レビュー
5〜6万円台で買えるRTX 30シリーズとして魅力的
GeForce RTX 3050 StormX OC
そこで,今回はPalit Microsystems(以下,Palit)製のRTX 3050搭載カード「GeForce RTX 3050 StormX OC」を使用して,RTX 3050の実力を確かめてみたい。
依然として,実売7万円前後で販売されている「GeForce RTX 3060」(以下,RTX 3060)に手に届かない人は多いはず。そんなゲーマーにとって,RTX 3050は救世主足りえる存在になるのか。実際にゲームでどの程度の性能を発揮できるかを検証しよう。
RTX 3060と同じGA106コアを採用
動作クロックはRTX 3060に比べて高め
RTX 3050は,上位モデルのRTX 3060と同じ「GA106」コアを採用する。そのため,8nmプロセスルールで製造する点や,276mm2のダイサイズと約120億個のトランジスタが搭載されている点などは,RTX 3060と変わらない。
GA106についておさらいしておくと,フルスペックでは,ミニGPUとして動作する「Graphics Processor Cluster」(以下,GPC)を3基備え,1基のGPCは10基の演算ユニット「Streaming Multiprocessor」(以下,SM)で構成される。そのSMは,128基のCUDA CoreとWarpスケジューラ,命令発行ユニット,加えてロード/ストアユニットやL1キャッシュ,テクスチャユニットなどが統合されるという構成だ。
ただ,RTX 3060では,2基のSMを無効化しており,SMの総数は28基,つまりCUDA Coreの総数は3584基となっていた。一方のRTX 3050では,GPCを1基分丸ごと無効化しており,SMの総数は20基,CUDA Coreの総数は2560基だ。これはRTX 3060比で71%ほどの規模になる。
Ampere世代のGPUであるため,RTX 3050も,レイトレーシングにおける光線の生成と衝突判定を行う第2世代「RT Core」と,行列同士の積和算に特化した第3世代「Tensor Core」を搭載している。ただ,RT Coreは1基のSMにつき1基を,Tensor Coreは1基のSMにつき4基をそれぞれ組み合わせているため,RTX 3050ではRT Coreが20基,Tensor Coreは80基と,いずれもRTX 3060から減少している。
NVIDIAの説明によると,RTX 3050におけるRT Coreのスループットは18 RT-TFLOPSで,これは24.9 RT-TFLOPSだったRTX 3060の72%ほどになる。同様に,Tensor Coreのスループットは73 Tensor-TFLOPSで,これも102 Tensor-TFLOPSだったRTX 3060比で約72%だ。
RTX 3050のベースクロックは1552MHzで,CUDA Core数が減ったためか,RTX 3060の1320MHzと比べてかなり高めだ。ただ,ブーストクロックは1777MHzで,RTX 3060と変わっていない点は押さえておきたい。
さらに,Palit製アプリケーションの「ThunderMaster」を用いると,ブーストクロックを−1000〜+1000MHzの範囲から1MHz刻みで変えられるほか,GPUコアの電圧を現在の値に対する割合表記で,0〜100%増やすことも可能だ。そのほか,メモリクロックも2MHz刻みで12〜20GHz相当に変更できる。
グラフィックスメモリは,RTX 3060などと同じくGDDR6だが,その容量は8GBに減っている。とはいえ,GeForce RTX 30シリーズのラインナップでは,RTX 3060のグラフィックスメモリ容量12GBのほうが異例だった。そのため,RTX 3050の8GBは,RX 6500 XTの容量4GBや,前世代の「GeForce GTX 1660 Ti」(以下,GTX 1660 Ti)の6GBと比べて,エントリー市場向け製品としては十分な容量と言っていい。ただ,RTX 3050のメモリインタフェースは128bitに抑えられているので,メモリ帯域幅は224GB/sとRTX 3060の約62%で,GTX 1660 Tiよりも狭くなっている点は注意したい。
なお,GeForce RTX 3050 StormX OCのメモリクロックは14GHz相当で,リファレンス仕様のままだ。
そのほかの仕様も見ておくと,PCI Express(以下,PCIe) 4.0や遅延低減技術の「NVIDIA Reflex」,CPUからグラフィックスメモリへのフルアクセスを可能にする「Resizable BAR」に対応している点は,上位モデルと同じだ。
そんなRTX 3050の主なスペックを,RTX 3060とGTX 1660 Ti,それにRX 6500 XT,「Radeon RX 6600」とともにまとめたものが表1となる。
170mmを切るコンパクトなカードサイズ
ブーストクロックは30MHz高い1807MHz
それでは,GeForce RTX 3050 StormX OCのカードそのものについて見ていこう。
カード長は実測で約168mm(※突起部除く)だ。今回比較に用いるRTX 3060搭載カード「ZOTAC GAMING GeForce 3060 Twin Edge OC」が約227mmだったのに比べると,60mm近く短い。
マザーボードに装着した場合,ブラケットから垂直方向に20mmほどはみ出すのだが,PCIe補助電源コネクタの取り付けを考慮すると,その高さがネックになることはあまりないだろう。
なお,重量は実測で約464gと,短めのカードサイズらしく,比較的軽めだ。
GPUクーラーは2スロット占有タイプで,100mm径相当のファンを1基搭載する。GPUの負荷が低い状態,いわゆるアイドル時において,ファンの回転を停止する機能も用意されている。さらに,ThunderMasterを用いることで,ファンの回転数を1%刻みで30〜100%に固定したり,GPUコアの温度と回転数の関係を示したファンカーブ上から任意の温度の回転数をカスタマイズしたりすることが可能だ。
また,GPUクーラー側面にあるPalitのロゴにはカラーLEDが組み込まれており,ThunderMasterから発光色や発光パターンを変更できる。
カードを横から覗き込むと,GPUクーラーには6mm径のヒートパイプが3本用いられているほか,メモリチップや電源部にもヒートシンクがしっかり触れる構造となっている。
Palitによると,本製品は,電源部にドライバICとMOS FETを1パッケージに収めたDrMOSを採用しているとのこと。さらに,電源部は4フェーズ構成のようで,基板にはさらに2フェーズ分の空きパターンがあるのを見てとれた。
リファレンスとクロックアップの両方でテスト
ドライバには511.32を利用
それでは,テスト環境の構築に話を移そう。
今回,比較対象にはRTX 3060とGTX 1660 Ti,それにRX 6500 XTとRX 6600を用意した。つまり,上位モデルとの差がどれぐらいあるのかを見つつ,前世代からの伸び幅や,エントリーからミドルレンジにおけるRTX 3050の立ち位置を確認しようというわけだ。
ただ,今回使用したグラフィックスカードは,いずれもクロックアップモデルであったため,GeForce RTX 3050 StormX OC以外は,すべてMSIのオーバークロックツールである「Afterburner」(Version 4.6.4)を用いて,リファレンス仕様にまで動作クロックを落とした状態で計測した。
GeForce RTX 3050 StormX OCはクロックアップした素の状態と,動作クロックをリファレンス仕様に落とした状態の両方でテストを実施する。なお,それぞれを区別するため,以降,文中とグラフ中ともに,前者を「Palit 3050 OC」,後者をRTX 3050と表記することを断っておく。
グラフィックスドライバは,RTX 3050のリリースと同時に用意された「GeForce 511.32 Driver」で,これはテスト時に最新バージョンとなるものだ。一方のRadeon勢は,RX 6500 XTのレビューのために用意された「21.40
CPU | Ryzen 9 5950X(16C32T,定格クロック3.4GHz, |
---|---|
マザーボード | MSI MEG X570 ACE(AMD X570, |
メインメモリ | G.Skill F4-3200C16D-16GIS |
グラフィックスカード | Palit GeForce RTX 3050 StormX OC |
ZOTAC ZOTAC |
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ASUS ROG-STRIX-GTX1660TI-O6G- |
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Sapphire PULSE RX 6600 Gaming |
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ASUS TUF-RX6500XT-O4G-GAMING |
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ストレージ | Samsung Electronics SSD 850 |
電源ユニット | Corsair CMPSU |
OS | 64bit版Windows 10 Pro(Build 19043.1466) |
チップセットドライバ | AMD Chipset Drivers 2.13 |
グラフィックスドライバ | Radeon: |
GeForce:GeForce 511.32 Driver |
テスト内容は,4Gamerのベンチマークレギュレーション25に準拠している。それに加えて,今回はリアルタイムレイトレーシング性能を確認するため,「3DMark」(Version 2.22.7334)において,「Port Royal」と「DirectX Raytracing feature test」も追加した。さらに,DLSSの性能もチェックするため,「NVIDIA DLSS feature test」も実行しているが,こちらはGeForce RTX 30シリーズだけでの比較になる。なお,NVIDIA DLSS feature testでは,「DLSS2」を選択し,品質モードは「Quality」に設定した。
そのほかに,「Call of Duty: Warzone」は,「Call of Duty: Warzone Pacific」へと代わったため,RX 6500 XTのレビュー記事と同様に「基本演習」でテストを行っている。
テスト解像度は,RTX 3050の立ち位置を考慮して,1920×1080ドットを中心に据え,アスペクト比16:9でひとつ上となる2560×1440ドット,さらに,RTX 3050には負荷が大き過ぎるのは承知のうえで,3840×2160ドットの3つを選択している。
なお,今回のテスト環境は,RX 6500 XTのレビュー記事とまったく同じである。そのためRX 6500 XTとRX 6600のスコアは,同記事のものを流用している点をお断りしておきたい。
性能はRTX 3060の7割強
とくにDirectX 12採用タイトルで優秀な結果
それでは,3DMarkの結果から順に見ていこう。グラフ1は,「Fire Strike」における総合スコアをまとめたものだ。
RTX 3050のスコアは,RTX 3060比で66〜71%程度といったところ。テスト解像度が3840×2160ドットのFire Strike Ultraでは,僅差でRX 6500 XTに逆転されるという結果になった。この結果は,RX 6500 XTの最適化が優れているということなのだろうが,GTX 1660 Tiとの比較でも,勝ったり負けたりといういい勝負を演じており,RTX 3050の上積みはあまり感じられない。
一方,Palit 3050 OCの上積み分は,RTX 3050と比べて最大約3%と,クロックアップの効果が表れている。
続いてグラフ2は,Fire StrikeにおけるGPUテスト「Graphics test」の結果を抜き出したものだ。
RTX 3050のスコアは,2560×1440ドットまではRTX 3060の70〜71%程度と,総合スコアを踏襲したものとなった。だが3840×2160ドットになると,RTX 3050はRTX 3060の約65%にまで落ち込んでおり,差が広がっている。メモリ帯域幅の差が露呈したのだろう。GTX 1660 Tiに対しては,1920×1080ドットで約3%の差を付けられたが,2560×1440ドット以上の解像度では追い抜くといった印象だ。
Fire Strikeから,物理シミュレーション「Bullet Physics」をソフトウェア実行する事実上のCPUテスト「Physics test」のスコアを抜き出したものがグラフ3だ。
CPUは共通なのだが,若干のバラツキが見て取れる。全体的にRadeon勢のスコアが低めであるため,ドライバソフトによるCPUへの負荷は,GeForce勢のほうが若干軽いということなのだろう。
CPUとGPUの両方の性能がスコアに影響する「Combined test」の結果がグラフ4だ。
ここでは,RTX 3050があまり奮わず,RTX 3060比で57〜69%程度に止まった。1920×1080ドットでは,GTX 1660 Tiに約7%もの差を付けられており,まだ最適化が足りていないように思われる。
3DMarkにおけるDirectX 12テスト「Time Spy」の総合スコアをまとめたものがグラフ5となる。
RTX 3050のスコアは,RTX 3060の71〜74%程度であり,若干だがFire Strikeよりは差が縮まっている。GTX 1660 Tiに対しては,RTX 3050はTime Spy“無印”で約2%の差を付けているが,Time Spy Extremeで並ばれており,大きな差は見られない。なお,Palit 3050 OCのスコアは,RTX 3050と比べて1%も伸びておらず,クロックアップの効果は見られない。
続いては,Time Spyの総合スコアからGPUテストの結果を抜き出したものがグラフ6である。
RTX 3050のスコアは,RTX 3060比で69〜71%程度と,総合スコアよりも差が広がってしまったものの,おおむねFire Strikeと似た傾向だ。GTX 1660 Tiに対しては,Time Spy“無印”で差を付けたものの,Time Spy Extremeで追いつかれるという総合スコアを踏襲した形となっている。
グラフ7は,同様に総合スコアからCPUテストを抜き出したものだ。ここではFire Strikeは異なり,おおむね横並びとなっている。CPUは共通なので,妥当な結果と言えよう。
続いて,リアルタイムレイトレーシングの性能を計るPort Royalの結果がグラフ8だ。なお,GTX 1660 Tiのスコアが「n/a」なのは,レイトレーシングユニットを持たないためである。
RTX 3050のスコアは,RTX 3060の約70%となり,NVIDIAが示すRTX 3050のRT CoreのスループットがRTX 3060の72%であることを踏まえると,順当な結果と言えよう。ただ,RX 6600には届いておらず。RTX 3050のレイトレーシング性能はさほど高くないと言っていい。
もうひとつのレイトレーシングテストであるDirectX Raytracing(DXR) feature testの結果が,グラフ9だ。GTX 1660 Tiのスコアがn/aなのは,Port Royalと同じ理由である。
RTX 3050のスコアはRTX 3060の72%ほどで,Port Royalと大差ない結果だ。ただ,実フレームレートを見ると,RTX 3050は14fps弱でかなり低めである。競合となるRX 6600やRX 6500 XTに比べれば十分高いのだが,それでもRTX 3050のレイトレーシング性能は,期待薄だ。
続いて,DLSSの性能を見るNVIDIA DLSS feature testの結果(グラフ10)を見てみよう。今回のラインナップでDLSSに対応するのは,Tensor Coreを持つGeForce RTX 30シリーズだけなので,比較するのも3種類だけだ。
その結果だが,DLSSを有効にすると,RTX 3050はフレームレートを168〜196%と大きく伸ばしている。ただ,DLSSの効果は明確に確認できるのだが,DLSS on時の1920×1080ドットでも,RTX 3050のフレームレートは45fps程度に止まっており,レイトレーシング性能と同様に地力が足りていない印象だ。
実際のゲームにおける性能はどうか。グラフ11〜13は「Far Cry 6」のテスト結果だ。なお,今回は中プリセットでベンチマークモードを実行している。
RTX 3050は,平均フレームレートでRTX 3060の70〜77%程度と,良好な結果を残している。RX 6500 XTに大差を付けていることに加えて,GTX 1660 Tiにも6〜11%程度の差を付けており,新世代のGPUらしい格の違いを見せ付けた。
また,Palit 3050 OCは,平均フレームレートがRTX 3050から2〜3%程度伸びており,クロックアップの効果が出ている。
続いては,バランス重視プリセットを適用した「バイオハザード ヴィレッジ」の結果がグラフ14〜16となる。
ここでもRTX 3050は,平均フレームレートでRTX 3060の71〜73%程度に収まった。GTX 1660 Tiに対しては,平均フレームレートで9〜11%程度の差を付けており,とくに1920×1080ドットの1パーセンタイルフレームレートで約9%の差を付けた。ゲームの体感でもかなり変わってくるレベルだ。ただ,Far Cry 6ほどRX 6500 XTを引き離せていないが,このあたりはRX 6500 XTの頑張りを誉めるべきかもしれない。
Call of Duty: Warzone Pacificのテスト結果がグラフ17〜19だ。なお,今回は低負荷設定でテストを実施している。
RTX 3050の平均フレームレートは,RTX 3060の74〜79%程度と優秀だ。GTX 1660 Tiにも,平均フレームレートで7〜8%程度としっかり差を付けている点も見逃せない。とくに低負荷設定とはいえ,1920×1080ドットの1パーセンタイルで100fps上回っている点は評価できよう。
なお,Palit 3050 OCとRTX 3050との差は,平均フレームレートと1パーセンタイルフレームレートのいずれも1fps前後しかなく,クロックアップの効果を体感することは難しい。
グラフ20〜22は,中プリセットでテストを行った「Fortnite」の結果だ。
RTX 3050は,平均フレームレートでRTX 3060の72〜78%程度と,なかなか立派な結果を残しており,Far Cry 6に近い傾向と言える。GTX 1660 Tiに対しても,平均フレームレートで7〜9%程度の差を付けているのだが,1920×1080ドットの平均フレームレートでは,RX 6500 XTの後塵を拝する形となった。2560×1440ドット以上の解像度では,RTX 3050が逆転しているのだが,これは素直にRadeonの最適化を称賛すべきだろう。
なお,Palit 3050 OCは,RTX 3050から平均フレームレートを1〜2%伸ばしており,大きく向上しているわけではないが,クロックアップがしっかりとフレームレートを引き上げているのが見て取れよう。
「Borderlands 3」の結果がグラフ23〜25となる。なお,今回は中プリセットをテストに採用した。
RTX 3050は,平均フレームレートでRX 6600には届かないものの,RX 6500 XTには26〜37%程度もの差を付けており,格の違いを見せ付けている。RTX 3050は,平均フレームレートでもRTX 3060の70〜83%程度となり,とくに1920×1080ドットでRTX 3060との差を詰めている点は立派だ。レギュレーション25では,平均60fps以上を合格点としているが,中プリセットではあるものの,RTX 3050は2560×1440ドットでも基準を超えているので,その点は評価できよう。
なお,Palit 3050 OCとRTX 3050の差は,平均フレームレートで約1fpsにも満たず,1パーセンタイルフレームレートでも1.1fpsがやっとだ。クロックアップの効果は,Borderlands 3ではあまり見られない。
RTX 3050が非常に優秀な結果を残したのが,「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」(以下,FFXIV暁月のフィナーレ ベンチ)だ。標準品質(デスクトップPC)でベンチマークを実行した際の総合スコアをまとめたものがグラフ26となる。
RTX 3050は,RTX 3060の71〜86%程度と高いスコアを記録しており,RX 6600ともいい勝負を演じている。スクウェア・エニックスの指標では,スコア15000以上が最高評価とされており,RTX 3050は2560×1440ドットでそれを満たしている点は立派だ。ただ,わずかではあるが,RTX 3050はRTX 1660 Tiに届いていない。枯れたGPUであるGTX 1660 Tiが善戦しているのは興味深い。
なお,Palit 3050 OCは,さらにスコアを伸ばしているものの,RTX 3050からの伸びは約1%に届かなかった。クロックアップの効果はほとんど見られない。
グラフ27〜29は,FFXIV暁月のフィナーレ ベンチにおける平均フレームレートと最小フレームレートをまとめたものになる。
平均フレームレートは,総合スコアを踏襲したものになっているが,ここでは最小フレームレートに注目してほしい。RTX 3050は,2560×1440ドットでも60fpsを超える最小フレームレートを発揮しており,このプリセットであれば快適なプレイができそうだ。なお,1920×1080ドットの最小フレームレートが,RTX 3060とRTX 3050が並んでいるのは,CPUがボトルネックとなって頭打ちになっているためだと思われる。
低負荷設定でテストを行った「Project CARS 3」の結果がグラフ30〜32だ。
レギュレーションでは,最小30fps以上を合格点としているが,RTX 3050は1920×1080ドットでもそれに届かなかった。つまり,RTX 3050でProject CARS 3を快適にプレイするには,さらに設定を下げる必要がありそうだ。とはいえRTX 3050は,平均フレームレートでRTX 3060の73〜74%程度と,これまでの結果と似た傾向を示している。ただ,RTX 1660 Tiにはあと一歩届いておらず,最適化も足りていない印象を受ける。
RTX 3060から40Wほど消費電力は低減
ただしGTX 1660 Tiからは増加
表1で示したように,RTX 3050のTGP(Total Graphics Power)は130Wで,RTX 3060から40W減っている一方で,GTX 1660 Tiからは10W増えてしまっている。では,実際にRTX 3050の消費電力は,どの程度なのだろうか。
NVIDIAが開発した消費電力計測ツール「PCAT」(Power Capture Analysis Tool)を用いて,グラフィックスカード自体の消費電力を計測してみたい。なお,今回は3DMarkのTime Spyにおいて,消費電力が高くなる傾向がでたGraphics test 2実行中の結果を示している。その結果がグラフ33となる。
RTX 3060が170W前後で推移しているのに対して,RTX 3050は130Wほどと,消費電力は明らかに下がっていた。ただ,RTX 3050は,GTX 1660 Tiよりも消費電力が大きいようで,RX 6500 XTだけでなく,RX 6600よりも大きいのが見て取れる。試しに140Wを超える場面を数えてみると,RTX 3050は111回もあるのに対して,GTX 1660 Tiは1回しかない。
なお,Palit 3050 OCとRTX 3050とでは,大差ないように見える。
そこで,グラフ34の測定結果から,分かりやすくなるように中央値を求めたものがグラフ34となる。
RTX 3050は,RTX 3060から40W弱の消費電力の低減を実現した点は評価できよう。しかし,GTX 1660 Tiからは約10Wほど増加して,RX 6600よりも10W強増えてしまっている。省電力という観点で言えば,RX 6500 XTが一歩抜きん出た格好だ。
なお,Palit 3050 OCとRTX 3050との差は1Wもなく,クロックアップがそのまま消費電力の増加につながるわけではないようだ。
念のため,ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いてシステム全体の最大消費電力も計測してみた。
ここでのテストにあたっては,Windowsの電源プランを「バランス」に設定。さらに,ゲーム用途を想定し,無操作時にもディスプレイ出力が無効化されないよう指定したうえで,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点をタイトルごとの実行時,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」としている。その結果がグラフ35となる。
消費電力のピークを記録するこのテストでは,どうしてもスコア差が広がりやすい。RTX 3050は,各アプリケーション実行時で,RTX 3060から20〜66W程度も低く,消費電力は確実に抑えられている。ただ,RTX 3050は,GTX 1660 Tiから5〜22W程度高い結果で,あまり省電力とは言い難い。
なお,Palit 3050 OCとRTX 3050の差は2〜10W程度で,クロックアップによって消費電力は増加するものの,その上がり幅はさほど大きくないようだ。
最後にGPUの温度もチェックしておきたい。ここでは,温度を約24℃に保った室内で,テストシステムをPCケースに組み込まず,いわゆるバラックに置いた状態から,3DMarkの30分間連続実行時を「高負荷時」として,アイドル時ともども,GPU-Zから温度を取得することにした。その結果がグラフ36だ。
GPUごとに温度センサーの位置は異なり,また,温度の制御法もGPUクーラーも異なるため,横並びの評価に意味はない。それを踏まえたうえでスコアを見ていくと,RTX 3050は高負荷時でも70℃に達していない点は好印象だ。GeForce RTX 3050 StormX OCのGPUクーラーは,それほど大がかりなものではないが,冷却性能は十分足りていると言っていい。なお,全体的にアイドル時の温度が高めなのは,ファンの回転が停止するためである。
筆者の主観であることを断りつつ,GeForce RTX 3050 StormX OCが搭載するGPUクーラーの動作音について触れておくと,非常に静かな印象を受けた。高い静音性を備えるとまでは言えないももの,PCケースに入れてしまえば,その動作音は聞こえないレベルのものだ。
従来の60モデルにあたるエントリーミドル向け
価格は5〜6万円と手が届きやすい
ベンチマーク結果から分かるように,RTX 3050は,1920×1080ドットで良好な結果を残している。エントリー市場向けモデルというよりも,少し上のエントリーミドル市場向けに位置付けられるGPUと言っていい。そのため,RX 6500 XTとは,はっきりとターゲットユーザーの住み分けができている印象だ。
RTX 3050のメリットを挙げると,以下の2点だろう。
- 価格対性能比のよさ
- RTX 3060から大きく下がった消費電力
もちろん,RTX 3060から消費電力が抑えられている点も見逃せないが,GTX 1660 Tiよりは増加している点は注意しておきたい。だが,ライトゲーマーにとってRTX 3050は,実勢価格がもう少し――5万円前後くらいまで――下がれば,購入しやすいGeForce RTX 30シリーズの鉄板モデルとして,好評を博すのではないだろうか。
PalitのGeForce RTX 3050 StormX OC製品情報ページ
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