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出展社数や展示面積で過去最高を記録し,世界最大のゲームイベントとして熱狂に包まれた「gamescom 2026」が今年も終わった。しかし,その華やかな数字の裏では,未公開データの盗難や大手の慎重姿勢といった課題も浮き彫りとなっていた。今年のイベント取材後記として,その模様を紹介しておこう。
出展作品の増加と,取材時間がない悩み……
欧州最大,いや,E3がなくなった今や名実ともに世界最大のゲームイベントとなった「gamescom 2026」が現地時間の2026年8月26日に始まり,30日に閉幕した。本誌でも,正式にイベントに組み込まれ,24,25日に行われた開発者会議「gamescom dev」から現地入りして精力的に取材を行った。その特集記事は,時間のあるときにじっくり読んでいただければ幸いだ。
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主催者の発表によれば,今年の出展社数は世界67の国・地域から過去最高の1743社(前年比11%増)で,会場となったケルンメッセの23万3000平方メートルに及ぶ展示スペースは史上初となる「完売」を記録した。総来場者数も36万8000人に達し,パンデミック前の2019年(37万3000人)に迫る数字を叩き出している。数字だけを見れば,このゲームイベントの上り調子は留まるところを知らないように思える。
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2009年の第1回からほぼすべて取材している筆者にとっても(関連記事),gamescom 2026はとりわけ忙しいイベントであったのは間違いない。6月にアメリカで開催されたSummer Game Festが終わったころから参加メーカーによる取材の打診が舞い込み始め,興味深い作品や人物と会うための“アポ取り”は7月末の段階でほぼ完了。ビジネス関係者が参加する26日から28日までの3日間はほぼ埋まり,筆者のスケジュールも「完売」してしまった。
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しかし,熱気と人波でごった返すケルンの現場を歩き,ビジネスエリアで開発者たちの本音に耳を傾けていると,この華やかな数字の裏にある「シビアな現実」が浮かび上がってくる。AAAタイトルの大型発表がずらりと並んだ前夜配信イベントの「Opening Night Live(ONL)」だが,その中身を紐解けば,完全新作のリスクを避けた「実績あるIPの続編」や「リマスター/DLC」への依存がより顕著になっていた。
出展作品のなかでゲーマーの話題になっていたのが,CD Projekt REDの人気シリーズ最新DLC「ウィッチャー3 ワイルドハント 追憶の調べ」であったことも,まさにこの現状を象徴している。近年続いたゲーム業界の大規模レイオフと開発スタジオの閉鎖,投資資金の急速な冷え込みは,パブリッシャから「失敗の許されないプロジェクト」以外の選択肢を奪っているようだ。
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一方で,1700社を超える過去最高の出展社数を支えたのは,中国をはじめとするアジア勢の台頭と,拡大を続けるインディーゲームの存在だ。
多額の資金力を背景に巨大ブースを構えるアジア系企業と,パブリッシャからの資金調達が難しくなったなかで自力生存をかけて泥臭くアピールしてくるインディーデベロッパの姿だ。欧米の大手パブリッシャの勢いが陰りを見せる一方で,業界の“プレイヤー”の顔ぶれがガラリと変わりつつあることを実感させられた。
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華やかな記録の裏で露呈したセキュリティ問題
熱気と狂乱の裏で,膨張し続けるイベント規模に運営側のインフラが追いついていない現状を暴露したのが,期間中に相次いだ大規模な盗難事件である。被害が集中したのは,本来であれば厳重なアクセス制限がかけられているはずのビジネスエリア,そして人々が押し寄せてごった返すインディー展示エリアの双方だ。
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夜間の閉場時間帯を狙った手口により,展示機材や貴重品が根こそぎ持ち去られる事態が多発した。なかでも象徴的だったのが,イギリスの個人開発者であるライアン・レイリー(Ryan Laley)氏の悲劇だ。同氏が手掛け,大きな注目を集めていたホラーゲーム「Mimic」のブースから,デモ展示および開発に使用していたノートPCなど計7〜8台の機材が丸ごと持ち去られた。レイリー氏は公式X上で「自分のGamescomはここで終わった」と力なく語り,あまりに深い失意を露わにした。
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被害は個人にとどまらない。パブリッシャのiam8bitブースからも2台のデモ用ノートPCが盗難に遭った。ここには未発売タイトル「Petal Runner」や「Escape Academy 2」の未公開ビルドが入っており,展示の途絶だけでなくデータ流出の脅威にも直面した。さらにTV番組をモチーフにしたデッキ構築ゲーム「The Zibbo Show」を出展していたTessera Studiosのブースでは鍵のかかったキャビネットが力ずくで破られ,Steam Deckと機密データが入ったノートPCが奪われるなど,現場の治安は惨状を呈したようだ。
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筆者も実際に1つの事件に遭遇しており,インディー展示エリアでブースを展開していたRocketWerkzの宇宙開発シム「Kitten Space Agency」の取材中,PR担当者が「せっかく作ったぬいぐるみを1つ盗まれてしまった! 2つしか作ってなかったのに!」と焦り出すのを目撃した。PR担当者が開発者との雑談中にどこかに行ってしまったので,次に予定していた同社の別の新作について詳しく説明を受けることができなかったのだ。
単なる機材損失を超えた被害に対し,主催者であるケルンメッセ側の対応はきわめて冷淡だった。夜間警備が存在するはずのビジネスエリアでの不祥事であるにもかかわらず,運営側は「ブース個別の警備は任意契約であり,盗難保険の加入を推奨する」という自己保身的な声明を出したのである。
上記の「Mimic」の盗難事件について,日本とオーストラリアを中心に活動するUkiyo StudiosはXでリポストする形で,過去4年にわたりgamescomで機材やコントローラなどの小物が盗まれ続けていると告発。2024年にPCが盗難に遭った際,主催者であるkoelnmesseから「ケルン市やgamescomの評判が落ちる」という理由で警察への被害届提出を制止されたと告発し,過去からの体制不備の常態化を批判した。今年,Ukiyo Studiosは直接参加を見送っている。
高額な出展料を払いながらも,追加警備費用を捻出できない弱小インディー開発者ほど,セキュリティの不備による被害を直接受ける構造は,あまりにも残念なことである。ビジネスエリアでも事件が発生しているのだから,どうセキュリティを強化していくのかは,主催者にとっても課題であろう。
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ちなみに,壊滅的な被害を受けた「Mimic」のレイリー氏に対して,CD Projekt REDは「サイバーパンク2077」の公式Xを使って,「このような事態になり本当に気の毒に思います。あなたを決して1人にはさせません。すぐには役立たないかもしれませんが,弊社のハードウェア倉庫を確認し,必要機材をいくつかお送りできるよう手配します。仲間をゼロからやり直させるわけにはいきません」と心温まる発信をした。レイリー氏も安堵し感謝を述べているが,「参加費用を受け取る主催者が補償すべき」という声も少なくない。
ゲーム産業が過渡期にあるなか,たとえば当連載の「第867回:開発資金が消えたゲーム業界で,クリエイターが選ぶ新たな道」で語ったような開発者たちの絆や自己救済が浮き彫りになったのは,今の業界の現状を物語っているように感じた。
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著者紹介:奥谷海人
4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。


























