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いつか必ず「闘劇」を復活させます――。ゲームニュートン オーナー・松田泰明氏が語る格闘ゲームシーンの過去と未来
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印刷2019/04/27 00:00

インタビュー

いつか必ず「闘劇」を復活させます――。ゲームニュートン オーナー・松田泰明氏が語る格闘ゲームシーンの過去と未来

 2018年に引き続き,今年も大きな盛り上がりを見せるeスポーツ。国内で人気ジャンルの格闘ゲームでは,2月に「EVO Japan 2019」,3月にはタイトーの「闘神祭 2018-19」と立て続けに大規模イベントが開催され,どちらも盛況のうちに幕を閉じた。

EVO Japan 2019より
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闘神祭 2018-19より
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 ウメハラ氏,ときど氏,ももち氏といった実力,知名度共に申し分ないプロゲーマーが表舞台で華やかに活躍する一方で,そのための舞台を用意し,支えてきた裏方役もいる。
 プロゲーマーという言葉が生まれるよりもずっと前から格闘ゲームイベントを陰で支えてきた,ゲームセンター「ゲームニュートン」のオーナーである松田泰明氏もその1人。さまざまなゲームイベント運営の中心人物として真っ先に名が上がる業界の重鎮であり,現在のeスポーツイベントでもキーマンとして活躍を続けている人物だ。

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 今回4Gamerは,ゲームセンターというシーンの最前線に20年以上立ち続け,格闘ゲームの隆盛,ゲームセンターの盛衰,eスポーツブームの到来と,すべてを見てきた松田氏にインタビューを行った。氏の生い立ちや人生,格闘ゲームにかける思い,eスポーツへの想いなどが語られた濃厚な内容となっているので,ぜひ読み進めてほしい。


すべては1クレジットから始まる。ゲーセンっ子だった少年時代


4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。初めに自己紹介からお願いします。

松田泰明氏(以下,松田氏):
 ユニバーサルグラビティー代表の松田泰明です。「ゲームニュートン」のオーナーをしつつ,格闘ゲームイベントなどの運営を手伝っています。

松田泰明氏
ユニバーサルグラビティー代表 / ゲームセンター「ゲームニュートン」オーナー
伝説の格闘ゲームイベント「闘劇」の発起人の1人であり,今でもさまざまなeスポーツイベントの運営に関わり,活躍を続けている
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4Gamer:
 格闘ゲームイベントの裏方として長年活躍を続けていますが,メディアに露出が増えたのはここ数年だと思います。生い立ちやバックボーンなどを聞かせてもらえますか。

松田氏:
 それなら自分がゲームセンターに通っていた子どもの頃から話しますね。自分も昔からゲームセンターが大好きで,小学校の頃からずっと遊びに行ってたんですよ。大山ニュートンの場所にアタックっていうゲームセンターが当時あって,そこの常連でした。お小遣いを200円もらったら「これで4回プレイできる!」ってすぐに遊びに行ってましたね。「ソンソン」とか「魔界村」なんかはずっと遊んでいたし,「グラディウス」が稼働した時なんて,小学生ながらに「すごい時代になった!」って感動していました(笑)。

4Gamer:
 今でも愛され続けている作品がたくさん登場していた時代ですね。

松田氏:
 当時のゲームセンターって大人気のゲ―ムはみんな順番待ちしてるんだけど,みんなお金を先に入れちゃうんですよね。それで何クレジット目が自分の番だって覚えてプレイしていました。

4Gamer:
 自分も1990年代にゲームセンターで遊んでいましたが,置きコインやクレジットを先に入れる文化はありましたね。分からない人がほかの人のクレジット使っちゃってトラブルになったりしていたのを覚えています。

※置きコイン:筐体のクレジット投入口付近にお金を置き,ゲームプレイの先約をアピールする行為。コインを重ねて積んでいく「積みコイン」も見られた

松田氏:
 今考えるとすごい文化ですよね(笑)。格闘ゲームだと初代「ストリートファイター」は,もちろんガッツリ遊びましたね。入っているお店が近所になくて,池袋まで足を運んでいたのを覚えています。アップライト筐体のバージョンはボタンが2個しかなくて,ボタンを叩く強さで,弱・中・強攻撃を使い分ける仕様だったんですよ。テーブル筐体の6ボタンバージョンもめちゃくちゃ遊びました。

4Gamer:
 「ストリートファイター」シリーズでは,社会現象とも言えるムーブメントを起こした「ストリートファイターII」が1991年に稼働開始しました。

松田氏:
 当時の熱狂は本当にすごかったですよ。自分も全財産をストIIにつぎ込んだ記憶があります(笑)。

4Gamer:
 仕事としてのゲームセンターとの出会いはどのようなものだったのでしょう。

松田氏:
 自分が高校卒業後,18歳の時に志村ニュートンがオープンしたんですけど,そこのオープニングスタッフとしてアルバイトを始めたのが最初です。志村ニュートンのアルバイト時代はゲームイベントをたくさん開催して,売り上げを伸ばすことに成功したんですよ。そんなこともあって2年ほどで店長になって,お店を任されるようになりました。

4Gamer:
 わずか2年で店長就任ってスピード感がいいですね。

松田氏:
 店長になっても変わらず志村ニュートンでゲームイベントを開催していたんですけど,開催を重ねるごとに人が増えて,手狭になってきた。そこでイベントを開催するための新しい店舗として,大山ニュートンをオープンしたわけです。自分からすれば子どもの頃に遊んでいたアタックの跡地ですから,感慨深いものはありました。

大山ニュートン
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伝説の格闘ゲームイベント「闘劇」の始まり


4Gamer:
 松田氏は,伝説の格闘ゲームイベント「闘劇」の立ち上げ人としてもよく知られていますが,闘劇はどういった経緯で始まったのでしょうか。

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松田氏:
 自分はずっと大規模な格闘ゲームの全国大会をやりたかったんですよ。闘劇を立ち上げる前から,仲のいいゲームセンターのオーナー同士では,そういう話をよくしていました。それで2000年前後――メーカー主催の全国大会が少なくなってきた時期ですね。エンターブレインの猿渡さんに相談して,全国のゲームセンターを舞台にした格闘ゲームの全国大会を開催する流れになったんです。

※猿渡雅史氏:元エンターブレイン・アルカディア編集長。闘劇では総合プロデューサーを務めた(初出時,猿渡氏のプロフィールに誤りがありました。訂正してお詫びいたします)

4Gamer:
 闘劇は全国各地のゲームセンターで行われる予選大会を勝ち抜いたプレイヤーで決勝大会を争う形式でした。格闘ゲーム版甲子園といったイメージでしょうか。

松田氏:
 まさしくその通りですね。「こういった形式の全国大会を開催したい」って,ゲームセンターの関係者に声をかけたんですけど,何人も賛同してくれました。メディアの協力も不可欠だったので,そこは猿渡さんに協力してもらいました。

4Gamer:
 言葉では簡単ですが,いざ計画を動かす時に苦労はあったんじゃないでしょうか。

松田氏:
 そうですね……やはりというかお金がとにかく無かった。人手とゲーム機は自分たちでなんとかできるから,資金面をエンターブレインさんにお願いする形になりました。

4Gamer:
 格闘ゲーマーの大きな目標となり,一時代を築いた闘劇でしたが,2003年の第1回から2012年の第10回まで続き,現在は一旦閉幕となっています。

松田氏:
 闘劇の閉幕は本当に悔しかったし,残念だと今でも思っています。だからじゃないですけど,「バーチャファイター」のビートライブカップ,「ストリートファイターIII 3rd STRIKE」のクーペレーションカップといった,タイトルごとの全国大会だけは継続しようと思ってずっと続けています。

 また,闘劇がなくなったことで,選手たちの活躍の場が減ってしまっていましたが,近年はタイトーさんが闘神祭を開催してくれています。大会採用タイトルも多く,こういうイベントを続けてもらえているのは本当にありがたいことですね。

4Gamer:
 少し時代が戻りますが,闘劇が始まる前,まだ松田氏が一店舗の店員,店長だった時代はどういった目的でイベントを始めたんでしょう。

松田氏:
 一番の目的はお店を盛り上げるためです。イベントをすれば集客できるし,それが平常時のインカムにもつながります。ただ,そういったイベントをしているうちに,大会にすべてをかけて練習するプレイヤーが増えてきたんですよ。それこそ毎日5時間とか練習して,大会の1試合にかける。もうそれって「アスリートと同じじゃん」って思うようになってきたんです。

 当時のゲームセンターって,不良のたまり場とか,オタクが集まる場所ってイメージが先行して,すごくネガティブだったんですよ。でも,やってることはアスリートと変わらない。努力しているプレイヤーが輝ける場所を作ってあげたいって気持ちが,イベントを続けていくうちにドンドン強くなっていきましたね。

4Gamer:
 店舗大会であれば,そこまでお金がかかることもなくイベントを開催できると思うのですが,クーペレーションカップのように年々規模が大きくなっているイベントですと,お金の苦労もあると思います。このあたりはいかがでしょうか。

松田氏:
 今でこそプレイヤーに参加費をもらったり,メーカーに協賛いただいて開催できているんですが,そうでなかった時期は全部持ち出しでしたね(笑)。大赤字のイベントもけっこうありました。200人くらいの規模であればゲームセンターの店舗で実施できたんですが,それを超えるともう無理で,そのあたりからマネタイズのことを考えるようになりました。

4Gamer:
 そういった歴史があるからこそ,ユーザーコミュニティの大会を続けることも,プレイヤーやメーカーの協力を得ることもできたと思います。

松田氏:
 今でも黒字になるようなマネタイズはほとんどできていませんが,少なくとも赤字は出していないので,今後も継続して続けられるとうれしいですね。

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人生のターニングポイントは2014年。現場では一足先にeスポーツの波が到来


4Gamer:
 続いてゲームセンター事情について聞かせてください。国内では年々ゲームセンターの数が減少しています。ゲームセンター業を廃業しようと思ったことはありますか。

松田氏:
 少なくともゲームセンターの店舗運営は絶対辞める気はないですね。仮にほかのすべてのゲームセンターが無くなってしまっても,最後の1店舗として残り続けたい。今はeスポーツの波がきていて,アーケードゲーマーがプロとして活躍して,少しずつ世間に認められてきています。自分もプレイヤーもずっと続けてきたからこそ今があるわけで,生涯現役の気持ちで最後までみんなと一緒にがんばっていきたいですね。
 ただ,辞めようと思ったことはないんですけど,ゲームセンターを続けられなくなるくらいお金が無くなったことはありますよ(笑)。

4Gamer:
 えぇ!

松田氏:
 アルバイトの給料を捻出するのも厳しくなった時期があって,自分の貯金を切り崩して運営を続けていました。そんな一番苦しい時期を数か月なんとか耐えていたんですけど,そうしたらすごい量の仕事が入ってくるようになったんです。2014年あたりだと思うんですけど,今にして思えばeスポーツブームの最初の波だったのかもしれないですね。

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4Gamer:
 eスポーツブームというとここ数年というイメージが強かったのですが,現場ではそのあたりから始まっていたんですね。

松田氏:
 闘劇のときに協力してもらったメーカーさんから依頼がたくさんくるようになりました。「うちでも今度イベントをやるんですけど,松田さん手伝ってもらえませんか?」って。本当にあの時期に自分たちを信頼して仕事をくれた担当者さんには感謝しきれないですね。2014年は間違いなく自分の人生のターニングポイントになりました。

4Gamer:
 長年続けてきた大会開催やイベント運営のノウハウが求められる時代になったように感じます。

松田氏:
 その時期に仕事が増えていなかったとしても,多少の借金をしてでもゲームセンターやイベントの活動を続けるぞって思うくらいには気合入ってましたけどね(笑)。30代〜40代でもし千万の借金を抱えてしまっても,肉体労働でもなんでも,がんばれば返せるじゃないですか。

 ただ,一緒に働いているスタッフに無理強いはできないし,給料も払えなくなってしまうからみんな仕事辞めてもいいよって伝えてはいました。それでも多くのスタッフが辞めずに付いてきてくれて,今でも現場で活躍してくれています。あの時,苦労を掛けたスタッフにはずっと感謝していますし,今ではきちんとお金でも還元していますよ。

4Gamer:
 格闘ゲームを題材としたイベントはここ数年で爆発的に増えましたが,あまりノウハウがないため,運営をしっかりやれるところはまだまだ少ないという話を聞きます。

松田氏:
 今は自分たちの仕事で手一杯な状況ですけど,今後のことも見据えて後進を育てたいという気持ちはありますね。格闘ゲームのイベントってかなり特殊なんですよ。そのため,ノウハウがないところが請け負って,ひどいイベントになってしまうことも少なくないんです。

4Gamer:
 次にシーンの移り変わりについても聞かせてください。昔はゲームセンター中心のロケーションだったものが,eスポーツ,プロゲーマーの登場によって,変化しつつあります。

松田氏:
 変化していること自体は確かに感じますが,自分がやってる事は,全然変わっていませんよ。eスポーツにしても,盛り上がることでメーカーさんがイベントをやってくれたり,これまでフォーカスされなかったプレイヤーに注目が集まるのは純粋にうれしいですが。

 もちろん,シーンが変わったことに気付かないわけはありません。それでも,全体的に見ればプラスの方向に向かっていると思っているし,すごい時代がきたなと感じているだけですね。そんな激動の時代の中心で活動できていることがうれしくもあるし,誇らしくもあります。

4Gamer:
 eスポーツではよく取り上げられる格闘ゲームですが,昔と比較するとプレイヤーの総数は減少傾向にあります。この点に何か危機感はありますか。

松田氏:
 若いプレイヤーの参入が減ったということは事実なんですけど,個人的にはあまり悲観していないですね。今これだけeスポーツが盛り上がっているのだから,ウメハラ君やときど君といったトッププロに憧れて格闘ゲームを始める若い子も少しずつ増えていくと思うんですよ。
 EVO Japan 2018や闘神祭なんかを見ていても,子供を連れた家族が遊びに来ていましたし,興味があれば一度遊びに来てほしいですね。若い子にも現場の熱気を感じてもらいたい。

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プロゲーマーの誕生とアーケードの格闘ゲームシーンについて


4Gamer:
 eスポーツブームの訪れと共に国内でもプロの格闘ゲーマーが続々と誕生しています。それに対して何か感じることはありますか。

松田氏:
 ゲームがうまいことがステータスになる時代が来たことはうれしいんですが,プロの定義が曖昧なのは少し問題だと思っています。例えば,企業からスポットで渡航費をもらって海外大会に出たとして,それだけで自分がプロゲーマーと名乗っていいのかって言われると難しいと思うんですよ。

4Gamer:
 4Gamerでも昨年,格闘ゲームのプロシーンで活躍するプレイヤーに話を聞くまとめ記事を制作したのですが,定義については曖昧で,どこまでをプロプレイヤーとして拾えばいいのか部内でも議論が起こりました。

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 国内におけるeスポーツの発展と共に,今年も大いに盛り上がった格闘ゲームシーン。4Gamerでは年末アンケート企画として,ウメハラ選手やときど選手,ガチくん選手といった,プロシーンで活躍する格闘ゲーマー55人に2018年を振り返ってもらった。また,来年に向けての抱負や展望も聞いている。

[2018/12/29 00:10]

松田氏:
 自分を無理やり大きく見せる必要はないと思うんですよ。実力があって,周りからリスペクトされるようになったら,本当の意味でそれがプロなんじゃないかって思うわけで。

4Gamer:
 では,プロゲーマーを目指す若者が増加していることについてはどうでしょうか。

松田氏:
 人生の話なので意見をするのが難しいですが,個人的には本業をやりつつ,並行して活動するのがいいんじゃないかなって思います。あくまでも今の話ですけどね。何年か経って状況が変わったら,また違う正解が見えてくるかもしれません。ただ,今の状況で「自分はプロゲーマーだけ目指します!」って,ほかのすべてを捨てて挑戦するのはリスクが高過ぎるんじゃないかなって思いますね。

 すべてのプロシーンに言えることかもしれませんが,誰よりも努力をしたからといって勝てるわけではないんですよ。これはもうアーケードっていうロケーションの時代から分かりきっていることでして。ときど君とかMOV君なんて子どもの頃から知ってますけど,彼らは昔からセンスの塊だったし,今プロとして活躍しているのも納得できます。

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4Gamer:
 そういう意味ではプロゲーマーという職業が存在しなかった時代のアーケードは自分の実力を推し量れる絶好の環境だったかもしれません。

松田氏:
 ウメハラ君やときど君がゲームセンターにふつうにいるんですから(笑)。1コイン入れるだけで彼らと対戦して,自分の実力を試せたって,今考えるとものすごい話ですよ。

4Gamer:
 そんな今でも活躍しているプロゲーマーを生み出してきたゲームセンターも減少しています。今後全国のゲームセンターはどうなっていくと思いますか。

松田氏:
 それは自分の希望と今の現実があまりにもかけ離れているところがあって,コメントしにくいですね……。ただ,自分と同じように最後の最後までがんばってくれる店舗があるんだったら,すごくうれしいし応援したいです。

4Gamer:
 最近ですと,横浜フリーダムや京町カジノといった老舗のゲームセンターが多くのプレイヤーに惜しまれつつ閉店を迎えました。

松田氏:
 2店舗ともに超が付くほどの有名ゲーセンですよね。闘劇時代を支えてくれたゲームセンターで,あのクラスでさえ今は厳しいのかと感じてしまいます。闘劇を始めた理由の1つにゲームセンターを守りたい,盛り上げたいって気持ちがあったんですけど,これだけ減っていくとすごいショックですよ。

 よそのゲームセンターも,全員家族みたいなものだと思っていて,閉店のニュースを見るのが本当に辛いんです。自分は今でこそイベントが回りだしてがんばれているけど,もしイベント運営をしていなかったら同じ結末になっていたかもしれない。他人事とはまったく思えないですよ。
 
4Gamer:
 古くからの格闘ゲーマーの中にはeスポーツという言葉に否定的な人が少なからず存在します。eスポーツに対して,どのように考えていますか。

松田氏:
 否定的な意見はまったく無いですね。長いものに巻かれようじゃないですけど,eスポーツって言葉が先行することでいろいろな仕事が生まれるのであれば大歓迎です。ただ,自分はeスポーツという言葉が流行する前からずーっと同じことをやっているんだけど……って気持ちはあったりします(笑)。

 それに自分たちが扱っている格闘ゲームって,eスポーツの1ジャンルに過ぎないんですよ。FPS,RTS,パズル,レース……と,eスポーツにもたくさんあります。でも国内ではそんな1ジャンルに過ぎない格闘ゲームが猛プッシュされています。それであれば,自分たちにできることがあればなんでもバックアップしたいし,プレイヤーがもっと活躍できる場を提供してあげたいと思っています。

4Gamer:
 話を聞いていると諸々に格闘ゲームプレイヤーへのリスペクトや愛が感じられます。

松田氏:
 10年くらい前にふと気が付いたんですけど,自分ってゲームも好きだけど,それ以上にゲームに打ち込むプレイヤーが大好きなんです。「こいつらただのオタクじゃないんだよ。カッコいいから見てくれよ!」って気持ちがすごくあって……。最近ですと,将棋の藤井聡太君が活躍して取り上げられていましたけど,ウメハラ君やときど君だって同じくらいすごいんです。だからもっと注目してほしいですね。

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目標は「闘劇」復活。闘いはまだまだ続きます


4Gamer:
 今は確実にeスポーツブームが来ていると思いますが,このブームは今後も続くものだと思いますか。

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松田氏:
 eスポーツブームについては,周りの人ともよく話すんですけど,いろいろな意見がありますね。ただ自分は一過性ではないものと感じていて,ここまで火が付いたらなかなか鎮火しないだろうと思ってるんですよ。楽観視しているわけじゃなくて,自分も現場でその手ごたえは感じています。EVO Japanと闘神祭は来年も開催されることが発表されていますし,現場の人間からすると本当にありがたく感じます。

 今後もブームが続いて,「趣味は格闘ゲーム」って胸を張って言える時代が来てほしいと思っていますし,活躍する選手がもっとフィーチャーされていってほしいとも思っています。最近は自分もラジオやテレビに出ることがあるんですけど,自分のような裏方の人間じゃなくて,もっと選手を取り上げてください(笑)。

4Gamer:
 ここ数年は新作格闘ゲームがいくつも登場して,シーンの盛り上げに貢献しています。コンテンツホルダーに期待することは何かありますか。

松田氏:
 新しい格闘ゲームを出して盛り上げるのはメーカーにとっては当たり前なんですけど,個人的にはもう少し古いゲームにも目を向けてほしいですね。昔のゲームが好きな人もたくさんいるし,そういう人たちも拾い上げてほしいんです。これはもう自分の願望になっちゃうんですけど。
 ストリートファイターシリーズだって,ストVをやってるプレイヤーだけが目立つんじゃなくて,ほかのシリーズをずっと続けているプレイヤーが同じくらい注目されてもそれはいいことじゃないですか。

4Gamer:
 4Gamerでもレトロゲーの記事がバズったりすることは多いんですよ。旧作をまとめたコレクション系のゲームも人気が高いですし,需要は間違いなくあると思います。

松田氏:
 今年は「闘神祭 2018-19」と共催する形で「ビートライブカップ」を開催できたんですけど,タイトーさんが受け入れてくれたのは本当にうれしかったですね。「バーチャファイター5 ファイナルショーダウン」ってもう10年以上前のゲームですよ。最新ゲームが並ぶ中,本当に大丈夫なのって思ったりもしていましたが(笑)。

4Gamer:
 これまでも活動を通じて,いろいろな目標を達成してきたと思います。今後の目標や夢があれば聞かせてください。

松田氏:
 自分と同じような活動ができるディレクターやプロデューサーをたくさん育てたいですね。あとは「闘劇」の復活。いつになるかは分からないけど絶対に実現させます。

4Gamer:
 最後に聞かせてください。松田氏にとって格闘ゲームとは何でしょうか。

松田氏:
 ちょっとカッコつけた言い方をすると「人生」ですね。昔はただの格闘ゲームが好きな1人の少年だったんですけど,ふり向いてみたら人生そのものになっていました(笑)。

4Gamer:
 本日はありがとうございました。今後の活躍にも期待しています。

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