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インタビュー

真剣勝負は“愛の告白”と同義! 風之宮そのえ氏と菜摘かんな氏に「乙女剣武蔵」へのこだわり&想いを聞く

 “剣豪たちとのラブラブ青春活劇あどべんちゃ!”と謳う「乙女剣武蔵」iOS / Android)は,ひょんなことから二代目宮本武蔵となった主人公が,個性豊かなイケメン剣士たちと刃を交わしながら絆を育んでいくスマホアプリだ。

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 花梨エンターテイメントの新ブランドkarinto(かりんとう)の記念すべき1作目であり,初のアプリゲームでもある本作の開発秘話を,生みの親であるプロデューサーの風之宮そのえ氏とシナリオ兼ディレクターの菜摘かんな氏にうかがった。

 なお,4Gamerでは2017年12月にインタビューを行っている。そこからリリースに至るまでの苦労話なども聞いたので,お届けしよう。

左から菜摘かんな氏,風之宮そのえ氏
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時間をかけたぶん,納得のいくものに


4Gamer:
 花梨エンターテイメントさんに「乙女剣武蔵」のお話を聞くのは,2017年以来ですね(関連記事)。今回は,開発過程での苦労や,リリース後の反響などもお聞きしたいと思いますので,よろしくお願いします。まずは,会社として初のスマホアプリが先日リリースされましたが,今の率直なご感想をお聞かせください。

風之宮そのえ氏(以下,そのえ氏):
 「本当に出たんだな」,それに尽きるんじゃないでしょうか(笑)。開発中,もしかしたらリリースできないんじゃないか……などいろいろな思いが交錯したこともあったので,本当にうれしいです。

菜摘かんな氏(以下,菜摘氏):
 同じく,一時期はリリースできないバッドエンドも考えていたので,無事に配信できてほっとしました。

そのえ氏:
 アプリそのものは3月のAnimeJapan 2018のときにはある程度はできていましたが,納得できる面白さになるように時間をかけました。延期して待っていてくださるファンの方にはご迷惑をおかけしましたが,楽しんでいただける内容になったと思います。

4Gamer:
 配信後の反響はいかがですか?

そのえ氏:
 反響はよくて,システムやストーリーが面白いと言っていただいています。ただAndroidで一部動作が不安定だという意見もあるので改善していきたいです。

※取材日は2019年6月12日

菜摘氏:
 「乙女剣武蔵」はコメディ要素が多めなので,ストーリーを受け入れてもらえるか心配でしたが,楽しんでいただけているようでよかったです。まだ動作の向上は必要なのですが,内容としては今後配信される新章や,ランダムで生成される「川柳」,キャンペーンなど,くり返し遊べる仕組みを今後は提供していけたらと思っています。

4Gamer:
 「川柳」もそうですし,言霊を斬るバトルシステムは,本作ならではですよね。

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そのえ氏:
 「川柳」や言霊を斬るバトルシステムなどは,菜摘が発案しました。バトルシステムは試作の段階で,菜摘自らプログラムを作って見せてくれたんです。こういうことができる女性クリエイターは少ないので,とても貴重ですね。

菜摘氏:
 ごく簡易なプロトタイプですが,完成形を想像させるものは欲しかったので。システムに関しては,最近の女性向けゲームに多く親しまれているリズムゲームやパズルとはジャンルが違うので,競合がいないことはメリットだと思っています。一方で,それにプレイヤーの皆さんが拒否感を抱いてしまわないかという不安はありました。

そのえ氏:
 開発を始めるとき,知り合いのアプリ開発者や編集者に「やり慣れたシステムじゃないと遊んでもらえない」とか,「運営は大規模な会社じゃないと対応できない」という話をいろいろ聞いたんです。でも,それって本当にそうなのかな? と。

 実は花梨エンターテイメントを立ち上げるときも,大手の傘下ではない独立系は無理だと言われていたんです。それでもなんとか続けられている。今回アプリ開発に関して,他人の意見よりも菜摘の感性を信じ,進めることにしました。

4Gamer:
 それであのバトルシステムができたわけですね。

趣味で自社作品の同人誌を購入していると話す,そのえ氏。「サークル側に気を遣わせないように,なるべく立場を隠して分からないように気をつけているけれど,すでにバレているので今は無理だなあ」と続けた
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そのえ氏:
 僕は,身分を隠してイベントで知り合った乙女ゲーム好きの子たちと,キャラや作品のトークをよくしているんですが,そこで会話をしながら画面を見ずに,ひたすらスマホをタップする姿を何度か目にしました。
 これが作業ゲーか……と思うと同時に,うちは画面を見てじっくり遊んでもらえるようなタイトルにしたいなあと思ったんです。パッケージゲームの感覚が抜けないんですよね。でも,そんな話を菜摘に話しました。

菜摘氏:
 同じ作るのであれば,他社さんとは少し違うものを作りたいなと。

4Gamer:
 確かに「乙女剣武蔵」はシステム面でいうと,アプリというよりもコンシューマゲームっぽさを感じます。

そのえ氏:
 2000年前後くらいのアニメやゲームっぽいノリを出したかったんです。

4Gamer:
 「乙女剣武蔵」はちゃんと向き合って,正解を考えないと勝てないですよね。私は個人戦はなんとか勝てましたが,団体戦は少し苦戦しました。敵の攻撃力が意外と高かったり,言霊を探すのに手間取ってしまったりして。

菜摘氏:
 でも,初戦で勝てたとお聞きしていたので,その点は少しホッとしました。ユーザー層も広いので難しければいいとは思いませんが,団体戦で苦戦するのもいいバランスな気がします。ヒヤヒヤするほど,勝てたときの爽快感も大きいですから。

4Gamer:
 もともとはPlayStation Vita用ソフトとして開発をスタートされたと以前のインタビューで伺いましたが,企画そのものはいつ頃から動き出したのでしょうか?

そのえ氏:
 2016年なので3年前ですね。企画からキャラクターデザイン,彩色くらいまでは,PS Vitaを予定していました。そして以前お話したとおり,菜摘から提案され,会社に体力があるうちにアプリに移行しようと開発に踏み切ったんです。

菜摘氏:
 多くの人に遊んでもらうためにも,ほかに選択肢はなかったと思います。

そのえ氏:
  その頃,僕は専門学校の先生もしていたんですが,新入生たちが遊んでいる作品や目指す進路がコンシューマからアプリに変化していく時代の変化を実際に肌で感じ,決断することができました。既にCS機を持っていない生徒も多かったです。

菜摘氏:
 PS Vitaだと巌流学園のストーリーで完結する予定でしたが,アプリならほかの学園を分けて配信することで楽しんでいただけると思います。

4Gamer:
 やはりスマホはいつでもどこでも遊べる手軽さや,無料で遊べる面が大きいですね。

菜摘氏:
 おはようからおやすみまで,いつでも一緒にいられる感じは得がたいですよね。それに無料ですと人にも勧めやすいです。コンシューマのように,半年前に予約して楽しみにしてたけど実際に遊んだら自分の好みに合わなかった……というリスクも避けられます。

そのえ氏:
 スマホゲームはSNSと連動したり,動画や電子コミックにリンクを貼ったり自由自在な所が魅力的ですね。
昔はコミカライズは紙じゃないと,という思いがあったんですが,最近は電子書籍でいいかなと思うようになってきました。Twitterで試し読みをしてストアに直接誘導する,最速の導線で購入できますよね。

 もちろん書籍やパッケージなどのプロダクトも好きで今でも買います。コミックは紙と電子半々くらい。音楽はCDがまだ多いけれどハイレゾがあったらそっちのほうがいいし……。今回,アプリへの道は悩んだ末の選択でした。

菜摘氏:
 そのぶん,大変でもありましたけどね。

そのえ氏:
 デスマーチの始まり。

4Gamer:
 デスマーチですか? ぜひ,そのお話も聞かせてください。

「乙女剣武蔵」の開発はデスマーチの始まり!?
こだわり抜いた開発秘話


そのえ氏:
 賽の河原のように,作っても作っても終わらない状態でした。例えばストーリーなら僕がプロットを作って,試しにテストシナリオを執筆。菜摘にシナリオを見せて点数を聞くと「20点だ」と言われます。そこで菜摘に手を入れてもらうと,僕の企画意図と外れるけど面白いものが上がってくる。そこで,どうしようかという葛藤と劣等感が生まれるわけです。

 お互いに得意分野が違っていて,僕は俯瞰したプロット寄りの話になり,菜摘はキャラが生き生きするけど本筋から少しずれた内容になりがち。だからお互いのよさを生かすために,時間はかかるけれど共同執筆で作業を進めていきました。

4Gamer:
 納得いくまで話し合ったんですね。

そのえ氏:
 外部にお願いしたほうがロジックで書き上げてくれるので早く完成しますが,スタンス的にしたくないんです。
 僕が以前勤めていた会社は,短期間でゲームを作らなければならない環境でした。全然面白くないのに,納期重視,仕様重視なので直すこともできません。仕様変更すると,売れなかったときにクライアントと責任問題になると脅されることも。あきらかに手を入れたほうが面白くなるのに,それができないことが苦痛でした。

 対する菜摘は,3年かけて1作品を作るような職人肌のところにいたんです。だから会社を立ち上げるときに,その真ん中くらいのもの,こだわるけど現実も考えた作品を目指すことにしました。

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4Gamer:
 そんな経験があるからこそ,妥協のない作品を作られているんですね。

そのえ氏:
 結局,そうなってしまいました。仲のいい声優さんと,「もっと人気メーカーになるには」という話を真剣にしたことがあります。そこでとある結論に至ったのですが……4Gamerさんは世界で1番売れている飲食店がどこだか分かりますか?

4Gamer:
 え? 世界規模となると,Mのつく有名なファストフード店が思い浮かびます。

そのえ氏:
 そうそう,でもそこは,世界一おいしいかと聞かれるとそうではないですし,作り方も機械的ですよね。おいしさというより,提供スピードや価格などの手軽さがウリだと思います。うちはどう考えてもそういうお店じゃなく,言うなれば場末の寿司屋なんです。

 いい魚を仕入れ,包丁を選び,切り方もこだわる,その方法ではどう考えても目の前のカウンターにいるお客様にしか提供できないんですよね。もっと多くの人に楽しんでいただきたいけど,その方法から離れることはできないので。

4Gamer:
 なるほど,深いですね。

そのえ氏:
  話をした役者の子も,芸事を極めた場末の役者でいたいと。「お前はだめだろうそれじゃ(笑)」なんて冗談話をしていたのですが,そんなこだわりもあって,最終的にシナリオは1年かけて何度も書き直して,声優事務所には何度か収録日の延期をご相談して……。声の収録自体に3か月から4か月かけ,のちにデータ化し組み込んでいきました。別件で会ったキャスト何人かに,「いつ配信するんですか?」と心配されることも(笑)

菜摘氏:
 「川柳」ではキャラカットの見せ方,川柳の落ちの面白さにこだわりました。キャラの組み合わせによって2億通りの川柳ができるのですが,全部出る日が来るのかは私にも分かりません(笑)。

4Gamer:
 気が遠くなりそうな数字ですね。

菜摘氏:
 また,奥義は雰囲気ではなく,実際にある流派にそったものになっています。実装されていないものもあるので,今後お披露目できるといいなあと。

そのえ氏:
 ちなみに僕は,「合体奥義」に関しては最初反対でした。

4Gamer:
 そうなんですか?

そのえ氏:
 リアルな剣豪で考えるとありえないじゃないですか。でもバトル要素として確かに合体奥義はテンションが上がるので,最終的には受け入れました。“宮本武蔵に奥義がない”という点以外は。

 二天一流(※)は,「剣の理に従えばすべてが一手一手が全て必殺技になる」という考えなので,奥義はありえない。宮本武蔵が記した五輪書の風ノ巻「太刀の使い方に初心も奥義もない。極意の構えなどもない。」とあります。それを許してしまうと二天一流ではなくなってしまう。なので奥義に値する要素として,五輪書の言葉を使用することにしました。

※宮本武蔵が,晩年に熊本市に位置する霊巌洞で完成させた兵法

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4Gamer:
 だから武蔵の奥義発動のときだけ,「二天一流」と表示されるんですね。

菜摘氏:
 あと,バトルでの言霊の配置にも苦労しましたね。キャラクターによって身長もポージングも違うので,顔にかぶってお面のようになってしまうことがありました。顔に「鬼」って言霊が重なるとか,そういうシュールさは求めてないのに(笑)。

4Gamer:
 ちょっと見てみたい……。

菜摘氏:
 キャラクターゲームでもあるので顔は見えるように,でもズバッと斬った臨場感が出るように細かく調整しました。
 参考にすべきアプリがなかったので苦労しましたが,デバックのときから楽しんでプレイできたのが救いかなと思います。剣豪が活躍するゲームなので,操作で斬ったという実感を重視したかったのでそれが得られたのは成果です。

そのえ氏:
 「剣豪招来」でも青竹を斬る演出を入れますしね。

菜摘氏:
 青竹は水を含んでいて斬るのが難しいそうなので,ぜひ斬りたいと。中からかぐや姫のようにイケメンが出てくるのも,イメージしやすいですよね。

4Gamer:
 確かに。あと,アルバイトのミニゲームも楽しいです。

そのえ氏:
 地味にやりこんでしまいますよね。ミニゲームでゲーム内通貨を稼ぐアプリは,そんなに多くないんじゃないかな。あるとしても放置とか,もっとシンプルなものが多い気がします。

菜摘氏:
 ちびキャラがとてもかわいいので,ミニゲームとの相性がよかったんです。本作はギャグ要素があるので,バトルシーンでもちびキャラを使用してもおかしくはないんですが,やはりバトルは真剣勝負にしたいという思いがありました。

 なのでバトルではリアルな頭身にしています。壁ドンじゃないですけど,真剣勝負で迫られている感じに「ハッ」とときめく人もいると思うんです。

そのえ氏:
 真剣勝負は(乙女ゲームにおける愛の)告白シーンと同義!

菜摘氏:
 バトルでキャラクターが画面に近くなるとき(下の画像)も,本当は逆光にしたかったんですが,作業も重く初期に断念。あとダミーヘッドマイクで収録する案もありました。耳元で「追い詰めたぞ」なんて言われたらすごそうですよね。

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4Gamer:
 それは聞いてみたかったですね。少々センシティブなことを聞いてしまうのですが,開発するなかで,女性向けアプリを取り巻く環境も大きく変化してきたと思います。惜しまれつつも,運営を閉じてしまうアプリもありましたが,そんな業界の現状をどのように見ていましたか?

そのえ氏:
 僕の知る範囲でも,ゲーム業界から撤退するメーカーさんがいらっしゃいました。今はアプリ運営も大変な時代ですし,実際,花梨は大丈夫? といろいろな人に聞かれました。

 でも実は,ほかの会社のことはあまり気にしていないんです。うちはパッケージ時代から我が道を行き,ほかの会社とは違う土俵で勝負していると考えています。大事なのはお客様に楽しんでもらい,刺さる作品を作っていくこと。そこに関しては気を引き締めて,常に刀を研いでいます。

4Gamer:
 過去に発売された「プリンセスナイトメア」や「断罪のマリア」などもプレイさせていただいたのですが,フェチズムと言いますか,独特の世界観やキャラクターを作り出せるのが花梨さんの魅力ですよね。

そのえ氏:
 ADV系のゲームって絵やシナリオの作家性や性癖に刺さる作品って所が重要で,それは誰にでも出せるものではなく,GIFTみたいなものだと思っています。何作か制作するうちに,実務は誰かに作らせ経営に走るようになると,その魔法みたいなものは消えてしまう。うちの場合は菜摘の作家性を引き出せれば,ファンの人もついてきてくれると思うので,そこはブレないようにしていきたいです。

4Gamer:
 菜摘さんは,いかがでしょうか?

菜摘氏:
 アプリの終了は,他人事ではないなと思います。ただ,うちに関して言えば,いきなり終了することはありません。「乙女剣武蔵」はまだ出せていない素材もあるので,ひとしきり出し切るまでは終わらないんじゃないでしょうか。

4Gamer:
 それを聞いて安心しました。

菜摘氏:
 数多くあるアプリのなかで,「乙女剣武蔵」が選択肢の1つに入るといいなあと。毎日遊ぶ作品じゃなくても,4番手,5番手に遊ばれるアプリのポジションを狙って,細く長く配信できたらと願います。すべてのスタッフやキャストの皆さんからいただいた大切な素材なので。

そのえ氏:
 良くも悪くも,作品制作は仕事であると同時に趣味の延長であって生き方なんです。1つの作品を一途に愛し,妥協せずに作っているので,お仕事で作っている人たちには負けたくないんです。
 いつか,次の作品にシフトする時が来るかもしれないので永遠には無理ですが,皆さんが支持してくださる限り,大事に成長させ続けていきたいです。

菜摘氏:
 何事も始まりがあれば,終わりが来ます。その間に,せめて花火を打ち上げたいなと。

4Gamer:
 センシティブな質問に,真摯にお答えいただきありがとうございます。1プレイヤーとしては未実装の奥義やほかの学園のシナリオなど,もっと遊びたいというワクワク感が強いです。

菜摘氏:
 いずれ表に出したいです。ボイスも,いい素材をたっぷりといただいているので。

そのえ氏:
 相当な数を収録したもんね。

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あえて下手な芝居も!?
キャスト陣が魅せる演技にも注目


4Gamer:
 キャスティングのポイントはございますか?

そのえ氏:
 キャスティングで大事にしていることは,キャラクターに合うかと芝居に真摯かということです。「乙女剣武蔵」は真剣に台本を読み込まないと演じられないので,役に向き合える人を自分でリサーチしたり,知り合いのマネージャーさんに相談したりして,オーディションの依頼を出しました。あとは実際の演技を聴き比べて,決めていった形です。

4Gamer:
 公式ブログに,「わざと下手な演技をしてもらった」というエピソードを書かれていましたが本当ですか?

そのえ氏:
 本当です。コメディ作品なので,全員が普通にしていても面白くありません。モブキャラなどには,あえて下手に演じてくださいとお願いしています。ただ,うまい子に下手にやってもらうのって,とても難しいんです。

 絵の上手い人にわざと下手に描いてもらうことが難しいのと同様に,芝居ができる人にわざと下手に演じてもらったり,マイクのり悪く発声してもらうのって難しいんですよね。「なぜこんな下手な人を?」と思われるかもしれないですが,意図的なんです。だんだんボロが出て,上手くなっちゃうんですけど(笑)

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4Gamer:
 コメディという作風に合わせて演技していただいているんですね。

そのえ氏:
 あと,キャスティングをする時に4タイプ判断も参考にしています。倫理的な役者さんは論理的なキャラクターであったり,感情的な役者さんは感情タイプのキャラであったり。

 論理と法則に基づいた行動原理をするタイプは,クールなキャラがすごく合います。逆に感情や感覚タイプの役者さんは,ゾっとするような心揺さぶられる演技が出てくることがあります。キャラによって相性があるなあと思っています。

4Gamer:
 菜摘さんも収録には参加されたんですか?

菜摘氏:
 制作が忙しくて,ほとんど行けませんでした。でも読み方が分からないと連絡が来たら,対応していました。

そのえ氏:
 スタジオでも,どの読み方が正しいのかスマホで毎回確かめてました。

4Gamer:
 流派など,難しい言葉が多いですからね。

菜摘氏:
 ちなみにパートボイスの収録は,初めての経験でした。イベントといったこれからの更新を考えると,パートボイスが必要になってくるので。

そのえ氏:
 これまでは全部フルボイスだったから。パートボイスを収録したことがない役者さんもいたし,僕も初めて録りました。パートボイスってちょっと過去のゲームに戻ったみたいですよね。

4Gamer:
 そういった苦労もあったのですね。役者さんの演技の力もあり,本作はコミカルな要素の強いメインストーリーと,決闘でのシリアスな展開のギャップに見応えがあると思いました。

そのえ氏:
 仲間が先立つなかで生き残る桂 小五郎や,文武両道でありながら女性ゆえに戦場に立てなかった坂本乙女など,たくさんの剣豪たちの情念が描かれています。

 収録時,何テイクもお願いすることがあったのですが,皆さんそれに真摯に応えてくださいました。お互いでテンション高く収録していましたので,キャストのファンの皆さんにもゾクゾクしながら本編を楽しんでいただけると嬉しいです。

菜摘氏:
 物語本編を読んで,それぞれのキャラに愛着を感じる人が多いと思うので,熱のこもった芝居をしていただけて感謝しています。コミカルさとシリアスと,人の裏表ではありませんが,そのギャップを楽しんでいただけたら幸いです。

4Gamer:
 メインの巌流学園以外にも魅力的な人物がたくさん登場するので,本編で会えるのがすごく楽しみです。

そのえ氏:
 キャストに,「アプリでこんなにたくさん声を録るのは初めてだ」と言われました(笑)。

菜摘氏:
 戦闘ボイスなどは,まだ未実装も多く,この後配信が続けば,お届けできるかと思います。

そのえ氏:
 対戦モードなど,初期実装では間に合わないものがいくつかありまして……。

菜摘氏:
 6月末に実装されていますので,楽しんでいただけたら。

4Gamer:
 AnimeJapan 2018にも参加されましたが,印象に残っているエピソードはありますか?

菜摘氏:
 AnimeJapan 2018のブースステージでは,愛洲移香斎(あいす いこうさい)役の霜月 紫さんが殺陣を見せてくれました。愛洲の衣装も,自前で用意してくれたんですよ。

そのえ氏:
 彼は舞台経験もあり,殺陣もできるんです。殺陣をファンの皆さんに講義するために,自前でスライドも用意してくれました。

4Gamer:
 自前だったんですか! しかも講座まで……愛を感じますね。

菜摘氏:
 ありがたかったです。剣と刀の違いから解説してくれて,通常のイベントのようにキャーという雰囲気ではなく,観客が「ほほう」と感心されていて(笑)。しかもミニスカート姿なので,いろいろ新し過ぎて目から鱗でした。また見たいですね。

そのえ氏:
 また何かの機会でやってもらおう。

菜摘氏:
 あとそのえさんも,司会にビデオ撮影に,ボリューム調整に大忙しでしたよね。

そのえ氏:
 本当に大変でした。マイクと曲の音量をステージの真うしろから調整していたんですが,大きな会場の一角ということで音が拡散してしまい,ステージ上の音が聞こえない。ちょうどいい音量を探りながらスライドを操作して……と。

菜摘氏:
 ステージは,キャストさんに任せっきりになってしまったんですが,土方歳三役の飯田利信さんがいい感じでまとめてくれました。

そのえ氏:
 実はその日,飯田くんとはちょっともめたんです。

4Gamer:
 え(これは聞いてもいいのだろうか)。

そのえ氏:
 僕が忙し過ぎてあまり会話できなかったら,あまり口を利いてくれないと(笑)。僕も忙しすぎてフォローしきれなかったのも悪かったんですが……。後日お酒の場を用意して,2時間くらい話をしました。

4Gamer:
 もめたって,そういう(笑)。

そのえ氏:
  タイプが同じなのでわかります。少しリアクションが薄いと「あ……,機嫌悪い?」みたいに過剰に受け取ってしまったり。まあ,それくらい距離が近い声優さんも参加しているので,収録でコミュニケーションとりやすい面もありました。

4Gamer:
 収録現場の和やかな雰囲気が伝わってきました。そろそろお時間なので,「乙女剣武蔵」の今後の展望を教えてください。

そのえ氏:
 グッズの発売が決まり,今監修をしています。主題歌のCDも……?

4Gamer:
 とてもかっこよくて,ステキな曲ですよね。

菜摘氏:
 ありがとうございます。歌詞も独特なので楽しんでいただけたら。

そのえ氏:
 セリフパートもかわいいですね。

菜摘氏:
 ぜひフルバージョンも聴いていただきたいです。キメキメな曲ではないんですが,七転び八起きだけど頑張る的な歌詞がいい味を出しています。歌はもっと出していきたいです。

そのえ氏:
 舞台化などはご縁なので。声をかけてくださるところがあったら,大歓迎です(笑)。

菜摘氏:
 リアルイベントもできたらいいですね。

4Gamer:
 これからの展開もとても楽しみです。最後に読者へメッセージを願いします。

そのえ氏:
 紆余曲折ありましたが,努力をして作ってきたタイトルです。楽しんでもらったり感情移入してもらったり……,そういうところを感じてプレイしていただけたら嬉しいですし,面白いところがあったらお友だちにも勧めて,みんなで楽しんで盛り上がっていただけたらと思います。

菜摘氏:
 ぜひ,剣豪デビューしてください。

4Gamer:
 ありがとうございました。

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  • 発売日:2019/05/30
  • 価格:基本プレイ無料+アイテム課金
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