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NVIDIA,ノートPC向けの新技術「Optimus」発表。3D性能とバッテリー持続時間の両立を図る
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印刷2010/02/09 23:00

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NVIDIA,ノートPC向けの新技術「Optimus」発表。3D性能とバッテリー持続時間の両立を図る

Optimusのロゴ
画像集#002のサムネイル/NVIDIA,ノートPC向けの新技術「Optimus」発表。3D性能とバッテリー持続時間の両立を図る
 2010年2月9日23:00,NVIDIAは,ノートPC向けの新技術「Optimus」(オプティマス,正式名称 NVIDIA Optimus Technology)を発表した。CPUやチップセットに統合されたグラフィックス機能(以下,便宜的にIGPと表記)と,ノートPC向けGPUを,シームレスに切り替えるというものだ。
 消費電力や発熱が少ない代わりに3D性能や並列処理性能が極めて低いIGPと,その逆の特性を持つ単体GPU。既存の「Switchable Graphics」(あるいは「Hybrid SLI」の「HybridPower」)だと,ユーザーは両者を手動で切り替えねばならなかったが,この手間を解消しようというのが,このOptimusである。


GT200以降のノートPC用GPUと

Intelプラットフォームでサポート


対応プラットフォーム一覧
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 Optimusを利用可能なのは,GT200コアのノートPC向けGPUと,次世代GeForce M,次世代ION。対応プラットフォームは,Arrandale&Pineviewコアのグラフィックス機能統合型CPU,もしくはMobile Intel 4シリーズのグラフィックス機能統合型チップセットを搭載したノートPCとなる。
 AMD製のグラフィックス機能統合型チップセットは,市場シェアが低いという理由でサポートされない。

コンシューマ向けGPUビジネスを統括するDrew Henry氏(General Manager, GeForce & ION GPU BU, NVIDIA)
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 さて,Optimusを採用するノートPC上では,IGPとGPUを切り替えるに当たって,ユーザーが手を出す必要は基本的にまったくない。Optimusを紹介すべく来日したNVIDIAのDrew Henry(ドリュー・ヘンリー)氏は,報道関係者向け事前説明会で,Optimusに対応する最初のノートPCとなるASUSTeK Computer(以下,ASUS)製品「UL50Vf」で実際にデモを披露したが,IGPが動作している状態でノートPCにセットアップされている「World in Conflict」,あるいはCUDA対応ビデオトランスコードソフト「Badaboom」を実行すると,GPUが“起動”し,アプリケーションを終了すると再びIGPに切り替わっていた。
 IGPとGPUが切り替わる間に,画面がちらついたりすることもない。極めてあっけなく切り替わるのだが,そのあっけなさが,Optimusの画期的なところだ。

Switchable Graphics対応のGeForce搭載ノートPCで,IGPの動作中に,ソリティアを起動し,その後,Badaboomを起動しようとするとエラー(左)。タスクトレイからGPUを有効にしようとすると,今度は「ソリティアを閉じないとGPUを有効にできない」というメッセージが出て切り替えられない(右)。「本当にいらいらする(笑)」とはHenry氏の弁
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一方,こちらがOptimus対応のUL50Vf(左)。今回のデモでは,GeForceの動作状況を示すインジケータが動作していた(右)。IGPによる描画を行いつつ,ソリティアを実行している間は,インジケータの「NVIDIA GPU」が「OFF」になっているが,この状態からBadaboomを起動すると……(※下に続く)
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(※続き)Badaboomの起動中に,GPUが「ON」となり,無事,Badaboomが起動した。この間,ユーザーが行ったのは「Badaboomの起動」だけである
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Optimusが動作する仕組み

〜“改良版HybridPower”に非ず!


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 2006年に登場したSwitchable Graphicsは,GPUとIGPを切り替えるのに,システムの再起動が必要だった。現在は第2世代だが,Henry氏のデモでも明らかなとおり,さまざまな制約がある。
 統計によると,Switchable Graphics対応ノートPCで,実際に切り替えながら使っているのは,わずか1%に過ぎないという。手動で切り替えなければならず,切り替える前にはいちいちアプリケーションを閉じる必要があり,切り替えには時間がかかり,しかも切り替えるときには画面がちらついて“バグった”ように見えるのだから,使われないのはさもありなんといったところだ。

Switchable Graphics(≒HybridPower)の抱える諸問題。結果としてエンドユーザーは,IGP,もしくはGPUのどちらかしか使わなくなっていたという
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 さて,Optimusはどのように実現されているのだろうか? ハードウェア面でのキーポイントは,「Optimus対応ノートPCにおいて,ディスプレイ出力されるのは,常にIGP側にあるグラフィックスメモリのデータだ」という点である。
 Optimusにおいて,GPUによる描画データは,IGPがグラフィックスメモリとして確保しているメインメモリへ転送され,ディスプレイへの出力は常にIGP側で行われる。そのため,IGPとGPUが切り替わるときでも画面がちらついたりしないというわけだ。
 ディスプレイ出力をIGPが行う都合上,画質や色合いの調整などはIntelのグラフィックスドライバに依存し,GPUはアクセラレータ的な役割を担うこととなる。

Optimusの動作概要。ディスプレイ出力自体は常時IGPが行い,3DゲームやCUDAアプリケーションなどを実行し,GPU性能が必要になったら,GPUがIGP管理のグラフィックスメモリ領域へデータを書き込む仕組みになっている
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 言うまでもなく,GPUは,メインメモリから独立した高速なグラフィックスメモリを持っている。したがって,ディスプレイ出力に当たっては,GPU側グラフィックスメモリからIGP側グラフィックスメモリへ,大量のデータ転送が発生することになるが,それを担うのが,対応GPUに内蔵されている「Copy Engine」だ。

Optimus対応GPUには独立したCopy Engineが組み込まれており,GPU側グラフィックスメモリのデータをIGP側のそれへ転送する
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もしCopy Engineがなかったら……というスライド。3Dエンジンが描画データの転送を行わねばならないため,パフォーマンスに負の影響があるという
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 Copy Engineは,3Dエンジンから独立しており,Copy Engineによるデータ転送が3D描画の邪魔になることはない。「GPU側がレンダリングを終えると,1フレームの10分の2の時間で,“メインメモリ側のグラフィックスメモリ”に転送し,IGPが表示する」(Henry氏)とのことだ。
 つまりは,

  1. GPU側の3Dエンジンが,ローカルなグラフィックスメモリ上にレンダリング結果を次々と出力し
  2. その間に,Copy Engineがフレームをメインメモリ上のIGP側グラフィックスメモリへ次々と転送し
  3. IGPがそれをディスプレイに出力する

というわけである。

Windows 7のドライバモデルを利用してOptimusは実現される。そのため,Windows Vista以前のOSはサポートされないので,この点は押さえておく必要があるだろう
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 その仕組み上,Optimusでは,1台のノートPCにIntelのIGP用とNVIDIAのGPU用,2種類のグラフィックスドライバをインストールすることになる。そんなことが可能なのかと疑問に思う人はいるかもしれないが,Henry氏はこの点を,「Windows 7からサポートされたデュアルドライバモデルを使用しているため,Intelのドライバ(のバージョンなど)を気にする必要はない」と明快に説明している。
 Windows 7では2種類の異なるグラフィックスドライバを同時に動作させられるようになっており,Optimusではその仕組みを使っている。トリッキーな部分がないため,「Intelのドライバはx.xx.xx,Notebook Driverはxxx.xxの組み合わせでなければ動作しない」などといった制限はないそうだ。

第2世代Switchable Graphicsの仕組み。Display Driver Interposerがドライバの呼び出しを一括して受け,IntelとNVIDIAのドライバ,いずれかを呼び出しに変える仕掛けとなっている
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 これは,Switchable Graphicsとは,根本的に異なる実装である。
 第2世代のSwitchable Graphicsで,Windowsからなされたグラフィックスドライバの呼び出しは,NVIDIAの用意する「Display Driver Interposer」が受け取り,IntelのIGPとNVIDIAのGPU,どちらかの呼び出しに振り分ける構造をとっていた。IntelとNVIDIAのドライバをラップするようなカスタムドライバという,一種のトリックが必要だったわけで,Optimusと比べると,開発の困難さが窺えよう。

 また,Switchable Graphicsでは,「IGPとGPU,どちらを使っているのかを検出して切り替えるMux(マックス,Multiplexerの略)が必要で,これが大きな問題になった」とHenry氏は振り返る。

 Switchable Graphicsを実装するには,Muxチップが9個必要になる。IGPとGPUにはそれぞれ,(LVDS接続される)ノートPC側液晶パネルとは別に,D-Sub 15ピンによるアナログ出力,またはDisplayPort/HDMIによるデジタル出力という,3系統の出力先があり,それらを適宜,適切な出力先に切り替えるための経路が必須になるからだ。

IGP(※図中「PCH」)とGPU(※図中「dGPU」)それぞれ3系統の出力があり,それをMuxチップによって3系統の出力先に振り分けるというのがSwitchable Graphicsのハードウェア実装である
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 9個ものMuxチップを搭載する以上,「部材のコストや,マザーボード上のスペースが必要になるうえ,品質検証に時間がかかるようになる。また,信号をボード上で引き回す必要があるため,信号の劣化も避けられない」とHenry氏。さらに,マザーボードのレイヤー数も増やす必要が出てくるため,総じて数ドル,もしくはそれ以上のコストが乗ることになるという。
 これに対して,Optimusだと,GPUはPCI Expressインタフェースで接続されているだけだ。ディスプレイ出力を行うのは常にIGPである以上,Muxを使った複雑なルーティングも不要だ。コスト面でも,Optimusは格段の進歩を遂げたというわけである。


アンチウイルスソフトにおけるパターンファイルのように

「IGPとGPUのどちらを使うか」プロファイルを配信


 ここで気になるのは,どのアプリケーションでGPUを用いるかだ。やたらめったらGPUが動作するようでは,長時間のバッテリー駆動時間はおぼつかないが,この点についてHenry氏は「NVIDIA社内に,アプリケーションの検証を行う部署を設けて,GPUを使ったほうがいいアプリケーションのリストを作っている。そのリストはNVIDIAのサーバーにアップロードされ,ユーザー側に自動アップデートの形で提供される」と説明する。
 要するに,「GPUで処理したほうがいいアプリケーション」のリストが,プロファイルとして提供されるというわけである。Windows標準のソリティアでGPUが動作するようなことはなく,また,ビデオ再生支援機能のような,GPUとIGPの双方でサポートされるものも,IGPでまかなえるものはIGPで,GPUを使うべきものはGPUでといった具合に仕分けられるという。

NVIDIAのOptimusサポート部隊がさまざまなアプリケーションを検証し,GPUで動作させるべきもののリストをプロファイル化する。NVIDIA SLIのプロファイルと似ているが,一つ違うのは,自動更新だということ。「アンチウイルスソフトの,データベース更新のようなイメージ」(Henry氏)だそうだ
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 もちろん,プロファイルにはユーザーリストが用意されており,手動で「このアプリケーションではGPUを使う」といった設定も行える。個人やサークル,あるいは日本ローカルの独立系デベロッパが開発したゲーム&CUDAアプリケーションなどを,GPU処理させるよう,プロファイルの設定が行える。また,アプリケーション起動時に,右クリック(のコンテキストメニュー)からIGPとGPUのどちらで実行するかも選択できるという。

Optimusは高い3Dパフォーマンスと長いバッテリー持続時間を両立させるとHenry氏は繰り返し強調していた
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 なお,Optimusでは,使っていないとき,GPUは完全にオフとなり,電力を消費しない。
 「アプリケーションを起動するとGPUがオンになり,最初のDirectXコールよりも前にGPUが有効になるから,切り替え時間を意識することはまったくない」と説明するHenry氏によると,(当然のことながら)GPUを有効にするまでには200〜300msがかかる。しかしその所要時間は,アプリケーションを読み出すディスクアクセス時間に隠蔽されるため,ユーザー側が遅延を感じたりはしないという理屈だ。

 また,ACアダプタ駆動しているかどうかがGPU有効/無効のトリガーになるわけではないため,「ACアダプタ駆動時はGPUが有効になって無駄な電力消費や発熱が発生する」といった問題がクリアになっているのも,重要なポイントである。


GPU搭載ノートPCのマイルストーンとなるか?

2010年夏までに対応ノートPCが50種以上登場


UL50Vfのスペック概要
画像集#021のサムネイル/NVIDIA,ノートPC向けの新技術「Optimus」発表。3D性能とバッテリー持続時間の両立を図る
 Switchable Graphicsの持つ弱点を克服したOptimus。対応ノートPCは,デモで使われたUL50Vfのほかにも,2010年夏までに,世界で50機種以上が登場見込みという。そのなかにはゲーマー向けはもちろん,スリムノートやNetbookも含まれるとのことで,さまざまな価格帯&性能レンジにOptimus対応ノートPCは登場しそうだ。

2010年夏までに,さまざまな仕様のOptimus対応ノートPCが登場予定という。ASUSによれば,13.3インチ液晶パネルを搭載したOptimus対応モデル「U30Jc」が,3月下旬から4月上旬にかけて,国内発売する予定とのことだ
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 ArrandaleコアのCore i7/i5/i3やPineviewコアのAtomでは,CPUがIGPを統合したことで,ノートPCにおける単体GPUの立ち位置は難しくなりかけていた。しかし,今回のOptimusでNVIDIAは,GPUの新しい役割を創出するきっかけを作れたと述べていいのではなかろうか。また,Henry氏は,OptimusをデスクトップPCへ展開する可能性も臭わせており,いよいよ今後が楽しみな技術であるといえるだろう。今後GPUは,必要なときだけ起動させるアクセラレータのような存在になっていくのかもしれない。
  • 関連タイトル:

    GeForce 300M/200M

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