インタビュー
格闘ゲームは終わらない――EVO Japan 2024運営委員長,松田泰明氏に聞く大会運営への意気込み
過去にインタビューで触れたように,古くは闘劇など大規模な格闘ゲームイベントを運営し,業界を支えてきた同氏。大会運営委員長に就任した経緯やEVO Japan 2024の運営に対する意気込みを聞いた。
いつか必ず「闘劇」を復活させます――。ゲームニュートン オーナー・松田泰明氏が語る格闘ゲームシーンの過去と未来
伝説の格闘ゲームイベント「闘劇」の中心人物であり,ゲームセンター「ゲームニュートン」のオーナーを務める松田泰明氏へのインタビューをお届けする。シーンの最前線に20年以上立ち続け,格闘ゲームの隆盛,ゲームセンターの盛衰,eスポーツブームの到来と,すべてを実際に間近で見てきた氏が語る,格闘ゲームシーンの過去と未来とは……。
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- カメラマン:佐々木秀二
- 編集部:T田
「EVO Japan」公式サイト
できる限り選手に寄り添った運営を行う
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。はじめに松田さんの簡単な自己紹介をお願いします。
松田泰明氏(以下,松田氏):
ユニバーサルグラビティー代表の松田泰明です。ゲームセンター「ゲームニュートン」のオーナーをしていますが,ここ10年くらいはゲームイベントの企画,制作,運営,派遣を平行して行っています。
4Gamer:
松田さんと言えば,2003年から2012年まで実施されていた伝説の格闘ゲームイベント「闘劇」の運営として知られています。
松田氏:
闘劇なくして今のぼくはないですよね。あの頃のノウハウが今の仕事にも生きています。現在は休止という形が取られていますが,いつか闘劇は復活させたいと思っています。
4Gamer:
直近の大規模な大会運営ですと,11月4日に実施された「鉄拳7」のコミュニティ大会「MASTERCUP.12」でしょうか。765人が参加したと聞きました。
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松田氏:
鉄拳シリーズの伝統のイベントなんですが,今年は初めてSteam版を使っての大会になりました。前例がない形式だったのでトラブルも発生しやすい環境だったと思うんですが,大きなトラブルもなく無事終えることができて,ホッとしています。
EVO Japan 2024のメインタイトルは,「STREET FIGHTER III 3rd STRIKE: Fight for the Future」以外はすべてPlayStation 5で実施することになりますが,こうした経験がノウハウとなって,当日の運営に生きてくると思います。
4Gamer:
STREET FIGHTER III 3rd STRIKE: Fight for the Futureはアーケード筐体を使用するのでしょうか。
松田氏:
もちろんです。
4Gamer:
このたび大会運営委員長に就任したとのことですが,具体的にどんな役割を担っているのでしょうか。
松田氏:
運営の方向性を決めるのはもちろん,何かトラブルがあったときに決断しなければならない立場だと捉えています。コミュニティイベントはずっと運営しているので,参加している選手の気持ちは十分に理解できています。できる限りプレイヤーファースト――選手に寄り添った運営を行っていきたいですね。
4Gamer:
格闘ゲームコミュニティの人間からすると,松田さんがトップを担ってくれることでイベントへの信頼感が与えられますよね。
松田氏:
そう思っていただけるとありがたいですね。ちなみに実は2020年のEVO Japanでも大会運営委員長をやってほしいと頼まれたことがあるんですよ。そのときは,ぼくみたいな裏方のおじさんがやっても仕方ない,もっと若い人が前に立つべきだと思って断ったんですが。
4Gamer:
今回受けたということは心境の変化があったわけでしょうか。
松田氏:
できることであれば裏方に徹していたかったんですが,ぼくが表に出ることが周囲のメリットにつながるのであれば,出るべきなのかなって思ったんです。あとはシンプルに最近はこういう頼まれごとが多くて,断りきれなくなったというのもあります。
4Gamer:
松田さんの長年の功績を考えると,もっと前に出ていてもいいポジションだったとは思います。裏方に徹するというのは,何かポリシーに則ったものなのでしょうか。
松田氏:
ポリシーと言うか,シンプルに大会ってだれのためにあるかというと,参加する選手のためじゃないですか。ですからぼくなんかが目立ってもしょうがない。イベントでぼくに話を聞いてくれたり,写真を撮ってくれたりする人もいますが,ぼくなんかよりもっと選手を目立たせてあげてよって言ってますね。
EVO Japanの有料化について
4Gamer:
ここまでの大規模のイベントですと,まったくトラブルが起きずに終えることは難しいと思います。大会の責任者というポジションに重圧などは感じていませんか。
松田氏:
プレッシャーはかなり感じていますよ。ただ,ぼくも何十年も大会を運営してきて,これまでさまざまなトラブルに見舞われてきましたし,それらを解決するノウハウは蓄積しています。大会運営に対する自信はあるので,参加する方には安心していただきたいですね。
4Gamer:
今回も任せてくれと。
松田氏:
ええ。まずは事前のテストでどこまで詰められるかですね。それでもテストと本番ではまるで環境が違うので,かならずトラブルは発生します。今は起こりうる課題をすべて洗い出して,対策を講じているところになります。
4Gamer:
話がちょっと変わるんですが,EVO Japanは今回から入場チケット制の有料イベントになります。松田さんとしては,無料イベントから有料イベントに変わることに対して,何か意見や思うところはありますか。
松田氏:
長年イベントを運営してきたぼくの意見としては大賛成ですね。コミュニティイベントで一番大事なことって続けていくことだと思うんですよ。やっぱり無料のイベントって先細りしていってしまうので……。
4Gamer:
そもそも本家アメリカのEVOもエントリーにお金はかかりますしね。
松田氏:
これまで無料だったのは,日本の法律の問題があったと思っていて,そこがクリアになるのであれば有料制になるのはいいんじゃないでしょうか。
ぼくもいろんなコミュニティイベントを運営していますが,むしろ選手のほうからもっとお金取ってくださいよって言われることが最近は多いですね。
格闘ゲームは終わらない
4Gamer:
今回は大会会場が有明GYM-EXになるとのことで,これまで開催されたEVO Japanとは現場が変わります。松田さんはもう現地は見てきましたか。
松田氏:
もちろんです。サイズ的にはEVO Japan 2023のときと変わらないくらいですかね。あの時は,東京ビッグサイトの南展示棟南1ホール・南2ホールを使いましたが。
4Gamer:
EVO Japan 2023は,遊びにきてくれた人からは好評でしたよね。自分も取材に伺ったのですが,本家EVOのような雰囲気を感じましたし,会場の規模感もちょうどよかったように思いました。
松田氏:
ただ,ちょっと懸念しているのは,どれだけ人がくるかまだ読めていないんですよ。とくに「ストリートファイター6」や「鉄拳8」はビッグタイトルの最新ナンバリングなんで……。
4Gamer:
EVO 2023の「ストリートファイター6」部門はエントリーが7000人を超えていました。
松田氏:
タイトルだけ考えると,間違いなく過去最大の規模になると予想しています。当然無策で臨むということはありえないので,開催までにしっかりと打開策を練っていきます。
4Gamer:
あとは,だれでも参加できるオープントーナメントなので,プロ格闘ゲーマーや有名なストリーマーも参加すると予想されます。昨今の界隈の盛り上がりを見ると,トラブルが起こってもおかしくないとは思うのですが,何か対策などは用意するのでしょうか。
松田氏:
すでに懸念点としては上がっていますね。中にはうまく自衛できる人もいますが,できない人もいると思うので,なんらかの対策は用意できればと考えています。
4Gamer:
EVO Japanも2018年から始まり,今ではすっかりお馴染みのイベントになりました。EVOと言えば格闘ゲーマーの憧れのイベントという印象でしたが,そのイベントが日本に定着しつつあることに何か思うところはありますか。
松田氏:
闘劇を運営していたころから思っていることなんですが,年に1回,プレイヤーが目指すべき大会があってほしいんですよ。
「格闘ゲームは終わらない」
ってぼくはずっと言い続けているんですけど,プレイヤーにとって象徴のような大会があれば,みんなにも同じように感じてもらえるじゃないですか。
4Gamer:
EVO Japanがその役目を担うと。
松田氏:
ただまだ完全に定着したわけではなくて,今まさに作り上げている段階だと思っています。先にも言いましたが,とにかく続けていくことが大切ですね。
あと最近はオンラインでの格闘ゲームイベントも増えましたけど,なんだかんだ大きい大会はオフラインでやりたいという気持ちはあります。別にオンラインが悪いという話ではありませんが。
4Gamer:
今回は日程も参加しやすくなりましたよね。これまでは3日間開催で,初日は平日の金曜日開催ということが多くありました。
松田氏:
EVO Japan 2024は,4月27日(土),28日(日),29日(月)の開催で,29日が昭和の日になります。参加しやすい日程になったので,ぜひ多くの方に遊びにきてほしいですね。
4Gamer:
最後にEVO Japan 2024に参加を考えている人や読者に対してメッセージをお願いします。
松田氏:
近年さらにeスポーツが盛り上がって,夢に見ていた世界が実現しつつあります。格闘ゲームのプレイヤーがプロとして認められて,それで生きていける世の中になりつつあります。ぼくができることなんてほんの些細なことですが,シーンの盛り上がりの一助になるのであれば,尽力していきたいですね。
EVO Japan 2024に関しては,今回初めて有料化されますが,必ずこれまでで一番参加者に面白かったと感じていただける大会にします。会場にいる参加者はみんな格闘ゲームが大好きな仲間です。オフラインイベントに参加したことがない方も,ぜひ参加して楽しんでいってください。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
「EVO Japan」公式サイト
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