プレイレポート
「ウォーハンマー40,000:メカニカス」プレイレポートを掲載。ハードな世界観で描かれる骨太なターン制SLG
本作は世界的な人気を持つ,ミニチュアを使ったテーブルゲーム「ウォーハンマー 40,000」のシリーズ作。プレイヤーは異種族間の星間戦争が続くはるかな未来の世界で,地球を中心とし銀河全体を支配する帝国(インペリウム)の勢力である「アデプトゥス・メカニカス」(帝国技術局)を操り,謎の惑星で覚醒した生命体の脅威に対処していくことになる。今回,PS4版を先行プレイできたので,さっそくレポートをお届けしよう。
なお前述のとおり本作は,イギリスのゲームズワークショップが展開するミニチュアゲーム「ウォーハンマー 40,000」をテーマにしたゲームであるが,作品そのものは独立している。シリーズを知っていればより楽しめるのは間違いないものの,著者のようにほとんど何の知識もなくても,(世界観の理解に多少の時間が必要なこと以外は)プレイに大きな影響はないと感じられた。
機械化カルト集団を操り,宇宙の脅威に立ち向かえ
本作の舞台は,41千年紀というはるか遠い未来。銀河系は,地球を中心とする星間国家「帝国」の支配下にあったが,敵対する勢力との戦いは終わることなく続いていた。
本作の主役であり,火星を本拠地として機械とその神である“万機神”を崇拝するカルト集団「アデプトゥス・メカニカス」(以下,メカニカス)も,そんな帝国に属する軍事勢力の1つだ。彼らはその信仰から肉体の大部分を機械化するにとどまらず,機械と知識を信奉する謎の教義に基づき活動している。その技術力と戦力は本物であり,帝国と人類のための宇宙探索や外敵との戦いに明け暮れる日々を送っていた。
そんな彼らはある日,シルヴァ・テネブリスと呼ばれる惑星に,謎の異種族の遺跡があることを発見する。そこに隠された技術が役立つと判断した彼らは宇宙艦を派遣し,遺跡の探索を始めるが,そこに眠る謎の生命体「ゼノ」が目覚めてしまう。
帝国内でも指折りの戦力を持つメカニカスの派遣軍だったが,極めて危険かつ高度な戦闘力をもつゼノに苦戦。本拠地からの増援も見込めないなか,手持ちの戦力で遺跡の探索とゼノの押さえ込みを同時に行う必要に迫られる。こうして銀河系の辺境の惑星で,未知の文明と技術をめぐる激しい戦いが始まることになった……というのが序盤の物語だ。
冒頭でも触れたとおり,本作はターン制のシミュレーションゲームで,プレイヤーはメカニカス派遣軍の司令官となり,遺跡の正体を探りつつ,敵対的な未知の生命体ゼノと戦うことになる。基本システムはミッション制となり,母船で探索や防衛の任務を引き受け,手持ちのユニットから部隊を編成し条件の達成を目指す。
主な舞台は遺跡の内部で,狭い通路でつながった部屋ごとに,いくつものイベントや戦闘が用意されている。イベントが発生する部屋では複数の選択肢が用意され,判断や運が良ければ部隊の体力が回復したり,ユニット強化用の資源が入手できるが,選択が悪ければ容赦なく部隊がダメージを負ったり,敵の警戒を高めてしまったりする。
またプレイヤーは任意のルートで遺跡内を回れるが,実入りがあろうがなかろうが時間をかけるほど,敵の覚醒が進んで敵戦力が強化されていくのも要注意だ。
つまり隅々まで探索してリソースの確保を狙うか,あるいは早々に切り上げて敵が弱いうちにクリアを目指すか,そういった駆け引きが常にあるのが本作の特徴となる。リソースの入手は部隊の強化に直結するが,イベントで選択をミスして徒労に終わることもあるし,モタモタしている間にどんどん敵の戦力が増えてミッションの達成自体が困難になることもあり得る。遺跡内でどう立ち回るかは,まさに司令官の手腕次第だ。
敵が待ち構える部屋,あるいは防衛のミッションでは,事前に編成を組んだ部隊で戦闘が始まる。基本はターン制だが敵味方が入り乱れる形で行動順が回ってくるため,とくに強い敵がいつ動き出すのかを考慮した動きが重要だ。ミッション難度やこちらのユニットの強化具合にもよるが,全体的に敵は強く攻撃力も高めで,おまけに射程も長いことが多いので,先手を食らってあっさり瀕死になることもしばしば。
また敵は未知の技術によって,極めて高い耐久力を備えており,ライフをゼロにしても一定のターン経過で復活してしまう。そのため,敵を倒すときは一気にまとめて始末するか,あるいは逐一倒した死体を再攻撃して消滅させる必要がある。とはいえ,ユニットが1ターンに攻撃できる回数には制限があり,どうするかは悩ましい。
また,本作には探索時と同じく戦闘時にも時間経過の概念があり,ターンが経過するほど敵軍の覚醒が進んで強力な増援が現れるので,なおさらのんびりとしていられないのだ。
攻撃時なども含め,本作のバトルで大きな役割を果たすのが「CP(コグニション・ポイント)」だ。CPは作中では収集した情報と知識とされているのだが,端的にはユニットの追加の行動力のようなもの。基本的な短距離の移動や弱い武器を扱うことは,ユニットに順番が回ってくれば行えるが,さらに遠くへ進んだり,強力な武器を使用したり,索敵や体力回復のスキルを使ったりといった特殊な行動は,ほぼすべてCPが必要となる。CPが溜まっているかどうかで,実行できることに天と地ほどの差が生まれる,というわけだ。
ただ困ったことに,CPは基本的に自動的に回復しない。事前の探索で溜めておいたり,戦闘マップの各所にあるコグニションというオブジェから回収する必要があるのだ。つまり前述のように戦闘はなるべく長引かせたくないが,CPは多少遠回りしてでも集めておかないと,ユニットの実力は発揮できない……というジレンマに悩むことになる。とくに強力な敵と一進一退の激戦を繰り広げている場合は,ユニットとそのスキルはもちろんのこと,CPをどう有効活用するかの判断が,結果的に勝敗を決めることも珍しくない。
テックプリーストを強化して戦いを有利に進めよう
本作の味方ユニットは,主力となる「テックプリースト」と補助的なユニットである「突撃兵」に大きく分かれている。ミッションの参加時はこれを任意の割合で組み合わせ,任務の達成を目指す。
基本的に編成コストのようなものはないが,使えるユニットの数と種類は進行に応じてアンロックされていくため,序盤からプリーストの大軍を率いることは不可能だ。また突撃兵にも後述する相応のメリットがあるので,必ずしも主力のみで編成するのが有利とは限らないのが面白いところだ。
テックプリーストは基礎体力が高いなど,純粋にユニットとして強く,装備を自由に変更して近距離戦闘型や長距離狙撃型に特化させたり,スキルツリーからさまざまな能力を取得したりできる。各スキルはステータスを伸ばす以外にも,前述のCPの消費を抑えたり,逆に入手を楽にしたり,ターンごとにライフが回復できたりと,取得の仕方で,まったく違う能力のユニットを作り出せる。
前述のようにユニットは自由に組み合わせてチームを編成できるので,例えばとにかく射撃に特化したプリーストを揃えれば,敵に近づかれる前に倒しきる部隊を目指せるし,逆に近接ユニットと射撃ユニットをバランス良く組み合わせれば,どんなシチュエーションにも対応できるだろう。強化にはイベントやミッションのクリアで入手できる「ブラックストーン」が必要なので,一部のプリーストをとにかく強化してエリートを作るか,あるいはまんべんなく強化して全体の底上げを目指すか,という強化方針の違いも生まれやすい。
無数の強化の選択肢から,自分好みのプリーストと部隊を作り上げること。間違いなくそれが本作の魅力の1つだ。
もう1つの突撃兵は,限られた戦闘力しかない簡易ユニットだ。能力がプリーストに比べて低いのはもちろん,装備やスキルツリーで柔軟に強化することはできず,基本的にCPを溜めてターン数が経過しないとマップに配置すらできない。そのため,使えるユニットの種類が大きく限られる前半ではあまり使い勝手が良くないのだ。また,プリーストと違ってCPを自由に活用できないので,いざという時に無理を利かせることもできず,文字どおり“使い捨て”になることも珍しくない。
だからと言って,突撃兵が役に立たないわけでもない。例えば最初期から使用できるサーヴィターは,敵から攻撃を受けるとCPを生み出すので,盾として使うだけでも一定の役割を果たす。
またプリーストのスキルには突撃兵を強化できるものもあり,移動力や攻撃力を高めたりすれば使い勝手は良くなるし,なにより損耗をあまり気にしなくていいというのは,敵が強力な本作においては,それだけで大きなメリットと言える。
当然ながら頭数と手数の多いほうがより有利なので,突撃兵の消費も避けたいが,ある時は火力の支援に,またある時は囮にと,プリーストとはひと味違った形で戦線維持に役立ってくれるはずだ。
戦闘を有利に進めるという点では,「万機神讃歌」も忘れてはいけない。これはミッション中に使用できる特殊アビリティで,特定の攻撃の威力を一気に高めたり,味方のライフを大幅に回復したりと,ユニットが持つスキルより数段上の効果が設定されている。
新たなものを取得するには,ミッション中に特定の条件を満たす必要があり,また一度に装備できる数も限られているが,場合によっては戦況を一気に変える力を持っている。できれば連れていくユニットの能力にマッチしたものを選び,ピンチだったり,逆にここで勝負を決めるぞ!という場面だったりで使用するのがオススメだ。
難度が少々高めのストラテジーだが,充実の難度調整でSLGが苦手な人でもプレイ可能だ
本作のバトルで面白いと感じた部分は,近接攻撃の扱いだ。通常,近距離の攻撃は相手に近づかないと当てられないので,だいたいは飛び道具を持っているほうが有利になる。アウトレンジからの一方的な攻撃は,近接攻撃を主にするユニットにとって大きな脅威であり,場合によってはただの的になってしまう。
本作においても,そういった基本は同じだ。だが,「射撃武器は,近接武器の間合いに入ると使用(反撃)できない」「ユニットが密着した状態で先に動く(間合いを取ろうとして逃げる)と,チャンスアタックが発生して相手から一方的に攻撃される」というルールが存在するため,近接攻撃ユニットは間合いにさえ入れば,かなり有利に立ち回れるようになる。
結果的に,多少無理をしても懐に飛び込む価値が生まれるようになっているため,著者がプレイしたときも近接特化したユニットのおかげで,首の皮一枚のギリギリの勝負に勝てたこともあった。もちろん,展開によっては敵の近接攻撃に苦汁を飲まされることもあるので,スキルやユニットを活用してしのぎたい。
全体の作風としては,原作をベースにした独自の世界観が興味深い。プレイヤーが操るメカニカスは,ほかのゲームなら主人公の敵役として配置されそうな見た目の連中で,全身を仰々しく機械化して謎の経典に基づき行動しているなど,ちょっとヒーロー物に出てくるような悪の組織を彷彿とさせる。
大目標が人類の発展と保護なので別に悪ではないのだが,知識の収集があらゆる物事より優先されたり,たびたび出てくる経典の内容がほとんど「異端者を破壊せよ」を言い換えただけのものだったりと,くせ者っぷりを随所に発揮してくれるので見ていて面白い。原作であるウォーハンマー 40,000には,さらに多くの勢力が登場するとのことなので,プレイしていて少しそっちにも興味がわいてしまった。
本作は遺跡内の移動やターン数の経過で敵が強化されること,編成はミッションの開始時のみでユニットの途中追加はできないこと,そしてイベントや戦闘で失ったライフは自動的に回復しないこともあり,全体の難度は少々高めという印象だ。一言で表せば「骨太で渋めのストラテジー」ということになるのだが,実はオプションの難度調整が充実しており,難度をグッと下げてプレイできる。最低まで下げれば,シミュレーションゲームが苦手な人でもサクサク進めそうなぐらいになることを確認しているし,こう見えて序盤のチュートリアルもかなり充実しているのだ。
ストラテジー作品が好きな人はもちろんだが,原作のファンだったり,あるいは純粋に世界観に興味を持ったゲーマーだったりも,身構えずにプレイしてみてほしい。
「ウォーハンマー 40,000: メカニカス」公式サイト
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ウォーハンマー 40,000: メカニカス
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ウォーハンマー 40,000: メカニカス
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Warhammer 40,000: Mechanicus
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