き付け合うポーズに挑戦したディーノ選手だったが,何だかまったく違うものに


ファイプロを絶やさぬため,

「ファイプロ ワールド」は進化し続ける


DD:
 PS4版の話なんだけど,これまでのタイトルに比べて,オンラインで遊べるっていうのがキモになってくるじゃない。
 ただ,テレビゲイムとしてのファイプロを待っていたようなファンって,PC版のプレイヤーに比べたらオンラインでの遊び方に不慣れなんじゃないかなって思うのよ。

松本氏:
 おしゃるとおりで,いきなり「オンラインにつないでレスラーをダウンロードしよう」って言っても分からない人は多いと思います。あと,本作で初めてファイプロを手にしたという,普段はテレビゲームをしないプロレスファンもですね。

4Gamer:
 そういったプレイヤーには,どのような遊び方がおススメですか?

松本氏:
 まずはオフラインで試合やエディットの楽しさを知ってもらい,ゲームに慣れたらオンラインで……という風に,段階的にゲームの遊び方を覚えていっていただければと。ゲームオリジナルの団体も収録されていますが,なじみある実際のレスラーで遊べるほうが楽しいじゃないですか。そういう意味でも,新日本プロレスの選手が実名収録されているのは大きいと思うんです。

DD:
 オンライン対戦での想定というか,どのような状況を予想しているの?

ファイヤープロレスリング ワールド

松本氏:
 PC版と同じく,互いの技を引き出すプロレスを楽しみたい人向けの「プロレス」と,対戦ゲームとして勝負に徹したいという人向けの「セメント」というルームで分けています。
 お好みのスタイルを選んで対戦してほしいのですが,プロレスルールのところでセメントを仕掛けてくる人も出てくるんだろうなと。それはそれでプロレスっぽい部分かなとも思いますが,なかなかこちらでコントロールするのが難しいところではあります。

DD:
 それはこちら遊ぶ側のモラルが問われるところではあるわね。

松本氏:
 あとはCPUロジックでの対戦を観戦するというのが盛り上がるといいなと。ほかのプレイヤーが作った選手が,果たしてどんな仕掛けをしてくるかという,自分で作った選手同士を戦わせている時とは違った楽しさがあるので。
 例えば大人だったら,お酒を飲みながら団体交流戦みたいな気分でそれを観戦するという。これってなかなか贅沢な遊び方じゃないかなと。

DD:
 これは今後の話になるのかな,今まででいう団体運営モードが「ファイヤープロモーター」っていう名前で登場するそうね。

松本氏:
 それについて,ここで謝らせていただいてもいいですか。

DD:
 おやっ? どういうこと?

松本氏:
 そもそも昨年(2017年)末にはPC版でリリースすると発表していたのですが,それが「今年の1月配信に延期します」となり,結局その約束も果たせぬままになってしまっていまして。

4Gamer:
 それって,先ほどの開発会社の変更が影響しているんですか?

松本氏:
 そうですね。昨年末から年明けでガラッと制作メンバーが変わったんですが,担当していた人間が抜けたことで,やり直しや引継ぎなどが発生して。
 それをやっているうちに,移植作業に取り掛からないとPS4版の発売が間に合わなくなるというタイミングが来てしまったんです。

DD:
 PS4版の発売日があるから,いったん止めなくちゃいけなくなったと。

松本氏:
 はい。待っているプレイヤーに早く謝りたかったのですが,当時は制作現場がそんな状態で……さらに僕個人としても,23万字くらいある「ファイティングロード」(※)のシナリオを書いている最中で,ツイートする元気もなくなっていました。

※新日本プロレスのIWGPヘビー級王者を目指すという,本作のストーリーモード

DD:
 人間不信になり,そして音信不通になってしまっていたと。

松本氏:
 何か発信したいし,しなきゃいけない。しかし制作環境の変化でスケジュールも読めないためそれも難しいという状況が続いていて。PS4版の移植作業がようやく落ち着いてきて,「これぐらいの作業ペースなら今秋ぐらいに出せそうだな」ってなったのは本当に最近です。


DD:
 「ファイヤープロモーター」って,我々はどんなイメージでとらえればいいんでしょう。

松本氏:
 ファンの人なら,「ファイナルファイヤープロレスリング〜夢の団体運営!〜」(※)と言えばイメージしやすいかなと思います。それをベースに,今のプロレスや「ファイプロ ワールド」ならではのさまざまな要素を追加しています。

※2002年7月19日に発売されたゲームボーイアドバンス用ソフト。そのタイトル名にあるとおり,オリジナルの団体を作成し,選手の育成や強化,興行の企画・運営を行う「団体運営モード」が搭載された

DD:
 あれって時間の概念があったわよね?

松本氏:
 はい。でも今回は,5年で終わらせるのも延々と遊び続けるのも,楽しみ方はプレイヤー次第にしたいなと。

DD:
 新しいレスラーを発掘する楽しさがあるけど,その辺ってどうなるの? 何十年も遊べるのは嬉しいけど,同じレスラーが転生を繰り返し新人として登場する……みたいなのだと,何だかそれもなあってなりそう。

松本氏:
 転生ですか(笑)。まず自分でモードで使用する選手を登録するんですが,ゲーム開始後に追加や差し替えができるようになっています。なので,自分で作った選手やダウンロードした選手を登録してもらえば,転生することはないですね。

DD:
 ああなるほど,そこでもオンラインの要素が生きていると。登録できる選手の上限は決まってるの?

松本氏:
 制作途中なので人数についてはまだ何とも言えないですが,登録後でもコスチュームや体格などのエディットはできるようにします。

4Gamer:
 それは嬉しいですね。

松本氏:
 選手の入れ替えやエディットを可能にすると,その分不具合が発生する危険性も高まるので,最初はゲーム開始時に登録した選手は変更できない予定だったんです。でも,ファンの皆さんから「枠を固定するのか? いろいろやれるのがファイプロだろう」という意見をいただきまして。

DD:
 「ファイプロはこんなものなのか?」と言われると弱い。

松本氏:
 はい(笑)。それで「分かりました。やりましょう」と直し始めたところで開発会社が……となったわけなんですが,いろいろありながら7割〜8割はできましたので,もう少しお待ちいただければと。

DD:
 ファイヤープロモーターがほかのモードに影響与える部分ってないの?

松本氏:
 今のところはないんですけど,やらなきゃいけないと思うことはあります。
 例えばファイティングロードもそうですけど,やっぱり自分で育てた選手を対戦で使いたいじゃないですか。それはいずれできるようにしないとって思っています。

ファイヤープロレスリング ワールド ファイヤープロレスリング ワールド
ファイヤープロレスリング ワールド ファイヤープロレスリング ワールド

DD:
 先ほど「何十年も何百年もファイプロを続けていきたい」って言ってたけど,実際「ファイプロ ワールド」自体は何年くらい続ける予定で動いているんですか? ひとまずこれくらいは,みたいなところで。

松本氏:
 現実的な話をすれば,ある程度の売り上げがないとという話にはなるんですが,現状の予約本数や海外の反応をみていると,最低でもあと1年はいろいろできるんじゃないかなと。
 その間に新モードが盛り上がればあと1年,DLCが好評だったらもう1年……っていう感じでしょうか。例えばファイティングロードですが,最初から搭載されているものは2017年度の新日本プロレスのヘビー級を題材としたものなんですけど,好評だったらDLCで2018年版を配信するみたいなことができるかなと。コスチュームなんかもそうですね。

DD:
 なるほど。そういう意味では,ナンバリング作品としてファイプロを継続していくというより,「ファイプロ ワールド」自体を進化させていくっていう意識なのね。

松本氏:
 はい。数字を稼いでいかなければ厳しいですけど。こんなこと言ったら会社に怒られるけど,多少の赤くらいなら継続したいです(笑)。
 でも本当に,ファイプロを出せるのって今回が最後だと思うんです。「ファイプロ ワールド」が止まったらもう2度と作れない。

DD:
 そういうことなら,声を大にしていった方がいいわよ。「復活したからってまた何年後かに次が出ると思うな。これで一生遊ばせてやるから,『ファイプロ ワールド』を買っておけ!」と。

松本氏:
 本当にそれくらいの意気込みで取り組んでいるので,ぜひお願いします。

DD:
 松本さんは,ファイプロを続けていくうえで,どんな“戦う相手”を想定しているんですか?
 プロレスラーとしての私には,“仮想敵”っているのよ。敵っていうか,自分が何かを行う際や何かを伝えたいっていうときに浮かぶ相手の顔。私の場合それは対戦相手というよりお客さんの方にあるんだけど,これって“伝える仕事”をしている人は皆さん持っていると思うんです。

松本氏:
 そうですね……新しいファンももちろん意識しているんですが,やはり“30年来遊んでいる”みたいなコアなファンですね。
 SNSやネットの掲示板でファン同士で情報交換している人や,Twitterで僕に意見を送ってくれるようなコアなファンに納得してもらえるものが作れないと,“正統続編”みたいに胸を張って言えないなと思うんです。
 期待に応えられているところってまだまだ少ないと思いますが,いずれは「ファイプロ ワールド」を「これが究極のファイプロだね」「松本でよかった」って言ってもらえるようなものにしたいんです。だから,古くからのファンを常に見ていますね。

DD:
 何だったら,それはご自身でもあると。

松本氏:
 そうですね。結局僕も長年ファイプロを遊び続けていて,そしてファイプロが作りたくてこの世界に飛び込んだ人間ですから。



彰人選手が優しい雰囲気を漂わせながら乱入(?)

ファン視点で気になる点に迫る


4Gamer:
 ディーノ選手にとってコラボは他団体のお話なのに,しっかり触れていただいて何だか恐縮です。

松本氏:
 僕もこのTシャツ(※)で来ちゃって,申しわけないなって。

※PREMIUM EDITIONの特典であるL・I・J×ファイプロワールド コラボTシャツ

DD:
 いえいえ,私個人としてはそこまで気を遣われなくても大丈夫なんで。とは言えですよ,やはりモノ申したいっていう人はいるわけで。今日はそんな人に来てもらっているから,ちょっとここから入ってもらいましょう。

(カウンター越しに話を聞いていた彰人選手が登場)

DD:
 言ってやりなさいよ。どのツラ下げてこの店にきたんだって。

彰人選手:
 えっ!? いやいや,そんなんじゃないですよ(笑)。
 えっと,それではですね……僕は受付開始してすぐに限定版を予約したんですが,やっぱりレスラーとして,違う団体のレスラーが目立っているゲームを買うことに葛藤があったんですよ。でもファイプロファンとして,この限定版を買わなかったら後悔するなって。
 だから,限定版は買うけどそれでゲームは遊ばないで,通常版を買ってこっちを開けて遊ぼうみたいなことを考えたりもしているんです。

DD:
 意地だ! 意地の張り方がちょっとよく分からない形になってるけど!
 実名収録についてはさっき権利問題みたいな話があったけど,そもそも「何で新日本プロレスとコラボすることになったのか」っていうのは聞いておかないといけないよね。

松本氏:
 あれは4年くらい前になるんですけど,新日本プロレスの阿部さん(ビジネス開発部次長の阿部 猛氏)から「新日版ファイプロが作りたい」っていうオファーがあったんです。その企画自体は流れてしまったんですが。

DD:
 それは「ファイプロ ワールド」が動く前の話ってことよね。

松本氏:
 はい。それから何年かして「ファイプロ ワールド」の制作が始まるわけですが,そもそもコラボなんて考えはなかったから,「ファイプロ作ってます」って伝えにくくて。
 でも,ちゃんと報告はしなきゃってお会いする機会を作ってもらったんですが,会って話しているうち「コラボしてみたら面白いんじゃないか」って思いが沸いてきたんです。

DD:
 ほうほう。

松本氏:
 でも,なかなか話を切り出せなくて。焼肉屋で会食したんですが,1時間くらいはお肉を突っつきながらモジモジしてたんです。好きな子が目の前にいるのに告白できない,みたいな感じだったんですが,よく見ると阿部さんも何だかモジモジしてるんですよ。

DD:
 ああ,お互い甘酸っぱい感じだ。これは脈ありだと。

松本氏:
 それで思い切って話を切り出したら,実は阿部さんも「ファイプロ ワールド」の発表を見てからコラボのことを考えていたそうで,「会社にはコラボがあるかもしれないってすでに話しているんです」って。

DD:
 なるほど。それで無事お付き合いが始まったと。いい話じゃないですか,それは。
 ……ただ,言うてもほら,人間っていろんな交際の形があるじゃない。何て言うんでしょう,何股ぐらいかけるつもりなのかなっていうのは,こちらは気になるわけですよ。

(一同笑)

松本氏:
 僕としては,やはり“ワールド”と名付けた以上,国内外問わずいろんな団体に登場してほしいと思っているんです。もちろん難しい団体もありますけど,こちらからアプローチはしたいし,実際に動こうとしていることもあって。そういう意味では何股でもかけたいって考えていますよ。

DD:
 本当? であればうちは,けっこうすぐにでもってレベルよ。

彰人選手:
 ですね(笑)。国内だったら,正直どこの団体も断らないんじゃないかなって思います。

松本氏:
 僕は怒られると思っているんですよ。そもそもプロレスラーって,選手自身と団体がすごく努力したうえで作り上げられるものじゃないですか。これまでのファイプロは,そんなレスラーの大事なキャラクター性を拝借した“なんちゃって選手”でやってきたわけですから。

DD:
 言いたいことはすごく分かるわよ。でも,こちら側はそんな感覚はあんまりないけどね。

松本氏:
 そう言っていただけるのは本当にありがたい話なんですけど,だからといって好意に寄りかかりまくるというのはダメだと思うんです。今回のコラボもそうでしたが,やるとしたら,しっかりと話し合って慎重に進めなきゃいけないと。


DD:
 なるほど。実際の団体とコラボってなると,効果的な順番やタイミングってあると思うの。そういう意味で,ファーストチョイスとしての新日本プロレスはぜんぜん間違っていないし,私達としてはそちらをうまくやって,甘い汁もしっかり吸ってから来てもらったほうがいいわよね。

彰人選手:
 (笑)。ポンポンやっていくよりは,お互いにとっていいですね。

DD:
 なんちゃって選手といえば,この対談前に彰人君とファイプロネームについて話していたのよ。

彰人選手:
 僕達はどちらかというと,ファイプロネーム派なんです。実名収録されているその選手を,ファイプロネームに直したいときってどうしたらいいんだろうって。

DD:
 これまでのファイプロは,買ってきたらファイプロネームを実際の選手名にリネームする人がいたわよね。「ファイプロ ワールド」の場合はその逆……“リ・リネーム”をする人が生まれると思うんです。

松本氏:
 リ・リネームですか(笑)。

DD:
 そんな我々のようなプレイヤーにとって,コピペするだけでリ・リネームができる「ファイプロネーム集」みたいなのがあるとすごく嬉しい。

4Gamer:
 PS4版のプレイヤーはコントローラで操作する人が多いと思うんですが,コントローラ操作で文字入力をするのはなかなか大変だという面もあります。

ファイヤープロレスリング ワールド

松本氏:
 いや確かに。これは面白いですね。なるほどなるほど。それちょっとメモっていいですか?

DD:
 どうぞどうぞ。実名収録は嬉しいけど,しかし我々はグレート司馬であり,ビクトリー武蔵である。リ・リネームするのもやぶさかではないが,というかする気満々だが,その手間はなるべく省きたい。そんなプレイヤーも一定層いると思うのよ。

彰人選手:
 それも,公式が定めた名前が一番いいわけですよ。

DD:
 名前だけじゃなくてプロフィール欄もあるから,この辺まで入れると大変なのかなとは思いますけど。ファイルをダウンロードしてそこからコピペするみたいなことができれば。

松本氏:
 いや本当に面白いです。問題はいろいろありそうな気がしますが,検討する価値はありますね。

DD:
 本当!? 実現したらこれ,4Gamerが生んだ功績になるんじゃない?

4Gamer:
 いえいえ,ディーノ選手と彰人選手のお手柄ですよ。

DD:
 さっきファイプロネームじゃなくなって離れた人がいるって話をしたけど,でもこういった形で救済処置があればついてきやすいとも思うわ。

4Gamer:
 “モノ申す”じゃないですけど,彰人選手はほかに気になっていることや聞きたいことはありますか?

彰人選手:
 技についてですね。トークイベントで「グレネード」(※)っていう技の動画を観て盛り上がったじゃないですか。ああいう技って収録されないのかなって気になります。

※見えない手榴弾を投げつけて,相手を爆破する技。爆発まで時間がスローモーションとなり,リング上の選手の間で手榴弾のトス合戦が始まる

松本氏:
 僕もあのイベントに登壇したものとして,「グレネード」は気になっていて。技は入れられるかぎり入れたいし,ああいう技が入ったら,ファイプロももう一段階上のステージに行くなとも思うんです。
 ただ,今は技職人が2人しかいないので,追加もなかなか大変で。

DD:
 2人でやってるっていうのも驚きだけど,技ってどれくらいの期間で作れるものなの?

松本氏:
 だいたい1人3日で1個くらいですね。敬礼するぐらいの簡単なパフォーマンスなら半日くらいですが,複雑な技だと1週間から2週間くらいかかるものもあります。

ファイヤープロレスリング ワールド ファイヤープロレスリング ワールド

DD:
 逆にその期間で作れちゃうものなのね。

松本氏:
 田村さん(開発ディレクターの田村季章氏)なんかはもう何十作もやってますから。とはいえ,やっぱり人数がいないからどうにも回らないところがあります。
 ファンの皆さんは「もっとガンガン作っていいんだよ! あの程度の2Dゲームなんだから簡単にできるだろ」ってなると思うんですけど。僕だったらそう思いますもん。

DD:
 いやいやそこまでは思わないわよ! 何だか職人の技術というか,伝統芸能っぽい部分を感じるけど,後継ぎみたいなのは育てないの?

松本氏:
 今は人を育てる時間すらないんですよ。その時間がとれるなら技を作らなきゃっていう状況で。コラボ選手を作るとなるとその選手固有の技を作る必要もあるので,なかなかほかのことに取り掛かる余裕がないですね。
 とはいえ,PS4版発売を迎えて開発も落ち着くので,年明けには人を育てるといったこともできるかなと。

彰人選手:
 ファンから,ゲームに入れてほしい技をアンケートで募ったりはしないんですか?

松本氏:
 コストや作業の問題以外にもいろいろな理由があって難しいかなと思います。
 例えば,2位になった技は2週間かかるけど,3位と4位の技は3日で作れるってなったとき,果たしてどっちを取るかには悩まされると思うんです。順番どおり2位から作ったら時間が掛かって「遅いぞ」ってなるし,3位と4位はすぐ出せるけど先に作ったら「2位はどうした」ってことになってしまうわけですから。
 アンケート上位になった技が,果たして本当に多くのプレイヤーが求めているものなのか……という問題も生まれますから。

DD:
 こういうものって必ずしもイコールじゃないし,そう考えると確かに難しそうね。

4Gamer:
 技といえば,新日本プロレスのKUSHIDA選手が「ファイプロ ワールド」向けのコラボ技を開発中ですよね(関連記事)。

松本氏:
 はい。これは希望というか,できたら嬉しいなという話なんですが,選手にも協力いただいて,新技が初披露された日のアップデートでその技を追加するということもやってみたいんです。前もって技を見せてもらって作成し,「●月●日の試合で披露します」っていう日に実装すると。

DD:
 それは面白いわね。でも,その選手が怪我しちゃって欠場したり,その日の試合で技が不発に終わったりしたらどうなるの? プロレスって何があるか分からないじゃない。

松本氏:
 そうですね……じゃあ「今日の試合で披露するはずだった技がこれだ!」みたいに出しますか。

(一同笑)

DD:
 それだと急に話がおかしくなる! でもアイデア自体は,本当に夢のある話ですよ。

松本氏:
 はい。こういう形でも,ファイプロとプロレス相互で盛り上げられたら嬉しいです。

彰人選手:
 試合形式ってどうなるんですか? 「ファイプロ・リターンズ」から10年以上経っていて,その間にプロレス自体も大きく変わってますよね。例えば「蛍光灯デスマッチ」だったら,当時と今じゃ蛍光灯の本数も使い方も違うじゃないですか。

DD:
 昔のファイプロを遊んでいたって人と今のプロレスファンで離れている部分って,たぶんインディー系のファンやデスマッチが好きな人だと思うの。

ファイヤープロレスリング ワールド ファイヤープロレスリング ワールド

松本氏:
 本当に近年は試合形式が多様化しているし,特殊なルールも増えていますよね。国内はもちろん,海外のファンからも要望が多い部分ですが,やはり簡単ではないんですよ。

4Gamer:
 今ある仕組みから派生させて……って感じではできないんですか?

松本氏:
 例えば「ガントレットマッチ」だったら,今ある「バトルロイヤル」の「時間差式」をベースにすれば簡単に作れそうじゃないですか。でも実際そうはいかなくて。
 時間差式は“1つの試合に参加選手が順番に出てくる”という1パッケージになってるんですが,出てきた選手ごとに勝敗を決する「ガントレットマッチ」は,同じ仕組みでは作れないんです。
 1つ1つの試合をつないで……という仕組みでやれなくはないんですが,1勝負ごとに区切りができて,そのたびに試合が止まっちゃいますから。

DD:
 たしかにそれって気持ち悪いわね。

松本氏:
 ですよね。ガントレットマッチらしいスムーズな試合の流れを再現するには,システム自体を作り直さなきゃいけない部分が出てくるんです。

彰人選手:
 去年のイベントでは「観客席に行けるようにしたい」って話もしていましたよね。


松本氏:
 レスラーのパーツで観客を作って試すところまではやったんですが,開発会社変更の件もあってストップしています。これはいずれやりたいですね。
 会場なんかはすごく要望をいただいているところなんです。場外乱闘もですけど,会場外や野外で戦いたいというのも多いですね。

DD:
 あっ,その意見が来ちゃってるのは,きっと私達のせいだわ。

彰人選手:
 そうですね(笑)。

4Gamer:
 技とか試合形式以外では,ほかにどんな意見が集まってるんですか?

松本氏:
 入場用のガウンやコスチューム,女子レスラー用のスカートといった,衣装についてでしょうか。最近はコスチュームのデザインも凝っていて,左右の柄が異なるものも多いですよね。このあたりは再現できればと思うんですが。

DD:
 左右の設定って,コスチュームデザイン以外にも,例えばダメージも左右の腕や足で分けるなんてことは……できない?

松本氏:
 これができるんですよ。

DD:
 おおっ,それはなかなか……。

松本氏:
 何でも実現したいんですが,現状はスタッフも限られているから,「じゃあ腕と足の左右別のダメージと新しいデスマッチの形式,どっちが先ですか」みたいな選択肢が生まれるんです。

彰人選手:
 うわあ,これはちょっと究極の選択ではありますね。

松本氏:
 そういった選択肢を100個くらい抱えていて,じゃあその中のどれが優先順位が高くて,何から手を付けるべきかを決めなくてはならないんですよ。
 あと,ここからは無理というのも明確にあって,そのあたりも確認しなくちゃいけないんです。例えば「ラダーマッチ」は要望の多い試合形式ですが,今の技術じゃ無理のようで。

DD:
 それって,高さの概念みたいなところなのかしら。

松本氏:
 はい。2Dのゲームであり続けるがゆえ,高さの表現に限度があるんですよ。
 「ファイプロ ワールド」はUnityで制作していますが,リングが3Dでレスラーが2Dという仕組みだと,2Dの表示の優先順位がうまく設定できないというのがあるんです。

DD:
 なるほど。現実突きつけられた感があるわね。

ファイヤープロレスリング ワールド

松本氏:
 ファイプロそのもののベースが昭和のプロレスで,大元にあるシステムも拡張性のないものだから,新しいものは一から作らなきゃいけないというのもあります。でもその大元というのが,例えるならばゴミ屋敷で。

DD:
 ゴミ屋敷?

松本氏:
 プログラムが当時の人間じゃないと分からないような状況で,まずはそれを整理整頓して,現在のチームの皆が共有できるものにしないと,新しいものを作るにもなかなか大変なんです。
 今はだいぶ片付いて,あとは屋根裏がどうなっているかなという段階になったので,これをどうにかすればもう少し自由が利くようになるかなと。

DD:
 なるほど。何十年,何百年続けるための土台作りをしていると。

松本氏:
 はい。本格的に皆さんの声に応えられるようになるのは,まずそれをやり遂げてからですね。ファンの多くが何を求めているのかというのを選んで,それに一つずつ誠心誠意向き合って応えていきたいなと。

DD:
 何年も続けるとなると,例えばPS5,PS6みたいに,ハード自体が進化する可能性もあるわよね。

松本氏:
 たしかにそれはあります。ただ,基本的なところはこれ以上変える気はありませんけどね。

彰人選手:
 Nintendo Switchで出すという可能性はないんですか? 我々レスラーはバス移動での遠征が多いから,Switchでファイプロが遊べると嬉しいんです。

DD:
 いい質問だ!

松本氏:
 たしかに,テーブルモードで対戦も楽しめますしね。今のところは何とも言えないんですが,「Joy-Conのおすそ分けだとボタン足りないから,振る動作も入れないとダメだよな」みたいなことは考えたことはあります(笑)。

DD:
 なるほど。“何でもやりたい”の範疇で,あくまで視野に入っているものってことにしておきましょう。

ファイヤープロレスリング ワールド


対戦や配信で“魅せる”ファイプロ。“映える”ファイプロ


DD:
 大会もやりたいっていう話もあるそうね。

松本氏:
 はい。オンラインももちろんなんですが,やはり実際に集まって一緒に盛り上がれるようなことはしていきたくて。そのときはチャンピオン用にベルトを作って,参加者にも特典を用意できればと思っています。

DD:
 ベルトはいいわね。ただ,これはあの……ぼったくられないでね。

(一同笑)

DD:
 いやいや,ベルトを作る機会なんて,普通なかなかないでしょ? プロレス関係者ならともかく,他業種でベルト作るっていうのはないから,足元を見られるってことだってありますから。

松本氏:
 なるほどいや,たしかにそうですよね。でも新日本プロレスにも相談して進めるつもりなので。

DD:
 ああよかった。それであれば大丈夫だ。大会って話にも関係しているんですけど,“ファイプロにおける対戦の美学”みたいなものってありますか?
 プロレスって,オーディエンスが作り出すっていう面も重要なわけですよ。最近はゲイムもスポーツ化していて,実際のオーディエンスというものが生まれている。そんな中での“ファイプロの魅せ方”って,どんなものを想定しているのかなと。

松本氏:
 まず言えるのは,eスポーツ的なものではない,ということですね。

DD:
 ほうほう。それはどういうところなんでしょう。

松本氏:
 僕が対戦で大事にしているのは,“自分と相手のお互いが満足できるように立ち回れたか”なんです。もちろん勝てたら嬉しいですけど,相手プレイヤーの良さを引き出すプレイが出来て,お互い「イエーイ」って盛りあがれるような試合になれば,結果はどうあれ満足なんです。

4Gamer:
 勝ち負けだけではないというところですね。

松本氏:
 「ファイプロ ワールド」のイベントのためにCEO 2018(※)に参加したんですが,そこで海外のプレイヤーと試合することになって。そうしたら多くの人が集まって,試合を観ているんですよ。
 技が決まったら喜んだり,技をかけられたら悔しがったりしていたら,観戦している側も大盛り上がりで最後はハイタッチみたいな。僕はもちろん接待プレイで,ボタン押しているように見せて実は押してなくて,オーバーリアクションで悔しがってる……みたいなこともしていたんですけどね(笑)。

※CEO 2018 Fighting Game Championships。2018年6月にアメリカ・フロリダ州で開催された格闘ゲーム大会



※ファイプロ ワールド公式Twitter(@sc_prowrestling)より

DD:
 それ言っちゃうのがいやらしいなあ(笑)。でもそうやって,勝つだけじゃなく盛り上がってくれたという喜びを実体験できたと。

松本氏:
 はい。それで,これまでのeスポーツ競技になっているようなゲームとは違う形で“喜ばせる要素”があるゲームだなとあらためて気づけて。例えばオンラインでも,対戦が観戦できるようにして観客用に「いいね」ボタンを用意したら面白いんじゃないかと。こういった楽しさが目に見えて分かるような仕掛けができればと考えています。

DD:
 私もファイプロって,ゲイム実況っていう今の流行と相性がいいと考えていて。そういうのを公式でもやったら面白いと思うわよ。

松本氏:
 たしかにそうだ。やるべきゲームですよね。

DD:
 対戦でもCPUロジック戦でもいいけど,持ち寄った選手で試合して,それを変な話,数字を持っている人達が集まって実況すれば,それはコンテンツとして強くなるわけで。

松本氏:
 CEO 2018のイベントにはケニー・オメガ選手飯伏幸太選手も出ていたんですが,ケニー選手はもちろん飯伏選手が本当にうまくて。相手の飛び技を受けるにも,ただ立っているだけじゃ不自然だから,息を整えるみたいな立ち回りがとにかく巧みですよ。



※松本氏のTwitter(@tomozou_kantoku)より

DD:
 プロレスラーは,ゲイムでも相手を引き出すファイトはうまいと思うわ。

4Gamer:
 DDTも昔,リングでファイプロをやるっていう試合をされていましたよね。そういうのは配信でも強いと思います。

彰人選手:
 ゲームで試合して,それを実際に再現するみたいなことをやりましたね(笑)。

DD:
 近年“インスタ映え”って言葉があるけど,ゲイムも“配信映え”みたいなのを気にしたほうが盛り上がる時代が来てるんじゃないかなと思うのよ。
 プレイヤーのリアクションや実況もだけど,ゲイム自体で“映える”要素というか,見ていて楽しめる部分ってどこにあると考えていますか?

松本氏:
 何だろう……エディットレスラーですかね。本当に天才しかいないなって思わされるような,誰も考えつかないようなアイデアで選手を作る人達がいっぱいいますから。そんなレスラー達で試合するだけでも“映える”んじゃないかなと思います。

4Gamer:
 実際のプロレスラーのほかにも,有名人やアニメ,ゲームのキャラクターなどを再現した選手がたくさんいますね。

松本氏:
 パーツの色や組み合わせを調整して,空に浮いているように見えるレスラーを作る人までいて,驚かされてばかりですよ。笑える試合展開も設定次第で可能ですから,変なエディットレスラーでCPUロジック戦をやっても面白いですね。
 ……なるほど,これもメモらなきゃ。シナリオに追われてこういうことを考える時間もなかったから。こういうことに向き合える時間をもっと作らなきゃいけませんね。


4Gamer:
 いいお時間となりましたが,こうして今,ファイプロの話題で盛りあがれるのは嬉しかったです。
 子供の頃はプロレスの中継を観て,友達とファイプロで遊んで,中継で観た技をゲームで調べて友達と掛け合って,プロレス技を覚えた世代ですから。

DD:
 実は似たようなことが現役プロレスラーにもあって。技を思い出すのに,ファイプロを使うってことがあるのよ。

彰人選手:
 試合映像で探すと結構時間がかかるんですが,ファイプロはエディットの技一覧ですぐモーションが確認できますからね。

DD:
 そうそう。それを見て自分でできそうな技を試してみる……みたいな。そういう意味では,ファイプロってプロレスラーのデータソースにもなっているのよね。

彰人選手:
 現在あまり使われていないような昔の技も収録されているので,それを見て「最近この技を誰も使っていないけど,けっこういけるんじゃないか」って試すんです。

松本氏:
 嬉しいですね。これ帰ったら技職人に伝えておきます。泣いて喜ぶと思いますよ。

4Gamer:
 では,プロレスラーには“気づきのツール”としても推奨しましょう。

DD:
 プロレスラーは押さえておいたほうがいいわよね。選手名鑑と並んで。

彰人選手:
 “自分が考える最高の自分”が作れるんですよ。自分にとっては,プロレスラーとして迷ったときにやるゲームでもあるんです。

松本氏:
 最高の誉め言葉ですよ。感動です。「ファイプロ ワールド」作って良かった。

4Gamer:
 話題は尽きないですが,ディーノ選手には「ファイプロ ワールド」に期待しているところを話していただき,松本さんからの熱いメッセージで締めてもらいましょう。

DD:
 こちら側からすると,ある種“押し付けられたい”っていう願望があるのよ。プロレスって考え方が人それぞれで,それをすべて拾い上げるっていうのはできないだろうし,だからこそ「開発している人はこう見ているんだ」というのを受け入れたいなっていう思いもあって。そのあたりは期待しています。

松本氏:
 リアルな表現のゲームがたくさんある時代において,「ファイプロ ワールド」はグラフィックスも決して優れていない,オールドタイプのゲームです。でも,“つたない表現力だけど,プレイヤー自身の妄想力で何倍にも楽しくできるゲーム”になっていて,そういう存在って貴重だと思うんですよ。ぜひ自身の脳みそをフル回転させて,新しいゲームの遊び方を生み出してください。
 あとは,これまでのファイプロと同じように,ゲームからプロレスが好きになる人が増えてほしいですね。プロレスファンには,「プロレスがそこにある」って感じてもらえれば嬉しいです。

4Gamer:
 たっぷりと貴重なお話をいただき,ありがとうございました!

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