プレイレポート
老犬とは人生における親友だ。「オールドフレンズ・ドッグゲーム」が見せた,老犬ホームでの健やかな毎日
子どもには長く,大人には短い,この月日。
それは当然,動物にだって長くて短い。
年に一度の里帰りをすると,小さいころもみくちゃくにかわいがってやった実家の黒猫は,今じゃ出迎えから2秒でこちらへの興味をなくす。そして彼女は(昔は彼だった)もふもふのクッションを我が物顔で陣取り,ツンとそっぽを向いて,整った毛並みをこれでもかと舐め回す。根城に侵入してきたそ知らぬ顔の異物より,そのほうが刺激的なのだ。
年ごろの気まぐれ猫なんて,思春期の少年少女とそう変わりない。
そんな忘却と再会と再忘却の例年を繰り返していると,ペットなんてそんなもんかと,苦笑が板についてきた。悲哀より諦観のエッセンスを多めに含ませているのは,ニンゲンさまのせめてものプライドだ。
人はそうやって培い,蓄え,一周回って成長し,何周も回って感情を固めていったころ,余生を健やかにすごせる自分になれる。
子どもも同じ,大人も同じ,その月日。
それは当然,動物も同じこと。
それでも唯一,違うことがあるとすれば。
本日の彼らは子猫などではなく,老犬であった。
〜起きる。犬をなでる。リピート!〜
老犬ホーム「大切なしっぽ宮殿」のモットー
とある町中。住人が夜逃げした廃墟と笑われても反論しづらいその場所は,今日から老犬ホームとして保護犬を迎えるようになった。
そこの家主はもちろん,私であり,あなただ。
このあたりの老犬ホームは施設名に加えて「家の犬こそ真の友」「ワンッ ワンワンワンッ」などと,己のモットーを添える決まりだ。
肩をすくめて命名を恥ずかしがっても得することはない。
廃墟な新居のドアが開かれた初日。最初の住人は1人と1匹。
1人のほうはどうでもいいとして,残る1匹のほうは,どうやら目が見えないコッカー・スパニエル(※)の「マック」だった。
※正確な犬種名は,アメリカン・コッカー・スパニエル。あるいはイングリッシュ・コッカー・スパニエル
とはいえ,彼は盲目のハンデもたいして気にせず,それなりの年かさまで生きてきた。ときに臆病になることもあるが,歩く先でなににぶつかろうとも,笑顔を貼り付けて生まれてきたようなその顔で,わびしい家中から緑咲く庭中まで,ヒマがあれば壮大な冒険に出かける。
日がな「なでて」と要求してくるのも手のかかるヤツだ。
〜犬を1匹救っても世界は変わらないが、
その1匹の世界は永遠に変わる〜
「ワンダフルエンジェルケアホーム」のモットー
犬はペットで,親友で,家族だと言われる。なら保護犬は?
我々は,保護犬への愛を先走らせるだけでは施設の運営などできない。ゆえに我々は,近所の世話焼きな大先輩「ジーナ」を頼る。
老犬ホームを長年にわたり運営してきた,年季と含蓄に富んだファーストレディが言うに,犬には「おやつ」をあげて,隙を見つけて「なでる」,1人遊びがはかどるよう「おもちゃ」を与えるといいらしい。
それだけというにはそれなりに手間がかかるだろうが,そうすることで犬たちは“まごころ”を返してくれるという。
さすがは犬だ。代価の支払いすら自分に都合のいいときだけな,日々の飲み代のことばかり考えている大学生のような猫とは誠意が違う。
〜負け犬の人生だってなんのその…〜
「シニアワンワンハウス」のモットー
マックを食べさせ,年がら年中なでさせられ,衣服も整える。家も庭も,彼の仕業から自然現象を含め汚れていくので,見かけるたびに清掃を心がける。洗い物をためても,犬には洗ってもらえないのだから。
ついでに庭の奥,開けるな注意なデンジャーゾーンだと思っていた物置小屋が,実はDIYをするのにちょうどいい作業場であることに気付いてからは,家具の設計図と素材を集めるのもひそかな楽しみになった。
住めば都。ボロボロのソファもここではおもむきに変わる。
〜わたしは大きな雑種犬に目がない〜
「わさわさ香箱座りのにくきゅう」のモットー
日々の生活のなかでは,マックの写真撮影も欠かせない。
彼,あるいは彼らはモデル業をするにはあまりに傲慢なスターしかいないことで知られているが,この施設は家主の人生の出血と,親身な他者からの寄付で成り立っている。それだけに広報活動は欠かせない。1人は意地汚く生き永らえるとしても,1匹はそうはならないからだ。
消耗戦にも似た大スターのオフショットを切り取るのは,普通なら至難の業であり,食料とテントと諦めそうになったとき用のセピアな家族写真を持参するくらいの覚悟が求められるが。
我々にはどうも生粋のカメラマンとしての天性があるのか。容易にバズりかねない一瞬の素顔をたやすく収めることができた。
そうした成果物をインターネット上に投稿すると,多くのフォロワーがつきはじめた。すると,動物愛護の精神からリアルタイムで送り続けられる寄付金のほかにも,施設へのリクエストが届きはじめた。
いわく「おいしそうなビスケットを作ってマックに食べさせろ」。誠意には誠意で返すと犬に教わった以上,そっぽ向いてはいられない。そんながんばりを尻目に,野良猫は今日もお宝をくわえて庭を横切った。
マックとの信頼を築いていると,そのうち隣家とのいざこざが起きた。原因は我々ではなく,近所の老いた野良犬にあった。
当の犬は,敷地を隔てる柵の隙間からキラキラした両目の視線を送ってくるものの,恥ずかしがり屋なのかすぐに逃げてしまう。分かっているだろうが,そういう者たちを引き取るのがわが家の使命だ。
嵐の夜が過ぎた日。雷雨に打たれて弱ったところを確保された件の犬が,地元住民の手により,わが家まで運ばれてきた。
新たな家族の名は,ちょっとシャイなビーグルの「ベーグル」。命名者のユーモアセンスはさておき,彼もまた年季の入った犬だった。
ベーグルはマックと違い,マックほど「なでてなでて」とは要求してこない。一方で,好物のビスケットを差し出すと特段喜んだ。
ベーグルのように,地域内でSOSを発しているシニアドッグの数はまだまだ多いが,人の嗅覚には限界がある。そうなるとやはり,同じように年を重ねてきた,同じような犬たちの嗅覚がアテになる。保護犬が保護犬を呼ぶ連鎖は,この人間社会においては希少な部類の美徳だ。
犬たちとの出会いからつづってきた「ドッグブログ」をそっと閉じて,一つ決心する。デジタル音痴な母親からドッグブログ越しに仕掛けられるホームシック攻撃をしのぐのはたやすかったが,日々の物資が足りなかった。どうにかして稼ぐしかなかった。さて,どうするか。
身を粉にして働くべきか。
それとも,犬たちを――。
そうして深々と息をついたあと,日の当たる縁側でのんきに安らいでいるマックとベーグルに重々しく告げる。「どうかお願いです。ドッグライブ(犬動画配信)をやるので,愛嬌を売ってください」。
SNS投稿によるフォロワーの獲得は承認欲求とふところを満たしてくれるが,さらなる成長と援助を求めるには,今どきは配信活動がベストだ。けれど,主演の花形は愛らしい子犬時代をとうの昔に通りすぎた,ほどよくダルダルな体を揺らし,ハッハッハと息を吐く老犬たち。
それでもと,可能な限り目線を下げてお願いしたところ。彼らはワンと文句を言うでもなく,ワンとオファーを快諾してくれた。
勇気を出した初めてのドッグライブ。視聴者は数えること1名。
匿名性のかけらもないチャンネル状況は個人特定も容易で,栄えあるファーストペンギンは,残念ながら世話焼きジーナだけだった。
配信中,彼女は「マックを見せて」「ベーグルにおもちゃで遊ばせて」「なでて」「マックにおやつをあげて」と次から次へと要求してきた。それに答えるだけの犬たちは愉快そうなものだが,遂行するこちらはたまったもんじゃない。1人のための配信のくせに,やけに忙しかった。
そうして残念に思っていたが。ジーナのリクエストで,マックとベーグルがおやつやおもちゃに喜び,うれしそうな犬たちを見たジーナが喜んでいるのを見ると,残念な気持ちは少しだけ削れていった。
老犬たちとの生活で,おやつ作りにも精を出しはじめた。犬たちは好物のおやつのほうが喜び,それ相応のまごころでもって返してくれる。
我ながらお菓子作りの腕前が大したものだったのも助かった。
ときおり,材料目当てにワンマートにも顔を出す。幸い,節制に努めれば毎日の生活に不備はなかったが,ときには散在するのもいい。これも犬たちのためだから,などと。言い訳の強みにはあらがえない。
老犬たちの世話。家や庭の清掃。DIYやお菓子作りにも励み,援助者たちのためにと写真撮影やドッグライブもがんばる。そうしているとマックやベーグルとの信頼関係も深まっていって,そうしていると新しい家族も増えていって。わが家はそのうち,にぎやかになっていった。
ここに来る者たちは年老いた犬だ。子犬のように無垢な反応をしてみせてくれる一方で,長く生きてきた。残りの犬生も行き先より着地点を見つけるべき時期にきている。それがこの家なるかどうか。
もしかしたら,色違いのクッションが出てくるかもしれない。
もしかすれば,本物のスターに引き取られるかもしれない。
1年。365日。8760時間。525600分。31536000秒。
子どもには長く,大人には短い,この月日。
それは当然,動物にだって長くて短い……が。
今の生き方一つで幸せを見いだせてしまう彼らを眺めていると,人生の立ち位置なんてものは気にせず,人の一生もかくありたいと見習うほうが,目先のことを考えるよりよっぽど有意義に感じられる。
どうせ,老年の天使であるマックやベーグルからすれば,我々なんぞ無知な若造でしかないのだ。分かってる風の気の早い話をする前に,まずは庭先で臭っている不始末を手早く掃除するほうが先決だ。
ニュージーランドのゲーム会社Runaway Playから,スマートフォン向けの新作シミュレーションゲーム「オールドフレンズ・ドッグゲーム」(iOS / Android)が,本日2022年3月29日に配信された。
本作は,アメリカ・テネシー州にある老犬保護施設を運営する非営利団体「Old Friends Senior Dog Sanctuary」,通称OFSDSとのコラボで生まれた作品で,その内容は“OFSDSの老犬ホームにもとづき,実在する老犬たちと生活する”というもの。彼らの余生は毎日が元気いっぱいだ。
心温まるストーリー。自分たちの家を作り上げるシミュレーション性。海外版は2021年10月にリリースされ,全世界のApp Storeで5点満点中,平均4.9点を獲得。ゲームの売上の一部はOFSDSに寄付され,一定額に達すると,そこに暮らす犬たちの1年間のケアにあてられる。
春季の日本上陸とあり,4月5日からは「お花見イベント」も開催予定。桜舞う老犬茶屋の縁側では,犬たちもお昼寝予定。
シニアドッグの世話は手のかかることだろう。たとえ当事者ではなくとも,そこに空想めいた美談ははさみづらい。
けれど,その関係性は一方的ではなく,子どもも大人も犬だって同じ。まあ猫もだが。双方が与えて,双方に与えられるものがある。
開発が本作で伝えたいメッセージはたった一言。
「シニアドッグは素晴らしい友達になれる」。
それが真かどうかは,モフってみないと分からない。
〜生きて、愛して、ワンをして!〜
わが家「ハッピーイッヌガーデン」のモットー
○Old Friends Senior Dog Sanctuaryについて
今年10周年を迎える非営利団体Old Friends Senior Dog Sanctuaryは、アメリカ合衆国テネシー州にある老犬の保護施設です。この施設には約120匹のシニアドッグが暮らしており、全世界約200万人のファンやソーシャルメディアのフォロワーの寄付によるサポートで運営されています。OFSDSではシニアドッグに「ずっと安心して暮らせる家」を提供しながら、高齢の犬と暮らすチャレンジや喜びを伝える活動に努めています。
公式サイト(英語):
https://ofsds.org
○Runaway Playについて
Runaway Playはニュージーランドのダニーデンに拠点を置く、ゲーム賞受賞歴のある独立系ゲームデベ ロッパー兼パブリッシャーです。自然からインスピレーションを受けた先進的なスマートフォンゲームを通 じて、プレイヤーがリラックスして楽しめる体験の創造に努めています。
Runawy Play公式サイト(英語):
https://www.runawayplay.com
○ゲーム概要
タイトル:オールドフレンズ・ドッグゲーム
対応機種:iOS/Android
ジャンル:シミュレーション×ストーリー
日本正式リリース日:2022年3月29日
価格:基本プレイ無料、一部有料コンテンツ有
公式サイト:https://www.oldfriendsgame.com/japan
公式トレーラー:https://youtu.be/H7qrOKMDIzI
公式Facebook:https://www.facebook.com/oldfriendsgame
itinstagram:https://www.instagram.com/oldfriendsgame
公式Twitter:https://twitter.com/PlayOldFriends
著作権表記:(C)Runaway Play LTD 2021
「オールドフレンズ・ドッグゲーム」公式サイト
「オールドフレンズ・ドッグゲーム」ダウンロードページ
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オールドフレンズ・ドッグゲーム
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オールドフレンズ・ドッグゲーム
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(C)2021 by Runaway Play
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