インタビュー
「アルゴナビス」3万字超インタビュー。ボーカリスト&音楽統括・北岡Pにニューシングル&メディア展開の話を聞いた
ブシロードは本日(2021年7月14日),「ARGONAVIS from BanG Dream!」に登場し,スマートフォン向けゲーム「アルゴナビス from BanG Dream! AAside」(iOS / Android)で活躍する5バンドのシングルを同時発売した。「ARGONAVIS from BanG Dream!」公式サイト
今回4Gamerは,ArgonavisのVo.伊藤昌弘さん(七星 蓮役),GYROAXIAのVo.小笠原 仁さん(旭 那由多役),Fantôme IrisのVo.ランズベリー・アーサーさん(フェリクス・ルイ=クロード・モンドール役)と,ARGONAVISプロジェクトの音楽統括プロデューサーである北岡那之氏に話を聞く機会を得た。
伊藤昌弘さん <ArgonavisのVo.七星 蓮役> |
小笠原 仁さん <GYROAXIAのVo.旭 那由多役> |
ランズベリー・アーサーさん <Fantôme IrisのVo.フェリクス・ルイ=クロード・モンドール(ステージネームはFELIX)役> |
ARGONAVISプロジェクトの音楽統括プロデューサー北岡那之氏 (写真は1月インタビュー時のもの) |
およそ3万字超えとなった今回のインタビューでは,制作陣の深い想いが込められた楽曲のお話や,春に行われたリアルライブの秘蔵エピソードなどをたっぷりと伺ったので,最後までぜひ読んでもらいたい。
⭐目次⭐
✨出会いと第一印象
✨Fantôme Irisライブ「-C'est la vie!-」振り返り
✨Argonavis×GYROAXIAライブ「JUNCTION A-G」振り返り
✨7月発売のシングルについて
Argonavis「可能性/Stand by me!!」
GYROAXIA「WITHOUT ME/BREAK IT DOWN」
Fantôme Iris「ザクロ/狂喜のメロディ」
風神RIZING!「ランガンラン/夢見るBoy守るため」
εpsilonΦ「Cynicaltic Fakestar/Sake it L⓪VE!」
✨ボーカリストたちのこだわりについて
✨プロジェクトとしてやってみたいこと
✨今後の展開〜まとめ
ボーカリストたちの出会い。
今とはだいぶ印象が違う?
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。このメンバーで同時にお話を伺うのは4Gamerでははじめてとなりますので,みなさんのARGONAVISプロジェクトでの出会いから教えていただけますか。
音楽プロデューサー北岡那之氏(以下,北岡氏):
プロジェクトへの参加は伊藤(昌弘)さんが一番早く,2018年の7月くらいでした。小笠原(仁)さんがオーディションを受けたのがその年の秋くらいで,ランズベリー(・アーサー)さんを含むゲームアプリから登場したバンド(Fantôme Iris,風神RIZING!,εpsilonΦ)のオーディションが,その少しだけあとの冬ごろになります。
伊藤昌弘さん(以下,伊藤さん):
仁くんは最初のころのArgonavisのライブを観に来てくれていました。DIESELのカバンを両手持ちしていて,めちゃめちゃ爽やかで礼儀正しい好青年だなあと思いましたね。今とは全然印象が違う。
小笠原 仁さん(以下,小笠原さん):
「礼儀正しい好青年」のあとに今は印象違うって言ったら悪口だろ!(笑)
伊藤さん:
そういうわけではなくて(笑)。今は物事に対しての熱い気持ちも知っているし,おしゃべりモンスターなところもそうだし,どんどん印象が塗り替えられていくので,向上心を持ち続けてる人だなと思ってます。
4Gamer:
アーサーさんの印象はいかがでしたか。
伊藤さん:
ランさんとはじめて会ったときは「こんな“本物”の人いるんだ!?」って思いました。むちゃくちゃ格好いいのはもちろんですし,この人が衣装を着てバンドをやったらすごいことになるなと。それでいてお話ししてみたらすごく柔らかい雰囲気だし,僕にまで腰を低く接してくださるんです。
優しいだけでなく,ランさんはお芝居にも音楽に対しても情熱があって,そういうものを持っている方が一緒のプロジェクトにいてくださるのは心強いなと思いましたし,今でもすごく刺激をもらっています。
ランズベリー・アーサーさん(以下,アーサーさん):
うれしいなあ。伊藤さんとの“はじめまして”は雑誌のインタビューだったよね。
小笠原さん:
僕との対談より前だったんだよね。
伊藤さん:
そうなんですよ。ランさんとはまだそんなにお仕事でご一緒してないのに,いきなり今までの自分のバックボーンを話すコンセプトのインタビューでした。
アーサーさん:
まだお互いに言葉を交わす前に,インタビューをとおしてバックボーンや経歴,どういうふうに音楽と接してきたのかとか,人となりを知ったんだよね。私はそこで,(伊藤さんは)やっぱりコンテンツにおけるセンターの貫禄を感じました。主人公気質というか,センターはこの人だと感じたから,なるべくしてボーカルになったんだなと。
伊藤さん:
僕は,ランさんが音楽やバンド活動を経て今に至ることに,自分に近いものを感じて親近感がわきました。
アーサーさん:
うん。そのあと私が初主演したTVアニメ(2021年1月アニメ「プレイタの傷」)の現場に,伊藤さんがはじめてのアフレコで来たんだよね。あの共演もうれしかった。
伊藤さん:
あのときの僕は,演技の「え」の字も知らなかったんですよ! すごく緊張しましたし,めちゃくちゃ怖かったです。本当に一言くらいだったんですがアドリブもあって。「やられたー!」みたいなセリフだったんですが,もう僕の心がやられていて(笑)。
アーサーさん:
和やかな現場だったけど,伊藤さんの硬さはすごかった(笑)。でもはじめての現場はそういうものだよね。貴重な瞬間を見られて,こちらも親近感がわきました。
伊藤さん:
ありがとうございます。本当怖かったー!
小笠原さん:
そう考えると,Argonavis以外の4バンドのキャストのなかで,一番(伊藤さんを)長く見てきたのはランさんかもしれないですね。
アーサーさん:
そうかも。なかなかARGONAVISプロジェクトのライブでは一緒になれなくて,「ARGONAVIS AAside ライブ・ロワイヤル・フェス2020」(2020年10月の5バンド合同ライブ。以下,LRF2020)でやっと共演できたんだよね。
4Gamer:
念願の共演だったんですね。小笠原さんとアーサーさんの出会いはどんな感じでしたか。
アーサーさん:
はじめて会ったのは発表会(2019年11月のプロジェクト発表会)のときでしたね。
小笠原さん:
僕はもともとランさんのことは一方的に知っていたので,ついに! という思いでした(笑)。やっぱり格好いいなあ……って。
伊藤さん:
間違いないよね!
アーサーさん:
いやいや(笑)。私は逆にジャイロの画像を見たときに,こんな荒々しそうなキャラクターをこんな儚げな子が演じるんだと思いました。
小笠原さん:
儚げな子だと思われてたんですか僕!?
アーサーさん:
まだ仁くんも緊張していたから……。あのときは記者会見みたいな大きな発表会で,普通のイベントとは違う空気感だったんだよね。
小笠原さん:
硬かったですね,あのときの僕は……。
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4Gamer:
北岡さんは,このメンバーの当初の印象はいかがでしたか。
北岡氏:
Argonavisの0-1stライブ(2018年7月)に向けて,CD用に森嶋さん(桔梗凛生役・森嶋秀太さん)と日向さん(五稜結人役・日向大輔さん)と前田さん(的場航海役・前田誠二さん)がサインをしていた席で,伊藤さんとはじめてあいさつしました。
4Gamer:
以前のインタビューで伊藤さんがおっしゃっていた,メンバーとの初対面の席ですね。
伊藤さん:
そうですね。
北岡氏:
伊藤さんは今の半分くらいの(身体の)細さで(笑)。0-2ndライブの衣装フィッティングのときも,パンツがもう細くて,女性用のSみたいな感じでした。だけど歌は力強いんですよね。
アーサーさん:
今じゃおしゃべりモンスターと筋トレモンスター(笑)。
小笠原さん:
モンスターコンテンツになっちまう!
北岡氏:
最初はどちらかというとかわいらしい部分が多かったんですけど,今は男らしさのほうが強くなってきてますね。筋肉だけじゃなくてメンタル面も歌も,力強さがどんどん増してる感じがします。
小笠原さん:
この座組だとずばぬけて“男”だよね。もともとの気質的にも。
伊藤さん:
その気質に外見が近づいてきたんだと思う。
アーサーさん:
外見というか体格?(笑)
北岡氏:
目つきもだいぶ変わってきたなと思います。
伊藤さん:
本当ですか!?
北岡氏:
仕留めてやる! みたいな,鬼気迫るものを感じるときがあります。2ndライブ(2019年12月)でGYROAXIAが演奏したあと,Argonavisのターンになって「ゴールライン」を歌ってるときの伊藤さんの顔がすごく攻撃的でした。あの瞬間,ジャイロとの“ライバル関係”が生まれたな,と感じましたね。
4Gamer:
小笠原さんに対してはいかがでしたか。以前の北岡さんのインタビューでは,「声が大きい」という発言が印象的でしたが……。
北岡氏:
最初に話したとき,好きなことになるとしゃべりが止まらなくなって,声が大きい人だなあと思ったんですよね。レコーディングとかでも,あの分厚い壁を通しても声が聞こえてくるんですよ(笑)。
小笠原さん:
それが印象に残っているのはプラスなのかな,どうなんだろう(笑)。
伊藤さん:
いいことだよ!
北岡氏:
音楽のことでも哲学的と言うか,深い話をしていて,この人は本当に凝り性だなと。突き詰めたらどこまでも行ける人だろうと思ったので,小笠原さんの印象は今とあまり変わっていないですね。
小笠原さん:
たしかに,最初にパーソナルな部分を出せたのはあの面談のおかげだったと思います。
4Gamer:
アーサーさんの印象はどうでしたか?
北岡氏:
名前を聞いたときから,どんな人がくるんだろう!? と思っていました。そうしたら,本当に名前負けしていないオーラのある方がいらっしゃって……。
伊藤さん:
本当そうですよね!?
北岡氏:
最初はプリプロ(レコーディング前に行われる準備)だったんですよ。スタジオに来ていただいて,Argonavisでカバーしていたような曲を何曲か歌っていただきました。
アーサーさん:
ヴィジュアル系じゃない楽曲もいろいろあって……それこそスキマスイッチさんとか,和田光司さんの「Butter-Fly」とか。
伊藤さん・小笠原さん:
ええーっ!
アーサーさん:
「Butter-Fly」のキーを上げたり下げたりして,ヴィジュアル系っぽく歌ってくださいと言われました(笑)。高いキーと低いキー,どっちの方向でいくかみたいな。
北岡氏:
その日にほかのボーカルの方もまとめてプリプロをしていたのですが,一番いろいろと試してもらったのがアーサーさんでした。ヴィジュアル系と聞いて連想する歌い方があると思うんですけど,どれもハマるんですよ。
4Gamer:
以前,北岡さんが「歌い方を決めきれなかった」とおっしゃっていた話ですね。
北岡氏:
そうです,何でもできるがゆえに結論が出なくて。そのあと軽く好きなバンドの話をしたんですが,洋楽とかそっちの路線もいつか聴いてみたいなと思いました。ミクスチャーロック路線とか,ファントムでもそういう曲を作りたいなと,ずっと悩んでます(笑)。
アーサーさん:
やりたいですね! 世界観からはずれない範囲で。
秘蔵エピソード満載!
ギリギリのスケジュールで作られた「眷属の夜会」
4Gamer:
次に,ここ最近で行われたリアルライブについてお聞きしていこうと思います。まずはFantôme Irisの「Fantôme Iris 1st LIVE -C'est la vie!-」(以下,「眷属の夜会」。2021年5月5日,Zepp Haneda)です。こちらは残念ながらいったん無観客配信になりました。あらためて振り返ってみていかがですか。
アーサーさん:
まず言えるのは,ネガティブな意味ではなく本当に大変だった,ということです。スケジュールもそうなんですが,そもそもFantôme Irisは,ArgonavisやGYROAXIAとは違い,リアルバンドとして定期練習やライブなどでの継続した活動はしていないんですよね。でもコンテンツのなかの彼らはずっと活動してきているわけだから,実際には定期活動がなくても,その“長期間バンドをやってきた30代バンドの重み”を現実世界では一発目のライブで見せなきゃいけない。それはどうしたら表現できるんだろうってすごく悩みました。
普段から彼らはこういうふうにライブをしているんだろうな,と少しでもみんなが想像できるようなアクセントを散りばめたいなと思い,FELIXとしての立ち居振る舞いやメンバーとの合わせ方を考えましたね。本番までにほとんど会えなかったんですが,バンドメンバーとも相談しあったり,北岡さんとも話しあったりして,みんなで作っていきました。大変だけど楽しかったですね。
4Gamer:
そのなかでも印象に残るこだわりはありますか。
アーサーさん:
無観客になったので,有観客でやろうと思っていたことは一回全部変えきゃいけなかったんです。とくにラストは,ただライブが終わりましたと幕が降りて終了するのはちょっとダサいというか,ファントムじゃないなと。無観客の配信で普通に立ち去っていくだけなのも寂しいし,どうしてもやりたいなと考えたのは,チケットを買ってくださった方に配布されたのと同じ百合の花を,FELIXがカメラの前に置いて,ワンアクションしてから背中を見せて画面の奥に去っていく……っていう演出でした。北岡さんに相談したらすぐに「やりましょう!」とおっしゃっていただいて,ありがたかったです。
北岡氏:
すごく明確なアイデアと理由を伝えられたので,やらない理由がなかったです。さすがだなと。
アーサーさん:
ファントムは熱量で伝えると言うよりは,見せ方が大事なバンドだと思うんです。ArgonavisやGYROAXIAは,彼らの青さや熱量がすごくすてきだし,絶対にそういうところを見せていくべきだけど,ファントムのライブは劇や舞台,ショーを観ている感じなんですよね。ファントムのライブを観て熱量を受け取って帰るのもうれしいけど,それよりは頭のなかでいろいろなシーンを思い返して楽しんでほしいなと。ショーが終わった後の余韻のようなものを残したかったんです。
あとは「ザクロ」で使ったガイコツマイクも,急遽のアイデアでした。当初は普通のスタンドマイクだったんですけど,この激しい曲の続くブロックはガイコツマイクを使いたいって言ってみたら,北岡さんが「ありました! 使えます!」と。そうしたらだんだん欲が出てきて,「これってフレディ・マーキュリーみたいに棒で持ち歩いて動けるスタイルにしていただけますか?」,さらには「これって杖みたいに使えますか?」と,どんどんやりたいことがわいてきて,北岡さんに相談するといつも「何とかします!」と言ってくださるので,つい甘えてしまったところもたくさんありました。そういうアイテムや立ち回りにはこだわりましたね。
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4Gamer:
まさにショーのようなライブでしたね。選曲についてはいかがですか。
北岡氏:
今回,ほぼほぼ曲が初披露だったんですよね。もともと2月に「ブシロック(BUSHIROAD ROCK FESTIVAL 2021)」で予定していたものも,していなかったものもあるんですが,このライブ自体が決まったのが2月の頭くらいで。ワンマンだと曲数は最低でも10曲はやらないといけないけど,ファントムだと持ち曲が足りないなと。そこで「ROSIER」とか「ヴァンパイア」とか,アプリに入っていないけど,アンケートで希望が来ていたもの,世界観に合ったアレンジをしたらいいものができそうな楽曲を選びました。実は,アレンジはサポートメンバーのみなさんにしていただいたんですよ。
小笠原さん:
ええっ!
北岡氏:
(LRF2020で)一度Fantôme Irisとして演奏してくださった方たちが作ったからこそ,すごいスピード感でいいものがどんどんでき上がりました。あのセトリになるまでに,3〜4回くらい変わっているんです。最初に出した案をやっていくうちに,ちょっとこの曲は今回じゃないなとか,もっと時間が必要だなとかもあって,完全に固まったのが本番の2週間くらい前でした。
アーサーさん:
「浸食 -lose contorol-」が入ったのが4月の半ばくらいでしたね。
北岡氏:
「浸食 -lose contorol-」のところに入る予定だった曲の準備に時間が足りなくて。今はまだ厳しいって話をしつつ,じゃあ代わりにやれる曲を……と話していたんですが,L'Arc〜en〜Cielってキーワードだけはあったんです。
4Gamer:
意外な選曲でしたが,すごくしっくりきていたと思います。
アーサーさん:
メンバーと話していて,初期の楽曲はとくに刺さる人が多いんじゃないかということで,「Lies and Truth」とか「Flower」とか「虹」などが出ているなかで,「浸食 -lose contorol-」は面白いんじゃないかってドラムのKENZOが言ってくれて。そのなかで唯一歌ったことがない曲だったんですけど,まあ頑張ればいけるかな……と。
北岡氏:
サポートギターのYOUSAYさんが昔,個人的にカバーをしたことがあってアレンジしたシーケンスを持っていると。でも,ハモは必要だったので,シーケンスに合わせてハモを録ったという。
アーサーさん:
シーケンスだけで,楽器の音もリズムもちゃんと入ってない音源を聴いて雰囲気で録りました。リズムは身体のなかで「このタイミングですよね」って感じで……。
伊藤さん:
ははは!
小笠原さん:
やばい!
北岡氏:
あの曲はすごい変拍子なので,リズムがより大変なんですよね。
アーサーさん:
ちょうどそのとき緊急事態宣言が発令中で,カラオケに練習に行きたくても,都内は全店が営業停止してたんです。インスト音源も持ってないし,どこにも行けなくて家で口ずさむくらいで全力で声を出した練習ができないまま,本番当日の公演直前に,メンバーたちの間で通称“昼公演”と呼ばれていた通しリハに挑みました(笑)。
みんなで全曲フルを全力でとおしたんですけど,そのときも「浸食 -lose contorol-」はAメロが合わなくて,「こりゃ終わったな……,歌えねえや」って思いました。だからAメロだけのループを演奏してもらって,それをずっと聴きながら呪文のように「I lose control〜」ってAメロの歌詞を唱えていたら,本番はバッチリ合いました。そこまで一度も納得いく感じに合わなかったので,ずっと綱渡りでしたね……。
北岡氏:
リハ後もずーっと聞いていたんですよね。すごい集中力でした。
4Gamer:
すごいお話ですね……。先ほど,見せ方が重要とおっしゃっていましたが,衣装も素晴らしかったです。
北岡氏:
LRF2020のときはキャラクター衣装そのものだったんですけど,あれはライブを長時間やるには向いてなかったんですよ。仮面も距離感が掴みにくくて。そんななかメンバーからふと「マスクは?」とアイデアがあって,たしかに時勢的にもいいなとスタイリストさんにご相談したら,それぞれメンバーにあったものを用意してくれました。
アーサーさん:
表情がちゃんと分かるから,エモい感じになりましたよね。
北岡氏:
ただ,いざやってみたらマスクのほうが呼吸は大変だったらしいんですけど(笑)。実際のライブでも,舞台袖に来たらぜえはあ言っている酸欠状態で……。幕間が2回あって,一回はSEだけだったのでその間にみなさんに水休憩とかしていただいたんですが,それ以降はほぼノンストップだったんですよね。
物理的にライブを成功させるためにどう演出を作るかというところで,アーサーさんからもアイデアをたくさん伺ってでき上がったライブでした。僕個人は,絶対に女優帽をかぶらせたかったんですよ。
4Gamer:
あれは北岡さんのアイデアだったんですか!
北岡氏:
はい。ただずっとかぶっているのはつらいので「histoire」と「un:Mizeria」のときだけにして,外すタイミングを作らなければと。その間に,楽器隊のみなさんにセッションをしていただきました。
アーサーさん:
あのセッションも,もともとどういう曲を演奏するか決まってなかったんですよ。でも次が「ザクロ」だったので,そこにつながるようみんな自由にやろうと。尺感も正確に決まってなくて,本番直前のリハのときにパッと合わせました。順番にみんなの見せ場のソロを作って,最後にドラムがかきまわして,それっぽい感じで息を合わせればできるっしょ! と。ドラムがどんどん早くなっていくからそれで終わりを感じてね,多少前後しても察しあおうね,FELIXも何となく良きタイミングで出るね! みたいな。メンバー全員がアンテナをビンビンに張って戦ってましたね。
4Gamer:
つまりあのインストはその場で作られたものだったんですか……?
北岡氏:
完全にその場のノリです(笑)。
アーサーさん:
だからもう二度と同じものは生まれないと思います。「ザクロ」につながるような演奏をしてくれてるので,雰囲気は似てても毎回違うものになるし,尺も変わると思います。
伊藤さん:
すごすぎ!
小笠原さん:
わけが分からん……。
北岡氏:
本番になってはじめて見たステージングもあって。そんな動きリハでもしてなかったじゃん! みたいなのもありましたね。
アーサーさん:
北岡さんも昼公演という名のリハが終わったとあとに,「あそこはこう見せたいですね」ってさらなるアイデアを入れてきて。全員が情報で頭パンパンになってるのに,「あの場面は背中合わせがいいですね!」とか欲が出てきたんですよね(笑)。「エモい感じにしたいので,目とかも合わせますか」とか。それでみんなも「分かりました,忘れないように気をつけます!」って,不安だけどとりあえず答えて(笑)。
北岡氏:
FELIXとLIGHT(冬真氏)の「Into the Flame」ですね。
アーサーさん:
メンバーとはずっと演奏中,言葉には出せないけど「ココはそうだよね」「いくよ」とか,「そろそろだぞ……!」と目配せして通じあってました。あと,演出だとHARU(Sato氏)のマイクスタンド蹴りもありましたね。「ROSIER」は絶対にマイクスタンド投げを,と北岡さんに言ったところ「やりましょう!」と。
4Gamer:
原曲(LUNA SEA)のライブでは,ベーシストのマイク投げが定番なんですよね。
北岡氏:
なので確認したら,Zeppではうしろに照明機材があるので投げられないと。
アーサーさん:
じゃあキックで行きましょうとなったんですが,Satoさんもさすがにマイクスタンドをキックしたことはないし,どこに飛んでいくか分からないので練習しましょうと,蹴る角度とかも確認して。
北岡氏:
無観客なのでカメラで抜かれたところがすべてだから,一個のミスが目立っちゃうんですよね。ヒヤヒヤしながらやる部分もあったんですけど,リハが終わったときに,これはいける,すごいものを見せられるぞと思いました。セトリは13曲なので,尺は1時間くらいなんです。でも2時間分くらいの濃さになったし,作っている側も想像しえないようなパフォーマンスができ上がった気がします。
アーサーさん:
本当にいろいろなこだわりを詰め込ませていただきました。でも,このスケジュールではもう怖いからやりたくないしやれないですが……。本番一週間くらい前には,そろそろ海外へ逃げようかな,とか思ってました(笑)。
一同:
(笑)。
4Gamer:
本当に,すごい努力と覚悟でできたライブだったんですね。伊藤さんと小笠原さんはご覧になっていかがでしたか。
伊藤さん:
僕はLRF2020ぶりにファントムのライブを観たら,何だかめちゃくちゃ熱さを感じたんですよ,ランさんというかファントムから。それが今お話を聞いて,たとえばFELIXとしてステージに立つためのアイテムや演出……髪の毛とか長期的な準備もあるけど,キツかったとおっしゃっていた2週間の,その期間でしか出せないような勢い,ある種の火事場の馬鹿力,しっかり用意されたから出てくるものとは違う魅力があったんだなって思いました。
アーサーさん:
うれしい。ArgonavisやGYROAXIAは声も演奏も同じ人がやっているから,5人でチームというパワー感があるけど,ファントムはそれが分かれている以上,チームはチームだけど,背負うものはどうしても共通させてもらってるFELIXの比率が高くなるところはあるんです。でも今回のリハのときにお願いしたのが,Fantôme Irisは5人で一つのバンドなので,“ランズベリー・アーサーだから,キャストだからカメラでボーカルを多く抜かなきゃいけない”はやめてほしいってことでした。バンドのボーカルが多く映るのは通常のアーティストでも普通だけど,その比率が私だからって余計な理由とかでおかしくなって,結果Fantôme Iris全員にスポットを当ててもらえないなら一つのバンドにはなれないと。
LRフェスの戦いのなかで,作中のメンバーはこれで負けたらバンドは終わりかもしれないって気持ちで臨んでいるから,少なくとも私だけはフロントマンとしてキャラと同じ気持ちや熱量を持ってなきゃいけないので,そこだけは外せなかったですね。プロンプター(演者用に歌詞を映すモニター)も一切つけないでほしいと話しました。FELIXが歌詞を書いている以上,仮に歌い間違うことや歌詞が飛ぶことがあったとしても,彼が歌詞を覚えていないってことは絶対にないので。その緊張感というか,あとがない熱さがあったからこそ出せたステージだった気もします。Fantôme Irisって物語のなかでも常に逆境なんですけど,そういうところも含めて自分にもプレッシャーをかけたことが,いい感じに結びついたのかもしれないですね。
4Gamer:
8月の有観客にも期待が高まります。小笠原さんはいかがでしたか?
小笠原さん:
僕も配信でFantôme Irisのライブを観ながらTwitterで実況をしていたんですけど,最初は「今月末は僕らもライブがあるから,今日のファントムのライブでいろいろ学びたいな」というモチベーションだったんです。でも,観終わって「やられた! マジかFantôme Iris……!」って,いても立ってもいられなくなってカラオケに行って1人で練習をしました。我々GYROAXIAは初お披露目のときから,基本的にキャラクターがバンド演奏していて,僕も“ショーとして見せる”って強い意識があったんですけど,「嘘だろ!? 最終形を見せられちゃったよ!」と。
「眷属の夜会」は残念ながら一度無観客になってしまったけど,無観客だからこその無駄がなくて,でもお客さんが何かしらを受け取れる演奏になっていて,もう何もかもが本当に……。これが胸にあったままのテンションでGYROAXIAとしてライブをしたら,どうしても今回のライブをめちゃくちゃリスペクトしたものになってしまうぞって思ったんです。
4Gamer:
その想いは,焦りや悔しさといった感情なのでしょうか。
小笠原さん:
焦りです! 悔しい,焦り,怒り(笑)。何もかもの感情でしたね。今ランさんもおっしゃってましたけど,準備は本当に大変だったと思うんですよ。それでも成立するのって,サポートの4人の素晴らしい力量と,それに負けないランさんのプロ意識じゃないですか。それが完璧に噛み合っていたから,あれができてしまうわけで。
じゃあ僕らがファントムより優ることって何だと言ったら,熱量は同じだけ持っているとしても,バンドとしてずっと活動してるところだけなんですよね。そのアドバンテージをフル活用して,今回のファントムと同じくらいのものが俺たちにできるのかな? って本気で考えたけど,無理だ! と。確実に「まずい」っていう焦りが自分のなかにぶわっと目覚めて,その焦燥感が僕にとってはJUNCTION A-Gに向けたすごく強いモチベーションと,原動力になりましたね。おいおい勘弁してくれよと思ったと同時に,「観といて良かった……!」と。
アーサーさん:
うれしいね,そういうふうに影響を与えられたって聞くと。
小笠原さん:
影響しかなかったですよ! ……というのが,JUNCTION A-Gの話を始める入り口です(笑)。
ArgonavisとGYROAXIA,全員が“戦友”だった
「JUNCTION A-G」
4Gamer:
ではあらためまして,ArgonavisとGYROAXIAが出演したプロジェクト初の野外ライブ,「ARGONAVIS LIVE 2021 JUNCTION A-G」(以下,JUNCTION A-G)についてお聞きしていきたいと思います。
小笠原さん:
あらためてArgonavisと一緒にGYROAXIAとして初の野外をどうやろうかと考えて,今回一番チャレンジしようとしていたのは,キャストとキャラクター,どれだけ双方の存在を50/50に保ちながらお客さんの前に立てるかってことでした。ArgonavisもGYROAXIAのメンバーも,キャストとしてライブを楽しみつつ,それが結果的にキャラクターのライブになっていけたらいいよね,というモチベーションに自然となっていたんですよね。そこへあのファントムのライブ……僕の想いとしては,そのライブがあったからこそさらなるモチベにつながったところもありました。
伊藤さん:
僕にとって今回の一番大きい収穫は,個人としてもArgonavisとしても“チョイス”を持てるようになったことです。今まで自分はキャラクターとして生きてきたことがなかったので,それを背負うと,歌も行動も制限されるような気持ちがあったんですよ。でもそれがだんだん,制限されることじゃないんだなって変わってきました。プロジェクトのなかのリアルバンドとして一番長く活動させていただいて,音楽的にやれることが増えてきたし,いい意味での遊びができてきて。今までは「何とか完成させなきゃ」っていう青さがあったんですけど……何を見せたいか,やりたいかをみんなで話し合ってできるようになりました。
自分はずっと音楽をやってきたので,キャラクターはリスペクトしつつ,こういうのが格好いいなっていう音楽を届けたい気持ちが大きいんです。それができるようになったと今回のライブで感じられてうれしかったです。
野外ステージって,アニメで蓮くんが最初に観たライブの光景じゃないですか。そこにも特別な気持ちがあって。自分としてもまた一歩,役者として大事なピースを見つけられる気がしていました。想像するのと実際にその場に立つのはぜんぜん違う場合もあるので,それを確かめにいったところもありますね。ターニングポイント的な意味として。やっぱり野外のやり方もあるんだなって学べたし。
小笠原さん:
本当にそうだね。あのライブでのArgonavisとGYROAXIAは戦友だった。全員が死にかけてたし(笑)。
4Gamer:
ライブ中,印象的だったシーンはありますか。
小笠原さん:
ステージがあれだけ開放的で,目の前にお客さんがいて……ボーカル目線ですけど,歌ってる間は,どこを見ても自分のなかに何かしらの“エモ”が生まれるわけですよ。今までにやってきたライブでは上を向いたら天井だから,そこはステージから見る選択肢に入ってなかったんですよね。でも野外では,上にはどこまでも続く空っていうドラマがありますよね。お客さんもきっと,メンバーが空を見上げてるだけで「何かいいなあ」と思ってくださったんじゃないかと。ステージでパフォーマンスする側としては,自然の力はこんなにすごいんだ! と思いました。結果,「(両腕をいっぱいに広げて仰向けになりつつ)全部出てったー!」っていう。
実は僕,「BREAK IT DOWN」と「LIAR」が終わったあたりでいったんエンプティになったんです(笑)。でも,そのあとの2曲は始まりのきっかけが両方とも僕だったんですよ。「WORLD IS MINE」はドラムソロの特殊イントロがあって,僕が必殺技の拡声器を持ったらベースが入って音楽的にカウント入ってくださいと。「WITHOUT ME」は僕のセリフがあって曲に入るはずだったんですけど,完全に死んでたんでめっちゃ間を取ったという(笑)。
4Gamer:
わりと長めの間だなと思ったんですが,あれはそういうことだったんですか!
小笠原さん:
休憩時間です。ものすごく長くなってしまった結果,橋本真一(里塚賢汰役)が大画面で抜かれてちょっと面白い空気になってしまったのはあとで知りました(笑)。でもあのとき僕,酸欠のめまいと戦いながら「早く治れ! 早く治れ!」と思いつつ深呼吸していて。本当に削りに削りきって,やっとの思いでラストのいとまさにパスして,いとまさも削りに削って。
伊藤さん:
削ったねえ……。
小笠原さん:
それで最後,2人とも全部やり終えたあとの舞台袖での倒れ込むようなハグは俺,忘れんよ。あのあとにアンコールがなかったら泣いてた。
伊藤さん:
今までで一番熱いハグだったよね,本当戦友だよ。でも,そのめちゃめちゃ時間取ったのもそうだし,お互いに全部出し切ったのもそうだけど,それと比例して自分のことを冷静に客観視できるようになったかもしれない。前だったら「やばいな」と思ったら何とか力技で押し通すことしかできなかった気がするけど,そうじゃない方法を見いだせるようになったというか。こうやって活動を続けることで成長するんだなって感じたし,シンプルに年取ったなとも感じた。
アーサーさん:
早いよ!(笑)
伊藤さん:
でも20代前半だったらこういう感情にはならなかったし,心境的にもちょっとずつ自分のダメなところを認められるようになった気がします。それは自分もそうだし,メンバー間でも。そうやって歩み寄ることが大事なのかもな,なんて今は思ってる。
小笠原さん:
あのライブ中,お互いにたぶん一回は本気で“解脱”する瞬間があったよね。
伊藤さん:
これは史上最悪の放送事故が起きるかもって思った(笑)。「Starry Line」の伸ばしのところで一回予期せぬ飛び方をしたんだけど,「やばい!」とならなかったんですよ。「あれま,何だこりゃー」ってめちゃローテンションで。「Y」では何とかしないとと思って,かなり喉をかばいながら歌いました。でもそうやって生き延びることを覚えたというか。クオリティを落とすんじゃなく,そのときの状態での最高のパフォーマンスって何だろうと考えられるようになったのが大きい。
4Gamer:
「Y」は曲調のせいかなとも思ったんですが,少し空気が変わったような気がしました。
北岡氏:
いい意味で力が抜けてましたね。見てる側としては。
伊藤さん:
本当ですか? そういうのはやっぱり伝わるんですね。
4Gamer:
ライブ準備期間中でのエピソードはありますか。
伊藤さん:
今回は別日にもリハがあって,本番もみんなでバス移動したんですね。この10人で一緒に移動するのってはじめてだったんですが,それがめちゃくちゃうれしくて。
小笠原さん:
あれは良かったね。
伊藤さん:
それこそ今稽古中の舞台もそうだけど,ArgonavisとGYROAXIAのみんなで一緒に過ごすのって,今まではリハやライブ直前と本番くらいしかなかったので。こうやって同じ時間を過ごしていくことで,バンドとしてもプロジェクトとしても強固なものになっていくというか,それが魅力になっていくなって思いました。
小笠原さん:
みんなで同じバスに乗って同じホテルに泊まって,その夜みんなで温泉行きましたからね。
アーサーさん:
めちゃめちゃいいね!(笑)
小笠原さん:
僕と森嶋さんでサウナに入ってたら,ARGONAVISプロジェクトの誇るサウナプロの橋本祥平(白石万浬役)が,タオルをパーン! パーン! と鳴らしながら入ってきて,一番暑そうなところにドン! と座って,濡らしたタオルをぎゅっ! と頭に巻いて,「フーッ……」って(笑)。その姿を見て,森嶋さんと「すごい人が入ってきた!(笑)」と。
伊藤さん:
仁くんたちがお風呂に行ってる間,僕と前ちゃんはマッサージに行ってたんですよ。戻ってきて2人で大浴場に行ったら,湯船に鼻までつかった人がおもむろに近づいてきて「こわっ! 誰これ!」って思ったら祥平ちゃんで,どんだけ長い間入ってんの!? っていう(笑)。
小笠原さん:
あの人は本当に一生サウナ入ってる。あの顔色一つ変えないサウナエピソードはマジで一番面白かった。
アーサーさん:
逆に疲れないのかな……(笑)。
小笠原さん:
でもツヤツヤになって帰ってきてましたよ(笑)。あと面白かったのが,森嶋さんとサウナに入ったあと,浴室内ベンチで2人して並んで座って雑談してたら,窓からD4DJさんのライブのフィナーレの花火が上がったんですよ。花火大会を観に来たカップルみたいな図になって,「出ますか……」って言いました(笑)。
伊藤さん:
僕,コニファー(フォレスト)のお客さんとお風呂で一緒になったりしました。
アーサーさん:
そういう時間がバンドとしての仲の良さにつながっていって,演奏やステージに表れるのがArgonavisやGYROAXIAのリアルバンドとしてのいいところだと思う。みんなが仲良くて,そういう楽しいことができてるのがすてきだなって。いいなあ,楽しそう!
小笠原さん:
そうですね,本当にいい経験でした。それがあったからこそ,ステージで自分がキツくなってから,楽器隊のみんなの音がすごく聴こえるようになりましたね。「ああ,今俺は支えられてる,頑張ろう」って。グッと引っ張り上げられてる感覚がはじめてつかめた気がします。今までは自分のことでいっぱいいっぱいで,目の前のことしか見えてなかったけど。
4Gamer:
北岡さんはあらためて,今回のライブについてどんなことを考えていたのでしょうか。
北岡氏:
ArgonavisとGYROAXIAは,「CROSSING」(2021年3月の3rdライブ)で一回ちゃんと対バンを見せているので,JUNCTION A-Gでは一つのライブに見せたくて,交互に演奏していく演出になりました。セトリが3曲ずつ交互で,間のSEも前後の曲がつながるようにして,構成もGYROAXIAの宣戦布告(「MANIFESTO」)から始まって,Argonavisの宣戦布告(「JUNCTION」)で締めるという。これを成立させるためには,バンドのメンバー同士だけじゃなくて,バンドとバンドがお互いにしっかり意思疎通できていないと完成しないと思っていたんですね。でもその一体感が,普段からでき上がってきていたことが,今回のライブを通じてより強く感じました。さっきも話に出ましたけど,たとえばバスの座席でも,バンドが二つあったら普通は偏るじゃないですか。でも,ArgonavisとGYROAXIAはちゃんと交互に座るんです(笑)。
伊藤さん:
そうですね,適当に座ってたのに。
小笠原さん:
めちゃめちゃ交互でしたよね,自然と。
北岡氏:
誰かが気まずくなるようなことも一切なくて,自然に10人がまとまったのを見て,このライブを含めてARGONAVISというプロジェクトがどんどん一体化してきたなと思いました。4月には伊藤さんと日向さんをメインに据えたアコースティックツアーもありましたが,ゲストでジャイロのメンバーを迎えたとき,楽屋はどんな感じかなと見に行ったら,ものすごく和気あいあいとしていて(笑)。
4Gamer:
各地でいろいろなゲストの方を迎えてましたね。
伊藤さん:
すごくうれしかったです。アコースティックツアーの経験は,確実にこのJUNCTION A-Gに生きてるんじゃないかと。
小笠原さん:
いや,君と日向大輔はもう行き過ぎてるから,あれで悟りを開いちゃった感じがある(笑)。
伊藤さん:
僕はアルゴナメンバーでいえば,森嶋さんが一番「ピピン!」と来てるなと。配信になってしまった東京公演で,森嶋さんがキーボードを弾きながらポロッと「こういうのって楽しいね」って言ってたんですよ。こんなに自由にやっていいんだって,“楽しいスイッチ”みたいなのが森嶋さんの頭の上に見えて。あとは僕,キャラクターを背負わず仁くんとアコースティック演奏できたのがすごく心地よかった。キャラを背負うからこそできることもあるけど,肩の力を抜いて好きなことをやらせてもらえて,それって一周回ってキャラクターに生かせられるんだなってすごく思いました。
小笠原さん:
そうかもね。だって俺,脱力しすぎててあのまま30曲くらい歌えそうだったもん(笑)。この状態で歌えるなら,キャラでも30曲歌えるはずなんだよ! って学びを得た。だからもっと自分とキャラクターが溶け合っていって,素の自分でいる状態と,キャラクターがにじみ出ている状態が完全融合してる瞬間が生み出せたら最強じゃんって。そう思って富士急に挑んだら,野外ライブという開放的なロケーションの素晴らしさに飲まれて死んだんだけど(笑)。
7月発売の5シングルについて
制作秘話や楽曲に込めた想いとは
4Gamer:
ライブの話はもっと聞いていたいのですが,時間もありますので,ここから今日の本題の7月発売のシングルについて伺いたいと思います。
Argonavis 5th Single
「可能性/Stand by me!!」
「可能性」
作詞・作曲:北澤ゆうほ(the peggies)/編曲:渡辺拓也
「Stand by me!!」
作詞:中村航/作曲:小高光太郎・Re:nG/編曲:Re:nG・佐鳥研斗
詳細はこちら
4Gamer:
「可能性」は伊藤さんが主演を務めるTVアニメ「ぼくたちのリメイク」のEDテーマ,「Stand by me!!」はすでにアプリでもおなじみの,七星 蓮がテーマの楽曲となっています。まずはこちらの制作についてお聞かせください。
北岡氏:
「可能性」は同じArgonavisの「リスタート」を手掛けた,the peggiesの北澤ゆうほさんに作っていただきました。
4Gamer:
以前のインタビューで,「リスタート」はすごく短い期間で作られたとおっしゃっていましたね。
北岡氏:
はい。「可能性」は「リスタート」を作った数週間後くらいだったんですが,これも短い期間でデモを作っていただいたんです。弾き語りのデモをいただいて,それを渡辺拓也さんにアレンジしていただきました。この曲は,Argonavisでありそうでなかったメロディ展開で,新しいようでちょっと90年代も感じられるんですよね。
伊藤さん:
そうなんですよね。
北岡氏:
そういう絶妙なラインが面白い楽曲です。「ぼくたちのリメイク」のEDなので,ストーリーや制作側からのオーダーを元に,作詞も合わせて北澤さんに書き下ろしていただきました。でも意外とこれが,タイトルからそうですが,常に挑戦していく姿勢がArgonavisに当てはまったなと。あとはすごく“夏”を感じる曲だと思ってます。
4Gamer:
たしかに。レコーディングはいかがでしたか。
伊藤さん:
録ったのはアコースティックツアーの前だったので,1月くらいですかね? 「リスタート」に続いて北澤さんに作っていただいた曲でしたが,これもシンプルに好きで。蓮としても伊藤としても等身大な感じがしていて,スッと入れるんですよ。渡辺拓也さんのアレンジも,Argonavis感は強いんですけど,さっき北岡さんもおっしゃっていた90年代感があって。個人的にはミスチルを感じますね。そこもすごく,自分のもともとの気質にあるので。キャラクターを演じている2タイトルが一緒に……って不思議な感覚なんですけど,「蓮だからこう歌わなきゃ」は今までで一番取っ払って歌ったかもしれません。
4Gamer:
ご自身の主演アニメで,別のコンテンツでボーカルを務めるバンドの曲がかかるわけですよね。
伊藤さん:
歌っていたときは意識していなかったんですけど,完成したのを聴いてみたら,橋場恭也(伊藤さんが演じる「ぼくたちのリメイク」の主人公)成分が若干入ってるんですよ。自分では意識していなかったのですが,面白いエッセンスになったなあと思ってます。レコーディングではいつも,廣澤さん(ブシロードミュージックと共にARGONAVISプロジェクトの音楽制作を手掛ける,APDREAMの廣澤優也氏)とキャッチボールしながら作っていくんですが,今回は意志の強さのようなものをイメージしていました。だから今までの蓮よりも若干年齢が上がったというか,成長した感じが出ているんじゃないでしょうか。
4Gamer:
今のお話を踏まえて,ぜひもう一度聴いてみたいです。では,「Stand by me!!」についても教えてください。
北岡氏:
「Stand by me!!」はアプリ側から蓮がテーマのストーリーに合わせるようオーダーがあって,デモの数曲のなかから選ぶコンペ形式で作りました。まさにヒーロー感とか王道,青春ポップ・ロックみたいなイメージです。この曲,完成自体はだいぶ前なんですよね。初期の初期,2年前くらいに作った曲です。
伊藤さん:
レコーディングがかなり前なんですよね。新しい曲とめっちゃ前に録った曲がシングルになるので,ちょっと恥ずかしい……。「Stand by me!!」のころは,まだ「キャラで歌うとは何ぞや」な状態でした(笑)。Aメロのキーが自分にとってはめちゃくちゃ低くて,音としては出せるけど,キャラとしても歌唱としてもその音はあまり出したくない……みたいなものもあったんです。今聴くと甘々なところもあるけど,あえてこの2曲が同じシングルになっている意味を考えると,それこそArgonavisとして今まで活動してきた成長を見ていただけるかなと思いますね。
4Gamer:
小笠原さんとアーサーさんは,お聴きになっていかがでしたか。
小笠原さん:
いや,そんなに収録時期があいてるとは思わなかったですね。そう考えると貴重な1枚かも。
アーサーさん:
気にしたことはなかったけど,そう聞くとあらためて聴き比べたくなるね。
伊藤さん:
やめてー!(笑)
北岡氏:
「Stand by me!!」もそうなんですが,2019年は半年で50曲くらい作ったんですよね。オリジナル半分カバー半分で,デモを一斉に作り始めた時期で。
4Gamer:
以前のインタビューで北岡さんが「生産工場みたいになっていた」とおっしゃっていた時期ですね。「Stand by me!!」もそのころだったんですね。
北岡氏:
その時期の伊藤さんは,ボイスドラマは何本か録っていたと思います。最初のころのドラマは今でもYouTubeで聞けますね。
小笠原さん:
うわ,今あらためて聞きたいなー!(笑)
アーサーさん:
Argonavisはかなり前からドラマはありましたもんね。
伊藤さん:
恥ずかしい……。ドラマも歌も,もうキャラクターに付随するものすべてが難しかったです。自分のなかにそういう引き出しがまったくなかったので,最初の痛みというか。何をしたらどう変わるのかも分からなくて。
北岡氏:
Argonavisは一番順番が複雑だったんですよ。キャラクターのイラストがある状態からいろいろ録っていって,途中でボイスドラマが挟まったので,キャラクター感を一回見直したんですね。そういう境目があったんですが,「Stand by me!!」はそのあとの曲になります。
伊藤さん:
僕はアプリが出るあたりから,七星 蓮に“かわいい”と思える要素が多くなったように感じて,どうしようと思いました。気質的には(自分と)真逆なので……。でもライブは熱い感じだし,キャラ感を残しながら歌を……うーん,やっぱりずっと難しいです(笑)。
4Gamer:
伊藤さんのパフォーマンスも,ここ最近でまた少し変わった感じがありますよね。
北岡氏:
そうですね。LRF2020あたりから,キャラクターとしての伊藤さんのたたずまいが固まってきました。「CROSSING」のときはDAY1で思いっきりそちら(キャラクター)を意識していて,DAY2はもう少し素を出してもいいかもしれないとなり,今と近い感じになったかなと。そう考えると常に変わってきてはいるんですけど,違和感の変化じゃなくて,常にいいほうに向かっていると思います。
伊藤さん:
だといいな。怖いけど,変わらないほうが怖い。
小笠原さん:
ずっとチャレンジしてるもんね。
4Gamer:
ちなみに,この2曲をシングルカットした理由はあるのでしょうか。
北岡氏:
まだほかにも音源化していない曲が何曲かあるんですが,ArgonavisとGYROAXIAに関しては,“今”の楽曲を出したかったので,新しい曲を入れました。アプリの曲も入れたい意味もあってこの2曲にしたんですが,リリースが夏なので,一番爽やかなイメージの曲で「Stand by me!!」を選びました。
4Gamer:
ほかのバンドにもそれぞれコンセプトがあるのでしょうか。
北岡氏:
Argonavisは夏を意識したんですけど,5バンド同時なので,ほかはバンドの色がより強く出る曲,かつアプリに実装されている人気の曲をと考えましたね。
伊藤さん:
全体的に激しめの曲が多いなって思いました。
北岡氏:
LRフェスは戦いでもあるので,バチバチしていたほうがいいかなとは何となくイメージにはあったんですけど……でもあまり深くは考えてないです(笑)。あとは「ダブルエーサイド」なので,5バンドとも両A面にしました。
GYROAXIA 2nd Single
「WITHOUT ME/BREAK IT DOWN」
「WITHOUT ME」
作詞・作曲・編曲:ASH DA HERO
「BREAK IT DOWN」
作詞:ASH DA HERO/作曲・編曲:鋼鉄兄貴(HANO)
詳細はこちら
4Gamer:
続いてはGYROAXIAです。「WITHOUT ME」は2021年5月〜6月のアプリ内イベントの楽曲,「BREAK IT DOWN」はTVアニメ「カードファイト!! ヴァンガード overDress」(以下,「オーバードレス」)第6話のEDテーマとなっていました。どちらの曲も,JUNCTION A-Gでライブ初披露でしたね。
北岡氏:
はい。「WITHOUT ME」はアプリのイベント合わせで発注があったんですが,ジューンブライドがテーマだったので,今までのジャイロとは違う,明るいイメージで作りました。ASH DA HEROさんに希望の曲調をお伝えしつつ,歌詞に関しては「祈り」や「誓い」「結婚式」といったところを意識してくださいとざっくりオーダーしたところ,かなりオラオラな(笑),お前の人生には俺しかいないだろう的な那由多らしさが垣間見えるものになりました。
小笠原さん:
曲は当初よりギターが増えたんですよね。それで橋本真一のギターソロが鬼になった。バンド練ではじめてみんなで曲を聴いたとき,彼の目が3倍くらいに見開かれてました。「俺,弾くの……?」って(笑)。
北岡氏:
どこかで僕も「ギソロやばいの入ってません?」と聞いたのは覚えてます。でもまあ頑張れるでしょうと。この曲は新しいGYROAXIAの印象,ライブ本編のラストを飾れるタイプの曲ですね。「IGNITION」は“銀テープを飛ばせる曲”をテーマに作ったんですけど,これもそうだったかな。ジャイロのなかでもあたたかい曲で,どんどん育っていく曲です。制作は今年に入ってからでしたね。
4Gamer:
そうなんですね。レコーディングはどうでしたか。
小笠原さん:
いやー,歌詞を見たときにいよいよ那由多くんがアメリカ人になったかと……(笑)。
伊藤さん:
英語めっちゃ多いよね?
小笠原さん:
全然日本語がない(笑)。嘘だー! と叫びながら英語の勉強をしました。このあとお話しする「BREAK IT DOWN」もそうですが,メディアミックスのプロジェクトのなかの曲とは思えぬチャレンジングなレコーディングになりそうな予感がしましたね。
「WITHOUT ME」は最初,ジューンブライドの曲をアルゴナでもファントムでもなく,ジャイロがやるのかと意外でしたが,デモを聴いたら,なるほどこういう落とし所があったのかとすごく感心したのを覚えています。そこからどう那由多の歌声に落とし込んでいくか……あまり甘くもできないし,曲の意味を“marry me”にはできないじゃないですか(笑)。だから,いつもと言ってることは変わらないけど,取り巻く音が違うぜくらいのテイストで,熱さは変えずにいこうと考えたんです。
4Gamer:
では,テクニック的なところはどんなことを意識されましたか。
小笠原さん:
このコンテンツに関わらせていただいてから1年半くらいボイストレーニングを受けさせてもらっているんですが,ちょうどこのころ,僕が「高音をどれだけ混じり気なく安定して出せるか」を練習をしてたんですよ。「FAR AWAY」とか「IGNITION」とか,ジャイロのなかでもクリーンめな曲はいくつもありますけど,そのなかでも清楚で,より透明感ある歌声を試すにはすごくいいタイミングだと。今までのジャイロの曲で一番聴き心地がよくなるように,透きとおって聴こえるような歌声に挑戦しました。そのぶん,ラップはキレが良くて炎がメラメラ燃えてる感じ,いつもどおりの旭 那由多を出して差をつけて,突き抜けていく感じが出せたらと挑んだんですけど……まあとにかく(ラストの)「Welcome to my life!!」が録れなくて。
4Gamer:
それはなぜですか?
小笠原さん:
僕がこの曲をRECしてはじめて気づいた,自分の歌唱の苦手ポイントだったんですよ。やっぱりあるじゃないですか,どうしてもこういう音とこういう声が苦手だみたいな。
アーサーさん:
あるある。この音の並びちょっと歌いづらいってところ。この文字の並びが言いづらい単語があるのと同じで,音にもあるんだよね。両方の組み合わせもあるし。
小笠原さん:
そうなんですよ。キーとしてはいけるのに,何でこんなに言えないんだろうみたいな。それが今回の僕の「Welcome to my life」の伸ばしで,何回歌ってもフラットしてどうしても録れなくて,日をあらためました。自分のなかに新しいチャレンジと悔しさと気づきが生まれたRECになりましたね。本当に悔しかったなあ……。
4Gamer:
そうだったんですね。こういう苦手ポイントはみなさんにも必ずあるんでしょうか。
小笠原さん:
まず「あいうえお」でありますよね。
伊藤さん:
あるねえ。
アーサーさん:
滑舌に関しては,「1文字では発音できるけど,この文字とこの文字が組み合わさった並びになると言えない,言いづらい」とか,叫びやウィスパーだと言いづらいとか人によってまちまちですが,どんなにすごいベテランの方でも大なり小なりあると思います。どうしてもちょっと置きにいっちゃうセリフとか(笑)。
小笠原さん:
ありますよね! 「やられた」「やられる」とか。
伊藤さん:
僕,「信じてた」が言いにくい。「信じてたよ」とか。
アーサーさん:
私は「〜ことだと思う」みたいなのや,「などなど」とかも。
小笠原さん:
「なのだぞ」も言いにくいんですよね……。
4Gamer:
みなさんそれぞれにあるんですね。歌の場合はどうなんでしょうか。
アーサーさん:
歌だと文字の並びよりは音階ですね。音の順番とか,このコード進行でこういうメロディラインがくると,自分の気持ち良いところはもう一個上の音なのに,なぜかこの下にくるからしっくりこないとか。
小笠原さん:
そうなんですよ! いっそ上にいってくれればポーンと投げちゃえるのに……とか。本当に,直面しないと分からない苦手さってあるんです。この間いとまさとも話してたんですよ,hiB(高い「シ」の音)を出すとき,「あいうえお」でどれが一番苦手? って。僕は「え」なんです。「STARTING OVER」だと「さあ行こうぜ」の「ぜ〜」を伸ばすところが,意識して口を作らなきゃいけないから毎回緊張する(笑)。
伊藤さん:
僕は「あ」なんですよ。だから,「さあ行こうぜ」は「さあ」が駄目。「せえ行こうぜ」でいいじゃん! って(笑)。
小笠原さん:
英語だと多少ごまかせるんですけどね……。
アーサーさん:
日本語だとバレるよね,あいつ何か違うこと言ってない? って(笑)。難しいよねえ。
4Gamer:
これはいろいろな方に聞いてみたくなる話題ですね。では本題に戻りまして,「BREAK IT DOWN」についてお聞きしたいと思います。
北岡氏:
「BREAK IT DOWN」は変わった制作経緯がありました。この曲が第6話のEDテーマになったTVアニメの「オーバードレス」では,キャラクターごとに入場曲があるんですね。それを,ARGONAVISプロジェクトで一緒に音楽を作っているAPDREAMの同じ担当の方が手掛けているんです。それで,トウヤの曲を作るときにリファレンスで上がっていたのが,リンキン・パークなどのミクスチャーロックで,「これはジャイロが歌ったほうがいいんじゃないか」提案がありました。元になるデモがそのままジャイロでいけそうだったので,平歌のところはラップにしようと,ASHさんに歌詞とラップをお願いしたんです。その結果,素晴らしいラップとともにデモになかったスクリームがたくさん入ってきたという(笑)。
小笠原さん:
過去最高難度でしたね……。顔が青くなりましたもん。
このツイートは新曲「BREAK IT DOWN」の事でした?笑
— 廣澤優也(HANO) (@planetscape0516) May 15, 2021
こちら本日放送のTVアニメ「カードファイト!! ヴァンガード overDress」
第6話のED曲に起用して頂きました!
余談ですが、GYROAXIAでHANO制作の楽曲というのは今回が初なので、個人的にもとても嬉しいです。
#VGオーバードレス#GYROAXIA https://t.co/aH1cPwGYvV
北岡氏:
僕はRECに同席していなかったんですが,小笠原さんにはやらなくていいですとお伝えしていたんですよ。そうしたらご本人から,「いや,これを歌わないのはありえないです」と熱い連絡が来て……。やらせていいものかちょっと迷ったんですけど,本人にやる気があったので,すごくいいものが上がってくるって信じました。そうしたらすごいスクリームが各所に入っていて。これがジャイロのスタンダードになりつつありますよね(笑)。どこかで箸休め的にクリーンな曲を作らないといけないんですけど。
4Gamer:
たしかに……。では,レコーディングのときのお話を聞かせていただけますか。
小笠原さん:
ラップも確実に過去一番難しかったんですよ。でも,もともと邦ラップはずっと聴いてきて耳なじみがあるから,回数さえ聴き込めば大丈夫なので固まるのは早かったです。実はこれ,サビは今までの曲に比べたら,「え,こんなに休んでいいの?」というくらい楽なんです。そのぶん,出すニュアンスに意識を割けるなと思ったんですけど,まあとにかくスクリームが多い。でもこれは自分が絶対に使えるようになりたくて手に入れた武器ではあったので,こんなに早く楽曲のメインウェポンとして使う機会がきたかと。
とはいえ僕がスクリームの技術自体を実戦投入できるようになったのって,2020年の半ばくらいだったんですよね。ラップは今レベル50くらいにはなってる武器だけど,スクリームはまだレベル10とかなんですよ。でも武器種がロケットランチャーだから,めっちゃ目立って見えるみたいな(笑)。
4Gamer:
とても分かりやすいです。
小笠原さん:
レベル自体はそんなに高くないけど,よりハイレベルな音に聴かせられるよう,この曲では一番スクリームの練習に時間を割きましたね。旭 那由多としてやっているスクリームって,フライスクリームと言われる裏声派生の広域の音なんですけど,それこそグロウルとかフォールスコードスクリームと呼ばれるようなものとかもめちゃめちゃ研究して音色を練り直して臨んでいったので,「今回はやらなくていいですよ」って言われて,「やります! この曲の練習で一番時間使ったのここなので絶対にやります! 今すぐ北岡さんに確認してください!」と(笑)。
新たなこだわりポイントというか,スクリームをしっかり歌唱の技術として手になじませるきっかけになった曲でしたね。この曲はジャイロのライブでも,雰囲気をがらっと変える曲としてめちゃくちゃ機能するぞ! と,早く披露したいと思っていたら富士急で歌えることになってうれしかったです。この曲もすごく思い入れが深いですね。
4Gamer:
この曲が「オーバードレス」のエンディングで流れたときは驚きました。普段はArgonavisの「Y」じゃないですか。いつもと真逆な雰囲気のイントロで……。
小笠原さん:
世界が滅んだのかと思いますよね(笑)。ドラムのイントロから,ガサッとした音質のピアノが入ってくる感じ……デモも最初の10秒聴いただけで,これはいいぞ! ってなりました。
北岡氏:
富士急のゲネの日は雨が降っていたんですけど,大雨のなかで演奏した「BREAK IT DOWN」が一番かっこよかったです。
小笠原さん:
あれ誰か動画録ってないんですかね。あるんですか? くださいよ!(笑)
北岡氏:
小笠原さん,変な格好してますけどね(笑)。
小笠原さん:
合羽着てびしょびしょでしたからね。
Fantôme Iris 1st Single
「ザクロ/狂喜のメロディ」
「ザクロ」
作詞:マオ(シド)/作曲:Shinji(シド)/編曲:シド
「狂喜のメロディ」
作詞:マオ(シド)/作曲:ゆうや(シド)/編曲:シド
詳細はこちら
4Gamer:
続いてはFantôme Irisです。「ザクロ」は洲崎 遵,「眷属の夜会」でライブ初披露された「狂喜のメロディ」は御劔虎春のエピソードがそれぞれテーマとなっており,プロジェクト序盤にシドのメンバーが手掛けた3曲がこれで出そろった形になります(※もう1曲は「銀の百合」)。アプリ3バンドは,今回がファーストシングルになりますね。
アーサーさん:
「狂喜のメロディ」は曲名だけは発表していたんですが,ようやくそろいました。
北岡氏:
「ザクロ」は遵がテーマなのでギターの激しい曲,「狂喜のメロディ」は虎春なのでベースソロから始まる曲として書いていただきました。歌詞を見ても,言葉は多くないけど深みがあり,想像の余地がすごくありますよね。「ザクロ」は遵らしく,「バーチャルだけじゃ満たされない欲」という,この歌い出しにすべて込められてる感じで。この曲のギターソロは8弦ギターのえげつないソロが入っていて,デモからより化けた曲だなと思いましたね。歌はたしか,2019年にたくさん録ったなかでは比較的うしろのほうだった記憶があります。
アーサーさん:
今から1年半くらい前ですかね。全バンドで50曲くらい一気に作ったあと,セリフの収録を1〜2回挟んでからの収録だったので,キャラクターや世界観が何となく見えたあとで。この曲に関しては自信を持って「これがFELIXだ,Fantôme Irisだ」と定まってきた感じがありましたね。
4Gamer:
レコーディングではどんな感じでしたか。
アーサーさん:
ファントムに関してほぼ全般の曲にいえるんですけど,いつも私が納得行くまでやらせてもらってるんですよね……(笑)。全部頭の中の妄想話なんですけど,私が「FELIXはこの歌詞の部分ではライブやMVでこういう動きをしながら歌っているからこう聴かせたい」とイメージを伝えて,納得できるまで時間内で何度かお付き合いくださいというスタンスでレコーディングさせてもらっているんです。録ったものをその場で聴かせていただいて,それでそのシーンが自分の頭のなかにパッと想像できたらOKです,と。なので,あまりディレクションを受けるというよりは,私が目指すゴールへの道はどこか,どうやれば行きやすいか,はたまた別の道はないのかという相談を廣澤さんにさせていただいています。
4Gamer:
そうなるまでに,苦労されることもあったんですよね。
アーサーさん:
「ザクロ」を録るまでに,カバーを含めて10曲くらい録ってたんです。こういう言い方をするとアレですけど,そのころはずっとFELIXやファントムが分からなくて,でも今後のファントムの歌にもつながるようブレのないようにはしないといけなくて,内心ではその大変さにブチギレて狂いそうでしたから……これは原文ママで書いてください(笑)。
北岡氏:
最初は詳細な資料がまだできていない段階で並行してレコーディングしていたので,誰も明確な正解が分からなかったんですよね。ご本人の素の歌い方に近ければいいですけど,ファントムに関してはそうではなかったので。何せ,1曲目に録ったのが「1/3の純情な感情」のカバーだったんです。ヴィジュアル系にくくられてはいるけど……っていう。
アーサーさん:
「1/3の純情な感情」の次が「the WORLD」のカバーだったんですが,まずそこで全然方向性が違うじゃないですか(笑)。この見た目でこの世界観で,正直「このバンドはいったい何なんだ?」と思っていたんですよ。そのあと1〜2曲カバー収録を挟んで,はじめてのオリジナル曲が「Into the Flame」で,その次が「un:Mizeria」だったんです。これはどこが着地点のバンドなんだ! ってさらに悩んで……。
これ(「un:Mizeria」)こそ90年代前半くらいの,古き良きヴィジュアル系みたいなメロディラインで,こういう曲もやれるうれしさもありつつ,とはいえ「Into the Flame」とはまったく違うし,カバーもそうだし,自分のなかでなかなかバンド像が掴めませんでした。良くも悪くも,ヴィジュアル系というキーワードに少しでも引っかかっていればファントムは何でもやるスタンスが最初はあったけど,制作の方も私の歌を聴いてくださって,「ザクロ」あたりから方向性が見えてきたのかなと。セリフも収録したあとだったので,キャラの姿が想像つきやすくなり,あらためて歌い方も定まってきた感じでした。
4Gamer:
そうした想いを経て,このシングルの2曲を「眷属の夜会」で歌われてみていかがでしたか?
アーサーさん:
「ザクロ」に関しては,LRF2020で一回やっている安心感がありましたね。「狂喜のメロディ」は歌い出しがすごく低いんですよ。
北岡氏:
「狂喜のメロディ」の音源では,低いパートがヴィジュアル系らしさや,色気が出ているなと思います。
アーサーさん:
なので音源として聴く分にはいいけど,ライブではマイクでちゃんと拾えるかな,みんなにちゃんと聴こえるかなと考えました。「深い霧が」の最初を「ふー」ってそのまま歌ったほうがいいのか,息多めで「ふぅー」って入ったほうがいいのかと。今回は雰囲気重視で息多めでやったんですが,音響さんとの相談や見せ方も含めて今後もいろいろ悩んでいくのかなと思います。サビは気持ちいいし,ライブ中はHARUとアイコンタクトするシーンも作っていたので,そこは楽しかったですね。
4Gamer:
いろいろな想いが詰まった2曲がファーストシングルになったというのもいいですね。
アーサーさん:
そうですね。この2曲はほぼ同時期に録りましたが,ちゃんとキャラクターが固まったあとの楽曲なのもあって思い出深い曲ではあります。それまでの不安感がやっと払拭されて,自信と安心感を持てました。
伊藤さん:
僕,ランさんの歌声ですごいと思ったのが……今の話とか聴いていて,いろいろなカバーや楽曲を経てのファーストシングルじゃないですか。でも実際にランさんの歌を聞くと,キャラクターとしての一貫性があるからか分からないですけど,キャラクターやランさんがジャンルに寄っているというより,ランさんやFELIXがいて,そこにジャンルが寄っていく感じがするんですよね。どんな音域でも歌い方でも。そこが唯一無二だなって,僕は聴いていて感じました。
アーサーさん:
うれしいことを言ってくれますねえ(笑)。ありがとうございます!
風神RIZING! 1st Single
「ランガンラン/夢見るBoy守るため」
「ランガンラン」
作詞:中村航/作曲・編曲:藤井健太郎(HANO)
「夢見るBoy守るため」
作詞:中村航/作曲・編曲:鋼鉄兄貴(HANO)
詳細はこちら
4Gamer:
本日はボーカリスト不在ですが,ほかの2バンドの楽曲についてもぜひ。まずは風神RIZING! ですが,「ランガンラン」は椿 大和,「夢見るBoy守るため」は早坂絋平のエピソードがテーマの楽曲となっており,アプリではすでにおなじみですね。
北岡氏:
そうですね。この2曲はコンペで募集して,上がってきたなかからアレンジを詰めていく作り方をしていました。時期的には先ほど話した2019年の夏くらいです。歌詞はどちらもプロジェクトでもおなじみの中村 航先生にお願いしました。今ではArgonavisとフウライの歌詞のイメージってぜんぜん違うと思うんですが,最初のころのArgonavisは,こういうフウライ路線の歌詞がきていたんですよ。
伊藤さん:
へえー!
北岡氏:
ポップで弾けた感じで,ちょっとクスッとくるワードが入っていたりしたんですね。ですが,Argonavisの路線はもう少し詩的で,きれいな感じの歌詞にしていきたいとご相談して,今の感じが作られていったんです。なのでフウライはいい意味で突き抜けていて,一番中村先生節が感じられるんじゃないでしょうか。実はあまり直しやリテイクが出ないんですよね。勢いで作っている感じがあるというか……。でもきっとフウライもそうやって作っているんだろうなって,キャラクターたちを思い浮かべたりしています。
アーサーさん:
ほとんど「Run and Gun」しか言ってないですもんね,この長い歌詞で(笑)。
北岡氏:
そうなんですよね。あとは「ランガンラン」は大和の曲なのでギターソロも特徴的なんですけど,最初はこんなにちゃんとギターソロをやっていいか迷ったんですよ。大和って(右手だと)ギターが下手な設定があるので。ですが,そこに縛られるとどうしても曲が作れなくなってしまうので,「この世界観ではあれが下手なんだ」とポジティブな受け取り方で作っています(笑)。
4Gamer:
なるほど。「夢見るBoy守るため」も歌詞が面白いですよね。
北岡氏:
この曲は仮タイトルが「夢見るBoyじゃいられない」というタイトルだったんですが……。
4Gamer:
どこかで聞いたような……。
北岡氏:
さすがにそのままは良くないかもしれないので(笑),ほかの言い回しにしました。
アーサーさん:
これ,歌詞に麻雀用語が入ってるのが面白いですね。
小笠原さん:
九蓮宝燈振り込んで平常心だったら,それはもう「兄貴」ですよね(笑)。白目むくもんな,確実に……。
アーサーさん:
国士無双の十三面待ちとかね,絶対顔に出るよね! 出ないならそれはもう,感情を失ってる雀鬼だよ(笑)。
4Gamer:
フウライの歌詞は独特の面白さがありますね。レコーディングはどんな感じでしたか?
北岡氏:
「夢見るBoy守るため」は,最初は今よりもキーがプラス2か3だったんですよ。
伊藤さん・小笠原さん・アーサーさん:
ええっ!!
4Gamer:
現状でもかなり高いですよね?
北岡氏:
はい(笑)。
小笠原さん:
(サビを歌い出す小笠原さん)……たっけえー! これ,Dくらいあったんじゃない? (中島)ヨシキさんの声帯が千切れてしまう。
伊藤さん:
すごい!
アーサーさん:
ヨシキも地声は別に高くないのにね。キーの高いキャラをいっぱいやってるから楽なのもあるかもしれないけど……。
小笠原さん:
出せるのがすごいですよ!
εpsilonΦ 1st Single
「Cynicaltic Fakestar/Sake it L⓪VE!」
「Cynicaltic Fakestar」
作詞:出口遼/作曲:HaTo/編曲:廣澤優也(HANO)・HaTo
「Sake it L⓪VE!」
作詞:南野Emily/作曲:石田秀登/編曲:日直伸次(HANO)
詳細はこちら
4Gamer:
最後はεpsilonΦです。「Cynicaltic Fakestar」は烏丸玲司,「Sake it L⓪VE!」は二条 奏のエピソードがテーマの楽曲ですね。こちらもアプリで聴くことができ,フウライの2曲同様,SOLなどで披露されています。
北岡氏:
はい。「Cynicaltic Fakestar」は玲司がテーマの曲なのでドラムを激しくとオーダーがあり,曲自体はコンペで選びました。これはツインボーカル曲としては「光の悪魔」より先に作ったので,この曲が一番,榊原(優希)さん演じる紫夕と,梶原(岳人)さん演じる遥の声が分かりやすく混じり合う,キャラ声に近いトーンの曲になっていると思います。εpsilonΦはこの2曲とも,50曲リレーで一番僕の記憶がないときに作りました(笑)。
4Gamer:
では,覚えている範囲で……。
北岡氏:
「Sake it L⓪VE!」は,曲のイメージと,奏から遥に向けた歌詞での煽りが,楽曲ストーリーを読んでから聴くとよりえげつなく感じられると思います。この曲は唯一歌詞をコンペで選んだんですよ。3パターンくらいあったんですが,かわいらしさのなかに秘めた狂気と愛が全部詰まっていたので,結果この形になりました。
4Gamer:
この曲はLRF2020でも披露されていましたね。レコーディングはいかがでしたか。
北岡氏:
「Oli Oli Oh!」とか声を重ねるところは,榊原さんのいろいろな声色が入っています。自由にやって,とこのガヤを録っているときが一番面白かったですね。すごくいろいろな顔の紫夕くんが出てくるようなイメージが あります。
小笠原さん:
かわいいですよね……(笑)。
北岡氏:
εpsilonΦは曲作りが難しく,バンドサウンドに近づけていくのが難しい印象です。先ほども言ったとおり,これらの曲が一通りできたあとに作ったのが「光の悪魔」だったんですが,あれはディレクションもTKさん(凛として時雨)にやっていただいたのもあって,歌い方も含めてすごくTKさん色が出ています。ただやっぱり,先に「光の悪魔」から発表されることになって,榊原さんも少し複雑な心境があったんですよね。ほかの曲と違いすぎるし,一番個性が強いものが最初にでることに葛藤があって。でも逆に,「Sake it L⓪VE!」くらい振り切っていれば表現の幅の余地になるので,結果的には良かったです。紫夕が煽るときの曲は「Sake it L⓪VE!」とか「Play With You」くらいにかわいらしく,内側に向かってる狂気を出すときは「光の悪魔」のような歌い方で……と,AAsideのすべてに紐づく“二面性”につながるかなと思いました。
4Gamer:
なるほど。それにしても2019年の量産期は,本当に大変だったんですね。
北岡氏:
オリジナル半分カバー半分でデモを一斉に作り始めて……。小笠原さんとか,毎週カバー曲歌ってましたよね。
小笠原さん:
録ってましたね。最初は「現状ディストラクション」,次の週は「狂乱 Hey Kids!!」,その次は「曇天」,その次は「CORE PRIDE」……みたいな感じでしたよね。
北岡氏:
みなさんが毎週レコーディングということは,ボーカルは梶原さん含めて6人いるので……。
伊藤さん:
やばい!
小笠原さん:
毎日だ!
アーサーさん:
日替わりARGONAVIS(笑)。
北岡氏:
ダブルヘッダーもあれば裏でレコーディングしてる,という日もありました。
アーサーさん:
あれは熱い夏でしたね……。実は私もあれが人生で一番レコーディングした時期で。ほかのコンテンツも重なって,夏の間だけで20数曲収録したんです。
小笠原さん:
すごい! 思い出に残りますね……。
ボーカリストに聞く!
レコーディングへの臨み方や歌ってみたい曲とは?
4Gamer:
今日はせっかくボーカルのお三方が揃っていますので,レコーディングや歌についてもう少し深堀りできればと思います。
アーサーさん:
これを言うと変な誤解を生むかもしれないんですが,自分はキャラクターソングのレコーディングに関しては,このプロジェクトに限らずあまり練習をして固めていかないスタンスを大事にしています。歌うような世界観やキャラじゃなかったり,イメージソングとしてのキャラソンだったりしても曲自体に物語は必ずあって,たとえばアニメで流れるならこういうカット割りでこのタイミングで流れるんだろうなとか,曲のシーンをしっかり全部イメージしてから現場に行ってます。「私はこういう感じにしたいんですけど,制作陣のみなさんの意図や方向性を教えていただけますか」って現場で聞いて,すり合わせながらいろいろな歌い方を試していくやり方です。
4Gamer:
Fantôme Irisの場合は,レコーディングでは「FELIXはこの動きでこう歌う」と伝えているとお話しされていましたね。
アーサーさん:
はい。ファントムは特に方向性が分からなかったこともあって,当初はなるべく一人で固めずにFELIXのイメージだけ膨らませたものを現場に持ち込んでいました。だから逆に,イメージを膨らますために収録日までインスト音源は死ぬほど聴きますね。仮歌はあまり聴かずに歌詞を当てる場所だけ確認して,あとはメロ音源か,何も入ってないインスト音源を聴き込みます。楽器や演奏の意味とか,ここでこのアタックが入っているから作曲者はこう歌ってほしいのかなとか,こう見せたいんだろうなを想像して。
4Gamer:
なるほど,面白いですね。先ほどの話では,小笠原さんは練習や研究をしてからレコーディングに臨んだとのことでしたが,伊藤さんはどうですか。
伊藤さん:
曲によりますね。場合によっては自分でDAWを立ち上げて録ってみて……。
小笠原さん:
何だそれは。
伊藤さん:
音楽制作ソフト。
小笠原さん:
そりゃ知ってるよ! そのムーブに関して言ったんだよ(笑)。強すぎるだろ。
伊藤さん:
自分の意識としては歌を完成させるより,今歌ったらどんなものができるのかなと客観視したいんですよ。家の機材とレコーディングスタジオにある機材との違いも知れるじゃないですか。それで,自分で録った歌が自分のなかにあると,なるほど,これだけハンドル切ればこのくらいになるんだなって分かるので……完璧に趣味でもあるんですけど,それが楽しくて(笑)。自分のなかでの調整を早くしたいんですよね。レコーディングで廣澤さんと,もっとこうしたほうが良くない? ってキャラクター像や音楽について話すために,自分の調整はしていこうと。単純にここは音が取れないな,を消していきたいから。
小笠原さん:
僕は練習しちゃうなあ。苦手どころだけを覚えておきたい。僕は地声がそんなに広域ではないので,それこそさっき「あいうえお」どれがキツイか問題もありましたけど,ここは自分が苦手であろう箇所はめちゃくちゃ聴いて何回か歌って明確にしておきますね。あまり凝り固まらないようには気をつけてますけど。
アーサーさん:
難しいことだけど,キャラクターの一貫性はどんなコンテンツでも持たせなきゃいけないから,「このキャラは上とか下のキーだけ違う人になるよね」は,あっちゃいけないんですよね。キャラクターコンテンツは歌も芝居である以上,キャラよりも中の自分を良く見せたいとかって気持ちもいらないし,入れようとしなくても人が歌ってる以上は自然と本人の成分が入ってくるものなので,この曲はキャラじゃなくて自分で歌ってるねって悪い方に思われちゃうと,キャラクターにも歌う本人にも良いことがない。
私はキャラクターソングのなかにランズベリー・アーサー成分はいてほしくないので,そこは可能な限り削ぎ落しつつ,カバーに関しては,モノマネにならない範囲で原曲アーティストへのリスペクトは入れたいと考えています。カバーや原曲,どれがNo.1かというのは聴き手によって違うけど,元のアーティストがオンリーワンの産みの親にして最高なのは間違いないので,モノマネはNGだけど,本家に対して最大限の敬意を払いつつ,本当に少しだけ,原曲の歌い方のニュアンスをいれたりしています。
伊藤さん:
間違いないですね。
アーサーさん:
それで現場に行くとどんどん新しいものが見えてきて,「もっとこうしたい」って欲が出てきちゃうんですよね。制作の方に「今の良かったです!」と言ってもらっても,「いや,もう一段階上へいける気がする……」って(笑)。あと,現場でよく言うのが「最後に記念受験してもいいですか?」。
小笠原さん:
分かるー!
伊藤さん:
記念受験って言うんですね! 自分の場合は「清書」なんですよ(笑)。「じゃあ清書して終わりまーす」みたいな。
アーサーさん:
あるよね。私の場合は,ディレクターさんが「今の良かったです,これで行きましょう!」と言ってくれても,私の表情にやりたそうなのがちょっと出てるのを見て「あっ,でもやっぱり記念にもう一回受けときます?」って気を使ってくれるんですよね……(笑)。
小笠原さん:
廣澤さんっぽい!
伊藤さん:
言ってくれますよね。
アーサーさん:
最後の一回となると集中力が高まるので,そういうときに一番いいのが出るパターンも多いですね。本当は一発目,二発目でその集中力を発揮して120点を出せるのが理想だけど……(笑)。
4Gamer:
少し話題が変わりますが,みなさんが自分以外のバンドの曲で,歌ってみたい曲や好きな曲はありますか?
小笠原さん:
ずばぬけて僕が好きなのはArgonavisで2曲あって,「Starry Line」と「リスタート」です。僕は昔から,コブクロさんとかMr.Childrenさんとかの,しっとりしすぎないけど熱も感じられる,“切なめエモ”みたいな曲が好きなんです。コンテンツ内でバンドとしてカバーすることはないだろうけど,個人では歌ってみたいかなあ。
アーサーさん:
カバーとなると難しいよね。私はもともと,バンドでずっとミクスチャーとかパンクやハードロック系をやっていたので,ジャイロの曲は個人的に歌ってみたくはあるかな。
小笠原さん:
ジャイロとファントムは(お互いのカバーが)ワンチャンあるんじゃないですか? ストーリーも作りやすそうだし。
アーサーさん:
交換しあえる曲は多そうだよね。そのバンドのカラーにアレンジし直したら,交換できる曲は各バンドにありそう。
伊藤さん:
そうかも!
小笠原さん:
そういうのやってみたいですね。……北岡さん!(笑)
北岡氏:
ではアコースティックツアーでやりましょうか(笑)。 バンドだとたしかに,ジャイロとファントムは意外といけそうですね。対バンとなるとお客さんが酸欠になりそうですけど。
小笠原さん:
Argonavisとフウライも面白そうですよね。FELIXは何でもピタッとはまりそうではあるけど,「リスタート」も歌ってほしいなあ。アラサーの社会人バンドが上京の歌って,さすがのFELIXも泣くかもしれない(笑)。
北岡氏:
作曲者的には,シドさんが作ったArgonavisの「Pray」が合うかもしれませんね。歌声が想像できる。
伊藤さん:
たしかに……!
アーサーさん:
Argonavisに「銀の百合」歌ってほしいなあ。
伊藤さん:
どうなるかなあ!?(笑)
小笠原さん:
あと僕は,ボーカリストとしてちゃんとした歌唱の形にしたいのは「光の悪魔」ですね。「unravel」がすごく好きだったのもあって……。
アーサーさん:
ああ,「unravel」はファントムでもカバーしてみたいな。
北岡氏:
でもずっと,混合編成のライブはしたいと思ってます。「CROSSING」でもやりましたけど,楽器隊をごちゃまぜにして,次はファントムのサポートメンバーも含めて。アプリでは自分の好きなキャラで演奏できるスタイルなので,そういうカバー曲祭りとかはいつかやってみたいですね。サプライズでオリジナルを歌ったりして。
一同:
いいなあー!
アーサーさん:
あとARGONAVISプロジェクトでやってみてほしいのは,5バンドで同じ曲のカバーですね。各バンドの味が出るじゃないですか,アレンジャー泣かせになるけど(笑)。
小笠原さん:
今後,ストーリーのなかで審査課題曲として出される曲とかあったら,めっちゃ熱いですよね。でも,どのバンドにも合わせなきゃいけないからな……。フウライというとんでもないお祭り男たちがいるし。
北岡氏:
ただ,フウライは一番アレンジしやすいんですよ。逆に難しいのがArgonavisで,編成にピアノが入っているのと,アレンジとしての特徴がすごく強いわけではないので。テーマとなる曲の中心がArgonavisバージョンではないものになると,中心はどこだろうとなるんです。
アーサーさん:
元の曲がArgonavisバージョンみたいになっちゃいそうですもんね。
小笠原さん:
でもそれこそ僕「JUNCTION」とかは,Argonavisの正解の形だなってすごく思ったんですよね。めちゃくちゃPENGUIN RESEARCHを感じたんですけど。
伊藤さん:
親和性ありますよね。
4Gamer:
言われてみればたしかに。キーボードも入ってますしね。
北岡氏:
バンドを作った当初参考にしていたバンドの一つではあったんですけど,すごくテクニカルな曲が多くて。でも,爽やかさとか歌のキャッチーさみたいなのは通じるところが多いと思います。
伊藤さん:
実は僕,悩んでることがあるんです。Argonavisと近い感じの音楽性のバンドだと,ギターボーカルが多いんですよ。リファレンスではないけどflumpoolもそうだし,キャラクターとしてもそうだけど,ハンドマイクで歌ってライブとして成立させるにはどうしたらいいんだろうって。
北岡氏:
ヴィジュアル系以外だと,男性ボーカルでハンドマイクのバンドは,意外とそんなに多くないんですよね。
アーサーさん:
たしかに。ハードロック系かヴィジュアル系くらいまでいかないと,ボーカルが単体でマイクを持ってるのはあまりいないかも。マイク1本で見せるのは難しいのもあるかもしれないですね。
小笠原さん:
僕,その視点がなかったです。バンドのボーカルはハンドマイクってイメージでした。それこそリンキン・パークとか,ONE OK ROCKとか見てきたせいか……。
北岡氏:
激しい系統には多いんですけど,Argonavisの路線だとあまりいないんですよ。伊藤さんにいたっては,ギターを担いだほうが楽だろうし,見せ方もたくさんありそうなんですけどね。
小笠原さん:
やっぱりラッパを出すしかない(笑)。
伊藤さん:
ラッパかあー!
4Gamer:
Argonavisとして,蓮がギターを持って……という可能性は難しいんですか?
北岡氏:
以前にキャラクターを作るチームとお話ししたとき,やっぱり蓮が,歌以外ができてしまうのはちょっと……と。飛び道具的にギターをやるのはアリかもしれないですけど,相当なストーリーが必要になるんですよね。
話はまだまだ尽きない,
プロジェクトとしてやってみたいこと
4Gamer:
先ほどカバー祭りの話が出ましたが,ほかにやってみたいことはありますか。
小笠原さん:
僕,「眷属の夜会」を経てJUNCTION A-Gをやってみて,ファントムの野外ライブもめちゃめちゃ観てみたいと思いました。
伊藤さん:
最高でしょ!
アーサーさん:
ちゃんと夜にやりたいね! ファントムこそしょっちゅう歌いながら上を見上げるけど,いつも天井には何にもないから(笑)。現実には何もないけど,想像の世界を見て儚げに,遠くを目指して手を伸ばしたりしてるから。
小笠原さん:
だいたい天井の骨組みですよね(笑)。
アーサーさん:
野外で夜だったらちゃんと月とか星とか見えるだろうし。ボーカルが上を見上げたとき,みんなも空を見て月があったらエモいよね。それはやってみたい。
小笠原さん:
5バンドいるし,時間交代制で野外やってみたいですよね。
アーサーさん:
いいね! じゃあ夜の時間はファントムがもらうから,フウライにお昼をやってもらおう(笑)。みんなお酒飲みながらタオル振り回して盛り上がって,みたいな。εpsilonΦは夕方かな。
小笠原さん:
ジャイロはたぶん朝イチですね。
伊藤さん:
朝イチなの!? 早くない?
小笠原さん:
暗い夜を引き裂く旭ですから……!(笑)
それまでに体内時計を真逆にしておきます。でも,5月は本当にやりたいことをたくさん思いつきましたね。
伊藤さん:
僕,ランさんとアコースティックやりたい。
アーサーさん:
私も行きたい! Fantôme Irisというかヴィジュアル系は,そもそも素の自分の歌い方とは違うけど,ARGONAVISのアコースティックツアーではある程度自由に楽しめるのがいいよね。
伊藤さん:
それを受け止めてくれるお客さんも,すごく貴重だなって思います。キャラクターとかプロジェクトとしてもそうだし,キャストや音楽,全部認めてくれてめちゃくちゃ恵まれてるなって。
北岡氏:
では,秋のツアーで。今絶賛調整中なので……。
アーサーさん:
楽器の練習をしておいたほうがいいですか? ハーモニカとか(笑)。「眷属の夜会」のとき,ハーモニカを吹くかもしれないって話があったんですよ。もし,L’Arc〜en〜Cielの「flower」をやっていたら実現してましたね。でも,アコギならいけるけど,ハーモニカはちょっと自信なくて。
北岡氏:
きれいに吹けるとすごく格好いいんですけどね。
小笠原さん:
アコースティックでランさんが一緒にギター弾いたら最高の時間になりそう。
伊藤さん:
やりたいです!
小笠原さん:
ついに俺も何かやるか……。実は,だいぶ前に鍵盤は買ったんですよ。ジャイロの誰にも言わず,超秘密でやってるんですけど。
アーサーさん:
そうなんだ! あえて全員が普段やったことない楽器でもいいんじゃない? ライブだと怒られそうだから,イベントのときとかに。どんなにグダってもお許しくださいって(笑)。
小笠原さん:
全員木製の楽器とかでね。「では,僕らの声を聞いてください。『VOICE』!」とか言って(笑)。
北岡氏:
やりましょう。
伊藤さん:
何でもやってくれすぎる!(笑)
北岡氏:
一番お金がかからなそうなので……。
小笠原さん:
これOK出たとして,一番大変なのはこっち(キャスト)ですからね!(笑)
舞台に地方ライブ,今後の展開について〜まとめ
4Gamer:
プロジェクトの今後の展開としては,まずは6月の舞台,そして夏から秋はリアルライブがたくさん控えています。この記事が出るころにはすでに終了していますが,舞台の稽古はどんな様子ですか。
小笠原さん:
いやもう,悩む毎日ですね。やっぱり新しいことに挑戦するのって,目新しさを楽しむばかりではいられないじゃないですか。自分たちが戦ってきたフィールドではない課題が生まれるから……。ただ,このコンテンツではダブル橋本くん(橋本祥平さん,橋本真一さん)や,舞台畑で活躍する摩周さん役の輝馬さんにアドバイスをいただけるのが本当にありがたいです。でも生演奏のライブパートもたくさんあるので,良くも悪くも二つの意味でどうなるのか全然分からなくて。楽しみと不安が混じり合う……名前をつけるなら“ワクワク”ではあるんですけど,ただもう「頑張ります!」という感じですね。
4Gamer:
お芝居のなかで生演奏は大変そうですね……。
小笠原さん:
舞台には水は置いてないし,歌ってから少し休んで水飲んでセリフ,みたいな感じじゃないんですよね。ライブパートだけ分かれているわけじゃないので,この舞台を経て,たぶん僕ら二つのバンドはさらに強くなるだろうなって思います(笑)。
伊藤さん:
アプリもライブもアニメも,どんどん新しいものに挑戦させていただけるのでまったくダレることがないですね。でもやっぱり舞台はすごく難しくて,歌もお芝居も犠牲にせずに走り切るためには,どんなことをすればいいのかを一番に考えています。でもシンプルに熱量が高い舞台になっていると思いますね。
北岡氏:
僕も今回は音楽のところしか関わっていないのですが,演出や構成を見ていて,これは今までARGONAVISプロジェクトとして見せていたものの片鱗を凝縮しているなと。舞台上で演技をしてライブをして……がギュッと固まっているのは,もしかしたらこのプロジェクトの完成形になっているかもしれないと感じました。メディアミックスの醍醐味で,普段の役と音楽の両方を同じキャストが舞台で演じるのも珍しいので。スリリングなのは僕らもそうなんですが,それでもきっと,この記事が出るころにはみんな一皮むけてるだろうなと思います。
伊藤さん:
この舞台が終わったあと,いろいろな畑の人が集まってるこのメディアミックスの意味を,自分たちでまた一つ手にできる気がします。
アーサーさん:
これを乗り越えたら,またバンドやチームの一体感が生まれそうだね。もし次があったら,私も同じ苦しみを背負えるのかな(笑)。次があるのか,全員が出るのかどうかは分からないけど,もしほかのバンドがでるならぜひね。
小笠原さん:
次はもう,FELIXを主人公にして僕らはモブの舞台にしてください!(笑)
北岡氏:
ファントムはあの世界観を舞台にしたら面白そうですよね。吸血鬼として出てくるみたいな。それだと演奏がなくても成立しそうな……。
小笠原さん:
いや,歌ってもらいます!
北岡氏:
ではミュージカルですかね(笑)。
4Gamer:
舞台も楽しみにしています。そして今のところリアルライブが発表されているのは,8月にFantôme Iris,9月に札幌でGYROAXIA,11月に函館でArgonavisです。秋には先ほども話題に挙がった,アコースティックツアーがありますね。
北岡氏:
そうですね。今回のツアーは前回行けなかった場所を中心に調整しております。できる限りたくさんの場所にアルゴナビスの音楽を届けられればと思います。
4Gamer:
メンバーのみなさんもですが,すべて見ている北岡さんも大変ですね……。
北岡氏:
実は「眷属の夜会」のころがめちゃくちゃ大変だったんですよ。準備期間がアコースティックツアーと並行していたのと,富士急の準備もあったので。あのときが一番すごかったですが,これからまたさらに大変になりそうですね(笑)。頑張ります。
4Gamer:
それでは最後に,メッセージをお願いします。
小笠原さん:
ここまで読んでいただきありがとうございました! 自分で言うのもなんですが,毎回新しい曲が世に出ていくたびに,「ああ,自分もちゃんと進んでいるな,成長しているな」と感じています。これから出るシングルでは,また大きな一歩を感じていただけたら幸いでございます。
シングルにはLRフェス1stラウンドの投票券も入っていますが,この戦いは,作品内におけるバンドたちにとっては道のりのなかの一つなので,みなさんがさらに「AAside」の世界に没頭するためのエッセンスとして,ストーリーに参加する感覚で楽しんでいただけたら幸いです。
これからも多数の素晴らしい曲が発表されていくだろうし,ストーリーも広がっていくし,今日集まったボーカリストのリアルバンド3組のライブも控えております。みなさんにもっとたくさんの楽しさをお届けすること請け合いでございますので,今後ともどうかよろしくお願いします。ありがとうございました!
伊藤さん:
Argonavisの曲には,背中を押したり希望を持たせてくれたり,あと一歩頑張ろうと思わせてくれる素晴らしい歌詞と,キャッチーですてきなメロディがたくさんあります。でも,だからこそ自分には難しくて。この曲にどんな意味合いを持たせようとか,“この1曲を特別にする”って,ライブでもパッケージでも,どうすればいいんだろうっていつも頭を悩ませてます。今回はたぶんこのタイミングでしか……もう5枚目のシングルか,早いな(笑)。これらの曲には,走り続けてきた年月とか,アニメのEDテーマじゃないと出なかったニュアンスとか,ここにしかない真剣さが込められてます。そういうのを届けるのが,自分が七星 蓮をとおして一番やりたいことです。
そして,LRフェスは順位がつくものではあるんですけど……何だか,シンプルにこんなに魅力的な曲が,このタイミングで同時に発売されるのはすごいなと。だからこそどんな結果が待っていようとも,自分は自分の役目を全うして,キャラクターやバンドを魅力的に見せないといけないなと思わせてくれる,いい機会だと感じています。なのでみなさんもぜひ,ご自分の推しを応援してあげてください。そして,その推しのバンドのすてきな一面を,このシングルで見つけてくれたらうれしいです。ありがとうございました。
アーサーさん:
まずはみなさん,いつも本当に応援ありがとうございます。ファントムはアプリからの参戦で,最近ではライブする機会も増えて,リアル活動的なものも少しずつ増えてきてはいるんですけど,やっぱりすごく特殊なポジションだなと感じています。定期練習や継続した活動をしてきているわけではなく,どんな大変なオーダーでもライブを依頼されたらスケジュール調整をして,バンドの仲間と戦地に赴く傭兵みたいな。
小笠原さん:
たしかに傭兵だ!
伊藤さん:
本当ですね……!
アーサーさん:
そういう身ですが,“Fantôme Irisが存在している”ことを,楽器隊のメンバーや声を演じるキャストたち全員で協力して表現しています。LRフェスの投票に関しては……これはあまりいい言い方ではないかもしれませんが,決して100%公平な勝負ではないんですよね。全バンドが同じように平等に活動できているわけではないので。活動量が多いバンドは当然ファンが増えるし,少なければその機会が減るし。勝ち負けではないけど,どうしても勝負である以上結果はついてくるから,私は演者としても眷属としても自分のバンドを勝たせてあげたい。だけどそれは,どのバンドもそうなんですよね。
だからみなさん,どのバンドでもいいです。ライブを観たり,曲を聴いたりして何か感じるものがあったなら,「全部好きだから,どのバンドにも投票できない」と目をそらさずに投票をしてほしいです。たくさんの方が参加してこの祭りが盛り上がれば,今後コンテンツが続いていく上で何が良いのか何が良くなかったのかも,みなさんの意見を受けてどんどん先へいけると思います。ぜひみんなでフェスを盛り上げて,作品がさらに盛り上がるようよう,引き続きプロジェクトを応援していただけたら。Fantôme Irisとしては次に8月のライブがありますが,振替ではなく新規のライブのつもりで臨みますので,現地,そして配信でお会いできたらうれしいです。ありがとうございました!
北岡氏:
コロナ禍になってしばらく経ちますが,このプロジェクトでは,ここ1年はこれまでで一番多くのライブをしてきました。これは本当に,応援してくださるお客さんがいなかったらできないことです。世の中にはアーティスト活動を辞めてしまう人もいるご時世で,こうやっていろいろな活動ができるのは,会社として恵まれているのもありますし,応援してくださるお客さんと,ここまでのものを作り上げてくれるキャストのみなさんのおかげです。みなさんの日々のストイックさには,本当に頭が下がる思いでいます。
投票企画には賛否両論あることは重々承知していますが,今キャストのみなさんがお話ししてくださったとおり,バタフライ効果ではないですけど,あなたの一票が,もしかしたらキャラクターの運命を左右するかもしれない。とはいえこれは1stラウンドで,これですべてが決まるわけではありません。重たいように感じるかもしれないですが,自分もストーリーの一部になれるという考え方もあるので,いろいろな視野で楽しんでいただけたらうれしいです。
僕はどのバンドにも肩入れするつもりはなくて,バンドごとのポテンシャルを常に高いところに持ち上げていくことを,音楽の面では意識しています。だから,伊藤さんがファントムのライブを観て影響を受けたり,小笠原さんが奮起してくれたりしたようなことは,僕としてはすごく理想的な構図だなと思っています。そして,ArgonavisとGYROAXIAのような関係性もあって。
アーサーさんの言うとおり,リアルバンドの活動量に差が出てしまっていることには本当にジレンマがありますし,フウライもεpsilonΦも,いつかワンマンライブを実現させたいです。ワンマンライブをやった上で,LRFや,Destiny Rock festivalなど5バンドのライブもやりたいし,夢は広がるばかりです。今後もたくさんライブをして,たくさん曲をリリースして,キャラクターやストーリーの展開もたくさんお見せして,コロナ禍が明けたときにいろいろなものが爆発したらいいなと思います。もちろん,お金を使わずに楽しめる部分もたくさんありますので,気負わずにコンテンツを楽しんでもらえたら幸いです。これからもどうぞよろしくお願いします。
4Gamer:
引き続きの展開を楽しみにしています。本日は長丁場となりましたが,みなさんありがとうございました!
――2021年6月14日収録
各シングルの商品情報
【Blu-ray付生産限定盤】各7700円(税込)
【通常盤】各990円(税込)
※限定盤付属のBlu-rayにはTVアニメ「アルゴナビス from BanG Dream!」をそれぞれ収録
※【初回生産分限定封入特典】「ライブ・ロワイヤル・フェス 1st Round 前哨戦」投票券 (限定盤5ポイント,通常盤1ポイント)
※各音楽配信サイトにて配信スタート
Argonavis
GYROAXIA
Fantôme Iris
風神RIZING!
εpsilonΦ
「ARGONAVIS from BanG Dream!」公式サイト
「アルゴナビス from BanG Dream! AAside」公式サイト
「アルゴナビス from BanG Dream! AAside」ダウンロードページ
「アルゴナビス from BanG Dream! AAside」ダウンロードページ
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