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スウェーデン発のヒット作「It Takes Two」レベルデザイナーが語る。デザイナーとプログラマー,役職の垣根を超えたクリエイティブな環境
フィリップ氏は,自身が設立に関わったスウェーデンのゲームスタジオ,Keepsake Gamesに所属するクリエイター。Hazelightが開発を手がけ,2021年にリリースされたアクションアドベンチャーゲーム「It Takes Two」(PC / PlayStation 5 / Xbox Series X / PlayStation 4 / Xbox One)では,リードレベルデザイナーを務めている。
プレイヤーから高い評価を得たHazelightのデビュー作「A Way Out」と同じく,「It Takes Two」はプレイヤー2人の協力プレイ専用タイトルである。さらにアイデアを洗練し,より多彩なゲームプレイを提供することを目標に開発がスタートしたが,同社の開発チームは「A Wat Out」制作時,ゲームプレイに起伏をもたらすために必要なシークエンス(「A Wat Out」の場合,カーアクションやシューティング)を完成させるまでの効率の悪さを問題視していた。
そこで,「It Takes Two」の制作初期に導入されたのが,「AngelScript」というUnreal Engine 4で使えるスクリプト言語。AngelScriptによって,ゲームプレイ中にスクリプトの変更と保存が可能になり,さらに変更した要素を即座に画面に反映させられるため,作業効率が大きく向上したという。
リードレベルデザイナーを務めるフィリップ氏は,プログラマーとデザイナーがAngelScriptという共通のツールを利用することで,デザイナーもゲームプレイのプロトタイプ作りに関わりやすくなった点に魅力を感じたと語る。プログラマー,デザイナーといった役職を意識することなく,多くのスタッフがゲーム作りを構想でき,「誰もがユーザーエクスペリエンスについて考える」ようになった点をメリットとして挙げた。
また,フィリップ氏自身は開発のごく初期,デザイン関連の仕様が固まる前からアイデア出しに参加したという。そのおかげでAngelScriptを使いこなすための経験を積みつつ,早い段階から「It Takes Two」の協力プレイの面白さを理解し,デザインにも取りかかれたと当時を振り返った。
動画ではAngelScriptを使ったワークフローの具体例として,「ローズの部屋・恐竜ランド」を完成させるまでのエピソードが披露された。ローズの部屋のシークエンスはゲーム序盤に置かれるため,プレイヤーを操作に慣れさせる役割を担っており,ゲームの大まかなレベル(難度)デザインが決定する。そのうえで「It Takes Two」の登場人物であるローズが,どんなおもちゃを持っていてる子供なのかを考えた末,恐竜ランドという舞台設定になった。
そこからは,具体的にどんな恐竜を使ったギミックをシークエンスの中に盛り込めるか,複数人のスタッフでブレインストーミングを実施。その結果,首が長いブロントザウルスを操るプレイヤーが障害物を動かして道を作り,小型の恐竜を操作するプレイヤーの進行を助ける,というゲームプレイ上のルールが決まったとのこと。
ゲームの大まかなデザインが決まると,テストプレイが可能になる段階までプログラミングする作業へと移っていく。ここで問題となったのが,人手と制作スケジュール。フィリップ氏とプログラマーの2人で,数週間のうちにローズの部屋・恐竜ランドを完成させる必要があったが,2体の恐竜の動きをシンプルに絞り込み,恐竜が移動するモーションを作るのではなく,地面や障害物を動かすことで恐竜が躍動しているような画面を作り出して,工期の短縮に成功する。
テストプレイでは,まず開発スタッフによってゲームのレベルを調整。その後,ゲーム制作とは直接関係がない外部の人にも遊んでもらい,プレイヤーが悩んで手が止まったところにはガイドをつけたり,カメラの角度を調整したりして,より多くのプレイヤーがルールを把握して,ゲームを進めていけるように細かい点をブラッシュアップしていった。
ローズの部屋・恐竜ランドを例に挙げた説明の締めとして,フィリップ氏は「It Takes Two」のワークフローで特に良かった点を2つ挙げた。1つ目は,AngelScriptを使うことでプログラマーと一緒に開発を進められる効率の良さ。もう1つは,デザイナーという立場でも,1つのシークエンスがゲームとして完成するまで見届けられたことだという。
一方でデザイナー以外の仕事,ゲームプレイやプログラミングの業務が増えたことは「リスクにもなり得る」と認識していたという。ただ,「It Takes Two」の制作では,あえてルールを破ることでフィリップ氏を含む開発スタッフが「自分のコンフォートゾーンを出て,潜在能力を解放できた」と語った。
終盤,フィリップ氏のスタジオで撮影したQ&Aに移行した。ここでは,以下の質問に答えている。
Q1. レベル(ゲームの難度)のハードルをどう評価していますか?
Q2. 協力プレイゲームのデザインのキーポイントは?
Q1. に関しては,基本的に収集したプレイヤーのデータの統計学的な観点から判断するという。そのうえで何人かのプレイヤーに集まってもらい,実際にゲームをプレイする様子を観察したり,録画したプレイ動画を見たりするとのこと。
ここで重視するのは,具体的にどんな難度に調整するかよりも,開発チーム全員がレベルデザインについて同意できる基準を作ること。基準を設けたうえで,自分たちが作っているゲームを難しくするのか,簡単にするのかを決めていく。
Q2. では「プレイヤーに協力する能力とスペース(時間や場所)を与える」ことが重要だと述べた。例えば,1人のプレイヤーに釘を,もう1人にはハンマーを持たせることで,2人で釘を打つという行動を連想させ,同じ空間に居合わせると協力プレイが実現する。より高度な協力プレイをデザインしたいと思えば,協力プレイの成功にタイミングを要求する操作を追加したり,強制的に協力プレイで目標を達成させるシチュエーションを用意することもあると語っている。
「It Takes Two」公式サイト
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