プレイレポート
臨機応変なDJや,会場を盛り上げるスーパーファンになりきろう。「ヘキサグルーヴ:タクティカルDJ」のプレイレポートをお届け
ヘキサグルーヴの開発を手がけたのは,スウェーデンのIchigoichie Games。同社には日本でのゲーム開発経験があるメンバーもいて,社名のIchigoichieも「一期一会」からとったものだ。
“タクティカルDJ”“ミュージック・ストラテジー”を謳う本作の目的は,ライブ会場のオーディエンスを熱狂させること。
音楽ゲームでありながらリズムアクションではなく,ゲームシステムは独自性が高い。加えて,ゲーム内での説明は少なめなので,プレイ開始直後はいろいろと戸惑うかもしれないが,基本的には,「キック」「打楽器」「ベース」「コード」など8つの楽器にフレーズを演奏する指示を出し,観客を熱狂させて「ユーフォリア」を蓄積。ユーフォリアがMAXになる度にスタートするミニゲームをこなし,DJプレイを完遂する……という流れになる。
プレイでは,観客の「ライフ」(画面左上にある赤いゲージ)に気を付けなくてはいけない。ライフは時間の経過とともに減少していき,ゼロになるとゲームオーバーになってしまうのだ。高難度のステージにもなると,少しまごついただけであっという間にライフが減って終了……となることも珍しくない。
ライフを回復させるには,後述する「トリック」をうまく決めたり,観客が飽き始めたフレーズを切り替えたりする必要がある。一般的なリズムアクションのように「曲を覚える」ということはできず,オーディエンスの反応を見ながら柔軟に対応するプレイが,“タクティカルDJ”を謳う本作の特徴だ。
ユーフォリアもライフと同じく重要だ。ユーフォリアは観客の熱狂度を表すもので,円状に配置された楽器の演奏から生み出され,画面中央のピンク色の球体に溜まっていく。楽器アイコンからピンク色のラインが出ているときは,観客がその楽器のフレーズに満足しており,ユーフォリアが増え続けている(熱狂し続けている)。
しかし観客は移り気なので,同じフレーズを流し続けていると,飽き始めてピンク色のラインが途絶えてしまう。心に響かずスルーされている状態だ。放っておくと完全に飽きられてしまい(飽きた度合いによって楽器アイコンの色が青→緑→赤と変化する),ペナルティとしてライフの減少が速くなるため,かなり危険だ。
DJプレイの素人からすると「観客が飽きる前にフレーズをどんどん切り替えていけば,ドッカンドッカン沸いてくれるんじゃない?」と思ってしまうが,それは大間違い。ノっているところを邪魔してはいけないのだ。つまりフレーズの切り替えが早すぎてもダメということになる。
観客の状態は演奏が続くにつれて変化していくし,楽器のフレーズもそれぞれ演奏時間が異なるので,あっちの楽器に飽きたのでフレーズを変え,こっちの演奏が終わりそうなので心の準備をしておき……と,リズムアクションとは違った種類の忙しさがある。
そんなプレイをさらに奥深くしているのが「トリック」とフレーズの「属性」だ。トリックは特定の条件を満たして演奏すると,評価が上がったり,ライフが回復したりする要素。同時に2つの楽器の演奏を開始する「クイックフィンガーズ」や,タイミング良くドラムをスタートさせる「キックオフ」,あえて楽器の演奏を停止させる「ミニドロップ」などがあり,うまく決めればDJ気分がさらに高まること間違いなしだ。
フレーズの属性は音楽にゲーム的な戦略性を加えるもの。ライフに余裕がある開始直後に「ユーフォリアの蓄積は早いが,ライフが減りやすい」フレーズで一気にユーフォリアを稼ぎ,操作が忙しくなりそうなら「飽きるまでの時間が長い」フレーズを使うといった“作戦”が必要になる場合もある。
こういったプレイ感を,ゲーマーに分かりやすく表現するなら,MMORPGの戦闘が近いかもしれない。「効果やクールダウン時間の異なるスキル(フレーズ)を駆使して,時間と共に減少するライフを回復させつつ,ダメージを与えていく(ユーフォリアを溜めていく)」といったところか似ているのだ。
演奏を続けてユーフォリアがMAXになると,画面はライブ会場からミニゲームへと切り替わる。フレーズの組み合わせを決めた後,リズムアクションやレース風のゲームにチャレンジするのだが,このフレーズの組み合わせには相性があり,プレイの評価に関わってくる。ただし,どの組み合わせがいいのかを事前に確かめる手段がないため,高評価を追求するならいろいろと試さなくてはならないだろう。
こうしてステージでの演奏とミニゲームを何回か繰り返し,最後まで演奏できればスコアと評価が表示されて,そのステージのプレイが終了する。
本作は最大4人での協力プレイも可能だ。プレイヤーは「DJ」あるいは「スーパーファン」となり,それぞれの役割を果たしつつ,演奏の完遂を目指す。
DJはシングルプレイと同様に,8つの楽器に演奏の指示を出し,ミニゲームに挑む。DJ2人体制もできるため,「ワン・ショット」のように,フレーズの演奏時間が短く,操作が忙しくなりがちな楽器に専任プレイヤーを割り当てるのもいい。
ユニークなのはスーパーファン。楽器の演奏やミニゲームのプレイはできないが,スティックを回してライフを回復させたり,派手な「紙吹雪キャノン」を特定のタイミングで発射して専用トリックを成立させたり,ボタンに割り振られた手拍子などで演奏を盛りあげたりできる。DJにとってはとても心強い存在だ。
DJとスーパーファンに分かれての協力プレイは役割が違うだけに面白く,特にスーパーファンが頑張れば演奏そのものが盛りあがるので,ぜひ友人などとおすそわけプレイで楽しんでみてほしい。
本作からは,「音楽を自由に楽しんでほしい」という意図が伝わってくる。客席の反応を探りながらフレーズを選んだり,演奏を止めることが評価につながったりといったところは,常に「マーカー通りにボタンを押す」ことが求められる一般的なリズムアクションと大きく違うところだ。
ゲームシステムの説明が最小限に留められているのも,プレイヤーにいきなり攻略をさせるのではなく,演奏を楽しむ中でゲームの仕組みを少しずつつかんでほしいという狙いではないかと思う。ただ,個人的にはもう少し詳しい説明があってもいいのではないかと思ったので,今後のアップデートに期待したい。
そういったことを踏まえると,本作のコンセプトを最も体現しているのは,観客のライフを気にすることなく遊べる「練習と演奏」モードではないかと思う。好きなフレーズを組み合わせ,思うままに演奏できるこのモードには,ステージクリアを目指すプレイとは違った魅力がある。ちょっと疲れたときなどに,のんびりと音楽の楽しさを味わってほしい。
「ヘキサグルーヴ:タクティカルDJ」公式サイト
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ヘキサグルーヴ:タクティカルDJ
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