インタビュー
[インタビュー]「真・三國無双ORIGINS」は今だからこそ作れる最高の無双。原点回帰であり集大成である本作がどのようにして作られたかを聞いた
「真・三國無双」シリーズの最新作となる本作は,ORIGINSという名のとおり,「タクティカルアクションとしての原点回帰」を目指して作られたタイトルで,目の前の敵を倒すだけでなく,味方を勝たせるための判断力と立ち回りが重要になっている。
またシナリオでは,記憶喪失の青年というオリジナルキャラクターを主人公に据え,時代背景やそこに生きる武将個人の描写を,これまでのシリーズ作品以上に綿密に描いている印象だ。
原点回帰を目指しつつ,今までにはなかったさまざまな試みがなされている本作だが,その開発はどのようにして行われたのだろうか。今回4Gamerでは,キーパーソンの4名にインタビューを実施し,話を聞いた。
庄 知彦氏 「真・三國無双ORIGINS」プロデューサーであり,ω-Forceのブランド長。「真・三國無双」シリーズの前身となる対戦格闘ゲームの「三國無双」から「真・三國無双5」までのナンバリング,「真・三國無双NEXT」に参加,コラボ系のタイトルにも多く携わる |
大場正倫氏 「真・三國無双ORIGINS」開発プロデューサー。「真・三國無双3 猛将伝」「真・三國無双3 Empires」「真・三國無双5 Empires」「真・三國無双8 Empires」などの開発に携わる |
関口和敏氏 「真・三國無双ORIGINS」ディレクター。RPGパートやストーリーのディレクションを担当。「真・三國無双3」からシリーズに関わり,「真・三國無双6」のプロットなどのシナリオ部分の制作に携わる |
大島光洋氏 「真・三國無双ORIGINS」ディレクター。バトルやアクションのディレクションを行う。ナンバリング相当の「真・三國無双」シリーズへの参加はORIGINSが初で,主にコラボ系の無双シリーズに携わってきた |
従来の方向性を受け継ぐ“幻のナンバリングタイトル”から,さまざまな革新を行ったORIGINSへ
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。今回はORIGINSが現在の形にまとまるまでのお話を伺えればと思います。そもそもこの企画はいつからスタートしたのでしょう。
庄 知彦氏(以下,庄氏):
「真・三國無双8 Empires」の開発の終盤ごろなので,2021年後半ですね。ORIGINSでは「原点回帰」というコンセプトを掲げて開発がスタートしました。
もともと2000年に発売した「真・三國無双」は,“戦場でタクティカル(戦術的)に行動し,アクションで敵を倒し味方を勝利に導く”というタクティカルアクションとして,作られたタイトルでした。
近年のナンバリングでは爽快感を追求し,タクティカルな側面が弱めになっている傾向がありましたが,もう一度タクティカルアクションとしての原点を見つめ直して作ろうとなったのが,ORIGINSなんです。
実はORIGINSの前には,コンセプトの違う言わば“幻のナンバリングタイトル”の開発を私と大島で進めていたこともあったんです。
そのときのタイトルは,ステージクリア制でプレイアブル武将をたくさん出す……といった「真・三國無双7」の方向性を拡張していったものでした。
4Gamer:
幻ということは,そちらの開発は中止になったということでしょうか。
庄氏:
はい。大場と大島が作っていたものが決して悪かったわけではないのですが,PlayStation 5を始めとした現行機が登場し,社内で検証を重ねていくうちに,このスペックを生かして“今だからこそ作れる最高の無双”を作れないかという話になりました。そこで,あらためて作った真・三國無双がORIGINSなんです。
大場氏:
開発ストップは少し残念ではありましたが,そのときに考えていたアイデアがまったく無駄になったわけではないんです。
たとえば,「三国志演義を知らない人にも理解してもらう」「ストーリーを深掘りする」といった方向性は「ORIGINS」に継承されていますし,「大陸地図」という主人公が自由に移動できる全体マップは“幻のナンバリングタイトル”のときに考えていたものです。
庄氏:
“幻のナンバリングタイトル”に限らず,ORIGINSを肉付けしていく過程では,これまでの真・三國無双のいいところやアイデアを取り入れています。そういう意味ではORIGINSは原点回帰であり集大成であると言えるかもしれません。
4Gamer:
ORIGINSの開発を進めていく中で,はじめに手ごたえを感じたのはどの時点だったのでしょう。
関口和敏氏(以下,関口氏):
手ごたえは最初に作ったプロトタイプの時点で感じていました。プロトタイプは“砦から矢が飛んでくる中,黄巾党が一斉に突撃してくる”というもので,製品版でも最初にプレイするシーンとして実装しています。
これをシブサワ・コウに見せたところ「新しい無双の形だね」と言ってもらえたんです。我々が目指す方向性,絵作り,臨場感の出し方といった部分は間違っていないんだと確信が持てたとともに,大きな柱ができあがったんです。
庄氏:
企画書の時点で現在の形に近いというか,完成していた感はあるよね。
大島光洋氏(以下,大島氏):
シリーズが長く続いているだけに,「一騎討ち」や「衝車」「奇襲」といった三国志らしい要素でアクションゲームの遊びとして使えるものは,これまでのシリーズでほとんど使っているんです。
そこで今回は“今までメッセージで表現していたところにも逃げずに向き合い,きちんと3Dシーン中に実際に起きていることとして表現していこう”と決めました。これまでのシリーズで使われた要素も,この手法であれば現代のゲームとして面白く遊べるものになるだろうと。
関口氏:
柱はできたから,あとは肉付けしていけばいいと思ったら……。
庄氏:
大苦戦の連続だったね(笑)。
関口氏:
企画書の段階で“兵士をとにかくたくさん出す”“臨場感を表現する”“オリジナル主人公を使う”というキーワードこそ出てきていましたが,これまでのシリーズの延長で終わるのか,まったく違ったものになるかは,プロトタイプからどう広げていくかという采配次第でした。
分かりやすい例が,プロトタイプの続きを作ったときのことです。砦の門を開いた向こうに戦場を作ってシブサワ・コウにプレイしてもらったら「拠点を制圧していくスタイルになるんだったら,今までの真・三國無双と一緒じゃないの」と言われたんです。
4Gamer:
同じ人にプレイしてもらったのに,評価が正反対になったわけですね。
関口氏:
確かに,拠点を制圧するゲーム性自体は従来の真・三國無双に近くシブサワコウの指摘どおりでした。
一方でこれまでにないほどたくさんの兵士を出せていたり,敵味方の兵士たちが隊列を組みながら進軍していく様子を描けたりしていたので,ここを大事にしていけば今までにない無双を作れるのではないかという話になりました。
従来の真・三國無双は“プレイヤーに近い位置で起こるアクション”と“遠くにいる軍団のシミュレート”という要素がありますが,これらは処理が分かれています。ORIGINSはその中間である遠くで味方と敵が戦っている描写を作ったんです。
大場氏:
あとはゲームの難度を決めるのも大変でした。「真・三國無双」シリーズは「シンプルな操作で敵を倒せる」という爽快感を評価していただいた歴史もあります。爽快感を実現しつつ,ゲームとしての歯ごたえも追及するせめぎ合いがありました。
関口氏:
簡単にすると「これまでの無双と何が違うんですか」となりますし,あまり難しくしすぎると「こんなの無双じゃない」と言われてしまう。
大場氏:
最終的には,シンプルな操作での爽快感を担保しつつも,弾き返しや回避を活用して少し歯ごたえのある,ほどよいバランスに落ち着くことができました。シフトすることになりました。
「仁王」「Wo Long: Fallen Dynasty」といったハードなアクションゲームを手がけたTeam NINJAには,特に我々の意図を理解してもらえて,この方針を進めていくうえでの支えになりました。
大島氏:
バトルの部分に関しては,少しバランスを変えただけで印象がまったく違うものになるんです。実際に開発途中で社内評価が大きく下がったときにもゲームシステムは変えず,敵のパラメータを少し調整したら,社内評価が大きく上がったということもありました。
4Gamer:
社内からいろいろな声が聞こえてくる中では方針に迷うこともありそうな気がしますが,そうしたことはなかったのでしょうか。
開発チームの中では迷う声が上がったこともありますが,私自身はありませんでした。
私はいつも企画書を書いた段階で描いた理想の完成形に近づけていくという方式で進めています。企画書の段階で既にとことん考え抜いているので,開発途中で持ち上がる課題や周囲の反応もほぼ想定通りのことですし解決できる自信があります。なので,あとはそれを片付けていくだけなんです。
特に「真・三國無双」については,私は初代から携わっているので,そのあたりの勘どころも分かっているつもりです。
関口氏:
社内からもらった意見自体も決して間違ったものではないんです。ただ,ゲーム全体を見ると,意見に沿えなかったり,うまくいかなかったりする部分があるんです。
庄氏:
テストプレイは限られた時間であるだけに,全体を俯瞰することは難しく,いただけるのも“点”の意見が多くなりがちです。
我々としてはゲームの全体やたどり着くべきゴール地点を見据えて作っているので,いただいた意見すべてに対応すると,できあがるものがバラバラになってしまいます。意見を取捨選択したうえで軸をブラさないのが大切なんです。
4Gamer:
そうしたジャッジの基準は言語化されているものなのでしょうか。
大島氏:
特に言語化していたわけではありませんが,そこは庄が引っ張ってくれましたね。庄は開発チームのみんなが不安になったときもずっと自信に満ちていたんですよ。
励ましてくれたり,「兵士の足の接地感が足りないから品質が上がらないんだ!」といった具体的なリテイク指示を出してくれたりしました。
自分としては,間違いなく面白いゲームにはなるけれど,シリーズのファンはどう受け取るだろうという不安を感じたこともありました。
庄にも「これを作り続けていいんでしょうか?」と相談したこともあったんですが,「大丈夫,目指す方向性は間違っていない!」と言ってもらって励みになりましたね。
関口氏:
いろいろなしがらみなしに,スパッと意見を言える庄がいてくれたのは助かりましたね。
庄氏:
今回は「2」から「5」までと同じく,自分が作るべき「真・三國無双」はこれだと信じて臨んでいたし,その点で私の思い描いているものに対してNGを出せる人間はいないはずなので(笑),気楽な立場からで言いたい放題に言ってただけだけどね。
大場氏:
開発プロデューサーの立場としては,気軽にスケジュールを延ばそうするのはやめて欲しかったですけど! コストを管理する側の気持ちにもなって欲しい(笑)。
庄氏:
その節はすみませんでした(笑)。
大場氏:
ここまで聞くだけだと,庄が何もかもを決めていたと思われるかもしれませんが,決してそうではなく,具体的な形については開発チームが決定していました。
庄はチームの内外問わず積極的に意見を出してくれる人間としてリーダーシップを発揮してくれたという感じです。
庄氏:
ゲーム開発では,社内からいろいろな意見が出るたびに対応したり大きく変えたりといったことが多いんです。
途中で日和っていろいろ変えていたら「良くも悪くもいつもの無双だね」という仕上がりになっていたと思いますし,開発チームのみんながブレずに作り切ってくれて,本当に良かったと思います。
主人公を立てる物語と三国志演義としての物語,2つの要素の両立を目指す
4Gamer:
記憶を失ったオリジナル主人公と,武将について聞かせてください。主人公は自分でメイキングできませんが,周囲の武将たちとの交流や友情といったドラマを持ちます。こうしたアプローチは今までの真・三國無双にはなかったものですが,どのような経緯で生まれたのでしょうか。
庄氏:
これについても企画の最初に決めていたことですね。先ほど少し話題に挙がりましたが,ORIGINSのコンセプトの1つに「三国志演義を知らない人にも理解してもらえるものを」ということがあります。
今回はグローバル展開を目指して,世界中の人に三国志の魅力を伝えたいと思っていたので,それなら記憶を失った主人公の視点から三国志の物語を楽しんでもらうのがいいと思ったんです。
また,主人公を一人にすることで,ゲームとして強くなっていく過程を体験できますし,タクティカルな立ち回りも段階的に学んでいけると考えました。設定や物語については「若者が一騎当千に至る物語にしてほしい」と関口にお願いしました。
大島氏:
関口は「主人公を立てる物語」と「三国志演義としての物語」のはざまで悩んでいました。傍から見ていてもすごく大変そうだなと。
実際に考えてみるとこの設定を三国志の物語に落とし込むのがすごく難しかったんです。
「若者が一騎当千に至る物語」と聞いて思いつくのは,村を滅ぼされた青年が立ち上がって,一騎当千の武将になるまでを描くという設定だと思います。しかしそれは,主人公の物語”であり,“三国志の物語”かと言われると疑問ですよね。
一方で,ナンバリングでは既に三国志演義の物語を8回繰り返し描いているわけですから,違ったアプローチを採用したいという庄の考えも分かる。ただ,繰り返しやっている定番のエピソードが満を持して語られる良さというのも確実にある。
主人公個人の視点からの見え方と,三国志演義としての面白さというバランスを調整するのは,相当に骨が折れました。
庄氏:
プロットがいつまで経っても本当に上がってこないんですよ(笑)。
関口氏:
主人公の強さの設定をどうするかも悩みの種でした。武芸の心得がない農民という設定にしてしまったら,一騎当千どころか,戦場で死なないように立ち回ることすら難しいわけですから。マンガなら素の身体能力が優れているとかうまく理屈をつけて説明に尺を割けるけれど,ゲームではそうもいきません。
大島氏:
初期のバージョンで,5人くらいの兵士に囲まれるとやられてしまうくらいのバランスを試したこともありました。ただ,それはやはり皆さんが求めていることではないだろうと。
関口氏:
しかし,成長物語を描くなら最初から強すぎるのもダメなわけです。
大島氏:
たとえばこれが普通のRPGであれば,無双武将を仲間にして一緒に成長していけばいいんですが,ORIGINSは歴史物語であり,無双武将は三国志演義の中で彼ら自身の人生を歩みます。状況を考えると参加してはいけない戦いもありますし,このあたりをどういう風にゲームに落としていくかとても悩みました。
関口氏:
最終的には,特殊な出自の主人公が記憶を失っているという,現在の形となりました。
不安はあったんですが,大場から「欧米ではバックボーンのある主人公がヒロイックに活躍できる設定のほうが受けるし,シリーズファンも最初から気持ちよく戦えるアクションを必要としています」と背中を押してもらいました。
4Gamer:
三国志演義という原作があるだけに,最強のオリジナル主人公を作ってしまうとまずいわけですね。
序盤では主人公が張飛と腕試しをして認めさせるシーンがありますが,これは問題なかったのでしょうか。
関口氏:
主人公と張飛が直接対決して負かすのはNGじゃないかと思っていましたが,開発メンバーが,“腕試し”としてチュートリアルに組み込んで調整してくれました。この件に限らずORIGINSの開発では,後半にいろいろなピースがはまっていった例が多いです。
4Gamer:
戦いの中で,操作を一定時間主人公から無双武将に移す随行武将システムも,こうした苦労の産物なのでしょうか。
関口氏:
相当に試行錯誤しました。これまではいろいろな武将たちを短いサイクルで切り替え,武器の種類やプレイ感が変わる中で三国志を楽しんでいただいていましたが,今回は「主人公視点の物語にしてほしい」というオーダーがあるわけですから,そういった手法は採れない。
大島は「主人公一人だけで何十時間ものプレイ時間をもたせるのは難度高いです」とぶっちゃけてましたね(笑)。
大島氏:
いや,もう本当に最初はどうしようかと思いました。試行錯誤の末,一定時間だけ操作できる「随行武将」として無双武将を同行させるという形にたどり着きました。
ORIGINSにおける無双武将の立ち位置は「最終的に主人公もその強さに近づけるけれど,最初は憧れとなる圧倒的な存在でなければならない」というものなので,極端に強くしても設定上の納得感が出ます。
庄氏:
「無双武将は一切使えません!」ではシリーズファンの皆さんから受け入れていただけないので,いい塩梅に落とし込んでくれましたね。
関口氏:
あとは,主人公がある程度強い状態からスタートするので,ここからどう成長を表現しようかということも悩みました。
ここではスキルツリーを複数に分け,それぞれに「境地」という名前を付けていきました。境地は「武侠」→「手練」→「練達」→「達人」→「英傑」→「無双」と順番にツリーが開放されていきます。最終的にはゲームシステムが主人公を無双として認めたことになるわけです。
4Gamer:
プレイヤーとしても主人公がどの程度の立ち位置にあるかが分かり,強くなったことへの納得感はある。そのうえで,なお随行武将に及ばないため,三国志演義という“原作”における強さの序列も守られ,三国志ファンとしても違和感を覚えることはないと。
大場氏:
実は最初は無双乱舞も入っていなかったんです。発動すると一定時間無敵になる「覚醒」のシメに一撃が放たれるというものは入っていましたが単体では存在しませんでした。今回は難度が上がっているからこそ,緊急回避的に使える安心感が必要になると思いましたし,やはり「真・三國無双」といえば無双乱舞です。
無双乱舞の存在は従来作にはなくてはならないものですし,社内からも「やっぱり欲しい」という声が上がっていましたから,本作でもぜひと私から話をして実装が決まりました。
4Gamer:
確かに,覚醒だけだとそう気軽には使えないというか,最後まで溜めてしまって,今のようなテンポ感にはならなかったでしょうね。
「キーワードの連呼禁止」から始まる,新たな無双武将像の追求
4Gamer:
今回は武将たちのキャラクター性にも変化があったと感じられますが,このあたりも意図して調整したのでしょうか。
庄氏:
今回はタイトルにもあるとおり,「三国志」の起源(ORIGINS)を描く話なので,大幅に変えざるを得なかった武将もいます。これは,今までのキャラクター性では目指す方向性の物語とするのが難しかったためで,慎重に調整していきました。
ファンの方が「なんでこのキャラクターは変わっているんだ」と感じられることもあるかもしれませんし,社内からも同様の声が上がっていたのは確かです。
ただ,単に我々のエゴで変えてやろうといった気持ちは一切ありません。「三国志」にはその時代に生きた人々がいたわけですし,「真・三國無双」シリーズは,「三国志」の面白さがあってこそですから。
4Gamer:
袁紹であれば「名族」,董卓であれば「酒池肉林」といった本人を象徴するようなキーワードを連発するようなキャラクター付けも行われなくなっています。
庄氏:
おっしゃるとおりで,今回は最初の方向性として「キーワードの連呼を禁止する」というのは決めていました。
これまでのシリーズでは,ちょっと誇張した感じでキャラクター付けをしてきた部分があり,これは1ステージごとに物語をコンパクトにまとめる形で作っていたのも理由の1つでした。
ただ,キーワードの連呼はそれ自体が悪いから止めたわけではないんです。これまではキャラクター性をストレートに伝えられるからそうしましたが,ORIGINSではゲーム全体の体験を通じて,武将の魅力を伝えられると思ったんです。
関口氏:
現場からも「キーワードがなくなったら,特徴がなくなってしまう。普通にセリフを語っているだけになりますよ」という声は上がりました。
「このキャラクターにはこのセリフを言って欲しい」というニーズは自然なものでもありますが,「真・三國無双」には,声優さんの演技や,これまでのシリーズで描き続けてきた武将ごとのバックボーンがあります。だからこそ,今回はキーワードに縛られない多面性を描いていこうとなったんですね。
4Gamer:
変わった点と言えば,今回は武将が全体的に若くなっていて驚きました。特に劉備は威厳ある仁徳の君主というより,爽やかな青年風ですし。
関口氏:
庄からは「見た目も内面もできるだけ時代に合った若いころのものを描いて欲しい」というオーダーがありました。特に劉備はこれまでのシリーズでも描き方が変わっている武将ですから,どう描くかについては苦労しましたね。
初期作ではゲーム開始直後から“仁徳の人”でしたが,「真・三國無双6」では諸葛亮と出会って自分の志に気付いていく変化を描きました。そして,今回はもう少し前の時期である,義勇軍として立ち上がって出世していく変化や,迷っている様子を描けるように大きく変えています。
セリフだけで表現するのも難しいところがありますが,そこはCGディレクターが映画的なライティングや色調,表情の変化を工夫してくれました。
庄氏:
あと主人公に関してもイベントシーンで喋らないので,選択肢の前後で意識して表情を見せています。
社内からは「自分で作れるエディット主人公でもよかったのでは」という声も上がっていましたが,今回は,三国志の物語として感情移入してもらうために,一人の主人公を軸にゲーム全体の設計を調整していきました。
その結果,全体としての体験の質は非常に高いものになったと思います。
4Gamer:
制作の意識が大きく変わっているわけですね。脚本や武将との交流イベントを書くうえで気を付けた部分などはありますか。
関口氏:
「ドラマ性を高め,キャラクター性とも両立させていこう」ということは考えていました。物語の途中で主人公は曹操,孫堅,劉備の中から仕える君主を選びます。
選ばなかった勢力の武将たちとは敵対しますが,そこでは「主人公をとおして,選んだ君主の理想を描いていく」ことを重視しました。
我々が描きたかったのはやはり,三国志の物語ですから,主人公が選んだ勢力が周囲からどう見られているか,武将たちのセリフをとおして語ったわけです。
4Gamer:
主人公の物語ではあるけれど,三国時代の物語もあるので,3つの国がお互いをどう見ていたかという描写も不可欠だったということですね。
関口氏:
武将との交流イベントについては,「キャラクターと仲良くしたい」というニーズは絶対に存在していますから,ファンサービスを含めた設計がされています。しっかりと好意を表してくれたり,甘めのセリフが多かったりするわけですね。ここについては,シリーズでずっとライターをやっている者が大いに盛り上がりながら書いていきました。
庄氏:
特に呂布については,今までのシリーズがあるからこそ,ずっしりと構えた“絶対強者”として描きたいというオーダーをしました。物語としてもゲーム中に立ちはだかる敵としても非常に強力な存在として描かれています。
関口氏:
だからこそ呂布の死にざまについては,本当に大変でした。“絶対強者”を殺すにはどうすればいいのか,庄から10回くらいリテイクがあってようやく完成した1つの見どころになっているので,注目していただきたいです。
4Gamer:
今回は赤壁の戦いまでの三国志が描かれるということが発表されています。少し気が早いかもしれませんが,この先を描く続編やDLCなどの構想はあるのでしょうか。
庄氏:
描きたいという気持ちはありますが,現時点ではまったくの未定です。今はORIGINSを皆さんに楽しんでいただけるように全力を注いでいるところですので,そちらで描かれる三国志を楽しんでいただければと思います。
「見どころを凝縮しすぎた」体験版は,既に200時間を超えてプレイする人も
4Gamer:
2024年11月には体験版を配信されましたが,どういった反応がありましたか。
庄氏:
おかげさまで,140万回以上のダウンロードがあり,新しい層の方々に触れていただいているなという手ごたえがありますね。
大島氏:
中には200時間以上プレイされている方もおられて嬉しい限りです。
庄氏:
特に海外ではかなり良い評価をいただいています。日本国内だと賛否が半々ですが,こちらはある程度予想していたところでもあります。シリーズ作それぞれにファンの方がいらっしゃいますし,体験版で伝えきれていない部分もありますので。
また,舞台として選んだ「汜水関の戦い」はいきなりプレイするには難しいし,ラストに出てくる呂布を強くし過ぎてしまったことから「難しい」「死にゲー的である」といった捉え方をされてしまったところはあります。
我々としては最後の呂布はおまけとして入れたつもりなので,「呂布は倒さなくても大丈夫です」とメッセージを出しておけばよかったなと。
関口氏:
体験版の主人公は,製品版を8〜10時間プレイしたくらいの成長度合いです。本来はそれだけの時間をかけて覚えるものを初見で使いこなさなければいけないので,大変に感じられる方がおられるのも当然です。
庄氏:
振り返ってみると,体験版はORIGINSの目指すべきところを凝縮しすぎたなと。
汜水関の戦いは大軍団戦から一騎討ちまでさまざまな側面を持ち,我々としては本作の醍醐味の多くを楽しめるバトルのひとつだと思って内容を決めたのですが,「全部のバトルがこれくらいクライマックスで難しいのか」と誤解されてしまいました。
製品版は小規模な戦いからじょじょに規模が広がっていきますし,主人公ができることもこれに伴って増えていきます。しっかりステップアップしてゲームに慣れていく設計になっているので,ご安心ください。
4Gamer:
体験版への意見を受けて,手を加える部分はありますか。
主に操作性に関しては発売後のパッチで対応いたします。たとえば,PCならではのキーボードやマウスへの対応はしっかり行い,サイドボタンや[TAB]キーにも操作を割り当てられるようにします。
また,馬を呼ぶ操作については「誤爆が多い」というご意見もありました。そこで,ボタンの長押しで馬を呼べるようにするほか,デフォルトの[L3]以外に割り当てた際も覚醒の操作が[L3]+[R3]で行えるようにするといった改良も加える予定です。
そのほかには,敗戦したレスポンスもよくなかったので,製品版では敗北演出をボタン押しでスキップしてすぐにゲームを再開できるようにします。
視認性についても,カメラの回転速度を現在の2倍くらいまで上げられるようにし,主人公が敵兵士に埋もれないよう輪郭線を出すオプションも追加する予定です。
4Gamer:
難度についてはいかがでしょうか。
大場氏:
難度については,「歴史を追う者」「乱世を往く者」「逆境を覆す者」という3種類を用意しています。それぞれの難度は,単にパラメータをいじるだけではなくて,仕様レベルでの変更をしていますので,プレイスタイルに合ったものをお選びいただければ必ず楽しんでいただけると思います。
大島氏:
体験版では情報が一気に出てきて戸惑った方もおられると思いますが,製品版ではアクションゲームとしての達成感と,その先にある爽快感をしっかり感じていただけると思います。
庄氏:
今回は「三国志」や「真・三國無双」シリーズに触れたことのない方にも1つの物語として楽しんでいただけるように作ったので,本作をきっかけに入門していただけたら嬉しいですね。
4Gamer:
初代「真・三國無双」は当時の若者の三国志入門的なゲームでしたから,ORIGINSもそうなるといいですよね。
大島氏:
社内の人間にも三国志を知らない若手がいたんですが,ORIGINSをプレイして「三国志って面白いですね」と言ってもらっているので,プレイしていただければ若い方にもきっと三国志の魅力が伝わると思っています。
庄氏:
三国志ってさまざまな魅力が詰まっていて本当に面白いんです。私たちは奇をてらわずにその魅力をストレートに伝えればいい。
ORIGINSでは,主人公という一人称視点から三国志のストーリーを味わえますし,歴史上の出来事を時系列に体験いただけます。三国志を知っている人もそうでない人も1つの物語として楽しめますので,ぜひ手に取っていただければと思います。
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