プレイレポート
PS4版「ボーダーブレイク」はアーケード版とどこが違う? ゲーセンで戦い続けてきた石井ぜんじ氏が見た“新しい戦場”の風景
アーケード版BBがゲームセンターに登場したのは,2009年9月9日のこと。あれから現在に至るまで約9年,多数のゲーマーに親しまれてきた。
ゲームセンターのゲームは1回のプレイごとにお金を入れて遊ぶため,面白くなければすぐに廃れてしまう。プレイヤーのゲームを見る目は,とてもシビアだ。それにもかかわらず,これだけ長期にわたってオンライン対戦が運営されているタイトルは決して多くない。見方を変えれば,BBの面白さや奥深さが保証されているとも言える。
本稿では「BBがどんなゲームなのか」を説明しながら,その魅力を紹介したいと思う。また,PS4版はアーケード版とどこが違うのか,実際にプレイした印象を交えて語っていこう。
「ボーダーブレイク」公式サイト
BBの魅力とは
■BBの魅力 その1
ロボットを操って戦う操作感が楽しい
BBの面白さ,その原点は「ロボットを楽しく動かして戦えること」だ。メカニカルな機体を自らの手足のように操って立ち回り,敵を攻撃して気持ちよく撃破していく。基本的な操作感覚が優れているところが,面白さのベースになっている。
■BBの魅力 その2
幅広いカスタマイズで自分なりの戦いができる
ブラスト・ランナーはどちらかと言えば,リアル寄りのデザインだ。頭部,胴部,腕部,脚部という4つのパーツで構成されており,それらを組み合わせて1つの機体となっている。機体パーツは豊富に用意されているので,自分なりの機体を構築できる。
機体パーツと同様,武器や武装にもさまざまな種類があり,そのバリエーションは多岐にわたる。武器の性能はバランスを重視して調整されているので,皆が同じカスタマイズになることは少ない。
さらに,BBには4つの兵装がある。それが「強襲」「重火力」「支援」「遊撃」である。これらの兵装は撃破されて再出撃するときに変えられるので,戦いの流れに応じて最適な兵装を選ぶことになる。
「プレイヤーの選択の幅がとても広いゲーム」と言えるだろう。
■BBの魅力 その3
10人対10人のチーム戦が楽しい
冒頭に触れたとおり,BBは10人対10人でオンライン対戦を楽しめるアクションゲームだ。この「1チーム10人」という人数が絶妙だ。
例えば,3人対3人の場合,1人にかかる責任はとても重い。もしミスをすれば目立ち,チームメンバーに責任を追及されるかもしれない。逆に50人対50人の場合,人数が多すぎて,自分がチームに貢献しているのかが分かりづらい。個が集団に埋もれてしまい,「自分がいてもいなくても変わらないのでは……」という感覚になりがちだ。
10人対10人の戦いは,BBをプレイしてみると,ちょうどいい人数だということが分かる。責任を追及されることは起こりづらく,うまくチームに貢献すればヒーローにもなれる。ガチでやり込んでも楽しいが,気軽にパーティーゲームのノリでも楽しめるのだ。
■BBの魅力 その4
戦略性が深い
BBの特徴は,その勝利条件にある。敵陣のベースに設置されたコアを攻撃して,先に破壊するか,タイムアップ時点でより多くダメージを与えたチームが勝利となるルールだ。そのため,出撃したらコアを攻撃するべく,敵陣へと向かうことになる。
また,マップにはプラントと呼ばれる拠点が複数あり,自チームが占拠するとここから再出撃が可能になる。多くのプラントを占拠すればするほど,敵のコアまでの距離が近くなり,戦いを有利に運べる。つまり,BBには「陣取りゲーム」の要素も含まれている。
コアを直接叩きに行くのか,それともプラントの占拠を狙うのか。もちろん,自陣に攻めてくる敵を迎え撃つ必要もある。
このように,BBは単に敵を撃破すればいいというゲームではない。さまざまな選択肢があり,状況に応じて適切な判断を下せる戦略性が求められるゲームでもあるのだ。その奥の深さは,やり込むほどに実感できるようになる。
ガチゲーマーでもライトゲーマーでも,BBをプレイすれば本格的なロボットバトルを楽しめる。これほどのゲームがPS4版は基本プレイ無料で遊べるのだから,とても贅沢な話だと思う。
PS4版とアーケード版との違い
アーケード版のBBは長期間稼動しているので,すでに多くのファンがついている。筆者も稼働初期から戦い続けている1人だ。
そんな筆者がPS4版をプレイしてみた印象だが,ゲーム自体は「アーケード版とほぼ同じ感覚で楽しめる」と言っていい。当然,入力デバイスや筐体の有無といった環境の違いはあるが,ゲームには違和感がないどころか,映像とプレイ感覚の点ではPS4版のほうがクオリティが高いと思える。
しかし,PS4版とアーケード版には,いくつか違う部分もある。以下,それらを紹介していこう。
■チップシステムの変更
ゲームシステムにおいて,大きく変わったのが「チップ」である。アーケード版では機体パーツの種類ごとに搭載可能なチップの容量が設定されており,その合計値で装備できるチップ数が決まる。
その点,PS4版では各部の機体パーツごとに,決められたチップ数を搭載する仕組みになった。例えば「頭部に1つ。胴部に1つ」といった感じである。よりシンプルになったことで,初心者には理解しやすいはずだ。アーケード版のプレイヤーにとっても,とくに不満が出ない変更だと思われる。
■機体パーツや武器,武装の支給の違い
アーケード版との最大の違いは,「機体パーツや武器,武装の支給」だ。アーケード版には約9年間の歴史があり,その間に多数の機体パーツや武器が支給され,プレイヤーはそれを集めてきた。しかし,PS4版はローンチから間もなく,最初からそれほど多くの機体パーツや武器が提供されているわけではない。
PS4版は基本プレイ無料のビジネスモデルを採用し,課金によって効率的に機体パーツや武器が手に入れられる。とはいえ,特定の“欲しい武器”を直接買えるわけではないので,やはり入手したリソースでやりくりする必要がある。
アーケード版をやり込んだプレイヤーは豊富な選択肢から選ぶことに慣れているので,戸惑いがあるかもしれない。一方,PS4版で初めてBBを遊ぶ人にとっては,現段階でもずいぶん多くの機体パーツや武器が存在していると感じるだろう。
どちらにせよ,約9年間稼働しているアーケード版と,ローンチしたばかりのPS4版では状況が違うのは当然と言える。どの程度のスパンで新しい機体パーツや武器が支給されるのか,大いに気になるところだ。
PS4版をプレイしてみて
ここからはPS4版をプレイしてみた感想をまとめていく。なお,原稿執筆時点でサービス開始から10日余りが経過しているが,アーケードとの操作感覚の違い,機体パーツや武器の支給と課金,そして実際にプレイヤーがどのように遊んでいるか,といったところを見ていこう。
■パッドとマウス,専用コントローラーの使用感
PS4版では,DUALSHOCK 4をはじめとするゲームパッドを使用するプレイヤーが多数派だと思う。筆者はアーケード版の経験者だが,ゲームパッドによる操作感覚も思いのほか悪くなく,気軽にプレイするならこれで十分だ。
しかし,アーケード版をやり込んだプレイヤーやガチゲーマーは,「射撃武器のエイムがやりづらい」と感じるかもしれない。そんなときは,マウス(3ボタン以上)の用意をおすすめする。
マウスの使用方法は簡単だ。PS4本体のUSB端子に接続するだけで,市販のPC用マウスでも問題なく認識される。
念のために説明しておくと,BBには「ロック」というシステムがあり,敵をロックした状態で射撃武器を撃つと,視点が追従して動くので,弾が当たりやすい。ロックの有無にかかわらず,敵を狙って撃つことに変わりはないが,命中率にはかなりの差が生まれる。
初心者のなかには敵をロックしないで撃っていて,「マウス勢には勝てない……」と思い込んでいるプレイヤーがいるかもしれない。ロックはBBの基本なので,必ず覚えておこう。
もっとこだわりたいアーケードゲーマーには,HORI製の「『BORDER BREAK』専用コントローラー for PlayStation 4」がある。筆者も購入したが,専用コントローラーとマウスの組み合わせであれば,ほとんどゲーセンと同じ感覚で遊べる。
ただし,残念なことに専用コントローラーは完全受注生産品であり,次回生産は未定となっている(関連記事)。
■どの程度の武装で満足するのか。それはプレイヤー次第
PS4版における最大のポイントは,機体パーツや武器を「フレームロット」と呼ばれるシステムによって入手するところだ。「コアシード」というアイテムを購入すれば,いつでもフレームロットを回せる。
しかし,フレームロットでは何が出るのか分からない。つまり,アーケードゲーマーが慣れ親しんだ装備を手に入れるには,いくらの課金が必要になるのかは運次第となる。
なお,コアシードを購入しなくても,機体パーツや武器を手に入れる方法がある。例えばストーリーモードをプレイすると,その結果に応じてコアシードがもらえる。また,ひたすらプレイヤーレベルを上げれば,機体パーツや武器が支給される。
さらに,プレイ中に条件を満たすと勲章を得られるが,これでもフレームロット用のチケットが手に入る。こうした意味では,無課金であっても必要最低限の機体パーツや武器は手に入ると言っていい。
実際,プレイヤーレベルが9に達すると,どの兵装もそれなりに戦える装備が揃う印象だ。機体パーツでは重量級の「ヘビーガードI」が支給されるため,これを利用して機体の装甲を厚くするといったカスタマイズが可能になる。また,初期装備では攻撃力に難のある強襲兵装と遊撃兵装にも,性能の優れた武器が追加されるので十分に渡り合えるだろう。
■強力な装備とプレイヤースキルの関係は?
BBにおいては,装備よりプレイヤースキルのほうが比重が大きい。優れた性能の装備は確かに強いが,それ以上にプレイヤースキルが重要だ。そのため,単純に「Pay to Win」とは言えないだろう。筆者の経験上,このようなタイプのゲームはかなり珍しいと思う。
スキルの差は1対1の戦闘だけでなく,多対多の戦闘の位置取りや勝利につながる戦略的な行動などにも表れる。とくに顕著なのは,状況判断と戦略理解度の差だ。プラントを占拠したり,敵のベースを攻撃したりすることは,戦闘が強くなくてもある程度なら可能だ。あとは状況に応じて適切な行動を取ることで,必然的に勝率は上がってくる。
結論から言えば,装備が弱くても十分に戦える。とはいえ,プレイヤーの能力が同じなら,装備が充実しているのに越したことはない。また,PS4版からBBを始めた初心者ならば,アーケードでやり込んだプレイヤーに比べてスキルが足らないのは当たり前だ。「課金で装備だけでも充実させよう」と考えても,それは間違いではない。
■初心者とアーケード勢の住み分けはできているのか
プレイヤーの立場から気になるのは,初心者とアーケード勢の間にあるスキル格差である。例えば,対戦格闘ゲームでは初心者と上級者が戦うと一方的な結果になるだろう。いわゆる“初心者狩り”と言われる状況だ。
しかし,BBの戦いは1対1ではなく,10対10のチーム戦である。対戦格闘ゲームとは異なり,チームに初心者が入っていても,残りのメンバーがしっかりサポートすれば簡単に負けることはない。
また,PS4版のカジュアルマッチではプレイヤーのスキルによって,マッチングを調整していると感じる。これは推測になるが,初心者と上級者を混ぜつつ,両チームの戦力が拮抗するように操作されているのではないだろうか。
筆者はいわゆるアーケード勢であり,ローンチ直後は勝ちまくれた。だが,そのうちマッチングされるメンバーが変わり,簡単には勝てなくなった。アーケードのガチ勢でも,勝率が6割を超えることは難しいと思われる。
アーケード勢のスキルが高いと言っても,敵チームに同レベルのプレイヤーがいればアドバンテージにはならない。スキルが高いプレイヤーであるほど,ほかのメンバーを引っ張る必要がある。それが,BBのというゲームなのだ。
最初のうち,初心者はなかなか敵を倒せず,苦労するだろう。しかし,ほとんどの場合,敵チームにも初心者がいるはずだ。トータルの勝率を見れば,それほど負けが込むことにはならないと思う。少しずつ実戦経験を積み,チームの勝利に貢献できるスキルを身につければいい。
■カジュアルマッチのプレイ状況
8月2日から13日まで,「第3採掘島 〜臨海決戦〜」がカジュアルマッチの舞台だった。また,10日から「スカービ渓谷 〜砂上の激突〜」が開放となり,2種類のマップを選べるようになっていた。この間,プレイヤーがどのようなスタイルで遊んでいたか,簡単に紹介していこう。
「第3採掘島 〜臨海決戦〜」にはプラントが5つあり,比較的大きなマップと言える。細長いマップの中央付近で戦闘が発生するため,膠着しやすい傾向があり,アーケード版のプレイヤーは「基本的にコア攻撃は通らない」という認識だろう。
実際,アーケード勢が両チームに多い場合,コアへの攻撃はかなり難しい(アーケード版の全マップ中,トップクラスの難度)。無理に仕掛けても返り討ちに遭い,その分,逆にコアゲージが削られることになる。
しかし,PS4版では意外にもコア攻撃が成功していた印象だ。とくにアーケード勢が少なかったり,マッチング人数が少なかったりする場合は成功率が高かったと思う。
第3採掘島では重火力兵装の存在が戦いを左右する。なかでも強力な武器「プラズマカノン」が猛威を振るっていた。プラズマカノンは☆1だが,4発連射できるのが強み。威力はそれほどでもないが,爆風を当てて敵のひるみを取りやすく,近〜中距離では有効な武器となる。
なお,アーケード版では装甲の固い機体パーツが多くなるにつれて,プラズマカノンはあまり使われなくなった。しかし,PS4版ではまだ重量級の機体パーツが少なく,チップによる装甲アップもわずかなため,復権を果たしたようだ。
プラズマカノンに対しては,ジャンプで爆風をかわしつつ反撃するか,4発撃った後の長いリロードの隙を狙いたい。これを知らないと,一方的にやられてしまう可能性が高い。
全体的には,重火力兵装の撃ち合いの結果が少しずつコアゲージに反映され,そのまま一方が押切る展開が多かったと思う。また,コアへの攻撃が通りにくいだけに,いったん成功すれば逆転が起きにくい。「コアへの攻撃が通るかどうか」という攻防が見どころになっていた。
もう一方の「スカービ渓谷 〜砂上の激突〜」は,アーケード版の全マップ中,最も狭い部類に入る。10人対10人ではなく,最大8人対8人で戦うのが特徴だ。
敵のベースまでの距離が近く,コアへの攻撃はかなり通りやすい。しかし,中央のプラントを敵に占拠されて守りを固められると,意外にコアへの攻撃が難しくなる。
また,気づきにくいが,マップの中央に大きな岩の橋がある。そのため,真上から降ってくる重火力兵装の榴弾砲が中央付近では当たらない。マップが狭いぶん,展開も速くなるので,強襲兵装の重要度が高いと言える。
2種類のマップを比較すると,「第3採掘島 〜臨海決戦〜」ではプレイヤー同士の戦闘,「スカービ渓谷 〜砂上の激突〜」ではコアへの攻撃が戦いのテーマになっていたと思う。BBにおける戦いの側面が,それぞれのマップに表れていた。
10日間の戦いを終えて
カジュアルマッチをプレイしていて,「まだ初心者にはプラントの重要性が理解されていない」と感じた。敵がプラントを踏んでいても,遠くから爆発物を投げ込むだけという状況がよく見られた。
プラントの占拠はとても重要なポイントだ。いったん奪われてしまったら,そこから敵が再出撃するので,どんどん押し込まれてしまう。それが自陣のベースに近いプラントならなおさら。占拠されたら,そのまま勝負が決まることもありうる。
そこで,敵にプラントを奪われそうになったら,自分もプラントに乗って戦い,敵を倒すことを至上命題と心がけよう。BBは前に出て戦うことが大事なゲームであり,ぜひ覚えておいてほしいと思った次第だ。
今回の原稿執筆時点では,機体パーツや武器は一部しか支給されておらず,マップの種類も少ない。アーケード版には多数の機体パーツや武器,マップが実装されているが,それらは今後のアップデートに備えて,出番を待っている状況だろう。
アーケード版をやり込んだプレイヤーとしては,BBの奥の深さを痛いほど感じている。だらだら遊んでも楽しいゲームだが,やり込めばそれに応えてくれるゲームでもある。いまだに底が見えないほどで,やればやるほど面白い。ぜひ4Gamer読者にも,どっぷりとBBの世界にハマってほしい。
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