インタビュー
[インタビュー]Jenova Chen氏が語る「Sky」2022年の総括。この1年のすべてはバーチャルコンサートのために
今年サービス3周年を迎えたSkyは,全世界ダウンロード数が1億6000万件を突破したことをはじめ,年4回のシーズンイベントも変わらず提供,春には日本法人「thatgamecompany Japan」が開設され,リアルイベントも活発化し,直近ではPS5/PS4版の配信も開始された。
そして年内最後のシーズンイベント「AURORAの季節」のクライマックスとして,作中ではノルウェーの歌手“AURORA”さんとコラボしたバーチャルコンサートが,2023年1月2日まで連日行われる。
この間,コンサート会場は“約4000人のプレイヤーが同時接続”できる環境が作り上げられているが,これは本施策のためにチューニングされたという独自のゲームエンジンが用いられた新規設計である。
ここ10年や20年,黎明期のMMORPGから数えて,オンラインゲームの人気スポットがプレイヤーでにぎわう姿は何度も目にしてきたが。
満員のNHKホール(※座席3601席)ばりの会場で,色とりどりのプレイヤーたちがペンライトを振るい,ときには数千人規模で集まって飛び回ってはしゃぐ姿は,ゲームとしてはたしかに未知の臨場感だ。
こういったもろもろがあった1年間の取り組みに関して,短い時間ながらJenova氏に聞いてきた話をまとめていこう。
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2022年の集大成を今
4Gamer:
2022年,今年の「Sky」はいかがでしたか。
Jenova Chen氏(以下,Jenova氏):
今年はさまざまな取り組みをした,実りある1年でした。
この記事が載るころにははじまっているでしょうが,ゲーム内ではシーズンイベント「AURORAの季節」のクライマックスとして,ノルウェーの歌手AURORAさんとコラボしたバーチャルコンサートがいよいよ幕を開けます。またPlayStation版をついにローンチさせられたので,より幅広い方々にSkyを遊んでもらえる環境作りも進められました。
4Gamer:
ゲームの遊ばれ方や,プレイヤー動向の変化などは。
Jenova氏:
プレイヤー数の増加ペースは率直に,例年と比べると比較的ゆるやかで落ち着いた傾向となりました。
また夏のイベント「砕ケル闇ノ季節」では,遊べるコンテンツが少ないという意見もちょうだいし,従来イベントと比べてSkyに触れていただけない時期がありました。ですが,そういった方々を呼び戻し,またSkyの世界に触れたことのない方々にも興味を抱いてもらえるよう,これから「AURORAの季節」とPS版の二軸でさらなる飛躍を目指します。
4Gamer:
先にPS版の話ですが,こちらはどのような狙いがあるのでしょう。
Jenova氏:
PS版は,より深くゲームを遊んでいる方々に届けられればと考えたものです。この3年間,Skyはおかげさまで想像以上にたくさんの人たちに触れていただくことができましたが,これまで遊んでくれているプレイヤーの多くは傾向として,どちらかと言うとカジュアルゲーマー層,モバイルゲーマー層が多く,性別で見ても女性が多いです。
一方,コンソール機でゲームを遊ぶような,いわゆるコアゲーマーな方々には,アンテナの感度が高い人であれば名前くらいは知ってもらえているものの,遊ぶまでは至っていない。そういう印象があったため,分け隔てなく誰にでも楽しんでもらいたいゲームとして,さらに幅広い層の方々にも手に取っていただきたいと思ったわけです。
とくにMMORPGのプレイヤーさんであれば,今回のバーチャルコンサートの光景には興味を持っていただけるはずです。
4Gamer:
「AURORAの季節」のバーチャルコンサートでは新たな取り組みとして,4000人同時参加のコンサートを体験できるとのことですが。
Jenova氏:
このイベントは我々にとってこの冬最大の施策であると同時に,2022年の集大成です。今年最初のイベント「深淵の季節」では,数千ものキャラクターの同時描画に挑みました。続く「表現者たちの季節」では,時期に応じてステージのおもむきを変化させました。さらに「砕ケル闇ノ季節」では,イベントデザインを見直し,制作工数を最適化することで,続く「AURORAの季節」に向けた時間と労力を確保しました。
つまり,この1年のイベントはすべて,2022年最後の一大バーチャルコンサートに狙いを定めて準備を重ねてきたものだったんです。
4Gamer:
1年という短いようで長い期間。生ものなゲームの運営としては,最後に注力するがあまり,間の季節で葛藤しませんでしたか?
Jenova氏:
実は「AURORAの季節」の開発は約18か月前からはじまりましたが,当初から2022年末に開催する予定だったわけではないんです。ただ,よりよいものを目指したら,時間がかかってしまっただけで(笑)。
我々は未知のゲーム体験を生み出そうとするとき,その時点ではいわゆるKPI(会社的な業績指標)よりも,開発者たち自身がワクワクできるか,それがプレイヤーの皆さんにもワクワクしていただける体験になるかどうかを重視……というより,それだけを考えています。
そのため商業的な成功を狙うのであれば,コンサートという施策自体,年頭やサマーシーズンに行うべきだったかもしれません。けれど,私たちが重要視したのは“ほかのどんなゲームでも実現されなかったコンサート体験”だったので,求められるレベルに到達するまで品質を追求した結果,年末になったんです。
4Gamer:
そうして生まれたコンサートの特徴はなんでしょう。
Jenova氏:
AURORAさんの楽曲や,彼女の歌手性をインスパイアした演出もそうですが,一番は“約4000人の参加者が会場で1人1人,リアルタイムにつながれること”です。ステージが盛り上がる場面では,プレイヤーたちが一斉に空に解き放たれ,幻想的な光景が目の当たりになります。
過去,大規模なMMOゲームで多くのプレイヤーが集った場面というのはいくつも例がありますが,4000人という人数を一会場に集約して,誰もが他者の存在を感じられる,空気感に浸れる空間と体験を実現させた例はないでしょう。これを達成してくれたチームは,私の誇りです。
4Gamer:
このためにゲームエンジンに大規模な改良を施したとのことですが,運営施策の一環としてはかなり大がかりだったのでは?
Jenova氏:
そうですね。このコンサートは,Skyがこれまで実現してきたマルチプレイ施策のなかでも最も大規模であり,また音楽を核としたイベント自体も初の試みでしたので,なにが言いたいのかというと,ほぼ別のゲームを新たに一つ作るくらい大変なことでした(笑)。
コンサートの舞台は会場である円形劇場にとどまらず,プレイヤーたちはたとえば「マンタ」(海洋生物の巨大エイの意)などの生き物となって,世界中から現地に集まる人たちが,空のさまざまな場面で合流して,AURORAと一緒にSkyの世界を旅する流れになっています。
マンタに変身しているときも空の飛び方やエモーションなどで自己表現ができるよう,細部まで作り込みました。
4Gamer:
コンサート映像の見本を視聴させてもらいましたが,みんなでマンタになってゆっくり空を飛んでいるだけでも,楽しそうでしたね。
Jenova氏:
そこです。本来,コンサートというものは歌手や演者が主役で,観客は主役を見にいく,あくまで観衆という構図になります。
けれど,Skyで実現したかったコンサートでは,プレイヤーの1人1人が“大切な主役”として,自分たちが集まることでイベントを形作っていく。そういう体験もしてもらいたいと考えていました。
4Gamer:
そもそも,なぜコンサートだったのでしょう。
Jenova氏:
これまでゲームにあまり興味を持っていなかった方々に,少しでも感心を持ってもらえる施策はなにかと考え,計画しました。
すでに遊んでくださっているプレイヤーの皆さんはもちろんですが,今回のAURORAバーチャルコンサートを通じてSkyのことを知り,初めて遊んだという方々がもしいらしたら,ぜひ感想を聞かせてください。
4Gamer:
これら2022年のシーズンイベントでは,手応えを得られましたか。
Jenova氏:
正直,コンサート開幕前の今は手応えや自信より,皆さんにどのように受け取られるのかを考えて,すごく不安です。来年1月には結果も見えてくるでしょうが,それも含めてドキドキです(笑)。
ただ,本番までに皆さんの手をお借りして,計5回のリハーサルテストを行ってきました。最終テストでは約3万3000人のプレイヤーさんと一緒にコンサートを調整していきましたが,その際,参加してくれた方々から「感動した」と,とても温かい意見をたくさんいただけましたので,不安半分ですが,大きな期待も抱けています(※)。
※コンサート開催当日の2022年12月9日から,SNSなどでは参加者であろうプレイヤーたちからの拍手喝采の様子がうかがえた
4Gamer:
「AURORAの季節」への意気込みがよく分かりました。
最後に,thatgamecompanyはこの3年間,表立ったメインサービスはSkyが主という印象でしたが,来年の展望はいかがでしょう。
Jenova氏:
現時点では多くを語れませんが,thatgamecompanyは現在,Skyのみならず小規模なものの含めて複数のプロジェクトを進めています。
そのなかの一つは,新しいゲームの企画となっていますので,2023年のSkyの展開とあわせて,続報にご期待ください。
なお,Jenova氏との“もーっとすっごーーーく深いお話”については,4Gamer編集部のthatgamecompany大好きっ子がこれまで何度も対話を重ねているので,Skyファンはぜひ下記もお目通しいただきたい。
そこで,次なる新作の一端にも触れてもらえるはずだ。
[インタビュー]Skyとそのコミュニティ運営について,Jenova Chenが語る―――コミュニティは家族です。良かれと思ったことがうまくいかない時でも、お互いが愛し合っているということは変わりません
3年前,「Sky 星を紡ぐ子どもたち」ローンチ直後のタイミングに,創作について熱く語ってくれたゲームクリエイターJenova Chen氏が,久々に来日した。巨大なIPへと成長したSkyについて,彼は日々何を思っているのだろうか。
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