インタビュー
[インタビュー]和製インディーゲームが海外へ飛躍するための“架け橋”に。架け橋ゲームズのワールドワイド パブリッシング事業について聞いた
初日のステージでは,架け橋ゲームズがワールドワイド パブリッシング事業を開始すると発表。日本を中心としたアジアのゲームをワールドワイドに広げることを目標とし,第1弾タイトルとして,韓国のスタジオoozeによる,大航海時代をテーマとした「Sagres」と,ヒップホップグループの「DON YASA CREW」が手がけるアクションゲーム「SONOKUNI」を扱うという。
これまで,300以上のタイトルについてパブリッシング サポートを行ってきた架け橋ゲームズだが,本事業では何を目指していくのだろうか。同社のマネージングディレクターである,ザック・ハントリ氏に話を聞いた。
写真左から,マーケティング テキスト マネージャーのLayerQ氏,マネージングディレクターであるザック・ハントリ氏,ローカライゼーション マネージャーの桑原頼子氏 |
国内及びアジアのインディーゲームが
海外へ飛躍するための“架け橋”を目指して
4Gamer:
よろしくお願いします。まずは架け橋ゲームズについて紹介してもらえますか。
ザック・ハントリ氏(以下,ハントリ氏):
架け橋ゲームズは,「海外の尖ったゲームたちを,そのままの形で日本のプレイヤーに味わってほしい」と考えて作った会社で,これまでに300以上のタイトルについてパブリッシング サポートを行ってきました。
4Gamer:
パブリッシング サポートとは,どのような仕事なのですか。
ハントリ氏:
海外のデベロッパが日本でゲームを発売するために必要になる,ローカライズやCEROレーティングの取得などをサポートをする仕事です。
ローカライズの際は,作品が持つそのままの味を活かしつつ,日本のプレイヤーが不自然さを感じないようなものになることを目指してきました。
「BitSummit Let's Go!!」の架け橋ゲームズブース |
4Gamer:
では,ワールドワイド パブリッシングとは,どのような事業になるのでしょう。
ハントリ氏:
これまでとは逆に,日本やアジアのデベロッパに対して,海外でゲームを発売するためのお手伝いをする事業です。
4Gamer:
ワールドワイド パブリッシングを始めようとしたきっかけを教えてください。
ハントリ氏:
多くのパブリッシング サポートしてきた中で,海外のインディーゲーム市場が大きく成長するのを見てきました。しかし,日本のインディーゲーム市場は,海外ほど成長していません。
日本にもいいインディーゲームは沢山あるのに,なぜなんだろう……と疑問に思っていたのが,ワールドワイド パブリッシングを始めようとしたきっかけのひとつです。
4Gamer:
国内外のインディーゲームを多く見てきた架け橋ゲームズだからこそですね。
ハントリ氏:
我々が,日本から海外への“架け橋”となり,日本のインディーゲーム市場が海外と同様の成長ができるように何かできることがあるんじゃないかと。
もともと架け橋ゲームズを立ち上げた目標のひとつが,日本の作品を海外に紹介することでした。ただ,その頃の自分たちは,海外ゲームを日本にローカライズするビジネスでいっぱいいっぱいなところもあり。10年が経ち,やっとやりたかったことができるようになったんですよ。
4Gamer:
海外から国内,国内から海外とは別に,パブリッシング サポートとワールドワイド パブリッシングの違いはあるのでしょうか。
ハントリ氏:
パブリッシング サポートは,開発者の手足として動く仕事で,最終的な決定権は開発者側にありました。対してワールドワイド パブリッシングでは,決定を我々自身が行います。
ゲームをどの言語にローカライズするか,どの国のマーケットをメインターゲットにするか,どのプラットフォームに出すのか……など,パブリッシャとしての決定権を持つわけです。
ヒップホップグループの「DON YASA CREW」が手がけるアクションゲーム「SONOKUNI」 |
4Gamer:
作品に対する発言権が大きくなるということでしょうか。
ハントリ氏:
我々のスタンスは,あくまで「開発者が作りたいものを作っていただく」というものです。そのうえで,これまでのビジネス経験から「海外でどういったゲームが好まれるのか」「日本のゲームに何が足りないのか」といったテーマについて,意見させていただくということですね。
4Gamer:
開発者の意志を尊重しつつ,ビジネス経験からアドバイスを行うということですね。
ハントリ氏:
そうです。日本のパブリッシャと我々架け橋ゲームズの違いは,「最初に,開発者にどうしたいのかを聞く」というところです。ただ,開発者の希望があっても,ビジネスを優先した判断をすることはあります。
4Gamer:
開発者からは,どのような要望が出るのでしょうか。
ハントリ氏:
例えば「Sagres」の開発者は,「大航海時代を扱ったゲームなので,ぜひポルトガルで出したい」と希望していました。
しかし「Sagres」はテキスト量が非常に多く,ローカライズに費用がかかります。加えて,ポルトガル語のゲームは少なく,どれ位のセールスが見込めるかも分かりません。そこで我々はパブリッシャとしての最終決定権を使い,「Sagres」のポルトガル語ローカライズを諦める決断をしたのです。
4Gamer:
そこは難しい判断ですね。
ハントリ氏:
これまでの仕事で得た経験と知識を用い,ビジネス的な観点に基づき,開発者のためになる方向で考えています。開発者が次のゲームを作るためには,ビジネスに成功してきちんとお金を回収しないといけないわけですから。
4Gamer:
なるほど。ゲームを出すところがゴールではないと。出したはいいけれど,借金を背負うようなことになっては今後の人生に悪影響があるわけですし。
ハントリ氏:
そうですね。開発者は,ゲームを作ることに注力する。我々は経験と知識を総動員し,開発者の人生も考えて,ビジネスマインドでリアルな判断をするということですね。
4Gamer:
インディーゲームを開発するにあたり,最初からワールドワイドの市場を意識したものとすべきなのでしょうか。それとも,自分たちの作りたいものを追求すべきなのでしょうか。
趣味であるならもちろん後者ですが,商品として発売するのであればどちらを目指すべきなのかなと思いまして。
ハントリ氏:
難しい質問ですね。ゲーム開発をビジネスとして捉えるという前提のもとでは話します。
インディーゲームの開発は,AAAタイトルとは違います。自身の作りたいものを追求し終えてから,その次に「自分が作ったゲームはどうやってマーケティングするか,どの国のマーケットなら響くだろうか」というビジネスのことを考え始めるべきだと思っています。
4Gamer:
作り始めのスタンスから異なると。
ハントリ氏:
AAAタイトルは,ビジネスを考えたデータ主導でジャンルを選ぶことが多いです。しかし,このようなことを全く考えずに,好きなものを作れるのがインディーゲームの強みですし,だからこそインディーゲームは素晴らしいのではないでしょうか。
インディーゲームの開発者は,自身のゲームを良くすることだけを考えていればいいのです。そのうえで,ビジネスとして成り立たせるために,我々のようなパブリッシャがいるわけですから。大事なのは,自分のゲームに合ったパブリッシャを見つけることなんです。
4Gamer:
これからは,どのようなゲームをパブリッシングしていきたいですか。
ハントリ氏:
素敵なゲームを作っているのに,コネクションがないばっかりに海外へリーチできない人たちへの“架け橋”となりたいです。
特定のジャンルを歓迎するということはなく,広い橋を架けていきたいですね。自身のゲームを海外で出したいと思っている情熱的な開発者さん,あなたはひとりではありませんし,“架け橋”を作ろうとしている者がここにいますので,一緒にやっていきましょう。
4Gamer:
ありがとうございました。
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