プレイレポート
[プレイレポ]「ボコスカウォーズ」がチェスに。アプリの活用と運の揺らぎを表現したルールが特徴のボードゲーム
アプリの活用と運の揺らぎを表現したルール
ピグミースタジオは,「職人集団のデジタル おもちゃ稼業」を掲げ,王となって敵陣に攻め込む「ボコスカウォーズ」を手がけたラショウ氏が豪腕を振るう個性派デベロッパだ。野犬となって生き抜く「野犬のロデム」,弁当屋の店主となって創作弁当の製作や他店の妨害などに勤しむ「弁当の素晴らしさをあの2度3度」,伝説の名作が現代に復活した「ボコスカウォーズII」といった,ユニーク過ぎる作品で知られている。
そんなピグミースタジオが「BitSummit Let's Go!!」に持ってきたのは「ボコスカウォーズ」をモチーフにしたボードゲーム「ボコスカチェス」だ。「ボコスカウォーズ」のボードゲーム化と聞くと,ウォーシミュレーション的なものを想像してしまうがさにあらず。名に“チェス”とある通り,チェスに「ボコスカウォーズ」らしさを加え,ボードとアプリが連携した独特のゲームになっている。
ピグミースタジオブースでは,「ボコスカチェス」を考案した“羅匠名人”ことラショウ氏と直接対局することができた。新競技でいきなり名人戦を楽しめるわけで,実にレアな経験といえるだろう。
「ボコスカチェス」は,2人の対局者がそれぞれスレン王国軍(青)とバサム帝国軍(赤)を担当。「王」「騎士」「重騎士」「兵卒」といったコマを動かし,“相手の王を倒す”か“相手のコマを8個倒す”と勝ちだ。基本的なゲームの進め方はチェスと同じで,対局者がそれぞれ順番にコマを動かしていく。
チェスと異なるのは,陣地には敵の騎士と兵卒を捕らえた「牢屋」が,フィールドには障害物である「木」や「岩」が存在する点だ。牢屋は騎士か重騎士なら開けられ,進路上の木は王が取り除けるのは原作と同様。敵陣の牢屋を破って味方を助け出したり,王を使って進軍ルートを切り拓いたりといった「ボコスカウォーズ」っぽい展開も楽しめる。
相手コマのいるマスに対し,自分のコマを攻め込ませると戦闘が勃発する。チェスなら攻め込んだ側が一方的に勝利となる。しかし,本作ではコマの種類ごとに戦力が異なるため,運次第では攻め込んだ側が負けたり,引き分けたりする,チェスでは起こり得ない揺らぎが発生するのが特徴だ。
戦闘の際は,敵味方がお互いに6面体ダイスを振り,出目合計の大きい方が勝利となる。ダイスは出目の配置が異なる「大」「中」「中小」「小」が存在する。1〜6の数字が書かれているわけではなく,「自軍マーク(+1点)」「敵軍マーク(−1点)」「空白(±0点)」の3種類の目があり,ダイスの種類によって目の構成が異なっている。
例えば大ダイスは,自軍マーク5つ+空白1つで有利になる確率が高いが,小ダイスの構成が自軍マーク2つ+敵軍マーク3つ+空白1つで,運が悪いと不利になりかねない。そして王は4種のダイスを1個ずつ振れ,兵卒は小ダイス1つしか振れない。言い換えれば“ダイスの質と数の違いにより,コマごとの戦闘力が表現されている”わけだ。
そして,近くに自分より強い味方のコマがいれば,助力してもらえる。味方が持つ最も良質なダイスを1つだけ借り,自分のダイスと取り替えて振れるのだ。助力は味方コマが移動できる範囲ならどこでも可能。将棋の「飛車」のように縦横どこまでも動ける重騎士なら,軸が合っているマス全てが助力可能範囲となる。重騎士本人の戦力が高いうえ,助力でにらみも利かせられるわけで,自分で攻め込むべきか,温存して助力に活用するかという本作独特の駆け引きが生まれる。
助力を駆使すれば守る側が有利なようだが,攻め込む側は2つの面に+1の目がある「攻撃サイ」を加えられるので,バランスは取れている。
ダイスの数や種類について,プレイヤーはとくに気にする必要はない。タブレットにはサポートアプリが入っており,敵味方のコマと助力の数だけ指定すれば,あとはアプリ側で適切な数のダイスを用意してくれる。プレイヤーは,念を込めつつタップしてダイスを振ることだけを考えていればいいわけだ。
戦術オンリーで勝敗が決まるチェスと違い,本作はダイス運の影響も少なくないため,負けても「ダイス運さえ良ければ勝てたんだ!」と感情の持っていき場があり,気楽に再戦を挑めるのだ。
「ボコスカチェス」のプレイはアプリのサポートを受けられる。戦闘に参加するコマを指定すると,アプリ側が適切なダイスを用意してくれる |
ダイスを振った状態。自軍の出目が2つ,敵軍の目が1つ,空白が1つで合計+1点。空白の目があるため,戦闘結果は運の影響を受ける |
実際に“羅匠名人”と対局したところ,思わぬ勝ちを拾うこともあれば,ダイスの出目が悪くて有利な戦いを落とすこともあった。結果はもちろん筆者の負けだったが,運要素のおかげで負けても清々しく,またプレイしたくなったのだ。
「ボコスカチェス」はアナログとデジタルが曖昧な問題作
4Gamer:
よろしくお願いします。改めまして,「ボコスカチェス」とはどういったものなのでしょうか。
アナログとデジタルが曖昧な,ギリギリの問題作といえるのかも知れません。ベースになった「ボコスカウォーズ」については,勝敗に運が絡む「運ゲー」というお声をいただいておりましたが,その運要素をチェスに活かしてみたい,と思ったのが開発のきっかけです。
チェスは思考力のある人が圧倒的に強く,そうでない人が勝てる確率はほとんどありません。プレイヤー同士の優劣がつきやすいともいえ,ご家庭で遊ぶには差し障りがないとも言えません。そこに運が絡めば「手加減をする気はなかったけれど,負けちゃった」というシチュエーションも起こり得ます。
チェスのような見た目なのに,勢いで勝てるような要素もある,そんなゲームを作ればチェス自体の門戸も広げられるんじゃないかな……という高い理想のもとに作り始めました。実際は,木を切ったり牢を開けたりといった「ボコスカウォーズ」らしさも取り入れたうえで,強さを調整していかなければならなかったので,大変でしたね。例えば騎士にしても,ボコスカウォーズらしい騎士というのは,時々は兵卒にやられなければいけないわけですから。
4Gamer:
競技としてのチェスというよりは,戦略の良し悪しに運の揺らぎを取り入れ,それでいてチェスっぽい遊びにしているということですね。
ラショウ氏:
「ボコスカウォーズ」のバランスというのは絶妙で,負けてもまたやりたくなる“病み付き度”がありました。これを「ボコスカチェス」にも取り入れ,思考力の格差があっても勝てる時が結構ある,というものにしたかったんです。そのため,ダイスの目については試行錯誤して決めていきました。
4Gamer:
特製ダイスを用意するというのは面白いアイデアですよね。コマの種類ごとにどのダイスを振るかはアプリ任せなので,人間側に手間はないですし。
ラショウ氏:
王が単身で敵陣に突っ込んでいくようなこともできます。チェスだと単なる破れかぶれですが,「ボコスカチェス」ならダイス運で勝ち進めたりもして,ドラマが発生する。これって「ボコスカウォーズ」っぽいよねって(笑)。
4Gamer:
今後「ボコスカチェス」はどのように展開していくのでしょうか。ボードゲーム化やデジタルアプリ化など,いろいろと考えられると思いますが。
ラショウ氏:
個人的には,アナログとデジタルの両方を少しずつ使ったような娯楽が沢山出てきてほしいと思っています。そうした問いかけの最初が「ボコスカチェス」ですので,デジタルアプリ化は考えていません。生身の人間同士が顔を突き合わせて対局する際には,ゲーム盤の外にもコミュニケーションがあります。それは,知らない人とオンラインで対局するのとは違うんです。
ただ,量産はしたいですね。今の「ボコスカチェス」のコマは,ドット絵を木で表現している関係上,構造的に弱い所があり,作るのに失敗するようなケースもあって,結構高価なんです。書籍+ダイスの形式でプレイヤーさんを増やしたいですね。そもそもゲームというのは,プレイを通して自分がどういう人間であるかを楽しみながら理解する,というものだと思います。
4Gamer:
ゲームのプレイには人間性が表れますから,そこから自分を見つめ直すのも面白いかもしれませんね。「ボコスカチェス」の今後の展開を楽しみにしています。ありがとうございました。
ピグミースタジオ公式サイト
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