プレイレポート
「Idol Manager」体験版プレイレポート。華やかな世界の裏で繰り広げられるアイドルプロデュース業のリアル
「Idol Manager」は,ロシアのデベロッパであるGlitch Pitchが開発する,本格的なアイドル育成・事務所経営シミュレーションゲームで,発表後から何かと話題を集めていた注目作だ。製品版のリリース日は2021年7月27日となっており,INDIE Live Expo 2021では,主題歌やアイドルのボイスに,アイドルグループ「仮面女子」を起用していることも発表されていた(関連記事)。
この手のゲームが日本ではなく海外で開発されたことにまず驚くが,体験版をプレイしてみると,どう見ても日本のアイドル業界を描いており,何の違和感もなくゲームに入っていけた。本稿では,そんな「Idol Manager」の体験版プレイレポートをお届けしたい。
大物プロデューサーへの道もオーディションと宣伝から。地道なアイドル活動でファンをつかめ
ゲームを始めるとプレイヤーの分身であるプロデューサーの名前と,アイドルグループ名の入力が求められる。プロデューサー名は,4Gamer.netなので「四芸間熱斗」。アイドルグループ名は,「○○坂+数字が最近のトレンドなんだべ?」という安易な発想から「男坂99」に決定。のぼりはじめたばかりだからな……この果てしなく遠いアイドル坂をよ……。
体験版ゆえの不具合なのか,筆者のPC環境が何か悪さをしているのかは分からなかったが,漢字を入力しようとするとゲーム画面が非アクティブになってしまう現象が起きたため,事前にテキストファイルに名前を書いておき,それをCtrl+C(コピー)とCtrl+V(ペースト)で入力することで対応した。
空き部屋にプロデューサー室を作ったら,まずは「オーディション」でアイドルの卵を発掘だ。オーディションの規模は「地区」「ブロック」「全国」の3段階になっており,規模が大きくなるほど,スペックの高い子が来る可能性が上がり,その分費用もかかる。「全国」ではなんと1000万円もかかるが,「地区」なら10万円と安い。ただ,ケチりすぎても……というわけで,ここはとりあえず「ブロック」を選択してみる。
アイドル候補の女の子たちは,能力に個人差がある。最初から高スペックの子を発掘できると序盤を有利に進められるが,皆,何かしらの「スキル」を持っており,スキルは必ずしもプラスの性能とは限らない。体感だが,能力の高い子ほど,マイナス方向のスキルを持っているような気もする。各能力の上限値も示されるため,潜在能力か顕在能力か,はたまた,チームとしての和を重視するかで,採用基準は変わっていくだろう。
アイドルグループを結成したら,「アクティビティ」の実行に移る。アクティビティは「公演」「宣伝」「スパ」の3種類で,これらはゲーム内時間で1日1回だけ実行できる。
このアクティビティは非常に重要で,筆者は初回のプレイでこれを軽視していたため,散々な結果に終わってしまった。
何か行動を決定すると,実行されるまで少し時間がかかることがある。画面左下にある早送りマークを押すことで時の流れが加速するので,最初は「ずっと早送りにしておけばいいな」と思っていたのだが,早送りモードだと,ゲーム内での1日が約7〜8秒で終わるため,アクティビティを実行しないまま翌日になってしまう日も出てきてしまう。体験版は一定日数を過ぎると終了するため,効率良く進めるなら,常時早送りにはせず,時には停止も交えながら慎重に行動したい。
毎日何かしらのアクティビティを実行すれば,「公演」ならお金が入ってくるし,「宣伝」ならファンを獲得できる。しかし,代わりにアイドルたちのスタミナを消耗するため,毎日欠かさずアクティビティを実行すればいいとも限らない。スタミナの回復には「スパ」のアクティビティを選択すればいいが,お金を消費してしまう。
また,スタミナが低下すると負傷しやすくなり,低い状態で働かせ続けていると,「メンタル」が低下していく。メンタルが低下すると「ふさぎ込む」確率が上がるらしいので,アイドルたちのスタミナ管理とメンタルケアはかなり重要になりそうだ。
さて,プロデューサー1人ではアイドルグループの運営はできない。各種スタッフの雇用が必須だ。体験版では最低限必要となる3名,「販売マネージャー」「企画マネージャー」から1名,「ダンサー」「振り付け師」から1名,「作曲家」「ボイストレーナー」から1名を雇用することになる。それぞれに新たに部屋を割り当てる必要もあるため,序盤は何人も雇うのは難しいだろう。
各スタッフは「研究ポイント」によるアンロック要素がある。研究ポイントは,スタッフに仕事を割り振っていない間に少しずつ溜まっていく。マネージャーの場合だと,「マーケティング」というカテゴリの中に「デジタル限定配信」や「ソロ握手会」といったものがあり,これらをアンロックすることで実行できるようになる。どれからアンロックしていくかで戦略が変わっていきそうだ。
画面左のアイドルカードをダンサーやボイストレーナーの部屋にドラッグすると,トレーニングが始まる。アイドルに不足している能力をアップするには,地道なトレーニングが欠かせないというわけだ。
ただし,トレーナーには鍛えられる能力の上限値があり,トレーナーの能力以上には上げられない。能力の高いトレーナーは雇用にかかるお金も高いので,アイドルたちの能力アップに応じて,トレーナーも変えていく必要があるだろう。
そしてファーストシングル作成へ……
やはり,シングルをバリバリ売ってこそのアイドル稼業。宣伝でファンを増やし,トレーニングでアイドルの能力を上げた先にあるのは,チャートを賑わすヒットシングルの制作だ。
シングルの作成には,各スタッフの能力を総動員することになる。プロデューサーと,「販売マネージャー」or「企画マネージャー」,「ダンストレーナー」or「振り付け師」,「作曲家」or「ボイストレーナー」の計4名がそれぞれに時間を取られるし,制作枚数によって出費も増えるため,乱発はできない。そもそも,人気も実力もない状態でシングルを出しても,ほとんど売れずに大赤字になってしまう。
筆者は初回プレイ時にアクティビティの重要性を理解していなかったため,ファンをほとんど獲得できておらず,ファーストシングルの売上は散々なものだった。2回目のプレイではこまめに「宣伝」のアクティビティを繰り返してファンを獲得し,満を持して発売したシングル「バズッちゃうLOVE」の販売枚数は79枚に増加した……これでも100枚いかないのか。制作枚数を決めるときに「100枚」は少なすぎたかなぁと思っていたが,結果を見ればちょうど良かったという。
ファンの数だけシングルが売れるわけではないし,シングルのPVを「セクシー」などにすると,男性ファンの獲得と引き換えに女性ファンを失うこともある。何が正解かは分からないあたりも,妙にリアルだ。
骨太な経営シミュレーションと,波瀾万丈なアイドル育成の過程。製品版のリリースが待ち遠しい作品
体験版で触れられるのは本当に序盤のごく一部で,「まだまだこれから」というところで終わる。ある意味,プレイヤーが「もうちょっとやってみたいんですけど……!」と感じるラインで終了となるため,体験版としてのデキは絶妙と言える。本稿を読んで興味が出たら,ぜひ,体験版をプレイしてみてほしい。
驚いたのは,日本語のローカライズが完璧だったことだ。海外開発のゲームは,いかにも「英語を翻訳しました」感にあふれた,微妙に違和感を覚える日本語が散見されるものだが,本作にはそれが一切なかった。ローカライズの質は,かなり高いと断言できる。また,チュートリアルが非常に丁寧で,本当に手取り足取り教えてくれるため,「何をすればいいのか分からない」ということにはならないだろう。
「アイドル育成シミュレーション」という括りだけで見れば,1993年の時点で「誕生〜Debut〜」という作品があったり,2005年には「THE IDOLM@STER」が登場したりと,そう目新しいものでもないように見えるかもしれない。
しかし,本作はプロデュースの観点から「お金の動き」と「決められた時間内にどう動くか」を見極めて選択し,多くのことを同時に考えていく必要があるリアルタイム経営シミュレーションゲームだ。それでいて,自身がプロデュースするアイドルたちとの会話や各種イベントの対応も重要で,単なる経営ゲームだけにとどまらない確かな「アイドル育成感」がある。まさに「アイドル育成・事務所経営シミュレーションゲーム」の名に恥じない,今までありそうでなかったジャンルだ。
また,体験版でも少し見られたが,今の時代にありそうな,SNSや動画配信をキッカケとした炎上騒ぎや,その対応に追われるようなイベントもあるようで,ハプニングも楽しめそうだ。「アイドルが起こした炎上騒ぎの対応に追われる」ゲームなんて,そうそうないだろう。
筆者はシングル制作にのめり込んでしまったが,長い目で見るなら,充分なファンを獲得し,アイドルたちのスペックをトレーニングで上げた後のほうがいいだろう。次のシングルは確実に黒字になりそうな,500〜1000枚くらいを売り上げる見込みができてからかなぁ……とか考えていると,いつの間にかこのゲームにハマッている自分に気づく。アイドルに興味がない人でも,この「アイドルプロデュース業」の面白さには,ハマる可能性が高いかもしれない。
筆者としては体験版でシングル売上が散々だったので,この経験を活かし,製品版でミリオンヒットを狙いたい。
「Idol Manager」Steamストアページ
「Idol Manager」公式サイト
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