インタビュー
[インタビュー]和風ハンティングアクション「WILD HEARTS」。獣との真剣勝負の中で“からくり”が生み出す面白さとは?
「WILD HEARTS」は和の雰囲気が漂う「あづまの国」を舞台に,自然と動物が融合した“獣”と戦っていくハンティングアクションゲームだ。プレイヤーは「獣狩(ししがり)」となって,武器や“からくり”を駆使しながら獣たちを狩っていく。
和風という時点でずいぶん目を引く本作だが,中でもユニークなのが“からくり”と呼ばれるクラフト要素だ。移動中に足場を作って高台に登ったりといったことはもちろん,戦闘中にすばやく壁を作ったり,ジャンプ台を作って有利に戦うことができるというもの。狩場を作り,臨機応変に利用する判断力,“からくり”をうまく使いこなす応用力が求められ,狩りをより魅力的なものにしている。
[プレイレポ]EAとω-Forceによる「WILD HEARTS」の序盤インプレッション。攻守両面で役立つ「からくり」は考える前に使え!
EAとコーエーテクモゲームスのω-Forceによるハンティングアクション「WILD HEARTS」の製品版と同等のビルドをプレイする機会を得られたので,インプレッションをお届けする。ハンティングアクションとしての基本的な部分はしっかり押さえつつ,「からくり」やステルス要素がアクセントになっている印象だ。
今回はその発売に先立って,本作を開発するω-Forceの平田幸太郎氏,枝川拓人氏の二人のディレクターにインタビューを実施した。そもそも本作はどういった経緯で開発されたのか。また,“からくり”というアイデアはどのようにして生まれたのかなど,本作の気になる部分を聞いてきたので,ぜひチェックしてみてほしい。
枝川拓人氏 |
平田幸太郎氏 |
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。
WILD HEARTSはいわゆる“狩りゲー”ですが,その構想は前からあったのでしょうか。
平田幸太郎氏:(以下,平田氏)
このプロジェクトはω-Forceの新しい柱を作ろうという一念で立ち上がりました。ω-Forceチームはかつて「討鬼伝」という,ハンティングアクションゲームを作っており,チームのノウハウを生かしながら「世界で通用するゲームを作る」となったときに,「王道の和風ハンティングゲームを作ろう」と決まったんです。
4Gamer:
Electronic Artsとタッグを組むことになった経緯はどういったものだったのでしょうか。
平田氏:
WILD HEARTSのプロトタイプをトライアンドエラーを繰り返しながら作っていた際に,本作のメインとなる“獣”と“からくり”の戦闘ができあがったあたりのビルドをElectronic Arts様に見ていただく機会があり,そこでぜひ一緒にやりましょうとなったのが始まりです。
4Gamer:
コーエーテクモゲームスからリリースするということは可能だと思うのですが,あえてElectronic Artsと組んだ理由はなんでしょうか。
枝川拓人氏:(以下,枝川氏)
弊社も販路はあるのですが,やはりElectronic Arts様の方が規模が大きいんです。海外を含めて多くの人に遊んでほしいという気持ちが,Electronic Arts様と組む,最大の動機になりました。
4Gamer:
本作のユニークな要素として“からくり”があるのですが,そのアイデアはどういったカタチで生まれたのでしょうか。
平田氏:
まず“獣”が先にできあがりまして,プレイヤーに「獣をどうやって乗り越えてもらうか」を試行錯誤しました。その試行錯誤の中で,ハンティングアクションゲームに「クラフトの要素」を入れてはどうか,というアイデアが出てきたんです。
その後,クラフトをどうやって入れるかと考えていきました。当初はとりあえず「クラフト要素を入れてみれば面白くなるだろう」という気持ちで入れてみたのですが,あまりうまくいかなかったんです。というのも従来のようなクラフト要素だと,どうしても先に罠を設置したり,壁を設置したりと,準備をする戦闘になってしまったのです。それは我々の考えるハンティングアクションゲームとは違うなと。
そこで,クラフトを戦闘中の即時性が求められるアクション要素として落とし込みたいと考え,さらに和風のハンティングアクションゲームで求められる「リアリティ」も加味したときに,動くクラフトである“からくり”というものに辿り着きました。
4Gamer:
8種の武器に“からくり”という要素が加わることで,いろいろな戦い方ができるようになると思うのですが,その反面,バランス調整が非常に難しそうですね。
平田氏:
獣に対して“からくり”がなかったときは,獣の方が圧倒的に強かったです。しかし,“からくり”を入れた後はプレイヤーの方が強くなってしまいました。我々が目指しているのは「プレイヤーと獣の真剣勝負」で,獣と獣狩の命のせめぎ合いを再現したかったので,このままじゃいけないなと。
“からくり”を作れる個数を制限したり,獣に“からくり”を破壊するアクションを追加したりすることで,いまでは獣の方が少し強いくらいのバランスになっていると思います。
ただ,“からくり”には大きな可能性があり,プレイを繰り返していけば,プレイヤーの方が有利になっていくので,強大な獣にチャレンジしていってほしいですね。
4Gamer:
“からくり”はプレイヤーの発想次第で,さまざまな使い方ができそうですから,時間が経つと「そんな使い方があったのか」みたいなものも出てきそうですね。
無料アップデートでは新たな獣や,それに関連した武具が追加されるとのことですが,“からくり”も同様に新たなものが登場するのでしょうか。
平田氏:
そうですね。一部の新しい獣に対して新しい“連結からくり”を用意しようと考えています。獣と出会うと,その獣が使ってくる強力な攻撃に対して「新しい“からくり”を閃く」というシステムがあります。その獣に対して特効がある“からくり”なのですが,追加される獣にも,それぞれ用意しています。
4Gamer:
“からくり”という要素の中で特に面白いと思うものはなんでしょうか。
平田氏:
やはり,“からくり”がフィールドに残り続けることです。マルチプレイで他の人が設置した“からくり”も残るので,それを狩りに利用したりと,毎回違う戦いが繰り広げられるというのは体験としてすごく面白いなと思っています。
4Gamer:
そのまま残っているというのは面白い要素でした。戦いの中で,とっさに残置物を利用したりできる反面,邪魔だなと思うこともあったりして,狩りのたびにいつもと少し違う感覚がありました。
枝川氏:
“からくり”をフィールドに残すかどうかっていうのは,実は少し議論があって,邪魔になるという意見や,意図しない場所に設置されていて見た目が悪くなるという意見もあったんです。でもその「残っていく」というのがクラフトの良さだと思っていて,狩りを繰り返すことで,狩り場が徐々に変化していくのは面白いポイントだなと思っています。
4Gamer:
マルチプレイだと4人プレイのものも多いのですが,本作で3人プレイなのはどういった理由なのでしょうか。
枝川氏:
もともとは特に深く考えずに4人でのマルチプレイかなと思っていて,実際に4人で実装していました。しかし,テストプレイを重ねていった結果,3人に変えました。
その理由のひとつが,“からくり”の存在です。自分が置いたものを他の人も使えたり,他の人を守ったりできるので,マルチプレイでの相乗効果があるんです。人数が増えていくほどその傾向は強くて,4人になると獣に対してプレイヤーが強くなり過ぎました。
本作は獣と緊張感を持って戦うという部分を大事にしているので,そう考えたときに3人でのマルチプレイが一番楽しさを保てるとの結論に至りました。
もう一つの理由は,最近3人でのマルチプレイが主流になってきていて,4人よりは仲間を集めやすいかなとも考えました。
4Gamer:
“からくり”が残るっていうのは負荷が相当なものになりそうなのですが,その仕様を実装するにあたってどのような苦労がありましたか。
枝川氏:
負荷についてはめちゃくちゃ苦労しました(笑)。どこまで置けるかという負荷の問題は,プログラマをかなり悩ませていたことでして……。システム的には上限はやはり必要なので,どこまで置けるかを試行錯誤しつつ,“基礎からくり”に関しては上限に達したら古いものから壊れていく仕様にしました。ですが,普通に遊んでいく分には,気にしないで遊べるくらいの上限になっています。
4Gamer:
アクションゲームでも能動的にジャンプできるものと,できないものがあるのですが,本作では能動的なジャンプを取り入れていますよね。その理由はなんでしょうか。
平田氏:
アクションゲームを作るときにいつも問われるのですが,一番の理由は「入れたいから」ですね(笑)。
ジャンプができるかどうかで,アクションゲームとしての感じる自由度が違うと考えています。ジャンプがあると,例えば崖があったとして,「あの崖は自分のジャンプ力で登れるのか」のように,プレイするうえで考えることから変わってきます。フィールドの見え方がぜんぜん違ってくるんです。
本作は特に“からくり”があることによって高低差ができたり,羽のような“からくり”で滑空できたり,立体的な動きができます。そこで能動的なアクションとしてのジャンプを封じてしまうと,「俺たちは“からくり”で用意されたことしかできないんだ」ってプレイヤーが思ってしまうと思うんです。そう思ってほしくなかったですし,直感的にフィールドの中をどこでも移動できるよっていうのを強く認識させたかったこともあって,ジャンプは取り入れました。
4Gamer:
“からくり”とジャンプがあることで,より立体的なアクションが楽しめるようになってますね。
平田氏:
そうなんです。本作の狩りの対象である獣は,従来のハンティングアクションゲームに出てくるような敵と比べても大きめに作ってあります。それは自分で“からくり”を置いて高さを取って弱点を狙っていくようなアクションを想定してのことです。
4Gamer:
確かに本作に登場する獣は大きいですよね。最初に登場する獣ですら,かなりの大きさがありました。そこにはどういった狙いがあるのでしょうか。
平田氏:
「自分の力ではかなわない」と思わせたかったというのがあります。そう思うことで,“からくり”を使っていく必然性や,自分の武器だけだと,このスケールの敵と戦うのは心細いという印象を与えたかったというのがあります。
そういった印象を与えることで,壁を作ったり,大きな刃物を作ったりして対抗していくようになるだろうなと。
枝川氏:
じつは獣の大きさはこれでも小さくした方なんです。猪のヤマウガチという獣がいて,それが最終的には最大サイズくらいにはなったのですが,あの大きさを標準サイズにしようとしていました(笑)。
平田氏:
アクション担当からそれだけは勘弁してくれって言われて,今の大きさになりました(笑)。
枝川氏:
できるだけ大きくしつつ,アクションとして面白さを担保できるラインをかなりせめぎ合いながら作っていましたね。
平田氏:
ヤマウガチでかなり圧倒されるとは思うのですが,最終的には獣たちは戦いやすいサイズになっていると思うので,そこは安心してください。
4Gamer:
本作のキャラクターデザインはリアル寄りですが,そこにはどういった意図があるのでしょうか。
枝川氏:
ハンティングアクションとして,やはり獣を主役にしたいという思いがあって,キャラクターは記号的なものではなく,リアル寄りにしました。人間ドラマがあまり表に出てきてほしくないなと考えていて。もちろん,その世界の住人として魅力的に感じるようには作っているのですが,「ありえそうな世界」を作りたかったので,キャラクターをあまり記号的にせずに,演技なども自然な感じにしてもらおうという方向で作っていきました。
4Gamer:
それでは最後の質問です。本作をどういった人たちにプレイしてもらいたいでしょうか。
平田氏:
世界中の人にプレイしてほしいです(笑)。というのも,ハンティングアクションゲームだからと敬遠している人もいると思いますが,できるだけいろいろな人に触ってもらいたいので,直感的な操作で楽しめるようなゲームにしてあります。
また,アクションゲームに慣れ親しんだ人にも,戦闘中に組み上げられるクラフト“からくり”といったシステムで,新しい経験ができるので,ぜひいろいろな人に楽しんでいただけたらなと思います。
枝川氏:
シングルプレイでも十分に楽しめますし,とても面白いのですが,やはりマルチプレイをやると違った面白さがあり,そこを一番楽しんでもらいたいなと思っています。ぜひお友達を誘ってみんなでプレイしてほしいです。
4Gamer:
ありがとうございました。
「WILD HEARTS」公式サイト
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