インタビュー
人間とは“何”か――重厚なテーマを描く「RenCa:A/N」開発の経緯とは。木村明広氏と保志総一朗氏らにインタビュー
2019年内にリリース予定のオルトプラスとビーグリーの共同企画タイトルとなる,新作スマホアプリ「RenCa:A/N(レンカ アルバニグル)」(iOS / Android)。本作は,葛藤と熱い絆の物語が描かれる女性向けRPGで,原案を木村明広氏,原作をビーグリー,開発・企画・配信をオルトプラス,そして保志総一朗氏がスーパーバイザーを務めるオリジナルIP創作プロジェクトだ。そんな「RenCa:A/N」の魅力を伝えるため,木村氏,保志氏をはじめ原作・企画を手掛けるスタッフ陣が編集部を訪問してくれた。
本稿では,プロジェクト発足の経緯や,本作のテーマなどを聞いたインタビューをお届けする。
「RenCa:A/N(レンカ アルバニグル)」
開発の経緯を聞く
本日はよろしくお願いします。時間も限られているのでいきなり本題に入りますが,本プロジェクト発足の経緯を教えてください。
ビーグリー コンテンツプロデュース部長 秋田堅司氏(以下,秋田氏):
このプロジェクトは人との縁から始まっているので,まずは木村先生と保志さんとの出会いから話さなければなりません。
4Gamer:
ぜひお願いします。
秋田氏:
最初は,弊社が運営しているクラウドファンディングサービスで,木村先生と保志さんがドラマCDを作るプロジェクトを動かしていたのがきっかけでした。
4Gamer:
あ,「エレメンタルドラグーン」のプロジェクトですね(関連記事)。保志さんはそのとき,プロデューサーとして関わってらしたんですよね。2人はその頃からのお付き合いなんですか?
木村明広氏(以下,木村氏):
発端はそれでしたね。
保志総一朗氏(保志氏):
プライベートではなかなか会うタイミングが少ないんですけど,わりと関わることが多くて,気づけば友人みたいな感じになってます。
4Gamer:
そこからご縁が繋がって今に……。
秋田氏:
はい。じつはそのときから,お2人はゲームが作りたかったんです。ただ,ゲーム開発にはとてつもないお金と人,時間がかかること,まだクラウドファンディングが日本で広く普及しているわけでなかったことなどが重なり,難しいとされて,まずはドラマCDから始めようという流れですね。
4Gamer:
そのときからゲームプロジェクト自体は木村さんたちの頭にあったんですね。それに今回,ビーグリーも賛同されて,実現したと。
秋田氏:
木村先生といろいろお話ししているうちに,これは面白い原案だと思いましたし,保志さんが関わっている点からも可能性が感じられたんです。私自身ゲーム業界歴が長いので,こちらの縁も使いつつ一緒にプロジェクトを起こしましょう,というのがプロジェクト発足までの経緯です。
4Gamer:
複数のゲーム開発会社があるなかで,オルトプラスを選んだ理由はなんでしょう。
秋田氏:
ファンと寄り添った運営をしていきたかったので,開発と運営が両方できることがマストだと考えました。それにオリジナルIPに挑戦する企業は意外と少なくて,そのなかで女性向けタイトルの実績があり,ファンと寄り添った運営ができるところとなると,自然とオルトプラスさんに。
オルトプラス ディレクター 齋藤和明氏(以下,齋藤氏):
企画書に目を通したときは,1番最初に保志総一朗さんをはじめとする豪華声優陣の名前が並んでいたので,すごく驚きました。
保志氏:
今回のプロジェクトは,キャスティングが先に決まっていたので(笑)。
齋藤氏:
弊社のアプリ開発と,運営の知見を活かすことで,このプロジェクトの成功にコミットできるのではないか……と判断したため,参加させていただく形になりました。
なるほど。では保志さんはスーパーバイザーとして,どういった面に関わっているのでしょうか。
保志氏:
僕は,ゲーム作りにおけるキャラクターの設定だったり,キャスティングだったり,システム面のこうしたほうが遊びやすいんじゃないか,みたいな細かい部分も監修させてもらっています。もちろんみなさんと相談しつつですが。
木村氏:
気になるところは言ってもらって,そこから何ができるか,できないかを精査していく形ですね。
保志氏:
そうですね。この作品の対象は女性なんですが,僕の好みを反映してもらっている部分もありますし,テーマが重厚なので,男性に対しても訴えかけるような作品になっていると思います。
秋田氏:
保志さんは今回広告塔ではないので,プロジェクトのメンバーとしての役割をしっかり担ってもらっています。やはり可能な限り,保志さん含め全員が納得いく形にしていきたいので。
齋藤氏:
先日公開されたキービジュアルもそうですが,キャラクタービジュアルや設定も,保志さんを含めて相談しながら作りました。
4Gamer:
保志さんも制作側の一員なんですね。
保志氏:
そのなかでも僕が1番関わっている部分は,声優のキャスティングです。先ほども触れましたが今回キャラクターより先にキャストを決めて,声優に合わせたキャラクター作りをしてもらいました。もちろん全部がそうではないんですけど。そしてキャラクターの性格などを設定し終わってから,あらためてどのキャラクターに誰をキャスティングしていくかを決めていったんです。
4Gamer:
そうなると,「●●さんに合わせたキャラだけど,作ってみたら▲▲さんのほうが合っているなあ」なんてこともありそうです。
保志氏:
そういうこともあります(笑)。どういう声優さんに合うかとかは,僕のなかでも結構考えてこだわった部分です。
木村氏:
キャラクター設定,キャスティングについては何度も擦り合わせしたね。
秋田氏:
声優さんありきで作ると,作品性が失われてしまうのではという懸念もあったので,そこは話し合いと調整を重ねて,場合によってはキャスティングを入れ替えるとか……そういった議論は何度も行いました。
テーマは“命”。乙女ゲームとは異なる“愛”の形を描く
そもそもなのですが,なぜ“女性向け”なのでしょうか。
木村氏:
やはり保志総一朗がスーパーバイザーの時点で,女性に向けたプロジェクトに可能性を感じましたし,もともと女性向けになっても大丈夫だろうと思っていました。今回のテーマは“命”や“人”という存在はなんなのかなので,男女関係なく感動できたり,考えさせられたりする作品になっています。
秋田氏:
ベースのストーリーは男の子が大好きなバトルもので,そこにオルトプラスさんや,弊社の作品創出のノウハウなどのエッセンスを入れながら形にしています。取り扱うテーマが重いだけに,かなり大人向けの作品ですよ。ちなみに女性向けといっても恋愛要素は一切ありません。
4Gamer:
あ,恋愛要素はないんですか!
木村氏:
まったくありません。乙女ゲームではないんです。
齋藤氏:
キャラクターとプレイヤーのコミュニケーションが楽しめる要素はあるんですけど,そこで育まれるのは恋愛ではありません。お互いがかけがえのない存在,相手がいないと成り立たない関係という,もっと深い部分が描かれます。それぞれキャラクターたちはいろいろなバックボーンがあり,プレイヤーとの関係を通して,恋愛とはまた違った絆を育んでいくことになります。
4Gamer:
今のお話と資料を見て思ったのですが,物語は結構シリアスめですか?
一同:
“ド”シリアスです。
4Gamer:
や,やはり。
齋藤氏:
“命”や“死”を基軸としたメインストーリーに,保志さんから要望いただいたキャラクターたちの“熱い絆”を落とし込んでいくと,やはり表現が重くシリアス寄りになっていきました。そのなかでシナリオでは葛藤や,プレイヤーとキャラクターの関係性をしっかり描いていくことを大切にしています。
木村氏:
先ほど乙女ゲームではないと言いましたが,根本的には“愛”のストーリーになっています。ただ,“愛”を中心にして物語が進む乙女ゲームとは違い,「愛があるが故に守りたい」,「愛を持つから人間はどういうものなのか」という方向性にシフトしているんです。
4Gamer:
分かるような,分からないような……。
木村氏:
まだあまり詳しいことは言えないのですが,「人間は何をもって人間なのか」みたいな話だと思ってもらえると。
4Gamer:
深いですね。続報を楽しみに待ちたいです!
バトルでは「絆レベル」が勝利の鍵を握る――
4Gamer:
ゲームサイクルはどういった形になりますか。
齋藤氏:
ゲームの流れは,「クエスト」で手に入る専用アイテムを使って,「ストーリー」を読み進めていく形です。それに加えて,「絆コミュニケーション」システムで,キャラクターと日常的な“会話”をしたり,“お願い”をされたりといったコミュニケーションが楽しめます。
4Gamer:
そこで親密度的なものを上げていくんですね。
齋藤氏:
そうですね。ただ本作では,親密度ではなく“絆レベル”と表現しています。「絆コミュニケーション」などで関係値を積み重ねていくと,キャラクターの個別ストーリーが開放される仕組みです。
4Gamer:
キャラクターとの絆レベルが上がると,バトルに影響はありますか。
齋藤氏:
まさに,本作ではそれが1番強い軸になっています。「絆コミュニケーション」でキャラクターとどれだけ仲良くなったかによって,カードのステータスが上がっていくんです。
4Gamer:
普通は,カード自体に経験値やレベルがある形が一般的ですよね。
齋藤氏:
はい。ですが“女性向けRPG”を作るうえで,カードの育成よりも,キャラクターに対して尽くすシステムのほうが好まれると思いました。カードを重ねて強くなる要素もあるんですけど,成長としての1番強い軸はキャラクターとコミュニケーションをとりましょうという形ですね。
4Gamer:
もっとお話を聞きたいところですが,お時間が来てしまいました。最後に,保志さんと木村さんから読者へメッセージをお願いします。
保志氏:
ユーザーのみなさんと一緒に育てて作っていくプロジェクトにしたいと思っています。リアルイベントなどを通して,みなさんと楽しみながら盛り上げていきたいので,ぜひこれからよろしくお願いします!
木村氏:
僕自身,この作品が世に生まれるのをずーっと心待ちにしています。そういう意味では制作側とはいえ,本作を楽しみにしてくれているファンのみなさんと一緒ですね。ぜひ僕と一緒に期待して待っていてほしいと思います。
4Gamer:
ありがとうございました!
今後のプロモーションとしては,スーパーバイザーである保志氏を筆頭に,リアルイベントなどを計画しているとのことなので,続報を楽しみに待とう。
なお,今回の取材の際に保志氏のサイン色紙を2枚いただいた。4月6日に掲載する連載記事「Weekly 4Gamer」のプレゼントコーナーにて掲載予定なので,こちらもあわせてチェックしてほしい。
「RenCa:A/N(レンカ アルバニグル)」公式サイト
(C)2019 Beaglee Inc./ Alt Plus Inc. All Rights Reserved.
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