プレイレポート
Left 4 Deadシリーズの精神的後継作「Back 4 Blood」は,協力型FPSの新たなスタンダードとなれるか
本作は,「Left 4 Dead」を制作したTurtle Rock Studiosによる“精神的後継作品”と言えるタイトルだ。「Back 4 Blood」というタイトル名にも,その片鱗が見える。「Left 4 Dead」シリーズをヘビーに遊んでいた人は「待ってました」という感じかもしれないが,「興味はあるけど,初めての人でも問題なく遊べるのか」と気になっている人も多いだろう。本稿では,基本的なゲームシステムを解説するとともに,プレイフィールをお伝えする。また,記事の最後に本作のデザインディレクターを務めたChris Ashton氏のショートインタビューも掲載しているので,合わせて確認してほしい。
※本記事はPS5版をプレイして作成しています
「Back 4 Blood」公式サイト
四方八方から襲い来る,全力疾走のリドゥンの群れ
ワチャワチャ感が持続するキャンペーンモード
本作は,“(最大)4人のプレイヤーがお互いに協力して大勢の敵に立ち向かう”という,ゾンビもののパニックホラー映画のようなシチュエーションを楽しめるのがウリだ。「Left 4 Dead」では,敵となるクリーチャーが大勢で,しかも全力疾走で迫ってくるのが特徴だったが,本作にもその要素は受け継がれている。
リドゥンは,1体がこちらを感知すると,連鎖的に次から次へとこちらに向かって全力疾走してくる。思わず,死亡フラグを立てた映画の登場人物のように「うおおおー! くたばりやがれチクショーッ!」と銃口を左右に振りながら乱射してしまいそうになるが,弾薬には限りがあるので,無駄撃ちは控えた方がいい。
また,敵は背後からも襲いかかってくる可能性がある。「ここまでの敵は全部倒した」と思って安心して進んでいると,いつの間にか後方から現れたリドゥンに攻撃されていることも。常に4人で行動し,背後にも気を配りながらの進行は,本作ならではの緊張感がある。
「キャンペーン」モードは4つの「ACT」(章)によって構成されている。ACTにはそれぞれ決められた数のステージがあり,プレイヤーはこれを順にクリアしていく。ステージは,セーフルームから出てリドゥンと戦いながら走り,次のセーフルームへ向かうものがほとんどで,次のセーフルームに4人全員が入り,セーフルームの扉を閉めるとステージクリアとなる。
ACT中にゲームオーバーになっても,一度クリアしたステージは記録されており,そこから再開することが可能だ。
ステージ中には,弾薬や武器,回復アイテム類が入った箱が置かれていることがある。武器にはレアリティが設定されているので,初期装備より良い物を見つけたら,どんどん交換していきたい。
また,武器にはパーツが付いていて,パーツにもレアリティがある。セットされたパーツによって,同じ武器でも微妙に性能が異なるので,より良い銃,より良いパーツを拾う楽しみがある。
ただし,所持している武器やアイテム類,所持金(銅貨)は拠点に戻るとリセットされてしまう。ステージ開始時の購入フェーズではケチらず,必要な物はどんどん購入して,ゲームを有利に進めたほうがいいだろう。
8名の個性的なプレイヤーキャラクターたちと,カードシステムによるカスタマイズ
最初に選べるプレイヤーキャラクターは4人だが,ACT1(全13ステージ)をクリアすることで,さらに4人が使用可能になる。キャラクターにはそれぞれ異なる特徴があり,近接戦闘が得意だったり,仲間を1度だけ瞬時に蘇生できたりと,個性豊かな能力が備わっている。
本作はオンライン専用タイトルとなっており,自分とBOT3人で遊ぶこともできるが,その場合でもオンラインへの接続は必須だ。自分とBOT3人で遊んでいるところに,ほかのプレイヤーが途中参加という形でBOTと交代することもある。このおかげもあり,マッチングは早い印象だ。
ただ,ステージのどのタイミングで参加することになるかは分からないため,マッチングされた瞬間,画面に「完了」と出て,何もしていないのにステージクリアになることもある。
なお,BOTの性能はなかなかのもので,場合によっては自分+BOT3人のほうが安定することもあるくらいだ。その理由として,BOTは敵がいる方向を自動で感知してくれる点が大きい。四方八方から敵が襲ってくるような場面だと,プレイヤーはあくまで前方の視界に入っている敵しか対処できず,攻撃を受けて初めて視覚外の敵の存在に気付けるのだが,BOTなら比較的すばやく視覚外の敵にも対処してくれる。また,初心者は仲間を回復できるアイテムを持っていても使い方が分からないということもあるが,BOTにはそれがない。
ただし,BOTは時々窪みに嵌ったままプルプルと震えていたり,細い丸太の橋を渡る場面などで足を踏み外して落ちる確率が高い。自分がダウンしたときに,隣にBOTが立っているのに,なぜか救助してくれない……ということもたまにある。頼もしい面もあるが,決していいことばかりでもないというのは覚えておきたい。
本作にはプレイヤーによるカスタマイズ要素として「カードシステム」が用意されている。事前に組んでおいたデッキからステージが進むごとにカードを1枚引いていき,その効果が自分やチーム全体に影響を及ぼすというものだ。カードの効果は重ね掛けされていくので,ステージが進むほどプレイヤーは強化されていくこととなる。自分だけでなく,仲間のことを考えてデッキを組む必要があるので,デッキ編成には頭を悩ませることになるだろう。
本編となる「キャンペーン」モードでは,ステージを1つクリアするごとにリザルト画面が表示され,「物資ポイント」を得られる。拠点「ホープ要塞」では,この物資ポイントで新たなカードや,キャラクターの装飾品を入手できる。カードの総数が多いため,まずはひたすらカードの開放を目指していくことになるだろう。
また,カードシステムが司るのはプレイヤーの強化だけではない。各ステージの開始時に「退廃カード」というものが引かれ,これにより,強敵が出現したり,停電などの環境変化がもたらされたりと,同じステージでも毎回異なる展開が訪れる。
本作には「ゲームディレクター」という,AIが自動で判断してゲームバランスを調節するシステムが搭載されている。これにより,アイテムや敵の配置が毎回変わり,プレイヤーは慣れたステージでも毎回新鮮に遊べるというわけだ。
退廃カードで何が引かれるかもゲームディレクターによる。カードによっては難度が上がってしまうこともあるが,条件を満たすと銅貨が手に入るチャレンジ系もあり,かならずしもデメリットばかりではない。
とにかくカードを開放しないと始まらん! というわけで,物資ポイントを稼ぎたくなるのは皆同じのようで,アーリーアクセスの早い段階から,ACT1の最終ステージである「雷鳴」を繰り返すことによる物資ポイント稼ぎが流行していた。
「雷鳴」ステージは,鉱山の入口に向けて大砲で弾を5発撃てばクリアという短いステージで,繰り返していると,半ばタイムアタックの様相を呈してくる。大砲に弾を込める→撃つ→空の薬莢を抜く,という3つの手順が1セットになっており,この間,大勢のリドゥンや大型クリーチャーも襲ってくる。そのため,開始時のアイテムボックスから「アラーム爆弾」を皆で買い込んで,交代で投げることで敵を遠くに追いやり,大砲の近くに敵が来ないようにするといった工夫が見られた。
さらに,弾込めの速度は「使用速度+○%」というカードの効果を複数重ねることで速くなるので,これを3枚ほど重ねた上で,キャラクターの能力として「チーム使用速度+50%」を持っているカーリーがいると,メチャクチャ早くクリアできる。
とはいえ,その「使用速度+○%」のカードを開放するために物資ポイントが必要なわけで……という,「稼ぎの効率を高めるために稼いでいる状態」になっていて,面白い体験だった。
そんな感じで物資ポイントを稼いでカードを次々に開放していると,「サブ武器の弾薬が無限になる」というカードが手に入った。ヤバい性能だな……と思いながら,早速「リロード速度アップ」のカードと組み合わせて使っていたのだが,さらにカードを開放していくと「武器をしまうとリロードする」というカードも。これはメインとサブの武器を切り替えるだけで自動的にリロードされるため,メインの銃の弾を撃ち尽くしたら持ち替えてサブを連射,サブの弾が尽きたらまた持ち替えてすぐにメインを連射……という,リロードタイム要らずのマシンガン状態に仕上がる。
さらに,オプションで「全武器自動連射」をオンにすると,ボタンの押しっぱなしで銃がフルオート化するので,一気に爽快感が増した。カードの開放状況によってゲーム性が大きく変化するのは,本作の大きな特徴であり,楽しさの1つだろう。
「スワーム」モードは4vs.4の対戦型
本作は「キャンペーン」モードのほかに,対戦型モード「スワーム」もある。このモードはプレイヤー同士の戦い,いわゆるPvPではあるのだが,「協力型のPvP」となっている。
スワームでは,8人のプレイヤーがクリーナーチームとリドゥンチームに分かれ,4人対4人で戦う。1試合ごとに立場が交代するので,初戦がクリーナーチームだったら,次の試合はリドゥンチームとして戦うというわけだ。2試合を1セットとして,チームが「全滅するまでにかかった時間」が長いほうが1ラウンドを制し,先に2ラウンドを取ったほうが勝ちとなる。
このモードでもカードシステムは適用され,しかも生存時間を競い合うのだから,「耐え抜くためのデッキ」が必要となる。つまり,リドゥンを蹴散らして進むキャンペーンモードとは求められるものが異なっており,新たなデッキを組む楽しさがある。
バトルは狭いフィールド内で行われるのだが,幾多のバトロワゲーで見られる,“時間経過によってバトルフィールドが狭まっていく”要素が導入されている。これにより,決着が長時間化することもない。
正直,リリースから間もないこともあり,スワームにおける「こう立ち回るべき」というセオリーはまだ見えてこない。防御面が大事なのは確かだと思うが,いっそ移動速度アップに特化して,逃げ回るのが強いのでは……と思わなくもない。スワームのマッチ終了後にも「物資ポイント」はもらえるので,カードの組み合わせの試行錯誤がてらに戦ってみるのもいいかもしれない。
ボリュームは多く,総合的な難度は高め
しかし,スロースターターな楽しさがある
難度は「ビギナー」「ベテラン」「ナイトメア」が用意されており,「ビギナー」であっても,ACT3以降はかなりの難しさだ。良いチームメイトとマッチングできるかどうかが重要だが,退廃カードによるステージ難度の変化もあるため,慣れていても楽勝とはいかないケースがほとんどだろう。
また,「ベテラン」以上にはフレンドリーファイア(※仲間への誤射によるダメージ)が適用される。これの有無は非常に大きく,「ビギナー」とはまったく別物のゲームと言っていい。カジュアルに遊びたい人は,慣れてきてもあえて「ビギナー」で遊び続けるのも1つの手だと思う。
本作の楽しさは,若干スロースターターな部分がある。カードシステムが根幹にあるため,カードが揃い始めると急激に面白くなってくるが,言い換えると,カードが揃うまでは少し苦労することも多い。
また,現状では初心者に優しいとは言い難い作りでもある。ゲーム内用語としてカードにも書かれている「外傷」や「耐性」が具体的に何を指すのか分かりづらいし,各ステージをクリアするための行動も,初見では分からないことが多い。
たとえば,「物資の入ったケースを指定の位置に運ぶ」という目的のステージがあるのだが,初見の場合,「どこにケースがあるのか」がわからない。そもそも「ステージの目的がケースを探すこと」であることさえ分かりづらかったりもする。
ほかにも,特定のギミックを作動させるためには,その周辺に4人が揃っている必要があるのだが,1人が遅れているとギミックが作動できず,4人がその場に揃った頃には「周囲はすでに調べたが,先に進む手がかりはない」と思い込み,いつまで経っても先へ進めない……ということも。こういった知識やセオリーは日が経つにつれて周知されていくので,いずれ問題ではなくなるだろうが,昨今の懇切丁寧なゲームを数多く見ると,もう少し親切な仕様でもいいのではないかと感じた。
本作のステージ構成は,ACT1が13ステージ,ACT2が10ステージ,ACT3が9ステージ,ACT4が1ステージの全33ステージ。難度は3段階あるため,キャンペーンモードを完全制覇するだけでも,計99ステージを攻略する必要があり,ボリュームは十分と言えるだろう。
筆者は本稿執筆までに,アーリーアクセス開始から1週間ほどプレイしたが,正直,最初の2日間はよく分かっていなかった。やたら強いホリー使いの人が前線を張ってバッタバッタと敵をなぎ倒してくれるのを見て,「近接が強いんだ!」とマネしてみたら,スゴい早さでダウンしてしまったことも。
のちに,デッキを組むときに「ソロデッキ」から見ると全カードリストを確認できることが分かり,近接前衛向けのカードの効果を複数重ねたからこその強さだったんだなぁと理解できた。
カードが揃ってから,自分でも近接武器用のデッキを組んでみたが,やはり強い。短剣でも振り回すかのような速度でバットを左右に振り回し,リドゥンをキルするごとに少しずつ体力が回復していく。通常なら脅威となるはずの大量のリドゥンたちが,体力回復のエサとなるという逆転現象が起きている。しかし,そういうときに限って仲間が的確にリドゥンを倒してしまい,「キ,キルさせてくれ〜」ということになったり……。こうした試行錯誤の過程が楽しい。
また,現時点ではリリース直後ということもあり,細かいバグも散見される。発売日の12日には,Xbox One / Xbox Series X版とPC版でさっそくアップデートが行われている。
筆者も,「突然,PS5の電源ごと切れる」「ゲーム中,急に音が一切聞こえなくなる」「突然エラーが出てゲームが止まり,ホームメニューに戻される」といった症状に,それぞれ複数回遭遇した。こうした症状は,今後のアップデートでの改善を待つしかないだろう。
まったくの初心者目線で見た場合,ステージの進め方やクリア条件,ゲーム内用語の詳細など分かりづらい部分も多いが,少なくとも筆者は現状,なんだかんだで楽しさのほうが上回っている。やはり,カードが開放されてからのゲーム性の大きな変化によるワクワク感が大きい。
また,PS5版でプレイするとDualSenseの機能「アダプティブトリガー」にも対応していて,銃ごとに異なるトリガーボタンの重さを実感できるのも良かった。
今も遊んでいる人が多い「Left 4 Dead」シリーズはアップデートを繰り返し,10年以上も愛されるロングランタイトルとなった。「Back 4 Blood」も細かい調整を経て,これから成長していくタイトルになり得るだろう。アップデートで新たなカードが追加される予定もあるようなので,まだまだ無限の可能性を秘めている。最初の段階としては,まずまずの滑り出しなのではないだろうか。
筆者はまずカードをすべて揃えるために,再び「雷鳴」マラソン※に入ろうと思う。弾込めは任せろ。
※「雷鳴」クリアでの物資ポイント取得量は15日に下方修正されています。
「Back 4 Blood」デザインディレクター
Chris Ashton氏インタビュー
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。「Back 4 Blood」がまもなく発売※を迎えますが,現在の心境を聞かせてください。
これまで長い期間,作り込んできたこともあり,あとほんの数日でユーザーのみなさんに届けられることに我々も驚いています。自分もスリリングな心境で,みなさんとオンラインで一緒に遊べるのをとても楽しみにしています。
※インタビューは10月6日に実施
4Gamer:
先日実施した海外でのオープンβテストでの反響はいかがでしたか。
Ashton氏:
とてもいい反響をいただくとともに,建設的なフィードバックを多数いただけました。おかげさまで,サーバーやマッチメイキングの問題,さらには細かいバグ取りもできました。リリース前の段階でこれらを解決できたのはとてもよかったと感じています。
また,プレイヤーからの意見を元にバランス調整を施しています。今後のアップデートや調整もチーム内で話し合っていますので,期待していてください。
4Gamer:
本作でプレイヤーにはどのような体験をしてほしいと考えていますか。
Ashton氏:
まず前提として,どういった要素を楽しんでほしいとか,注目してほしいとか,そういった気持ちはありません。1人ひとり自由に遊んでほしいし,このゲームを通して友人と楽しい時間を過ごしてほしいですね。また,本作はいろいろな人と出会う場所でもあります。オンラインで出会った人ともぜひ活発に交流してください。
4Gamer:
Ashtonさんご自身は本作のどの部分をとくに気に入っていますか。
Ashton氏:
私はキャンペーンを最初から最後までフルプレイするのがとても好きで,進むごとに難度が上がり,より困難なステージになっていくのが気に入っています。
4Gamer:
本作にはリプレイ性を高めるためのAIによる難度調整システムであるゲームディレクターが搭載されています。「Left 4 Dead」シリーズにも搭載されていましたが,進化した部分があればきかせてください。
Ashton氏:
「Left 4 Dead」シリーズと同様にアイテムや敵の配置などが変化しますが,本作ではさらにキーポイントの1つである「カードシステム」とも密接に関わっています。クリーチャーや環境に変化をもたらす退廃カードにより,同じミッションを遊んでいてもまったく違うプレイ体験になります。
また,カードシステムはもちろん,クリーチャー,キャラクター,ミッションもアップデートでどんどん新しいものを追加していきますので,こちらも楽しみにしていてください。
4Gamer:
最後にファンや読者にメッセージをお願いします。
Ashton氏:
まもなく発売ということで,みなさんに届けられるのがすごくうれしいですし,とてもワクワクしています。自分もプレイヤーとして本作を遊びますので,みなさんと一緒にオンラインで出会える日を楽しみにしています。
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