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時を止めてみたい,と一度くらいは夢に描いた者も多いのではないか。
動かぬ世界の中で自分だけが自由に歩き回り,止まった人々の間を思うままに通り抜る。
時間停止というのは,フィクションが繰り返し描いてきた人間の根源的な願いの一つなのじゃ。
止まった秒針の内側では,普段なら間に合わぬはずの一瞬に,いくらでも考えるための猶予が生まれる。
言い返す言葉を探すにも,難しい決断を下すにも,たっぷり考える時間さえあれば失敗など怖くないというわけじゃな。
「Enter the Chronosphere」は,その“止まった時間”をまるごと遊びの土台に据えたローグライクじゃ。
ゲームの舞台となるのは,現実を喰らって膨れあがった謎の球体「クロノスフィア」。プレイヤーはそこへ降り立ち,中心部を目指して進み続けるのじゃ。
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飛び交う弾と入り乱れる敵だけを切り取れば,ありふれた弾幕シューティングにしか見えんかもしれん。
ところがこのゲーム,弾幕を名乗りながら中身はきっちりターン制なのじゃから面白い。
肝は,自分が動いたときにだけ世界も動く,という一点にある。銃を撃てば弾がしばらく飛んで止まり,一歩踏み出せば敵も弾もその分だけ動く。
銃に弾を込め直す,その動作すら一手として時間が進んでいくのじゃ。
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逆に,こちらが手を止めているあいだは,弾が空中で静止したまま,敵も凍りついたように次の一手を待っておる。
かつて「SUPERHOT」が見せた,動くと時間が進むあの感覚を,見下ろしの弾幕へ持ち込んだと思えば分かりやすいじゃろうか。
おかげで,弾が止まっているうちに,落ち着いて避け先を見定められる。どこへ動いてどう撃ち返すかを,急がずじっくり考えて決められるわけじゃ。
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つまりこのゲームには,弾幕ものにつきものの反射神経はいらんということじゃな。代わりに問われるのは,止まった盤面をどう読み解くかという力じゃ。
静止した弾の軌道を先読みし,敵の位置取りを計算し,安全に撃ち返せる立ち位置を探る。ときには敵を蹴り飛ばして穴へ落とし,地形を使って数を減らすこともできる。
慌てて動けば自分から弾へ突っ込むことになるし,考えあぐねて固まっても盤面は一切進まん。
急ぐべき局面と,腰を据えて読むべき局面を,自分の手で選び分けていくのがこのゲームのポイントじゃな。
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ローグライクとしての作りも抜かりない。クロノスフィアの内部は,これまでこやつが喰らってきた世界の断片が入り混じっておっての,虫のはびこる地帯もあれば,西部劇めいた区画もあるという具合で,潜るたびにその構造は変化するのじゃ。
その道中では,異星の武器やガジェットを拾い集め,壁の陰へ回り込むように跳ねる弾や,遠くから薙ぎ払うレーザーといった一癖ある道具を掛け合わせて,自分だけの戦い方を見つけていくわけじゃな。
チェーンソーを改造して敵に異星の卵を植えつけ,孵った手下を爆弾よろしく起爆する――そんな物騒な取り合わせすら成り立ってしまうのじゃから恐れ入る。
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クロノスフィアを潜るうちにキャラクターも開放されていくのじゃが,それぞれ得手不得手が違うから,同じ武器を握っても立ち回りはがらりと変わるぞ。
どの球体へ挑むかもそのつど選べるうえ,同じ攻略が通じるとは限らぬ。だからこそ,何度でも潜り直したくなる引きがあるのじゃ。
弾幕とターン制。噛み合わなそうなこの二つを掛け合わせて,これがなかなか癖になる味に仕上がっておる。
撃ち込む手応えはそのままに,一手ごとの判断でじりじりと盤面をほどいていく塩梅が,実によい。
弾幕シューティングに憧れつつ,あの速さについていけず指がもつれてしまう,反射神経の勝負より腰を据えた読み合いで勝ちたい,そういう者にこそオススメできる作品じゃ。




















