プレイレポート
[プレイレポ]スラッシャー映画の主人公になって生存を目指せ! 世界最高評価の1人プレイ専用ボドゲ「ファイナル・ガール」がついに日本上陸
ボードゲームで1人プレイ専用というと,いかにもニッチな製品のように思えるかもしれないが,このジャンルは近年にわかな盛り上がりを見せており,その中でも本作は特筆して評価の高いタイトルとなっている。コミュニティサイト「BoardGameGeek」での評価も8.3(最大10)と,同ジャンル内では最高の得点を獲得し,海外では続編にあたる「シーズン2」も発売されている。
そんな本作の日本語版がついに登場するわけだが,「どんなゲームなのか分からない」「そもそもボドゲを1人で遊ぶってどうやるの?」と疑問を持つ人も多いことだろう。今回4Gamerでは,CMON Japanの協力により同作をいち早く遊ぶ機会が得られたので,プレイレポートをお届けしてみたい。
CMON Japan「ファイナル・ガール」クラウドファンディングページ
3つの要素を組み合わせ,自分だけのスラッシャー映画に挑む
本作のタイトルになっている「ファイナル・ガール」とは,常軌を逸した殺人鬼が暴れまわる“スラッシャー映画”において“最後に生き残る女性”を指す言葉だ。プレイヤーは映画に登場するファイナル・ガールとなり,恐ろしい殺人鬼に立ち向かっていく。
ゲームの内容は「殺人鬼」「マップ」「ファイナル・ガール」の3要素で決定されるため,組み合わせ次第で毎回異なる展開を楽しめる。殺人鬼を物理的に撃退したり,殺人鬼に設定された何らかの条件を達成したりすれば,晴れてゲームクリアというわけだ。
この3つの要素は,スラッシャー映画を構成する最小要素として考えると分かりやすい。これらを組み合わせるだけで,1本の映画のプロットが浮かび上がってくるのである。例えば今回の試遊では,「屠殺屋」「キャンプ場」「ブロンド女性(LAURIE)」の組み合わせでプレイしてみたのだが,この場合は――ティーンエイジャーが集うキャンプ場「CAMP HAPPY TRAIL(ハッピー・トレイル・キャンプ場)」の奥地には,人を食らう狂気の殺人鬼「HANS THE BUTCHER」が潜んでいた。いち早く危険に気付いた「LAURIE」は,キャンプ場で騒ぐ仲間たちを避難させようとするが――といった具合だろうか。
さてゲームがスタートすると,マップにはファイナル・ガール「LAURIE」と殺人鬼「HANS」に加え,セットアップカードに従う形で犠牲者(モブ)が配置される。HANSは犠牲者を殺害するごとに“殺人欲求”が上昇して能力が強化されていくので,プレイヤーは手がつけられなくなる前に人々を助けつつ,何らかの方法でHANSの体力を0にしなければならない。
ラウンドは以下のような流れで進行する。大枠の仕組みは非常にシンプルで,プレイヤーが手札の「アクションカード」を使って移動や攻撃といったアクションを実行し,それが終わったら殺人鬼がルールに従って行動する,といった手順の繰り返しだ。
プレイヤーは手札にあるアクションカードを自由に使えるが,これらは基本使い切りなので,手札を切るタイミングはよく考える必要がある。「計画フェイズ」が来れば新たなアクションカードを手に入れられるものの,同ラウンドで使ったカードは選択できないので,次のラウンドのことも考えつつ,ゲームを進めなければならない。
■ラウンドの流れ
- アクションフェイズ
手札のアクションカードを使ってプレイヤー(ファイナル・ガール)がアクションを実行する。
- 計画フェイズ
時間を消費し,次のラウンドに使用するアクションカードを手札に加える(最大10枚)。ただし,このラウンドに使用したアクションカードは獲得できない。
- 殺人鬼フェイズ
殺人鬼が規定のアクションを実行したのち,「脅威カード」の山札から1枚のカードをめくり,それを解決する。
- パニックフェイズ
犠牲者が1人でも殺害された場合,殺人鬼と同じマスにいる犠牲者コマを移動させる。移動先はダイスを使って決定する。
- 調整フェイズ
各種カード効果の確認や,山札の再構築,アイテムの整理などを行える。
ゲーム開始時には,ベーシックな効果を持つ6枚のアクションカードが手札として配られる。この中から行動を選ぶわけだが,スラッシャー映画にトラブルはつきものということで,すべてのアクションがうまくいくわけではない。
各カードには3種類の効果が設定されていて,その中からどの効果が発動するかは独自仕様の6面ダイスによって決定される。具体的には,使うカードを決めたのちに規定数のダイスを振り,「★」マークが出た数が0個,1個,2個でそれぞれ効果が変動する形だ。
★マークが多いほど効果は大きくなるが,逆に0個の場合はデメリット効果のみが適用されてしまうことが多い。ダイスは★マークが2面,手札を2枚捨てて★マークを出力できる効果が2面,残りは空白面なので,残り手札が少ない状況では失敗の確率が高まる構造になっている。
となればダイスの数を増やしたいところだが,振れるダイスの数は「恐怖レベル」によって変動する。これはファイナル・ガール自身が殺人鬼に抱く恐怖心を示した数値で,レベルが増えると振れるダイスが少なくなり,低下すると多くのダイスを振れるようになる(最低1個,最大3個)。恐怖レベルは殺人鬼の行動次第でどんどん上がっていくので,どこかで能動的に下げなければ運に振り回され続けることになるだろう。
遊んでみて面白かったのは,各種アクションを実行するにあたって必要な「時間」の概念だ。時間はラウンドごとに一定数使用できるリソースで,一部のアクションカードでは最高の結果が出ても消費されてしまう。
このリソースの特徴的は,「いかに余らせるか」が重要という部分にある。時間はアクションカードの効果として消費されるだけでなく,「計画フェイズ」で新たなカードを手札に加えるためのコストにもなるのだ。
「RETALIATE」(反撃)や「SEARCH」(探索)といった強力なアクションカードを手札に加えるには相応の時間を支払わなければならず,ラウンド内に使用したカードは計画フェイズで手札に加えられないので,アクションフェイズで手札と時間を使い切ると,次ラウンドに身動きが取れなくなってしまう。
使いたいアクションカードがあるなら,時間を節約して早々に計画フェイズに移ったほうがいい場合もある。どう動くか分からない危険な殺人鬼がいる空間で,じっと動かず準備を整える緊張感は本作ならではだ。
殺人鬼におののき,犠牲者に振り回される感覚を疑似体験できる
アクションフェイズと計画フェイズが終わったら,今度は殺人鬼が動き出す。殺人鬼の挙動はすべてアイコンで示されており,それを順番に解決するだけでOKだ。
HANSの場合は「同じマスにいる犠牲者,あるいはファイナル・ガールを攻撃する」というシンプルなもので,手近な人間を襲うタイプの殺人鬼なのが分かる。初期時点では特殊な能力は持っておらず,固有のルールもない。
であれば自分から近付かなければ安全かといえば,もちろんそんなことはない。殺人鬼の行動が終わったあとには,さまざまな特殊効果が設定された「脅威カード」がデッキの上から1枚が公開され,その効果が発動するからからだ。
脅威カードを含む殺人鬼の行動によって犠牲者が殺害された場合,殺人鬼と同じマスで生き残った犠牲者はパニックを引き起こしてランダムな方向へと散っていく。後先考えずに逃げ出すモブに計画が狂わされるさまは,まさにパニックホラー映画のそれ。プレイヤーは「頼むからマトモな方向に逃げてくれ!」と祈ることになる。
ただ,HANSは移動力がかなり低く,初期配置ではファイナル・ガールの近くに犠牲者が集まっている。FIRE PIT(焚き火)にたむろしている犠牲者が狙われると救出が難しくなるので,序盤は恐怖レベルの低下を狙いつつ,手近な犠牲者を誘導して助けることにする。
戦略はうまく機能し,なんとか4名の犠牲者を出口に誘導できたが,第3ラウンドが終わるとついにHANSがFIRE PITに向けて動き始めた。まだ1ラウンドは余裕がありそうだったので,ここで時間コストを使ってアクションカード「SPRINT」を獲得。これを使えば,HANSがFIRE PITに入る前に犠牲者を大きく減らせるハズ!
……と思っていたら,脅威カード「なにか音がしなかったか? 見に行こうぜ!」(What's that noise? Let's go and see!)がオープンに。これは,すべての犠牲者カードが殺人鬼に向けて1マス移動し,さらに殺人鬼が移動して犠牲者を殺害するというもの。おいバカやめろ。
運良く死亡した犠牲者は1名で済んだが,このまま放っておくとHANSの人間食べ放題が始まってしまう。もう少し準備の時間を取りたかったところだが,近くのDOCKで発見した手斧を握って突貫を仕掛けることにする。もうどうにでもなれ!
HANSの体力は12と多いが,対するLAURIE(ファイナル・ガール)の体力はわずか4で,攻撃を2回受ければ死んでしまう可能性がある。しかし,犠牲者を6体助けたことで近接攻撃の威力がアップし,恐怖レベルも0〜1の間をキープしているので,勝機は十分にあるはずだ。
逃げた犠牲者たちと入れ替わる形でHANSのいるマスに飛び込み,まずは一撃を加える。これでアクションフェイズは終了したが,事前に用意しておいたアクションカード「GUARD」と「RETALIATE」でHANSの攻撃をいなしつつダメージを与え,無事に次のラウンドを迎えることに成功した。
ここまで生き残ればこちらのものだ。手札に加えておいた「CRITICAL BLOW」を叩き込み,勝負を終わらせにかかる。タフなHANSは追加ライフで最後のダメージを凌ごうとしたが,力強い手斧の一撃は増えたライフを貫通! 残った体力を一気に削り,ゲームクリアとあいなった。
ゲーム中盤には犠牲者の動きに翻弄されたが,ダイスロールにはかなり恵まれ,今回は大きなピンチに陥ることもなくクリアできた。それでも緊張が走る場面は多く,まさに映画の主人公になったかのような感覚を味わえた。
ちなみに,後から確認したところ,HANSは殺人欲求が6以上になると「DARK POWER」と呼ばれるアビリティがアクティブになり,最終形態に達すると基本アクションが大幅に強化されることが判明。一歩遅れてHANSの食べ放題が始まっていたり,こちらの攻撃ダイスが振るわなかったりしたら,一転してピンチになっていたかもしれない。
通して遊んでみて感じたのは,ビジュアルや体験の豪華さに対する処理の手軽さだ。カードの処理はもちろん,殺人鬼や犠牲者といったNPCの挙動もすべて明確で,迷うことがない。各種シートやコンポーネントの構成も非常に分かりやすく,1人プレイ専用ボードゲームとして洗練された作品だと感じられた。
そのうえで,テーマとなっている「スラッシャー映画」らしい興奮や恐怖を味わえるのは,本作ならではの強みといえる。元ネタの出来事をそのまま再現するのではなく,その中で得られる“体験”を再現している作品なので,このジャンルの映画に詳しくない人でもその魅力を十分に味わえるだろう。
なお,今回の試遊は「ファイナル・ガール シーズン1」に含まれる5つのフィルムボックスのうち1つ「血みどろキャンプ場の襲撃」のみを使用している。ファイナル・ガールは各フィルムボックスに2人,殺人鬼やマップにもバリエーションがあり,このワンパッケージだけでもけっこうなカスタマイズが可能だ。
そしてフルセットには5つのフィルムボックスが含まれており,さらに達成済のストレッチゴールによって,さらなる拡張カードやシナリオの追加も決定している。殺人鬼,マップ,ファイナル・ガールの組み合わせを変えつつ攻略すれば,かなり長期間遊べる作品になりそうだ。
クラウドファンディングの対象となっている各セットの詳細は,CMON Japan公式サイトの「ファイナル・ガール」紹介ページで確認できる。キャンペーン期間は10月31日19:00までなので,興味を持った人はそれまでに内容をチェックしておこう。
CMON Japan「ファイナル・ガール」クラウドファンディングページ
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