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10nm CPUは安定供給されるのか? COMPUTEX 2019 Intel基調講演レポート
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印刷2019/05/30 21:56

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10nm CPUは安定供給されるのか? COMPUTEX 2019 Intel基調講演レポート

進行役を務めたのはGregory Bryant氏(GM & Senior VP,Client Computing Group,Intel)。氏が手に持っているのはIntel最初のCPU製品である「4004」チップだ
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 本稿ではIntelのCOMPUTEX 2019における基調講演レポートをお届けする。
 結論めいたことを先に言ってしまうと,今回の基調講演での最大のニュースは,第10世代IntelCOREプロセッサ(開発コードネーム「Ice Lake」)の量産が開始され,同時に出荷も始まったと公言されたことだろう。
 すでにこのニュースについての速報記事も上がっているが,本稿ではこの基調講演の全体的な流れを追いつつ,発表事項を総ざらいするようなスタイルで振り返ることにしたい。


ビジネスユーザー向け,クリエイター向けの製品を発表


 最初に発表されたのは企業ユーザー向けのCPUブランド「vPro」の新製品だ。vProシリーズはハードウェアレベルでのセキュリティ機構を内蔵したCPUで,今回発表されたのは,第9世代CoreプロセッサのノートPC/デスクトップPC向けのvPro版である。

「vPro」ブランドのCOREプロセッサは企業ユーザー向け製品である
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Xeon Eシリーズ搭載のクリエイター向けワークステーション
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 次はワークステーションやハイエンドクリエイター用PCに向けたCPU新製品の「Xeon Eシリーズ」「Core Xシリーズ」の新製品だ。
 前者は最大5GHz駆動に対応し,128GB DDR4-2666 ECCメモリが搭載できるところに特徴がある。こちらは本日より出荷が開始されたことが宣言された。対して後者の新Core Xのほうは今秋投入の予告に留まっている。

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Xeon Eシリーズの特徴をまとめたスライド
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Core Xシリーズの新製品は今秋登場予定

 今回の基調講演では,これらのハイエンドCPU搭載のPC製品は「クリエイター向けPC」というくくりで紹介されていた。
 実際に,こうしたクリエイター向けPCを業務に活用している台湾の著名スター/ミュージシャンのKawehi氏とJam Hsiao氏をステージに招き,男女2人による即興のショートセッションが披露された。

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台湾二大アーティストの登場に大きく沸いた会場。歌い合うKawehi氏とJam Hsiao氏。このブレゼンテーションパートでは,台湾現地メディアが大いに盛り上がっていた
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人気ゲーム実況者のDrLupo氏が登場
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M15を紹介するデルのBurd氏
 このあとは,基調講演会場内でファンに取り囲まれる一幕もあったほどの人気ゲーム実況者,DrLupo(ドクタールポ)氏とデルのClient Solution Group,PresidentのSam Burd氏がステージに登場した。
 ここで,それまでの「クリエイター向けPC」メインだった流れから「ゲーマー向けPC」の紹介へと移る。

 Burd氏が紹介したのは,この日発表されたばかりのALIENWAREブランドのゲーマー向けノートPC「M15」「M17」の新モデルだ。薄さは両モデル共に20mm未満を誇り,重量もともに2kg台と,持ち歩いて使える範囲に収まっている。搭載CPUは,世界初の8C16T仕様で5GHz駆動に対応したモバイル向けの第9世代Coreプロセッサだ。

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M15上でゲームを動かして感触を語るDrLupo氏

 ここの発表パートでは実際にDrLupo氏がM17を使い,本格的なリアルタイムバーチャルスタジオでグリーンバックなどを駆使したFortniteのミニ実況が行われた。
 このミニ実況の流れの中で,Bryant氏は,「ゲーム用途にはこちらもどうぞ」と,発表されたばかりの「Core i9-9900KS」の商品パッケージを掲げて紹介した。このCPUは,全コアが最大5GHzで動作できる特別仕様の製品になる。Intelは「ゲーマー向けCPUの最高峰」というブランディングで2019年末にリリースする予定だとのこと。

発表されたばかりの「Core i9-9900KS」の商品パッケージを掲げるBryant氏
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 Bryant氏は「ゲーマーは常に最高性能を求める人達だ」という前置きのあとに,Intel謹製の自動オーバークロッキングツール「Intel Performance Maximizer」を紹介した。

AMDで言うところのRyzen Master的なCPUメーカー純正のオーバークロックツール。UIや見映えはRyzen Masterよりも洗練されている印象
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 Intel Performance Maximizerは,オーバークロックの初心者にも使えるように開発されたツールだそうで,自動オーバークロック開始のボタンを1クリックをするだけで,その直後からシステム上のCPUの全コアで安定的に動作すると見込める電圧,クロックを自動検証してくれる。この検証終了後にIntel Performance Maximizerが算出した設定を受け入れるだけでオーバークロッキングは完了するので,誰でもそのCPUの最大性能を楽しむことができるというわけだ。なお,このツールは6月中旬に無償提供される予定だとのことである。


Prokect AthenaはUltrabookに続くヒットとなるか?


 「スマートフォンのようなスリープからの高速復帰,高速起動」「PCならではの高性能」「常時接続性」「長時間バッテリー駆動」といった新時代のリアルモバイルノートPCアーキテクチャをIntel自らデザインして規格化したものが「Project Athena」であるが,その規格バージョン1.0が,この日リリースされたとBryant氏は発表した。

新しいリアルモバイル系ノートPCの規格となるProject Athena。今回リリースされたのはバージョン1.0を意味する「Athena 1.0」である
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今年末にProject Athenaベースの製品リリースが見込まれるPCメーカー一覧
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LenovoのConsumer DevicesでSenior Vice Presidentを務めるJohnson Jia氏は,このProject Athena 1.0規格を満たす新薄型ノートPC試作機の「Yoga S940」を持参してステージに登場
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 このパートではLenovoのConsumer DevicesでSenior Vice Presidentを務めるJohnson Jia氏がステージに招かれ,このProject Athena 1.0規格を満たす新薄型ノートPC試作機の「Yoga S940」をお披露目した。Yoga S940は薄さ約12mmの極薄型ノートPCで,重さは1.2kg程度しかなく,それでいて15時間近くのバッテリー駆動を実現するリアルモバイルノートPCになる。画面サイズは約14インチで4K IPS液晶パネルを採用。ベゼルはほとんどないかのような狭額縁デザインとなっている。

 このProject Athena規格は,かつて成功を収めた極薄高性能ノートPCフォームファクタであるUltrabookの後継に相当し,今回も各社から多様なProject AthenaベースのノートPCがリリースされると見られる。発売時期は2019年末頃と予告された。


10nm製造プロセスのCPU「Ice Lake」はついに安定供給されるのか


10nm製造プロセスで生産される第10世代IntelCOREプロセッサ「Ice Lake」がついに出荷開始へ
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 基調講演最後の最後に発表されたのが目玉の第10世代Coreプロセッサ,開発コードネーム「Ice Lake」だった。
 Ice Lakeは10nm製造プロセスルールによって製造されるCPUで,Intel製CPUとしては最も微細度の高い製品になる。Intelが2017年ごろには本格始動させようとして開発してきた10nm製造プロセスが,やっと実動するということで,来場者はもちろんのこと,場内にいた多数のIntel関係者達も盛大な拍手を送っていた。

 このセクションでステージに招かれたのはイスラエルでこのプロジェクトの指揮を執っていたIntelのPlatform Engineering Group, Director Product Development でVice Presidentを務めているUri Frank氏だ。
 Frank氏はウエハをステージに持参し「第10世代Coreプロセッサはいままさに本日から出荷を行っている」と嬉しそうコメントし,ここでも場内から拍手が巻き起こった。

Frank氏からウエハを手渡されて,感慨深い表情を見せるBryant氏
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Ice LakeはAVX-512とDL Boostへの対応がアピールされたために,今回の基調講演はAIアクセラレーション寄りのストーリーへと流れていった
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 このセクションでは,第10世代Coreプロセッサの特徴であるAIアクセラレーション機能をアピールする実演が行われた。
 Ice LakeはSIMD型のベクトル演算命令セットのAVX-512に対応すると共に,推論処理のアクセラレーションに貢献するAVX-512の拡張命令セットDL boostにも対応する。DLはDeep Learning,いわゆる機械学習型AI向けの処理に向いた拡張命令セットを有しているというわけで,この発表セクションでは「Ice LakeはAIに強い」ということがアピールされたのである。
 余談ながら補足すると,AMDのRyzenシリーズは最新モデルのZen 2ベースの第3世代RyzenでもAVX-512をサポートしていない。これはAMDとしては機械学習型AI向けの処理はGPGPUで行うべきというスタンスであるためだ(AVX-512自体はAI向けというわけでもないが)。

 さて,このタイミングでステージに招かれたのはMaia Shibutani氏とAlex Shibutani氏の2人だ。この兄妹はアメリカのフィギュアスケート選手で「PCが大好き」ということで呼ばれたとのことである。
 ステージでは二人の写真のみならず動画までをAIで超解像処理したり,バーベルを上げ下げする選手の姿勢をリアルタイムにトラッキングしつつ評価するデモが行われた。

ステージに招かれたのはアメリカのフィギュアスケート選手Maia Shibutani氏とAlex Shibutani氏の兄妹だ。これは2人の写真をAIを使った超解像加工をしてみせているところ。写真では分かりにくいが左が処理前,右が処理後である
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バーベルの上げ下げを行う兄のAlex Shibutani選手。正しいトレーニングとなっているがかどうかを,AIが自動チェックする仕組み。こうした一連のAI処理はIce Lakeに内蔵されたAVX-512/DL Boostの恩恵でアクセラレーションされる
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 AMDが新CPUを衝撃の価格と共に発表した翌日だったので,Ice Lakeをはじめ,発表されたさまざまなCPU製品における,なにかしらの価格にまつわる話もあるかと期待されたのだが,そうした話はなかった。
 Intelの8コア超のCPU製品は「どれもお高い」というイメージがある。AMDの第3世代Ryzenが発売される7月以降,Intelからのなんらかのカウンターパンチを期待したいところだがはたしてどうなるだろうか。

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  • 関連タイトル:

    第10世代Core(Ice Lake,Comet Lake)

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