連載
孤独のボドゲ 第3回:ブドウを育てワインを作るワイナリー経営ゲーム「ワイナリーの四季」
ワイナリーの四季
ボードゲームと聞くと複数人でプレイするものと思われがちだが,実は1人でも遊べる作品は多く存在する。月間連載の「孤独のボドゲ」では,そんな1人でも遊べるボードゲームを紹介しよう。ポイントとなるのは1人“でも”というところで,1人で遊んでみて面白ければ,友達を誘って一緒に遊べるというわけだ。
「孤独のボドゲ」第3回は,デンマークのゲームデザイナー,Morten Monrad Pedersen氏が手がける「ワイナリーの四季」を紹介していこう。本作は,ワインの名産地であるイタリア・トスカーナ地方でワイナリーを経営していくワーカープレイスメントゲームで,最大6人でプレイ可能となっている。
プレイヤーは労働者を使って,ブドウの樹を植え,畑を耕し,ブドウを圧搾・醸造してワインを生産・出荷し,勝利点を稼いでいくことになる。落ち着いた雰囲気のボードや,おしゃれなデザインのコンポーネントなどが魅力的で,ワイングラスを片手にプレイすると,一層お洒落に楽しめるはずだ。
先に勝利点を20ポイント獲得したプレイヤーの勝ちという明確な勝利条件があるうえ,プレイヤーのほとんどの情報がオープンになっているので,長期的な戦略が立てやすく,ほのぼのとしたテーマとは裏腹に,白熱した戦いが展開されるのも1つのポイントだ。
そんな本作だが,オートマと呼ばれる疑似プレイヤーの存在によって1人でも,複数人プレイの時と同じくらい白熱した戦いを楽しめるようになっているほか,1人でしか楽しめない要素もいくつかあるので,今回はその仕組みを使ったソロプレイの流れも紹介しよう。
コンポーネントをチェック
デジタルゲームにはないボードゲームの魅力といえば,やはりコンポーネントである。作品によっては凝ったギミックを持つコンポーネントもあり,それを触ったり動かしたりするのが,これまた面白いのだ。そんなわけで,ボードゲームの華ともいえるコンポーネントを見ていこう。
○ゲームボード
全プレイヤーで共有するゲームボードには,ぶどう農場が描かれている。農場には,「ブドウの樹を購入」「植樹」「醸造」など,ワイン造りに関連したアクションマスがいくつか用意されており,プレイヤーはそこに労働者を配置して,仕事を実行していくわけだ。
○ワイナリーボード
個人で所有するワイナリーが描かれたボードで,ゲームの準備段階で各プレイヤーに1枚ずつ配られる。プレイヤーはこのボードの上に,購入してきたブドウ樹を植えたり,収穫したブドウを圧搾・醸造したりしていく。ゲームボードもそうなのだが,絵のタッチには暖か味があって,なんだか癒やされる。
○労働者/親方コマ
プレイヤーの手となり足となり働く労働者を表すコマ。本作は最大6人で遊べるので,コマも6色用意されている。それとは別に存在する灰色のコマは,あるアクションによって次の1ラウンドのみ利用可能になる季節労働者を表したものだ。こういった人の形をしたコマはミープルとも呼ばれる。
ちなみに,労働者コマより一回りほど大きいのが親方コマだ。親方コマは,ほかのプレイヤーの労働者で埋まっているアクションマスにも配置できるという特徴を持っている。さすが親方だ。
○ブドウ/ワインマーカー
本作のコンポーネントの中で個人的に一番好きなのが,このブドウ/ワインマーカーだ。見た目は丸くて無色のガラスマーカーなのだが,この無色の丸ガラスというところが重要で,これをワイナリーボードにある赤または白のブドウシンボルの上に置くと,そのシンボルが本物のブドウの実のようにぷくっと丸くなるのだ。
○コイン
ブドウの売買をしたり,労働者を雇ったりするのに使う厚紙製の通貨。単位はリラである。ちなみに写真に写っているのは,公認のアイテムである金属製のコインだ。筆者は厚紙のコインだといまいち雰囲気にかけると思い購入したのだが,1枚1枚重みがしっかりとあるため,厚紙と比べるとお金をやり取りしている感がかなり高くなるのでオススメ。
○ニワトリコマ
ニワトリの姿を模した木製コマで,プレイボード左下にある起床計画表に配置する。起床計画表の一番上にニワトリを置いたプレイヤーから手番が回ってくる仕組みで,手番が後ろの人ほど動きは遅れるが,そのぶんもらえるボーナスが強力になる。
○施設マーカー
各施設を模した木製ゴマ。ブドウ棚や風車のコマがとくに可愛く,これをボードに配置したいがために,必要もないのに建設してしまうのは筆者だけだろうか。
○ボトルマーカー
このボトルをメインボード右下にある付加価値表に置くことで,そのプレイヤーが年末フェーズで受け取る追加収入が確認できる。
○ブドウの樹カード
さまざまなブドウ種が描かれたカード。ブドウの樹購入アクションで買い付け,植樹アクションでワイナリーボードの畑に植えられる。ちなみに左上にあるアイコンは,植えるために必要な建物を表している。
○注文カード
ワインの種類と熟成度が書かれており,それを満たしたワインが作れれば,このカードを使って出荷できる。
○夏季/冬季 訪問者カード
訪問者カードはさまざまな効果を持っており,経営戦略の手助けをしてくれる。とにかく訪問者カードの効果が強いためか,本作をワーカープレイスメントではなく戦略カードゲームだと捉える人も多い。
○パパ/ママカード
プレイヤーの初期労働者数や資金を決めるためのカード。この両親の組み合わせを見るのが結構楽しかったりする。
ぼっちプレイの流れ
本作の1ラウンドは4つの四季によって構成されている。プレイヤーは春にその年の予定を立て,夏にブドウの樹を畑に植え,秋に訪問者を迎え,冬にブドウの収穫・醸造・出荷をするわけだ。冬が終わると年末というフェーズになり,圧搾場やセラーにあるブドウまたはワインが熟成され,価値が1つ上がる。
こうした流れのなかで,注文書通りのワインを作り,出荷して得点を稼いでいくのが,このゲームの大まかなメカニクスとなる。
そんな本作のぼっちプレイでは,「オートマ」と呼ばれるカードの指示に従って,疑似プレイヤーの行動を先に処理し,そのあとに自分のターンを実行することになる。
通常の対戦プレイでは,先に20点を獲得したプレイヤーが勝利となるが,ぼっちプレイの場合は7ラウンドまでに20点を取れればクリアだ。ただ,すべてのラウンドのリプレイを書いていると長くなるので,ここでは最初の1ラウンドの流れのみを紹介しよう。
【準備】
まずはパパママカードをランダムに引き,相続資産を決める。今回はアリッサとモルテンが筆者の両親だ。母からは労働者2人とブドウの樹,夏季訪問者,冬季訪問者カードを1枚ずつ。父からは,7リラと親方コマを相続した。ありがとうパパ・ママ。
次にオートマの色を決め,その色の勝利点マーカーを20点に置く,そして起床計画表の各段にブドウ/ワインマーカーを配置し,その隣にオートマデッキを置けば準備完了だ。また,ぼっちプレイでは以下のルールが適用される。
○2人用ルールと同じく,各アクションのマスは一番左だけ使用できる。
補足:各アクションには労働者を配置するマスが3つあるのだが,ソロまたは2人用の場合,1か所しか使用できないので,早いもの勝ちになる。
○起床計画表では,ブドウ/ワインマーカーが残っている段にのみニワトリをおける。ニワトリを置いた段のトークンはそのまま入手でき,ボーナスアクショントークンとして使える。
補足:各アクションのマスには,追加ボーナスがもらえる枠があるのだが,ソロまたは2人用の場合はそこが使用できないので,その代わりにこのトークンを使ってボーナスを得ることになる。どのタイミングでボーナスをもらうかが重要だ。
○訪問者カードは,ほかのプレイヤーが使わなければ効果が発動しないものをあらかじめ抜いておく。
補足:オートマは訪問者カードを使用しないため。抜くのが面倒な場合は,引き直しでも良い。
オートマカードには,各季節で実行するアクションが書かれているので,プレイヤーはその指示通りにオートマの労働者コマを置く。要するに,先にアクションを埋められた状態になるわけだ。そのフェーズに利用できるアクションを使って,どのように得点を稼ぐかが,ぼっちプレイのキモとなる。
なお,アクションが発生するのは夏と冬なので,オートマカードは夏と冬フェーズの最初にドローすることになる。夏なら緑と赤,冬なら紫と青の段に書かれているアクションのマスに,オートマの労働者を配置するといった感じだ。
オートマカードに春(緑)と秋(紫)の色がある理由は,春と秋にもアクションが可能になる拡張セット「トスカーナ」に対応しているから。同じ理由で,アクションに「T」のアイコンがある場合は,トスカーナを導入していなければ実行しなくてよい。
【春フェーズ】
ニワトリコマを起床計画表のどこかに起き,そこのボーナスを得る。このゲームで勝利点を得るには,注文書を手に入れてその内容に従ってワインを造らなければならない。現状では,手元に注文書がないので,まずは注文書がもらえる3番に鶏を配置した。
【夏フェーズ】
夏フェーズは「ブドウの樹の購入」や「植樹」といった生産準備のアクションがメインとなる。このフェーズでは,黄色いマスのアクションに労働者を配置して働かせることができるが,まずはソロルールに従って,自分の番を始める前にオートマカードをめくる。
筆者の労働者は親方を含めて3人。夏季にすべて使ってしまうと冬季に何もできなくなるので,慎重に考えなければならない。ひとまず,白ワインを作るのに白ブドウが取れる樹が必要なので,ここはブドウの樹の購入アクションを実行したいところ。
通常なら購入アクションに労働者を配置してブドウの樹カードを1枚引くのだが,筆者はブドウの樹カードをドローしつつ,そのまま植樹もできるという夏季訪問者カード「庭師」をママから相続していたので,活用することにした。
なんとか樹を植えられたので,夏フェーズはここで終了する。次は秋フェーズだ。
【秋フェーズ】
秋フェーズでは,夏と冬どちらかの訪問者カードが手に入る。冬のカードはすでに1枚あるので,先ほど使ってしまった夏カードを補充しておくことに。秋フェーズでやることはこれだけだ。
【冬フェーズ】
冬フェーズは,「ブドウの収穫」や「注文書の買い付け」「ワインの出荷」など,資産や得点を動かすアクションがメインとなる。ここでもまずは,オートマカードをドローする。オートマの行動は,冬季訪問者アクションと出荷だったが,今回はどちらもする予定がなかったので,これはラッキーだ。
冬フェーズでは青いマスのアクションを実行できる。まずは収穫アクションで,先ほど植えた樹から白ブドウを収穫し,圧搾場に配置する。注文書の内容は,価値3の白ワインなので,しばらくはここで熟成させることに。
労働者が1人余っているので,労働者訓練で4リラを支払って労働者を増やす。この労働者は次のラウンドから使用できる。
【年末フェーズ】
年末フェーズでは以下の順で処理する。
・ブドウ/ワインの成熟
・労働者コマの回収
・付加価値表を見て追加集を得る
・手札が7枚になるよう調整する
ここまで終えて1ラウンドが終了する。あとはこれをひたすら繰り返すだけだ。複数人での対戦プレイでは,起床ボーナスで何を得るか,訪問者カードをいつ使うかといった戦略性が楽しいのだが,そういった魅力はぼっちプレイでもしっかりと味わえる。
そればかりか,章ごとに開始条件が異なるキャンペーンモードや,5段階の難度調整など,ぼっちプレイでしか味わえない要素も用意されているので,俄然,ソロボードゲーマーにオススメできる作品といえるだろう。
ワイナリー経営というテーマからか,カジュアルなゲームだと思われがちだが,その中身はかなりのゲーマーズゲームになっているので,興味のある人はぜひ購入して遊んでみてほしい。
遊びの幅が広がる拡張セット「トスカーナ」もオススメ
記事内でも触れた拡張セット「トスカーナ」では,春と秋にアクションができるようになるほか,ワイナリーの影響力を広げていく陣取り要素や,特殊技能を持った労働者なども追加され,戦略性がさらに広がっている。本編と同じくアークライトから完全日本語版が発売されているので,より高い戦略性を求める人は導入してみると良いだろう。
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